温泉とは本来こういうものなのかもしれない・・・     泉質:★★★★★(単純泉で量も豊富)
情緒:★★★★★(空間として素晴らしい)
環境:★★★★★(人、自然、すべてが◎)

国道102号線が虹の湖に架かる虹の橋に分岐する交差点と、すぐ南にあるトンネルとの間から、舗装はされているがどこにでもあるただの山道を?kmほど(すいません、忘れました)入っていくと、青荷渓谷にひっそりとたたずむ一軒宿、青荷温泉がある。周囲を完全に山で囲まれ、渓谷というより山岳地形の穴底にいるような感じだ。

メインの建物は特に古くも新しくもない印象だが、中に入ると非常に懐かしい感じがする。表現し難いが、まるで田舎の実家に帰ってきたようなそんな雰囲気だ。
この宿には電気がない(一応引かれてはいるらしいが)。建物の中はそのせいで昼間でも少し暗く感じるが、それがまた落ち着く原因なのかもしれない。夜の明かりはすべてランプである。それもフェイクではなく本当にランプなのがすごい。有名になるのは当然だろう。

       
 
       
  温泉は敷地内(というか「穴底」内)に点在している。
点在していると言っても全然歩くわけじゃない。宿泊棟の建物の中に男女別の内湯、外に離れの混浴内湯、同じく離れの混浴露天風呂、それに最近できた離れの男女別内湯の4種類が点在している。
これらと離れの宿泊棟が渓流沿いに集まって配置されているので、まるで小さな温泉町のようである。この渓谷の空間というか雰囲気がとても気に入ってしまった。こんな「温泉町」体験は初めてだ。
                               

まずは混浴の露天風呂に入ってみた。

大きな岩を無造作に積み上げてつくったかのように見える湯船には、竹筒から源泉が注ぎ落とされている。泉質は単純泉でほんの少し白みがかっている(ような気がする)。ちょっと忘れてしまったが、飲んでみるとさっぱりしていてクセがない味だったような気がする。
風呂には木で組まれた日除けがかかっていて、岩風呂とともに天然温泉の雰囲気は抜群である。脱衣所は女性用に目隠しがあるだけ。昼間入るのは勇気がいるだろう。
また、大きな桶のような湯船にも源泉が注がれていて、こちらはとてもぬるい。人1人が入れる大きさで、子宝の湯となっている。

 
                               
     

八戸新幹線の開業にともなって、今年は青森のいろんな温泉のポスターが、JR東日本の各駅に貼られていたのを知ってますか?
特に首都圏の人は見たことあるんじゃないかと思いますが、左はそのうちの1枚。私の会社の最寄りの代々木駅にもずっと貼られていた、鈴木京香のこのポスターの温泉は、実はここ青荷温泉なんです。
よく見ると、上の写真と同じ場所でしょ?
ポスターには「山峡の温泉」としか書いてないので、私も全然気付きませんでした。

     

次に露天風呂の裏にある、混浴内風呂に入った。「竜神の湯」という名前が付いている。

脱衣所は別だが、中は混浴のタイプ。内風呂だが窓が大きく、閉鎖感はほとんどない。それどころか、窓から眺める景色は山の緑に溢れていて、滝だって見える。
窓から入ってくる空気は真夏だというのに清々しい。青荷温泉の中では唯一外の景色が楽しめる温泉だった。

お次は宿泊棟の中の内風呂だ。

こちらは完全な別浴で、あまり広さはない。景色も望むべくもないが、お湯はやはり新鮮で大変気持ち良い。
身体はここか次の健六の湯で洗うことになる。

 
     
 

最後はその健六の湯。玄関の前にあるこの建物は、見るからに新しい。

中は男女別になっていて、ヒバをふんだんに使った贅沢な湯小屋だ。また天井が高く、窓にも高さがあるので、シンプルな浴室とあいまって開放感が素晴らしい。内風呂の固定観念を覆してしまうようなセンセーショナルな空間だ。
湯船には勢いよく源泉が注がれていて、溢れた湯は水下にどんどん流れていく。湯が少し熱めなので、しばらく使って桧の床で寝転ぶのを繰り返した。それだけで最高に気持ちいい。こんな素晴らしい内風呂を一人占めできて、もう大満足だった。
ちなみに女湯にだけ露天風呂がついているらしい。

         
       

ランプがその役目を待つ

このまま帰ってしまうのが大変惜しい、それくらいに気に入ってしまったので、風呂からあがった後も宿の中をふらふらしてしまった。
ちょうど夕飯支度時で、従業員が忙しそうに動き回っている。廊下の水場で、大きなたらいで米をといでいるのを見て、とても親密感を覚えた。この温泉宿には生活感が溢れているのだ。普通はそういうものは客の目の届かないところに押しやってしまうが、生活のための営みを包み隠さないスタンスが印象的だ。それをとても若い女の子が一生懸命やっていたところに、心が和まされる思いがした。
 
 

青荷川の周りに点在する建物

玄関入ってすぐ左側の部屋には売店があって、ここではコーヒー(300円)を入れてもらえる。
温泉入った後の一杯がこんなにおいしいとは思わなかった。何か秘密でもあるのだろうか。
このコーヒーを入れてくれるおっちゃんが楽しい人で、いろいろおしゃべりさせてもらった。壁にはお客さんと一緒に撮った写真がびっちり貼られている。後で知るが、このおっちゃんはヒロさんといって、あのキャラで結構な有名人らしい。
 

青荷温泉にはそのほかにも、言葉では到底説明しきれないほどの何とも言えない懐かしさに溢れている。今までこんなに気持ちのいい宿に来たことはない。素晴らしい。

これが夜になると宿全体がランプのぼんやりとした光に包まれて、さぞや幻想的な空間になるのだろう。冬は深い雪に包まれて、宿全体がまた違った趣になることだろう。今回はそれらを体験できずに立ち去ることになってしまったので、ぜひ今度はゆっくり泊まりに来てみたいものである。

なお、日帰り入浴の受付は10:00〜15:00と少々短いので、行かれる際はご注意願いたい。
 
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