死者の魂が集う霊場で湯浴み     泉質:★★★★★(酸性泉or硫黄泉)
情緒:★★★★★(文字通り温泉小屋)
環境:★★★(他に類を見ない立地)
 

恐山は荒涼としたその風景から地獄と称され、古くから霊場として魂の供養や口寄せなどが行われてきた。この地獄には、地中から蒸気や熱湯が噴出している一帯もある。となると、そこに温泉があってもなんら不思議はない。

恐山温泉は温泉宿ではない。恐山菩提寺の敷地内に点在する温泉小屋が、この温泉のすべてだ。入山料(500円)を払うと誰でも勝手に入ることができるので、入山のついでに好きな方はどうぞといった感じである。

薬師の湯

温泉小屋は全部で4つある。
「 花染の湯」は混浴の湯小屋で境内から少し離れたところにあるようだが、回廊を新築していたために通路が遮断され、そこまで行くことができなかった。
「 薬師の湯」は工事中のため入浴不可との貼紙があった(何もしてなかったけど)。

古滝の湯(左)冷抜の湯(右)

「冷抜の湯」と「古滝の湯」は、それぞれ男湯、女湯で、2棟並ぶように配置されている。

今回入ったのは「冷抜の湯」だ。
小屋の中は脱衣棚と湯船があるだけの非常に簡素なものだ。天井板には無数の釘先が突き出てきているという、何とも適当な造り。

   
さっそく服を脱ぎ捨て、勢いよく注ぎ込まれている源泉湯船に手を浸してみる。結構熱めだ。
十分に掛け湯をして身体を慣らし、温泉に浸かる。固着した湯の花で黄色く見えるが、ほとんど透明の硫黄泉。これは新鮮な証拠だ。ニオイも程良く、硫黄泉のお手本のような温泉である。蔵王や草津に似ている。ということは、酸性泉なのかもしれない。このへんは分析表がなかったのでよくわからない。しかし、温泉としては文句のつけようがないほど素晴らしい。

先客はいたがすぐにいなくなり、しばらくこの素朴だが素晴らしい源泉を一人占めすることができた。熱くなってきたら縁の方で座り込み、窓から流れ込む心地良い風で身体を冷まし、また源泉に身を浸す。こんな小屋だから、見ようと思ったら外から丸見えだが、別にそんなことはどうだっていいのである。

何人か入ってくる人はいたが、大抵の人が熱がってすぐに出ていった。
恐山に温泉小屋があるなんてあんまり知っている人いないんじゃないだろうかと思ったが、結構入りに来る人がいるもんだ。中には興味本位で見ていくだけの人もいたけど。

 

私があがって服を着ている時に入ってきたおっさん2人組は、熱い熱いと言って水をガンガン入れてめちゃくちゃにかき回し始めた。少しならまだしも、あれでは水に浸かっているのか温泉に浸かっているのかわからない。せっかくの温泉が台無しになってしまった。

立地がお寺の本堂に向かう石畳の脇という、他では見たことも聞いたこともない温泉。あるのは小屋の中に湯船だけ。そういう余計なものがなにもないという状況が新鮮で、温泉を純粋に楽しむことができる。
素晴らしい温泉だ。

   
 

入浴の後散策する恐山の地獄巡りは、その荒涼とした景色とは裏腹に、涼しい風に吹かれて非常に心地良かった。

また、駐車場で売っている霊場アイス(!?)もなかなかとのこと。ブルーベリーを試してみたが、手作りの感じがして自然な美味しさだ。

   
あまり知名度のないマニア好みの恐山温泉だが、私の評価軸では、名湯揃いの青森県の中でもトップクラスになる。
普通の温泉宿の温泉では満足できない向きには、是非オススメする。
   
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