八甲田山中の小さな湯治宿   泉質:★★★★(単純硫化水素泉)
情緒:★★★★★(昔の姿のまま)
環境:★★★★(八甲田山に抱かれて)
 

酸ヶ湯と蔦温泉の間に、国道103号線と七戸方面へ向かう国道394号線が交わる交差点がある。この交差点から伸びる枝道を少し入っていくと現れるのがこの温泉である。
外観は見るからに湯治宿の風情だ。木造2階建の質素な宿泊棟が目立つだけで、大きな建物をはじめとする近代的な物は何もない。

中に入ると、まず狭い売店がある。ここで入浴券を買う。なんと300円だ。しかも入浴受付は朝7:00から。ありがたいことである。

ちなみにこの売店のレジが、この宿のフロントを兼ねている。余計なものは何もない、そんな簡素な湯治宿なのだ。

売店から宿泊棟の廊下にいきなりつながっている。
スリッパに履き替えて奥の方へと進んでいく。宿の中はとても狭い。

                   
 

そんな簡素さは温泉とて同じ。谷地温泉の浴室は1ヵ所しかない。
混浴と女性専用の浴室があり、あとは打たせ湯が併設されている。
女湯はどんなだか知る由もないが、混浴は完全に湯治を目的とした造りである。大勢でわいわいと入るような類の温泉ではない。

浴槽は熱いのとぬるいのの2つ。熱い方は完全に白濁しているが、ぬるい方は少し白濁している程度で底まで見通せる。泉質は単純硫化水素泉である。
湯治宿らしく、この2つの温泉を利用した入浴方法が説明された看板がかけられている。別に湯治に来たわけではないので、自分の好きなように温泉を楽しむことにした。

                   

まずぬるい方に入ってみた。確かにぬるいが、まったりと絡み付くような温泉だ。
朝イチで入りに来たが、先客(宿泊客だろう)は2名ほどいた。年配の方は目をつぶったままじっと湯に浸かって微動だにしない。こういう入り方がやはり身体に効くのだろう。
後になって女性も入ってきた(女湯から直接混浴につながっている)。こちらも湯治客といった風情だ。

逆に熱い方は誰も入っていない。思う存分一人占めさせてもらった。
熱いといっても、ぬるい方から見れば温度が高いというだけで、ごく適温である。とうとうと注がれる白濁した源泉は、さすがに濃く感じる。もちろん飲泉も可能だ。

 

※パンフの写真より

 

2つの湯船はどちらもそれほど広くなく、源泉が大量に注がれ続けているわけでもない。たぶんそれほど湧出量が多くないのだろう。その点では少し新鮮さに欠ける気もする。
かといってむやみに浴室を増やしたり大きくしたりすると、一気に質が落ちるだろう。限られた温泉を適切な規模で守っていく姿勢は素晴らしいと思う。

2つの温泉を交互に堪能していると、少しづつ人が増えてきた。
ここも大変人気のある温泉だ。昼間は大変な混雑で、イモ洗い状態になってしまうということを聞いたことがある。この温泉量ではキャパシティオーバーだろう。新鮮な温泉をゆっくり楽しみたいのであれば、今回の私のように一番風呂を頂きに行くか、宿泊することをオススメする。

ところで、脱衣所にはどうも暖房が入っているようで、独特の何とも言えないニオイがする(最初温泉のニオイかと思っていたが違うようだ)。夏の一番暑い時期である。窓を明けようにも無窓なので、廊下のドアを開けておくほかなかった。

       
 

宿の前には、山の涌き水と谷地湿原の展望台がある。豊かな自然の恵みも、谷地温泉の大切な財産だ。

400年の歴史をもつ温泉を、昔の風情を大切に保ったまま維持していくのはさぞかし大変なことだろう。
規模は小さいが、温泉を提供するスピリットは大規模温泉宿以上だ。空いているときを見計らって、ぜひ堪能してもらいたい。

       
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