7月の海の日の3連休を利用して、飛騨地方に向かうことにした。
岐阜県は本州の中心付近にありながら、県土のほとんどが山岳地帯で交通網が発達していない。
なので、これまで通ることはたまにあっても、目的地として訪れたことが無かった(乗鞍や御岳はあるけど、県境だし)

南端の岐阜市周辺を除けば、山道小道がいかにも豊富な広大な山岳&渓谷エリアなので、ワインディング三昧にはもってこい。
極端に雨の多い今年の梅雨空が唯一不安だったが、多少悪くてもせっかくの3連休を出掛けないで済ますわけがない。夏もいよいよ本番。弾む心を押え付けておくなんて、もはや不可能なのだ。

天気予報の確認もそこそこに、キャンプ道具一式をS2000のトランクに積み込んで、赤いスターターボタンでエンジンに火を入れた。

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朝4時出発。さすがに難なく環八は流れ、調布ICから中央道。
ホントは4時までに乗ったら深夜割引でお得なんだけど、毎日夜遅いし、体力消耗してまでそこまではね。。

とは言っても土曜の朝。ウカウカしてたら中央道は渋滞の坩堝と化してしまう。
5時くらいに乗って少し余裕あるくらいかな。6時以降に八王子付近はヤバイ。

楽なペースでどんどん西へ。朝の澄んだ空気の向こうに八ヶ岳が見えてきた。
韮崎から諏訪辺りまでの高原の中を走る区間は、高速ながら清清しい雰囲気で気持ちがいい。
   
                                     
     
                                     
   

岡谷JCTからそのまま中央道を南下する。どこまで高速で行こうか考えてたが、結局飯田まで来てしまった。

<<< 伊北IC付近でアコードユーロRとランデブー

飯田ICからは一般道。国道153号から国道256号に入って木曽路を目指す。

     

国道256号 清内路峠

確か走るのは2度目。昔過ぎて全然覚えてないけど。

R256に入ったとこで幌を開け放つ。まだまだ朝は早く、空気には清涼感が感じられる。

清内路峠は古くからの街道峠の趣。峠は長めのトンネルで貫かれている。
この峠を下れば、妻籠の宿場町だ。

           
                             

妻籠

AM8時。駐車場には1台のクルマもいなかった。

妻籠を訪れるのも2度目だが、せっかくなので早朝の宿場町を散歩してみることにした。

     

人っ子一人いないねぇ。。。
結構有名な観光地だから、休日は観光客でごった返してそうなのだが、そんな状況をちっとも感じさせない。

まだ低い朝の日差しで、路地は暗がりになっている。
夏の始まりの晴れた朝の澄んだ空気が、なんとも言えないくらい気持ちいい。

宿場町は、まだ現役の生活の場でもある。
ゴミを集める人や犬を散歩する人と軽く挨拶しながら、風情ある町並みを散策。
軒を連ねる家々には、旅籠の趣が非常に色濃く残る。
           
そんな路地空間を誰にもジャマされず、一切の喧騒の無い中で味わうことができた。
こういう瞬間って、遠くから来ておきながら自分がその町の生活に溶け込んでいるような気持ちになる。
 

たまたま立ち寄った町だけど、こういう所に訪れるのは、やっぱり早朝がイチバンだね。

朝の静寂に支配された宿場町を堪能した後は、国道沿いにあった喫茶店でモーニング。
朝から走り続けた疲れをしばらく癒してから、再スタートを切る。

国道19号を経由して、国道256号を更にトレースしていく。

     

国道256号 坂下〜福岡

坂下の町中で、先手を打って給油。
街を抜けると、国道は長閑な田舎道に変貌する。

オープンカーで行く農村トレッキング。走ってるクルマはもちろん自分だけ。いくら待っても、前からも後ろからも寄ってくるクルマは皆無なのだ。代わりに重機やら農耕機やらが当然の如く走って(!?)いる。

幸いおにぎりマークが途絶えることが無いので、道に迷って彷徨うことは無い。

<<< 途中現れる曲がり角はこんな程度

ある所では畦道だったり、ある所では農家の軒先をかすめていったり。

     

スピードは乗らず距離は稼げないものの、のんびり雰囲気を楽しみながら、ラリーの移動区間の如く走っていく。
ほぼ平行して走っている県道の方が走り易そうだけど、自分的にはこの道で全然OK。てゆーか、このゆる〜い雰囲気がなかなか気に入った。

   
                                         

そんなに走らないうちに国道257号に合流。さっきの国道より番号が1大きいが、こっちは本来の国道らしい道路。中津川と下呂を結び、交通量が多い。

何の変哲も無いただの幹線道路だが、個人的にはちょっとした想い出がある道路だったりする。
ここが生まれて初めてオープンカーの屋根を開けて走った道だから、というのがその理由。

クルマはしぎさんの黄色いビートだった。結構昔の事だが、あの時のオープンエアドライブとの衝撃的な出会いがS2000を相棒に迎える最初のきっかけとなっただけに、こんな道でも感慨深いモノがある。
   

国道256号 加子母〜東白川〜金山

加子母村の手前で再び分岐。またまたR256に進路を取る。

高速降りてからしつこいくらいにR256をトレースしている。この道は本日の目的地である郡上八幡も通過しているので、辿っていけばいずれは郡上に到達するという案配だ。

                                             
 
                         

しかしながら山間の狭路が大半の酷道(といってもカワイイもんですが)なので、単にトレースしていくだけでも結構走り甲斐はある。

地理的には、岐阜県の真ん中辺りを横断しているカンジ。
山間と言っても日本の中心付近だし、常時人の手が入ってる風景が連続する。比較的開けた集落を繋いでいく感じで、山深いという印象はあまり無い。

ちょっとした渓谷沿いの区間もあるが、これは珍しい方。地図から読み取れる雰囲気からして、紀伊半島や四国並みのワインディングを期待してたのだが。。(期待し過ぎ!?)

かと言って走っててつまらないわけでもなく、なんだか不思議な道路だ。

 

そんな感覚になるのも、オープンカーゆえなのかもしれない。ルーフを開け放って外気と一体になることで、これまで何となく通り過ぎてきたような道の味わい方が、いつの間にか変わってきているのかも。。

ツーリングの一瞬一瞬を瑞々しく体感させてくれる魔力が、オープンカーに備わっている気がする。

                             

やがて国道41号にブチ当たる。富山と名古屋を結ぶ、飛騨地方の背骨とも言える重要な幹線道路だ。
一旦南下して、白川の道の駅に寄って休憩する。この辺の名物の朴葉寿司を買って食べたが、特別美味い!というほどのものでもなかった。

結構長めに休憩した後、国道41号を戻る形で北上し、金山からまたまた国道256号に進路を取る。

                             

県道86号

ダム湖畔のワインディングに向かっていく。
左手にダム湖を見ながら、複雑な地形に沿って走っていく。

丁度昼下がりの一番暑い時間帯。まだ梅雨の真っ最中で昨日まで雨続きだったのに、この日は運良くカンカン照りで、日差しが刺すように容赦無く照りつけてくる。

幌を開け放して走り続けていると、だんだん体力を消耗してくる。真夏の日差しの下でのオープンドライブは過酷である事がこの時初めて認識した(笑

                                     

馬瀬の道の駅でぐったり。プチ日射病といった感じ(汗)で、水分補給に努めた。
何もそこまで無理してオープンすることもないだろうに。ねぇ。
久しぶりに最高の空の下でドライブできるもんだから、オープンにしなけりゃ勿体無い気がして。。
気持ち良いハズのオープンエアドライブがこれでは本末転倒じゃないのか。

この道の駅で白エス(前期型)に遭遇。無限マフラーを車止めにヒットさせていた。
さすがに幌は閉まっている。あなたは正しい(笑

                                     
ドライブ再開。県道86号を明宝村方面へ。屋根はオープン・・・っておい
懲りずにオープンドライブ続ける私。すでに修行状態(@_@)
   
               
 

狭い林間の道と田んぼに囲まれた山間の里が混在する道。

やがて峠道。急勾配の山道を駆け上がる。
峠の頂上で県道322号が分岐して和良村へと至っているので、これを利用して郡上方面へと向かうつもりだった。

                                                           
 

ところがいつの間にか頂上は過ぎ、勢い良く下るダウンヒルに様相がハッキリと変わってしまう。
分岐なんてあったかなーと思いながら引き返してみると、頂上付近に分かれて延びていく道が確かに・・・

見た限り、未舗装の砂利道である。こんなとこエスで走っていいんだろうか。
EK9ですら未舗装路にはムリがあった。ましてやエスは正真正銘のスポーツカーである。日本の道を問題無く走れるよう開発してある国産車とは言え、クルマの性格が性格だけに是非遠慮したくなる。

     
予定通りここに入るか入らまいか、しばらくその路面を眺めつつ考えた。

結局、挑戦することに決めた。(いいのか!?)

そろりと入り込んでいくと、イキナリの砂利道、であるが、所々舗装が残っている部分もある。あまりに交通量が少ないと、やがてこういうふうに風化していくのだろうか。

所々轍が凄かったが、腹を擦るほどでもなく、意外に走りやすい砂利道だった。極低速で走ってたけど、すぐに舗装路になった。一安心。
しかし、舗装が残ってるのが不思議なくらいの廃道寸前の道がしばらく続く。

木々に埋もれた狭路が延々と続いた。さすがにこんなとこ走るクルマもいない。
途中、道端に停まってた四駆のドライバー(何してるんだろ)に奇異の目で見られる。こんな悪路でこんなクルマが疾走していきゃそりゃ驚くわな。

その他には道端でテントを設営中の若者が2人いたのみ。
終始狭くて荒れた路面を慎重かつ大胆にクリアしながら、国道256号へと戻ってきた。

   
和良村から堀越峠を越え、タイトな九十九折れを下っていくと、いよいよ郡上八幡の町に進入する。
     

郡上八幡

飛騨の山中に忽然と現れる古都。飛騨山地の豊かな緑と水に囲まれた風情ある町と聞いていて、是非一度訪れたいと思っていた。

街に入ると、およそ街中を流れる川とは思えない程の荒々しい川縁を持つ吉田川を渡る。その風景はウワサ通りの水の都を期待させる。

直前に抑えておいた旅館にチェックインし、エスを近くの寺の駐車場に預ける。
古都の風情を存分に楽しむため、今晩はゆっくりこの街を散策することにした。

 
           

旅館で借りた下駄の感触に戸惑いながらも、まずは宗祇水に来てみた。

水の都郡上八幡を象徴する湧き水、宗祇水。社の真下からこんこんと湧き出る透き通った地下水が、すぐ前の川へと流れ去っていく。

 
<<< 宗祇水の至近にある老舗和菓子店「桜間見屋」。昔懐かしい感じの飴玉「肉桂玉」を製造販売している。とりあえず1缶購入。
                                   
>>> これはまた別の店。売ってるのは何だと思う?
実はコレ、食堂のディスプレイ用のサンプル。郡上八幡が発祥なんだそうだ。それがお土産品扱いで売っている。
改めて見ると異様な程リアル。種類は何でもアリ。これってやっぱり全部手作りなんでしょ?いい値段するもん。
 
                                   
                   
 
                     

街中を横断する吉田川を挟んで反対側にも魅力的な路地がある。
右の写真は「やなか水の小径」と呼ばれるスポット。新町通りから折れた小さな路地。玉石が敷き詰められた散歩道の脇には、湧き水が流れている。

丁度夏の夕方の訪問になったが、考えうる最高のシチュエーションだと思う。

路地に湧く水が可愛らしい水箱に溜められている。街の一角に湧き出る水が提供されているのだ。
水と生活が一体化し、それが当然の如く空間として現れている、そういう状態が残されているということに感動を覚える。
 
 
 

<<<「いがわ小径」

こちらはざんざんと流れる豊かな水量で、コイやイワナが泳いでいる。
家々の隙間の路地空間には、どこか昔懐かしい雰囲気がある。小さな頃走り回った小さな小さな隙間の路地。

                         
     
いがわ小径から薄暗くなった吉田川の河畔に出る。
街中でありながら、立体的なビジュアルの河川空間がそこにはある。
なんとなく不自然な景観に見えるのは、平地の都会に住み慣れてしまった証拠だろうか。
       
 

郡上八幡と言えば、水の都ともうひとつ、「郡上おどり」と呼ばれる盆踊りで全国的に有名である。
なんで有名かと言うと、夏の間30日以上町をあげての盆踊りが開催され、うち3日間は徹夜で踊り続けるという、半ば狂信的とも思えるイベントが脈々と受け継がれているからに他ならない。

この日はたまたまその郡上おどりの初日。徹夜ではないけれど、待ちに待った盆踊りが始まるという期待感が町中に満ち溢れていた。

   
         

盆踊りが始まるまでに少し時間があったので、近くの居酒屋で景気付け。家族経営の雰囲気のいい店だった。

20時過ぎに会場へと向かう。既に大勢の人だかりができている。
旧町役場のレトロな建物前の広場には、浴衣を着た踊り手たちが櫓を取り巻いている。
郡上おどりは誰が踊っていいとかそういうのは一切無い。とにかく踊りたい人が輪に加わって踊ればいいのだ(というふうに見えた)

盆踊りなんてやったことないし踊れるわけないんだけど、周囲の動きを見てると案外シンプルで簡単そうに見える。しかし、櫓で奏でられる曲?歌?によって踊りが何種類もあって、その都度振り付けが変わってしまう。そしたら覚え直しだ。

居酒屋でいいカンジに勢い付けてきたので、思い切って輪に入って踊ってみた。できるだけベテランっぽい(地元っぽい)オバチャンの振りを真似しながら何とか流れに乗る。(ちょっとずつ時計回りに移動してくんだよね)
やっぱりアタマで理解しようとせずに体動かしちゃった方が早かった。リズム良く跳ねるように動かせば、あとは流れで(笑

周囲の流れに乗って、輪の一部になれたと感じた時が気持ちいい。
郡上おどりはとにかく踊らにゃ損である。周りで指くわえて見てるだけなんて勿体無い。
みんな思い思いに流れに任せて体を動かしてるカンジだ。下駄を鳴らしてリズムを取る。手振りがよくわからなくても、何となくそういうリズムとシンクロできれば、それだけで気持ちがいい。

何パターンか踊って、再び外周から踊りを眺めていた。
老若男女関わらず、みんな思い思いに踊っている。櫓の周りだけでなく、いろんな場所で踊りが始まり、それを眺める人だかりができる。

オレンジ色の光に浮かび上がる郡上の夜は、まさに真夏の夜の夢。。。

ボーっと眺めてると、なんだか現実ではない異世界の空間に身を委ねているような気持ちになる。

何だろう、この感触、この居心地の良さは・・・

 
踊りの熱気とせせらぐ水路の音に囲まれ、夢見心地のまま踊りの夜は更けていく・・・
 
2日目 / Touring Top
 
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