夢が覚めた。

宴から一夜明けた郡上の町は、雨に濡れていた。
素泊まりゆえ、さっさと帰り支度をし、エスを迎えに行く。結構強く降っていて、荷物を積むだけでかなり濡れてしまった。

 

昨日うっかり古い町並みを楽しむのを忘れていたので、郡上を発つ前に寄り道をする。

職人町と呼ばれる通りには、特別歴史的な何かがあるわけではないのだが、街並みが作り出す独特の雰囲気が質素で趣深い。

郡上八幡は決して大きな町ではない。歩いて回れる程度の小さな城下町だ。
けれど、その町全体がごく自然体でこぢんまりと存在しているのが、却って印象に残った。

観光業に媚びるでも無く、かと言って古都の雰囲気を損ねるような何かが存在するわけでもない。
豊かな自然と文化が当たり前のように今この時間もバランスよく保たれて継続している。

結構いろんな町を訪れ見てきたが、郡上八幡は昨晩の幻想的な空間体験のこともあり、特別印象深い町として心に刻まれた。

                                     
  国道472号を北上する。
雨は強まったり弱まったりを繰り返している。

途中コンビニで名宝ハムを頬張り(濃厚で美味い!)、道の駅「明宝」で郡上みそを土産に購入する。
更に北上して飛騨美濃道路を通過すると、道は「せせらぎ街道」という洒落た名前のルートになる。
                   
せせらぎ街道

郡上から高山への最短ルートとなる県道73号。
道の駅「パスカル清見」を過ぎると、林の中の快走区間が始まった。
道は幅広の2車線で、緩やかなコーナーが時折現れるけど、基本的には直線的なルートである。
   

道のすぐ脇には渓流が流れる。川面の高さが道路面の高さに近く、川と並んで走っている感覚。これは奥入瀬のフィーリングに近い。

ただ、あちらが鬱蒼としているのに対し、こちらは空間的な広がりがあって開放感のあるルートだ。

森の中を走ってるというより、草原の木立の間を走ってるような感じに近い。こういうドライビングビューはちょっと珍しい。

雨でもそこそこ風情のある道路だ。晴れてるに越したことは無いけど。。
道も広いしあんまり走ってるクルマもいないし、飛ばそうと思えばいくらでも飛ばせそうではある。
けど、それも勿体無くなるような心地良い道なので、景色を味わいながらそこそこのペースで走る。

オープンで走れたらメチャクチャ気持ちいい道には違いないのに・・・(無念)
     

後半、後ろからシルバーストーンメタリックのS2000がくっついてきた。
向こうも先を急ぐでもなく、こちらからやや距離を置いてクルージングしている。
少しスピード上げてコーナーをクリアしてみたりしたが、無理してついてくる様子も無かった。

こういう時ってどうしても意識しちゃうよね。拘り無けりゃ乗れないクルマだから、オーナーなら誰でも相手を意識しちゃうハズ。きっと相手も黒エスなんてめずらしーとか思いながら、テールを眺めて走りたかったに違いない(と勝手に解釈)

     

国道158号に突き当たってせせらぎ街道は終わり。右に曲がれば高山まで目と鼻の先だが、そっちには行かずに左折し荘川村方面へと向かう。
このまま西に向かって油坂峠を越えて九頭竜湖、大野を経由して白山山麓方面に行こうかなと考えていた。

     
と・こ・ろ・が。
     

R158で走っている間に雨脚はますます強くなり、R156との合流点で給油した直後には、前が見えないほどの豪雨へとエスカレートしてしまった。幌を突き破ってきそうな勢いで落ちてくる水の塊に少々不安になる。

昨日の快晴とはエライ落差。水の都の心地良いせせらぎが脳裏に焼きついてるのに、同じ水でもこの暴力的な仕打ちは何なんだ!?

     
  電光掲示板には、「R156白川郷方面豪雨通行止」と表示されている。
これから向かうのは逆方向だけど、山深い場所には違いない。油坂峠越えも待っている。険しいワインディングが目白押しだ。
更にこの天候が回復するか調べてみると、今日も明日も降水確率終日100%・・・・・・・・・・

・・・そこまで条件揃えられてしまったら、一気にモチベーションが下がってしまった。
こんな天気の中、ドライブ続けても楽しくともなんともないじゃないか。

昨日のドライブと郡上八幡での幻想的体験で結構満足してたこともあり、ここであっさり旅の中止を決意した。
こんな経験初めてだが、せっかく初めて訪れるエリアなので、できれば条件のいい時に走りたいのだ。
   

気持ちを固めて、来た道を引き返す。
雨脚は全く弱まることを知らず、視界が著しく遮られる中、R158を高山方面へと向かう。

国道を走ってたクルマは、あまりの豪雨にほとんど路肩に退避していく。
自分は慣れっこなので、そのまま走り続けた。今走った道を引き返すだけだから、とっとと高山まで辿り着きたかった。

   
 
高山

帰ることにはしたけど、せっかくだから高山ぐらい散策していこう。

連休中日で市内はさすがに渋滞していて、駐車場までが一苦労。結局観光スポットからかなり離れた市営駐車場に駐車して街へと繰り出す。
   
  まずは腹ごしらえに高山ラーメン。何件も目にしたが、並んでいるところは避けて、ちょっとモダンな店構えのラーメン屋に入った。
高山ラーメンの本筋かどうかは知らないけど、結構濃い目のしょうゆ味。ちょっとイマイチだな。。。
 
             

高山は古い町並みや陣屋が集中していて、散策するにも都合がいい。
逆に言えば見るところが限られていて観光客も集中するので、賑やかで落ち着かないようなところもある。

高山は7年ぶりくらいかな。以前はEG4での訪問で、その時に一通り見るものは見ている。

今回は古い町並みの散策のみ。ただ、以前取りこぼしたみたらし団子と飛騨牛の串焼きだけは押さえたv(^ ^)v  

うまい具合に散策している間は雨が降らず、結構のんびりと時間を過ごしてしまった。

郡上八幡に行った後だと、どうしても人の多さに揉まれているような印象になってしまう。
古い町並みはほとんど土産物屋になっていて、あんまりその雰囲気の良さを伝えてこない。
やはり郡上八幡のような自然体の町でこそその良さが感じられるのであって、あまりに作り込みが過ぎるのは好みじゃないなぁ。

イイ町だとは思うんだけどね。郡上の後だったからそう思ってしまった。

 

高山からR158で安房峠方面へ。
乗鞍スカイラインが一般車を締め出して久しいが、この日は大雨でそれ以外の車両も通行止だ。

高山から平湯へ登るのは初めてだったが、なかなか豪快な景色を楽しめる。交通量は当然多いけど。

安房峠は旧道で越えるつもりだったけど、これも大雨通行止・・・・仕方無く安房トンネルを使って長野県へ。

上高地からは険しい渓谷をトンネルと橋でストレートにブチ抜く豪快なルートだが、数珠繋ぎでペースはイマイチ。有名観光地帯だから、ここは致し方ない。

R158を松本まで抜けるつもりだったけど、途中「サラダ街道」という表示があって、どこかで聞いたこともあって興味が湧いて、それに沿って右折した。

地図で確認すると、県道や農道を使いながら塩尻で国道19号に合流している。(ただしツーリングマップルではサラダ街道の名称は記載されていない)
前を走っていたレガシィB4が飛ばす飛ばす。気合の入ったコーナリングを披露してくれる。それならばと少しだけ付き合ってやったけど、そのうち分岐のひとつで行き先が分かれてしまった。

R19に出るとやや渋滞していたが、R20に入ると流れ出した。
既に時間は夕方で、そろそろ中央道に入るかなーと考えてたが、諏訪湖の周りって走ったこと無いので、塩尻ICは通過。

岡谷の登りは豪快で、峠を越えると諏訪湖畔。夕暮れ時で更に町中を通るので、流れはあまり良くなく少し長く感じる。
諏訪を抜けても何となく高速に乗る気にならず、そのまま20号を走り続ける。

茅野、北杜、韮崎とひたすら走り続けて甲府へ。

 
     
  甲府のドンキーで夕食をとり、さぁそろそろ中央道かというところで、いつもの如く小仏トンネル先頭の渋滞表示が。。
ってなわけで、結局高速には乗らずに甲州街道で東京入り。ホント久しぶりに大垂水峠をモロに越えた。

そう言えばどこからか全然雨の気配がないので、峠を越えた所で今更オープン(本日初)
八王子の夜の生暖かい空気を感じながら走り続けた。(結局、調布で雨が落ちてきてクローズド)
高井戸から環八。家に着いた頃には、0時をわずかに回っていた。
 
 
・・・・・・
 

当初3連休を利用して岐阜や福井を思いっ切り走ろうかと思ってたんだけど、梅雨前線に牙を剥かれて帰らざるを得なくなったのは残念。
しかし楽しい旅は無理してまでやるものではないし、できれば天気の良い日がいいに決まっている。
ましてや今回のルートは初めての道が多かったので、できるだけ良い印象を残すためにも、今回の判断は間違ってなかったと思っている。

予定の日程を縮小したツーリングは前代未聞で、普通なら心残りになってしまうところだが、今回に関しては充実感が残った。というのも、郡上八幡が想像以上に素晴らしかったからだ。

 

偶然にも訪れた日が郡上おどりの初日ということで、町全体が期待感で高揚している中、その伝統的な行事に参加し楽しんだのが、今までに無い経験だったし、なかなか楽しかった。
元来夏にまつわる様々な雰囲気が大好きな性分ということもあるが、盆踊りを取り囲むあの幻想的な空間が忘れられないくらい強烈な印象になって残っている。

非日常を体感するのがツーリングの楽しみのひとつだけど、まさにその非日常体験で、不思議な精神状態でその場にいたことが忘れられない。
盆には3日連続の徹夜踊りが催されるが、一体どんな雰囲気なんだろうと思うとゾクゾクしてしまう。

 

また、せせらぎ街道が気持ちがいい道路であることは今回の天候の中でも十分推測できたので、今回断念したワインディングと共に、また季節を変えて再訪したい。

そんな宿題を残したことによって、新たな楽しみが増えた今回のツーリングだった。

 

おしまい

 
1日目 / Touring Top
 
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