翌朝は軽く寝坊(爆
中日であるこの日は、エスを置いて徒歩で京都巡りを楽しむことにしていた。(今回も「ツーリング」から遠のくのか?(汗)
ホテルから前夜に手配していたタクシーに乗る。
目的地へ他の交通機関が無かったし、見学予約時間の拘束もあったから、贅沢にもタクシー。
朝起きてみたら、昨日からの雨がさらに強くなって降り続いていて、タクシーは結果的にはベストな選択だったような気がする。
                             
                             

目的地までは、タクシーの運転手と話をしてたら、あっという間に着いた。
昨日の桂離宮に続き、本日も離宮でスタート。

辿り着いた修学院離宮は、住宅地の中に唐突に現れた。
元は田園地帯だった所に離宮ができて、そこに里ができたのだろうけど。
にしても、こんな生活臭のする町の中に歴史的価値のあるスポットが潜んでいるところが、いかにも京都である。

修学院離宮も桂離宮同様、事前に拝観予約が必要で、この日の最初の時間帯である9:00に予約を入れていた。
一番乗りだった。時間が近付くにつれて人が増え、結局昨日同様の大所帯になった。

受付をして、やっぱり昨日同様ガイドの後をついていくスタイルで拝観が始まる。
違ったのはガイドその人で、昨日のような雅な口調の職員ではなく、どこにでもいそうなご老人だった。(たぶんボランティア)

 
           
 

修学院離宮とは、17世紀の江戸時代に後水尾上皇が建設した山荘である。
当初から山麓の上と下の2ヶ所に分けて建物を建築したが、後に上下の中程に増設した離宮を加えて、現在は広大な敷地内に3ヶ所に散在する建造物と、庭園及び農地を、修学院離宮としている。

ちなみに、桂離宮造営からは、約30年程後の造営になる。

                           

強く降りしきる雨の中、傘をさして隊列組んで、まずは下離宮から見学する。

下離宮にある建物らしい建物はひとつだけだった。「寿月観」と名の付いた数寄屋風の御茶屋がそれ。

 
                 
  杮葺きの入母屋と寄棟の屋根が、鉤状に交わる建築全体の形態は、安定感と存在感を兼ね備えていた。

一の間の床の前にある三畳の上段は、位の高い人、つまり上皇が座る位置。

数寄屋風とか言いながら、桂離宮の茶屋のような、遊びまくり!な弾け方は見られず、凛とした筋が一本通っていて、わずかばかりの緊張感が漂っているようにも見える。

       

下離宮はわずかにそんな程度で、次の中離宮へと隊列は進んでいく。
さっき書いたように、離宮は大きく3ヶ所に分かれていて、その間を松並木の小径が繋いでいる。
周囲は田園地帯となっていて、今も耕作が行われてる。ここは離宮の中なのに?

周囲の農地は、修学院離宮の景観を保全する為に、宮内庁が買い上げた土地。その土地を、一般の農家に耕作してもらっているらしい。
周囲の田園風景あっての修学院離宮の風景ということなのだ。

           

中離宮の「楽只軒」。
珍しく瓦葺きの建物が出てきた。簡素な設えのこの建築は、内親王、つまり女性皇族(上皇の第八皇女)の住まいとして建てられたもので、上皇没後、内親王が出家した為に、林丘寺という尼寺として長い時間を経てきたそうだ。

 
                   
   
 
               
楽只軒に繋がるようにして、お寺の本堂のように堂々とした「客殿」がある。ここの内装は打って変わって見所が多い。

まずこの優雅な違い棚。(柱がかなり邪魔ですが(滝汗
霞棚と呼ばれるこの棚は、桂離宮の桂棚、三宝院の醍醐棚とともに、天下の三棚と称されるほどに有名な芸術的設え。
霞がたなびいているように見えるところからきている名称だと思われ、実際その優雅なデザインに目が釘付けになる。

 

違い棚だけに目を奪われそうだが、実はその周辺もまた興味深い。
地袋の襖絵が友禅染だったり、引手が羽子板の形をしているのが、なんとも雅な印象。さすが女性皇族の住まいといったところか。
この客殿の内装を見渡すと、襖絵はもちろん、引手や釘隠しの意匠が細かくデザインされていて非常に美しい。

そして右の写真の杉戸に描かれた鯉。
鯉の他に山鉾の絵も目立つが、このエネルギッシュな鯉の絵の逸話が面白い。

描かれた鯉があまりにリアルなもんだから、夜な夜な杉戸から飛び出して床を跳ね回るもんだから、後から網の絵を書き足したんだとか。(その網の絵を描いたのは、かの円山応挙とか)
それでも鯉の活きの良さによって、所々網が破けてしまっているらしい。。(^ ^;

     
 

中離宮はそのくらい。再び隊列を組んで、最も奥にある上離宮を目指して松並木を歩いていく。

途中の田園風景も趣あって美しいけど、立ち止まって鑑賞することが集団行動上難しいので、スルーする他なかった。

上離宮のエリアに入って石段を上っていく。両脇を刈込みで遮られて、意図的に視界を制限するデザインが施されているようだ。
最終的には左の写真の「隣雲亭」という建築に辿り着く。

     

隣雲亭からの眼下に広がる景色が素晴らしい。
大きな池に浮かぶ島の形や、見事な庭園植栽にも目を奪われるが、背景となる山々を借景としたスケール感にも肝を抜かれる。洛北の山々が池の背後に積層していて、風景に一層の奥行き感を与えているのだ。
左手には、山々に挟まれるようにして京都の市街地が広がっているのを遠望することができる。それはあたかも海原のように見えてくる。
後水尾上皇が意図した雄大な借景庭園のグランドデザインを一望できるのが、この場所なのだ。

隣雲亭に目を戻してみる。簡素な建物で、床の間も何も無い。ただスケールの大きな借景庭園の眺望を楽しむだけのためにあるような感じだ。

強いて言えば、非常に軒が深いのが変わってるってことくらいだろうか。

     
その軒下の意匠が粋。漆喰の土間に小石を一つ、二つ、三つと組み合わせて埋め込んでいることから、「一二三石(ひふみいし)」と呼ばれているそうな。
赤い石は鞍馬石、黒い石は賀茂川の石だとか。花びらが描かれているようで凄くカワイイ。
                           

隣雲亭は小高い丘の上にあるので、庭園に向かっては斜面を下りていく格好になる。
その途中に池へと流れ込んでいく小さな滝を見つけることになる。
街の喧噪から遠く離れた山麓の借景庭園は静寂が支配してそうなイメージがあるが、実際のところは常にせせらぎの音楽が耳に届いている。

視覚のみならず、聴覚までをも計算に入れた庭園のデザインに、一層の感銘を受けることになった。

 
     

眼下に見えていた池は「浴龍池」という。
池の真ん中に浮かぶコケに覆われた島が風流の極み。そこに植えられた樹木の1本1本が計算づくで配されていることは、もはや言うまでもない。

この池越しの眺望として最大のハイライトと言えるのが「西浜」が右の写真だ。

残念ながら、更に強くなりつつある雨脚によって、まったくその良さが伝わらない薄暗い風景となってしまったが、普段であれば、池越しに空に浮かぶ樹木が独特の眺望を形成しているのは想像に難くない。
一見不自然にも見えるくらいの特異な風景。水面と大空の狭間に浮かぶ緑の樹列。不思議な眺望ながら、その宇宙的な雄大さに心惹かれる。晴れた紅葉の季節の夕刻、水面に映る色鮮やかな木々とオレンジ色に染まる空の共演はどんなに素晴らしいだろうか。。。

修学院離宮のベストシーズンは、間違いなく紅葉時期だ。素晴らしい庭園美からそう確信した。
建築に関しては桂離宮ほど印象に残るものではないが、庭園そのものに関しては恐ろしいまでのコダワリを感じる。付近の山のみならず、京都の街そのものまでも庭園の一要素として組み入れているのだから。

昨日同様、残念ながら雨の中の散策になって、集中して鑑賞することができなかったのが残念なところ。
さらに、桂離宮同様、ガイドが引き連れての見学になるので、ゆっくりと鑑賞するのも実は難しい。(もたもたしてると皇宮警察に追い立てられる)
システムとしては(宮内庁管轄という特性上)ある程度仕方無いので、その範囲内でどれだけ味わうことができるか。

やはり季節を変えて、何度か足を運ぶ必要はありそうかな!?

【修学院離宮】
京都市左京区修学院藪添

拝観時間:事前申込制、土日曜休(季節によっては土曜日はOPEN)
拝観料:無料
駐車場:無し
撮影:OK!(やっぱりゆっくり撮れる雰囲気じゃない)
※拝観には、宮内庁参観係に事前申込が必要。桂離宮と同じ。当日までの手続きが七面倒くさい。

 
いよいよ洛中へ!
 
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