修学院離宮の拝観を終え、叡電修学院駅まで歩いた。前回京都を訪れた時も、曼殊院から修学院駅まで歩いている。

修学院駅から出町柳駅まで叡電、そこから三条まで京阪で移動。
京阪三条駅から地上に出たら、雨は傘をささなくてもいいほどになっていた。

古都の風景に馴染む木製欄干の三条大橋を渡り河原町方面へ。

 
  橋を渡ってすぐの三条通沿いにある、ほうきとタワシの専門店、内藤商店
     
 

店内には、マジでほうきとタワシしか売ってない感じで、こんな生活用具専門店が軒を並べてる辺り、いかにも京都らしい。

ほうきやタワシなんて、普段の生活で使うことも無くなって久しいが、こういう専門店で、高品質な品物を改めて手に取ってみると、その繊細さや機能性を再発見することがある。
思わず机上用にと、職人手作りのミニチュアほうきを買ってしまった。

                       
                                               

内藤商店から出た頃には、降っていた雨は完全に止み、木屋町まで来た頃には日が射してくるまでに空模様が急変。さっきまでいた修学院離宮ではあんなに本降りだったのに。

 

木屋町からまた三条通に戻って河原町を越え、寺町通へ。その辺をプラプラして、やがて錦市場に出た。
京の台所として名高い錦のアーケードは、そぞろ歩くだけでも十分楽しめる。

錦にあるのはなにも食材を売る店ばかりではない、金物屋やら刃物屋やら、生活品の専門店も数多く建ち並んでいる。
先程の内藤商店のように、ちょっとした生活用品の専門店が多く存在し、生活の中で忘れかけていたモノの良さを再発見できるのが、京の街散策の面白いところである。

モノの伝統が受け継がれる街並み。歴史的な景観は、こういった街の人々の生業(なりわい)がベースになって、初めて意味あるものとして存続されるものなのかもしれない。

 
                                                 
 

そうは言っても、長い年月存続して街の景観を保つものとして重要になるのは、街並みを直接形成する建築物であるということは否定できない。

商人宿としての建築形態を今に遺しているお宿「近又」は、錦市場と四条通に挟まれた路地にある。
そのファサードは、近代的なビルに挟まれる格好になりながらも、雅な古都の歴史と文化を表出し、周囲一体に独特の空気感を醸し出している。

近江商人の定宿として江戸時代に始まった「近又」は、現在も町家宿として営業を続けている、歴史ある京都の街でも有数の由緒ある宿だ。
創業は1801年というから、なんと200年もの歴史を持つ。現在のご主人は七代目。建築は現在の場所に移ってきてからのオリジナルで、築100年以上になる。

 

当然?こういった宿に宿泊することができる人は限られている。
しかし僕のような一般人でも、食事するだけであれば、体感することを許されているのだ。「近又」は京懐石の名店でもある。

今回の旅では、何とこの名旅館「近又」で、昼懐石を事前予約しているのである。(嗚呼、なんて贅沢)
初めての懐石料理に緊張しまくるのであるが、興味はどっちかってゆーとこの京町家そのものだったりする(^ ^;

 

玄関先で七代目当主の出迎えを受けた。
中に入ると、そこからはもう、ほのかな灯りと陰影が支配する京町家の世界。

いきなり目に入るのは、ベンガラ色の土壁と、真円状の飾り窓。竹細工の飾り窓は、京町家の格式と風情を期待させる繊細なデザインだ。

                     
   

奥の客間へと通される途中の廊下も薄暗く、伝統的な空間の趣を感じさせてくれる。

小さな壺庭を回り込んで、階段下から小さな座敷へと通された。
近又は決して大きな建物ではない。部屋数も限られている。本来生活の場である京町家そのものが、近又というもてなしの空間なのだから。

小さな縁を挟んで庭に面した客間へと案内された。
歴史ある懐石宿の格式をこれ見よがしに感じさせない普段着の生活空間。
高価な調度品が置いてあるわけでもない。かといって、100年以上も建っているがゆえのボロさを感じるわけでもない。

古いことは古いのだが、それより職人技的な繊細さがそこかしこに感じられるところに心奪われる。

 

女将(美人)の話では、やはり古い昔ながらの町家なので、断熱とか遮音とか、通常の宿に求められる性能を確保するのは難しいとのこと。
ただ、この町家の風情を大切に守っていきたいから、風情を損なうような改修は敢えてやらないでいるのだという。

隣の広めの座敷では、団体様が賑やかで話の内容も鮮明に聞こえてくるほどだった。障子一枚、土壁一枚で遮られているだけだし当然のことである。

それ以上に、この風情と伝統美が何よりの目的でありご馳走なのだから、女将の話にはまったくもってして共感できるのだ。
近又の昼懐石をいただく。京懐石どころか懐石料理自体食べたこと無いので、ドキドキである。作法とかあるのかな?(爆
・・・というような心配をよそに、リラックスした雰囲気で順番に出される料理を味わうことができた。
とにかく見た目が美しく、さらには見た目に負けないくらいに美味。ちょうどひな祭りの季節だったこともあって、それをイメージした料理が次々と出てきた。食材と盛付けで季節と行事を表現。季節に敏感な京の都の食文化を凝縮したような内容に大満足だった。
   

最後に七代目当主が部屋まで挨拶にやってきた。
女将にしろ当主にしろ、とにかくこの建物が近又の命であり、維持していかなければならないもの、という意識が言葉の端々に現れる。

古い建物には今のような便利さは無いかもしれないが、それ以上に文化的価値とか、心休まる風情とか、豊かさといったものがある。維持するのが大変でも、そういったものを大切にしていかなければならない、という気概がありありと感じられる。

京懐石という食文化はもちろん、町家や伝統文化に興味があるなら、是非立ち寄りたい名店。
最後に店を出るときも、外までお二人のお見送りを受け、まるで宿泊でもしたかのようなもてなしを最後まで受けてしまった。
様々な面での「本質」を体感できると思えば、こんな贅沢もまったく無駄ではないと思うのだ。

【近又】
京都市中京区御幸町四条上ル
電話:075-221-1039
定休日:水曜
駐車場:無し
撮影:確認してないけど、常識の範囲内ならOK?
※宿泊だけでなく食事も完全予約制。HPから予約できます→http://www.kinmata.com/

・・・・・・・

 

外はすっかり青空となり、午前中のあの雨は何だったのかと思わずにはいられないほどの晴天になっていた。

御幸町通りを北上して三条方面へ。
三条通界隈は、町家を利用した小粋なショップが多く立ち並んでいる。
その中のひとつが、左の「遊形サロン・ド・テ」。有名旅館「俵屋」がプロデュースするカフェ。その奥には、同じく俵屋が宿で使用しているグッズを扱った「ギャラリー遊形」。俵屋は敷居が高過ぎても、こちらは安心して(?)見ることができる。

御池通を渡って、寺町通をさらに北進。この通りにも小粋なお店が多い。

その中の一店、一保堂茶舗。デパ地下で見かけることも多いお茶のお店の本店がここ。
玉露や煎茶等の日本茶が、様々なグレード別に売られている。

                   
 

内部の様子はこんな感じ。さすがは老舗中の老舗、風格がある。三角巾を被った店員さん達が多数、テキパキ動いているのが印象的。

奥には喫茶室があって、扱っているお茶をじっくり味わうこともできるらしい。(結構混んでいる)

 
                                                 
 

その後も寺町通界隈を歩き回る。三条通と寺町通は前回もレポートしてるけど、いろんなお店が潜んでいる感じで、歩いていて実に面白いエリアなのだ。つい足が向いてしまう魅力がある。

そんなこんなでちょっと休憩したくなって訪れたのが、寺町通三条上ルのスマート珈琲店

                           
     
ちょっとだけ昔にタイムスリップしたような、喫茶店らしい喫茶店だ。
こういうサロン的な空間で美味しいコーヒーが飲めるのも、自分にとっての京都の魅力のひとつかも。
                                       
  コーヒーのみならずホットケーキまで頼んでしまった。
周りもみんな食べている。フレンチトーストもウマそう。
これぞ元祖って感じのオーソドックスなホットケーキのウマいこと!
人気があるのもわかる気がする。(実は並んで入店)
     
 
                                   
 

スマート珈琲店のおやつに満足した後は、蓄えたそのエネルギーに任せて一気に祇園まで歩くことにした。

←んで、いきなり祇園白川。
祇園とは関係ないけど、天気が良くなってから急にクシャミが止まらなくなってしまって困った。もちろん花粉症なわけだが、今年はラク、とか思っていた矢先に、こんな旅先で発症したのには参った。。

そんなわけで、祇園新橋の通りもチリガミ片手に散策と、何ともカッコつかない状態なのである(笑

来てみて気付いたけど、そういえば祇園新橋って随分長いこと来てなかったなぁ。すごく久しぶりに歩く気がする。新鮮だ。

新橋は、歴史ある「御茶屋」街で、その風情が今も街並として色濃く残っているので、伝統的建造物群特別保存地区にも指定されている。
1本南側路地は、白川沿いになる。
その白川南通と新橋通の間には人一人が通れるくらいの極細の路地が通ってたりしていて、反対側の路地から舞妓さんの姿をチラ見するのなんていう、ちょっとマニアックな(笑)風情を楽しむことができる。
白川南通から切り通しを通って、四条方面へと歩を進めることにした。
       
                           

四条通に近付くにつれて人通りは多くなる。四条通そのものは相変わらず激しい人混み。
すぐに花見小路に入るも、建仁寺へと続くこの道も祇園のメインストリート的な位置付けから、多くの人でごった返していた。

今回の旅は、桜でも紅葉でもお祭りでもない、つまり京都が特別混む時期ではない時に訪れているのだが、さすが国内一の観光都市なだけあって、いつ来たって人の数は凄いのだった。

   

そんな花見小路に面したガレージで、一際目を引き、思わず声を上げてしまった「名車」。
祇園のメインストリートで、なんとHONDA S800。しかも2台。

燦然と輝くレッドとホワイトの両ボディ。メッキ類やタイヤ、ホイールもピカピカ。状態の良さを彷彿とさせる。
よもや祇園でエスのご先祖に会おうなんて思いもよらなかった。

それにしても祇園とエスロク、カッコいいコラボだなぁ。

祇園の古刹、建仁寺に拝観に来てみた。今回の旅では、お寺関係はできるだけ省こうと思っていたが、やっぱ京都となるとどうしても足向いちゃうな(^ ^;

・・・が、内部拝観は既に終了してしまっていたorz

仕方無いので、境内を散策するだけしておく。

 

建仁寺から南側は、祇園の喧噪がウソのように静か。
ここから更に歩き回って、京都ならではの「路地」散策を続けてみた。

←は「あじき路地」という袋小路の路地。
見ての通りの細い路地に沿って長屋が連なっているが、この長屋にはちょっとした特徴がある。

長屋の大家さんが住人を公募したところ、アトリエ兼店舗のような使い方をする住人が自然と集まって、小さな芸術村みたいになっているのだ。

そのあじき路地の1本北側にある路地は、東西に通り抜け可能な路地。しかしその狭さは、まさに軒下感覚で、縁もゆかりも無い人間が通るのは、正直躊躇ってしまうほど。

しかし、京都ではこういった路地は、地域の生活道路として定着しているもの。静かに、その雰囲気を噛み締めながら通り抜けてみる。

 
     

路地から通りに出る所はトンネル上になっていたが、通りから振り返ってみると、普通の住宅の一部が路地によって貫かれるという、何とも不思議な光景。これも京都の街並みではごく普通!?

宮川町のお茶屋街をそぞろ歩く。そろそろ夕刻も近くなり、舞妓さんの姿もちらほら。
                   
 
鴨川越しに見る河原町方面の街並み。随分歩いたし、またコーヒー飲みたくなってきちゃったなぁ。
 

てなわけでやって来たのは、河原町阪急の裏手にある喫茶店フランソアである。

この喫茶店、通りからはほとんどその内容を伺い知ることができないので、元々知ってるか、看板に小さく書かれている「喫茶」の文字で判断して意を決するかじゃないと多分入れない(笑

店内も外観に違わず謎が多い(笑
凝っているというより、昔のハイカラな喫茶室がそのまま残ってる、っていうのかな。

しかもこの雰囲気で、ウェイトレスが全員、地味ーーな感じの女の子(爆)で、その上、修道女みたいな制服着てるから、フランソアワールド全開って感じである(笑
意図的なのか、凄いコンセプト貫き通してる気がする。

出てきたコーヒーは、雰囲気から比べれば至って普通。スプーンと角砂糖がレトロな感じを醸し出してるくらいか。
スマート珈琲店の客層が年配中心だったのに対して、ここは逆に若者しかいないのも、何だか不思議。(河原町だってこともあるだろうけど)

そんなナゾな喫茶店なのである。(結構気に入ってますが(^ ^;)

 
 
魅惑の(!?)夜の京都散策へ
 
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