陽はすっかり傾いて、京の街が夜の帳に包まれるのも時間の問題になってきた。 フランソアから出て四条大橋を渡り、再び祇園を目指した。宵の祇園の風情が見たくなったからだ。 ますます多くなった人通りをかき分けて、祇園新橋へと向かう。 |
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新橋のお茶屋や料亭には灯りがともり、街並みの風情はより一層魅力的なものに変化していた。 不思議と新橋は人通りが少ない。一般人には関係の無さそうな店が建ち並んでいるからだろうか。 |
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灯りと陰影のほのかなグラデーションには、ただただ見とれるばかりである。 |
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巽橋から白川を臨めば、宵の風情は一層の美しさとなって、感性に訴えかけてくる。 たった数時間前に訪れたばかりの場所だが、時間が変わると全く異なった表情を楽しむことができる。夜に華やぐ祇園の街は、闇に溶け込みつつある時間が一層魅力的になる。 |
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新橋界隈を何度も行ったり来たりしながら楽しむうちに、周囲はすっかり暗くなってきた。 | ||||||||||||||||||||||||||
先程と同じように、花見小路の方に来てみた。相変わらず人は多い。 | ||||||||||||||||||||||||||
そんでもって、また見入ってしまった(笑 |
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表通りは人が多いので、中通りへと入り込んで歩いてみることにした。 祇園という街は、花街だけに外からはどんな店なのかというのは伺い知れないのが普通だ。しかし近年、既存の町家を利用したレストランや雑貨屋等、一般の人でも利用しやすい店が劇的に増えてきているように思える。 伝統的な町家というのは、寒くて暑くて使い難いという固定観念から、価値観が少しシフトしつつあるのだ。 |
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僕が歴史的な建築とか街並みに興味を持ち出した頃は、まだ町家をコンバージョンするとか、そういった流行はほとんど見られなかったように覚えている。 それが近頃、その良さが再発見されたのか、古い建物を個性として、上手く再利用した事例が急激に増えてきている。町家に住みたいという人もかなり多数いるようで、本やWebでその関連の情報を目にすることが本当に多くなった。 どんな理由であれ、街並みを維持することに繋がる流れだし、街に新たな息吹を与えるという意味でも面白い傾向だ。 |
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祇園にも町家の姿をしたイタリアンレストランとか、そういった形態の店というのは少なくない。 |
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祇園を後にして、東大路を渡って東山にやってきた。今日はとにかく歩く歩く。 東山では「花灯路」という寺院の夜間特別拝観とライトアップのイベントが始まっていた。前日に始まったばかりだったので、この日が初めての週末の夜ということもあり、人出の多さは予想以上だった。 |
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八坂の塔の裏手を進み、二年坂と合流して、産寧坂を歩いていく。両脇に土産物屋が立ち並ぶ坂道には、びっしりと人波が。。 日が落ちるとともに急激に寒くなって、カイロがないと手がかじかむほどだが、この雰囲気はまるで夏祭りにでも来ているかのようである。 |
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平凡とは思いつつも、訪れたのは清水寺。 あまりにフツーに観光地過ぎて長らく訪れていなかったが、今回は花灯路のエリア内で、夜間に拝観ができるというので訪れてみたのだ。 |
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清水寺って修学旅行の定番的観光地のイメージが強過ぎるけど、一体どんな寺なの?って思ってる人のために。 発祥は西暦780年、坂上田村麻呂が観世音菩薩を安置するお堂を建てたのが始まりとされている。 |
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本堂は多くの伽藍のひとつに過ぎない。 縁結びが目的の方は地主神社に向かうだろう(笑)けど、最終的には「奥の院」へと向かうはず。 |
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ミーハーだなとは思いつつも、やっぱ清水に来たらここから眺めずにはいられなかった。 京の都に浮遊する舞台は、本来、観音様に能や踊りを奉納し、楽しんでもらうためのものらしい。 ちなみに、屋根の上のレーザービームみたいなのも、ライトアップの一部。 |
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清水寺拝観後、混雑した坂道を戻って、高台寺へとやって来た。 高台寺は秀吉の妻、北政所が建立した寺。秀吉の死後、その霊を弔うために建立したという。 徳川家康の莫大な援助によって、豪華絢爛な大寺院だった時期もあったらしいが、現在は多くが消失して今の規模になっているそうな。 |
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しかし、既に権力者となっていた家康は何故、秀吉の妻の寺を保護し、財政援助まで行って栄えさせたのだろうか。 | ||||||||||||||||||||||||||
賑やかな人気観光スポットとなった今日の高台寺に、かつての歴史ロマンは感じられるだろうか。。 | ||||||||||||||||||||||||||
方丈庭園の人だかりの先には、お化け屋敷みたいなライトアップが待っていた(笑 時間と共に照らすライトの色が変化していく、動きの楽しめるライトアップだが、なかなかに大胆な色使いである。 高台寺と言えば枝垂れ桜が有名で、過去に桜の時期に訪れたことがあったが、この桜だったろうか。。。よく覚えてないなぁ。 |
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拝観ルートは境内を一筆書きで歩いてまわれるように、しっかりと設定されている。 それが一層観光地っぽさを出していてイマイチ興醒めになる原因だが、水面に映し出された木々のライトアップとか、美しい風景も所々に散らばっているから見逃すことはできない。 |
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小堀遠州作と言われる庭園の一部となっている開山堂の内部。写真は撮影禁止なのだが、気付かずに撮ってしまった(笑 このお堂は、華麗な装飾が内装を彩っている。 |
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拝観路の最奥には、「傘亭」と「時雨亭」という茶室建築が並んでいた。どちらも千利休がデザインし、秀吉が愛用した茶室で、伏見城から移築したもの。 | ||||||||||||||||||||||||||
とにかく個性的な建築で、一見、秘密基地みたいな形状をしているが、稀代の美意識でその後のトレンドを変えてしまった利休のデザインエッセンスを垣間見ることができる。 |
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口悪く言えば、本当に掘っ建て小屋みたいだけど(^ ^; 簡素な構成によって素材の良さを引き出していることはわかるが、残念ながら内部に入ることができなかったので、利休デザインの最大の特徴であるミニマム空間を感じることまではできなかった。 |
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この時代に利休が世に送り出したデザインの潮流が昇華して、桂離宮のような名建築が生まれていったのだ。 ・・・・・・・ |
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ちなみに「花灯路」って、路地脇にこんな感じの行灯を並べて街をライトアップして夜の京散歩を楽しもう、ってとこからきている(と思う)。 それと加えて、エリア内の主な寺院が夜間特別拝観を行うので、桜の季節にはまだ早過ぎるのに、夜の東山はごった返すのだ。 |
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今回この花灯路を狙って京都に訪れたわけではないのだが、たまたまこのイベントが始まる週末と重なったので、訪れるつもりがあまり無かった東山に足を向けている。 | ||||||||||||||||||||||||||
ちなみに花灯路は、春と秋の年2回行われているらしい。 | ||||||||||||||||||||||||||
高台寺横の「ねねの道」や「石塀小路」周辺を縦横無尽に歩き回る。 残念なのは、しっとりした風情のある小さな路地も、人でごった返してて静かに楽しむなど程遠い状況。週末でなければもう少しゆったりと歩けるとは思うのだが。。 |
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ザ・知恩院も燃え上がるが如くライトアップ。 しかし、昨年訪れてるので今回はパス。知恩院前を通り過ぎて、神宮道を北へ。 |
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やがて、通り沿いの土手に青蓮院のクスノキの大木が見えてきた。 既に21:00を過ぎた時刻に見る、毅然としたその巨体を光の中に浮かび上がらせた情景が視覚と心に突き刺さる。 |
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木の精霊が、現出してきたかのような色彩と形態。 これは本当に現実の姿形なのか・・・ |
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青蓮院の門前で、仁王像の如くその聖域を護るクスノキの巨木たち。 この圧倒的存在感には、グゥの根も出ない。 |
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そして青蓮院である。 |
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華やかな観光資源こそないものの、さっきのクスノキの巨木の群落のように、ちょっと玄人好みする寺院である。 |
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いくつものお堂が廊下で繋がれている青蓮院。 模擬の写真は小御所というお堂の内部。名前からして天皇が住んだ建物かな? |
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拝観ルートに沿って歩いていくと、やがて庭園に出る辺りは高台寺と同じ。池の周りを一回りするようなコース設定になっている。 庭園のディテールは暗過ぎてよくわからない。ライトアップによって浮かび上がっているお堂の情景を楽しみながら、庭園の小径を歩いていく。 |
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庭園に面した「華頂庵」を外から眺める。 そのお茶をすすりながら、夜景庭園を眺めるのが趣旨だろう。 |
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この辺のお寺には竹林はつきものなのか?それとも自生しているだけ?高台寺にも同じような竹林に、同じようなライトアップが施されていた。 これはこれで幻想的。かぐや姫でも潜んでいそう(笑 |
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国宝の青不動明王である。 不動明王とは、大日如来の化身で、大日如来とは曼荼羅の中心にいらっしゃる仏様。曼荼羅の中心にいるということは、全てを司る中心的存在ということで、その化身の不動明王は、古来より厚く信仰されてきた。 青蓮院の「青」ってこの青不動からきてるものなのかな?あ、もしかしてここも撮影禁止だった??(爆 |
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一番最初に入ったお堂の前の庭園側に出てきた。 ここでも時間によって移り変わる動的なライトアップが行われていたが、何らかの脈略があるらしく、案内文を読んでみたが、難しくてよくわからなかった(爆 |
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ただ、ここでも基本は「青」で、写真には写ってないけど、青色LEDを用いた光の演出が行われていた。 ・・・・・・・ |
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青蓮院を出る頃には、22時になろうとしていた。 青蓮院から三条通に出た。 結局、今日はランチで贅沢したので、ディナーはパスするか、という結論に達し、地下鉄東山駅まで歩いて、ローソンでカップ麺を買って、地下鉄で宿に戻った。 実に濃密な一日だった。 |
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