新潟〜富山 冬の日本海を堪能する旅

 

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鉛色の世界

冬の日本海をドライブする。これはかなりマニアックなドライブだ。
北の海岸の冬は日照時間が少なく、常に曇っているような気象。身を切るような海風。湿気を多分に含んだ重くもっさりとした雪。荒れ狂う海原と波飛沫。目に入る色彩がとにかくグレー。モノクロなのだ。
こんな重々しい空気の中を、誰が好んで走りに行こうものか。。

しかーし、冬の日本海でしか味わえないモノがある。この息の詰まるような空気の中、突き進んで得られるモノがある。

もうとっくの昔に忘れ去られていると思われるが、こう見えても私は富山県出身である。幼少の時期をこの「鉛色の世界」で過ごしたのだ。
そして誰もがそうであるように、離れてみて初めて自分が育った環境の特異性に気付いた。
小さな頃は当然の景色として捉えていた立山連峰。海沿いの町からでも鮮明に迫って見えた。

あの景色をもう一度見たい。日本海に面した地で得られる素晴らしい景色。もう一度、この目で確かめに行こう。

仙台から富山・・

そんな欲望を抱きつつ旅立つ。出発は仙台。久しぶりのロングツーリングに興奮して前夜はマトモに寝られず、夜中の3時半には出発してしまった。いつまでたっても子供のような私。。

仙台から富山に至る(しかも真冬に)。このルートをぱっと想像できる人はかなり走り慣れたお方だろう。
まず、直接最短距離でアプローチするルートがない。太平洋側から豪雪の山形あるいは会津の山中を越え、日本海に至ってこれまた豪雪の越後平野をひたすら西に行く必要があるのだ。この時点で多くの人が「せめて夏にしよっと」と諦めるだろう。
今回設定したルートは、仙台から笹谷峠で蔵王を越えて山形に入り、南陽経由で小国街道に沿って新潟に抜け、後はひたすら日本海沿いを富山に向かって走るというもの。(下の地図参照)
予想では、富山まで500〜600kmってとこか。天候的にキツくなれば北陸道使えばいいやって逃げ道用意してたもんだから、意外と気楽なスタートになった。

                                     
                                     

新潟まで

仙台の路上に雪はないが、市外に出れば話は別。圧雪路になって笹谷トンネル(ここだけ高速)で山形に抜ける。
蔵王周辺は連休初日のスキー客で賑わっていたが、国道13号からは一人旅。時折トラックに詰まってしまうが、赤湯温泉で国道113号に入るまでスムーズ。
ところが、長井市の手前から大粒の雪が大量に降り出し、視界を著しく遮られる。本格的に山道になる前にコレじゃ不安だ。

小国街道の小国町区間は、夏なら気持ちイイがこの時期は雪がやたら多いだけでかなり気合いが要る山道。案の定、路面は真っ白の圧雪路状態な上、降雪量も多い。それでもうっすら夜が明ける時間が良かったのか、そこそこのスピードで一気に駆け抜けることができた。

                                     

国道7号に出て新潟方面に走るが、相変わらずの雪。
だったけど、新発田に入った辺りから雪は止み、新潟バイパスに乗ったところで晴れ間も見え出した。
束の間の休息か。

新潟西ICで新潟西バイパス(国道116号)に入り、国道402号へ乗り換えて、いよいよ日本海シーサイドドライブに突入!

 
                                     
 

海の見えないシーサイドライン

地図上では海岸線に沿ってまっすぐ延びる国道402号。その通称の通りまさにシーサードライン!って感じ。
・・・が、走れど走れど道は林の中。海なんてぜーんぜん見えないシーサイドラインなのでした。。
その代わり?、前走るクルマも皆無なマイナー路線で、気持ち良く飛ばさせていただいた。やはり冬の日本海をわざわざ走ろうだなんて人はいないんでしょうなぁ。

                                     
    そんなインチキシーサイドラインも、角田岬に近づくと様相が変わってきた。
北国特有の木々の生えない露出した岩肌を縫う岩壁のワインディング。積雪もなく、ようやく思う存分ハンドルを回すことができた。
 

   
   
                       
 

角田岬を越えた辺り。
白波の立つ波打ち際と、強烈な海風が日本海してるね。空は晴れてるように見えるけど陽は隠れていて、雪が舞っている感じ。山肌にも道路脇にも雪は積もっていない。全部風で吹っ飛んでってしまうのだ。
日本海沿いと言えど、海沿いは意外なほど積雪が少ない。山側に行けば行くほど多くなる。その代わり海際はとにかく風が強い。

                       
                     

寺泊

国道はやがて寺泊の街中に入る。
有名なアメヤ横町だ。魚介類を格安で売る店が軒を連ねている、ちょっとした観光スポット(ここを目的地にするツアーもあるらしい)。時間が悪かったのか、閑散としてたけど。。

ちなみに寺泊からは、佐渡の赤泊にフェリーも出ている。

 
                                     
 

それにしても荒れてるね〜日本海。
国道からすぐ先の堤防に当たった波が、東宝映画ばりにざっぱ〜んってなカンジで飛沫が舞ってたりして、冬の海の雰囲気抜群。演歌のひとつでも聴こえてきそうな渋い風景が旅情をそそるね。

                   
       
                         

侘しさ満点の日本海の漁村風景の中を、延々と走っていく。
国道402号〜352号は、海岸線に沿う直線的な道路にも関わらず交通量も少なく、快適なドライブができる良道だった。

刈羽村で突然内陸に入り、物々しいフェンスと深い林を横目に走るルートへと変化する。柏崎の原発らしい。東京近辺の電力を発電している大型の原発だ。

 

鯨浜の道路脇のクジラも寒そう

柏崎で国道8号に合流する。8号は言わずと知れた北陸街道の本流で、新潟から京都までを結ぶ北陸地方の大動脈だ。それだけに交通量は格段に増えた。

8号に入った途端、雪が激しく降り出した。
ここからは豪雪地帯の上越地方だ。同じ新潟県内だけど、縦断することで気候の違いがはっきりわかるのが面白い。

   

降雪の中、上越市までは数珠繋ぎになってのガマンのドライブ。市内に入ると、方々にクルマが散らばり、幾分周りが空いてきた。

上越市の中心は、港町の直江津と城下町の高田に大きく分かれているためか、かなり大きな街に感じる。南に行けば長野市だし、港からはフェリーも出ている、新潟南部の要所。

上越を通過すると、またまた波打ち際のドライブになる。分厚い雪雲にぽっかりと開いた穴から見える青空に、帯状の図太い雲が重なり合う不思議な空の下、快走を続ける。

道の駅「マリンドリーム能生」

北海道道の駅全駅制覇('97)を始め、日本全国津々浦々の道の駅に立ち寄っている私が3本の指に入れている道の駅がここ。素晴らしく奇麗な便所が備えられているとか、車中泊に最適な設備が設えられているとか、そういう理由で気に入ってるわけではない。ここの魅力は何と言ってもカニ!である。

   

道の駅の一角にある「カニヤ横町」(寺泊に対抗しているとしか思えない)では、水揚げされたばかりのベニズワイガニをファーストフード感覚で味わえるのである。カニと言えば高価なイメージだが、ここではその固定観念が覆されること間違いなし!ってなわけで、今回も能生のカニを楽しみにして立ち寄ったわけだ。

・・ところが、なな何とこの時期(1月と2月)禁漁期でお店は全部休業中。。ショーーック!カニと言えばやはり冬だろうと楽しみにしてたのに。。。無念じゃ。。(_ _ )

今回はどうしようもないので、また北陸を訪れる時まで我慢しよう。
せっかくなので、昨年の夏訪れた際の写真で紹介しておきます。。

             
      これが夏のカニヤ横町。
それぞれの店には山積みされたカニカニカニカニ・・・おばちゃんの客引きに誘われて試食。適当な所で購入。もちろん持ち帰ることもできるが「食べてく?」と聞かれて頷くと、プラスチックの桶にカニを入れてくれる。それを持って近くに用意されているテーブルにGO!
                   
       
それでもって思う存分カニにしゃぶりつくわけだ。ちなみに真夏のこの時期で衝撃の1パイ500円2ハイ買ったら1パイオマケしてくれて、何と3ハイで1000円ぽっきりなのだ。
これをカニのファーストフードと言わずして何と言おう。時価なので、もう少し安い場合もあるらしいから更に驚き(未確認情報ですが)
   

安いだけに味はたいしたことないんじゃないかと思うかもしれませんが、足の実はもちろん甲羅の中にもおミソがいっぱい詰まってて大満足。ベニズワイは本ズワイの紛い物と見られがちですが、十分美味いです。なんせファーストフードですから。そう考えると、こりゃ日本海ならではの贅沢ですな。

機会があれば、是非立ち寄ってみて。

                       

親不知

糸魚川を過ぎると、国道8号は断崖絶壁を走るシーサイドワインディングに。言わずと知れた親不知(オヤシラズ)。ちょっと昔のツーレポだが、能登半島に行った時にここを通っている。

←これが親不知!
崖のかなり上の方に国道が走ってる(見えるかな)

これでもかというほどに洞門の続く国道8号親不知。加えてかなりの高度。洞門の開口から海面が見えないほど、絶壁の上部を縫う。

こんな道を、トラックが高速でコーナリングしてたりしてかなりスリリング。何て言うか、ビッグサンダーマウンテン的な面白さがある。

←陸というより、山が海の中から立っているような急峻な崖。海面からイッキに300〜400mも切り立ってるらしい。それもそのはず、ここは北アルプスの北端で、3000m級の山脈が直接日本海に落ち込む希有な場所なのだ。

いつ走ってみてもここはイイ。冬のこのモノクロームな景色がまたタマランね。

 
   

親不知のワインディングロードが終わるといよいよ富山県。

やはり新潟県は長かった。

     
       

県境越えた後、トンネル前ストレートの線路側にあります

さっきカニを食べ損ねたので、たら汁をランチに頂くことにした。

たら汁は富山の冬の味覚のひとつ。県東端の越中宮崎のたら汁は特に有名。
で、国道沿いで目に入った食堂に適当に入ってみた。予想に反して店内は大盛況。そこで注文したたら汁は味、量共に素晴らしく大満足。何の予備知識もなく寄ったけど、マジでここはオススメ。

越中みそがオイラにとっちゃー涙モンの懐かしさだ。

           

越中宮崎から海沿いの県道に入ってひたすら西へ。
入善、黒部、魚津、この辺までは県道2号線がわかりやすいハズ(だがトレースは至難)。蜃気楼と埋没林の魚津を過ぎた後は県道1号線。ホタルイカの滑川、私の生まれ故郷である水橋、常願寺川を越えて浜黒崎、岩瀬浜。神通川に沿って県道30号を南下する。

→県道に沿うJR富山港線は、総延長が10kmもない超短い路線。その間に駅が9個もあるので、駅のホームに立つと、すぐそこに隣の駅が見える(爆)。
そんなだから、並行して走るクルマの方が速いです。

嗚呼、富山はいつも長閑だなぁ。

   
                         
この日は祖母様の住むケアハウスに泊めていただく。
仙台を出て、ここまで11時間くらい。結局、笹谷峠以外はALL下道で来た。冬だとやっぱり結構かかるなぁ。
冬の富山の味覚その2「げんげ」
ゼラチン質たっぷり。水深の深い富山湾ならではの味覚。
   
翌日、富山から国道8号で高岡へ。この日は祖母様を伴って、富山県北西部のドライブ。
             
   

車椅子持参です。
折りたたみ式なら後部座席をたたまなくても荷室に入ってしまう。コンパクトでしかも「走り」に重点を置いたクルマでありながら、スペースユーティリティーは抜群だね。タイヤも4本難なく積めるし、ハッチバックって便利便利(冷蔵庫や洗濯機も載ります)

もちろん祖母様のために、乗り心地は一番ソフトな減衰力20段戻しです。

             
 

瑞龍寺

高岡市にある富山県唯一の国宝建造物を有するお寺。富山に住んでた割には、訪れるのは初めて。

高岡山瑞龍寺は、加賀百万石の藩主として有名な前田利家の長男、利長の菩提寺。二代加賀藩主である利長は、義弟の利常に加賀藩を譲って高岡に築城し、高岡で生涯を終えた、この地にはゆかりの深い人物なのだ。

             
             
  総門潜ったらズドーンと山門がお出迎え。何にもない前庭が、この山門の荘厳さを引き出している。
朝の締まった空気と庭を覆う真っ白な雪が、静寂な趣を一層引き立たせていた。
山門の茅葺き屋根からは水分の蒸発する湯気が立っている。質素な外観だが、凄く心に響くこの空気感。。
             
 

山門の先には仏殿が鎮座していた。

こっちの建物は鉛の瓦葺き。鉛で葺くのはとても珍しくて、他には金沢城石川門だけだとか。ちなみに後ろにある法堂は銅板葺きで、一列に並ぶ建物それぞれが異なった屋根葺きになってるのが面白い。

また、この建物は総ケヤキ造りってとこも珍しい。屋根裏の架構があからさまに露出してあり、それが芸術的なまでに美しい。見た目以上に味わいのある建物だ。

             

仏殿を中心に、山門と法堂を繋ぐ形で回廊が回っている。
つまり、総門、山門、仏殿、法堂の順で一直線に配置され、仏殿を回廊で取り囲む構成になっているのだ。この整然とした伽藍構成がしっかりと現存しているのが素晴らしい。ほぼ創建当初の配置で残っているので、当時の空気が今も境内に流れているようで非常に落ち着く。

訪れた時間が早かったので、静かな空気の中楽しむことができた。

 
境内を掃除していたお坊さんが、寺の建物の説明とか説法とかを路端で展開してるのに耳を傾けつつ、瑞龍寺を後にする。
最近ふとお寺に行きたくなる。こういう空気を気持ちが求めてるんかな?
いずれにせよ、瑞龍寺は凄くいいお寺だった。なかなかメジャーなお寺で観光ツアー客も押し掛けてきたりするとこだが、じっくり観賞するにはいい建物である。
   
   

高岡から今度は氷見に向かって再び日本海へ!

→ 高岡市街には今も路面電車が走る(万葉線)。路面電車って、ほんっと昔っから車輌変わんないなぁ(車体が広告代わりになったのは最近でしょうが)。富山県だけで路面電車が走る都市が2ヵ所も残ってるあたり、やっぱ長閑なとこである。

 
     

雨晴海岸

国道415号で氷見に向かうとやがて海岸線に出る。そこが雨晴海岸。
ここからは富山湾越しに立山連峰が拝める。この日は典型的な冬空で、遠方の眺めはイマイチだったけど、かろうじて立山を画像に収めることに成功。とは言っても、画像補正して無理矢理見せてるんだけど。。

水平線に3000m級の山脈が浮かぶ景観は、世界中探してもなかなかないらしい。ここに限らず富山平野は、深度のある富山湾と3000m級の切り立った劔立山連峰の両方を一度に楽しめる。そういう意味では、とても贅沢な地理条件だという気がする。

   

氷見のとある民宿でお昼御飯。
氷見と言えば何と言っても寒ブリ!ってことで、豪華に舟盛りを頂いた。新鮮な地元の海の幸は最高にまいう〜。ブリもいいですが、富山に来たら是非「バイ貝」を味わってみてください。私にとって故郷の味と言えばコレです。

 
       
氷見港にある道の駅のフィッシャーマンズワーフでお土産を買おう。ブランド品の氷見の寒ブリももちろん売ってます(超高価)
職場のお土産には富山の家庭の保存食「かきもち」を購入。自分の夕食には「黒造り」(イカ墨の塩辛)と昆布の蒲鉾をgetする。(こうやって書き並べると富山ってヘンな食べ物ばっかり・・)
 
         
         

氷見から同じ道を辿って富山に引き返す。
この日は、時間が遅くなるにつれて立山連峰がはっきりと見えてきた。
昔の記憶を辿ると、一晩降った雪が止んだ晴れた真冬の朝に、南の空に立ちはだかる絶壁のような山脈が見えたような気がしたが、年を経て改めて見てみると、全然違った見え方になっている。成長して大きくなるにつれて身の周りのものが小さく見えるように、雄大なはずの自然地形も変わって見えるのだろうか。。

何はともあれ、当初の目的だった冬の立山連峰を富山市街から拝むという目的は達成できた。雪の立山は荘厳で近寄り難いが、海に近いこの街からじっくり眺める分には素晴らしく気持ちがいい。日本広しと言えど、海から数kmと離れていない場所からこれだけの山容を拝める場所は他にはないだろう。

           
 

立山を眺めながら国道8号常願寺川を渡る。

実は冬の富山を訪れるのは18年ぶり(たぶん)で、冬の侘しさに懐かしさが加わって、最後の方は何となく郷愁の強い旅になってしまった。
たまにはいつもと違った視点で行き慣れた場所に行くのもイイもんだ。今まで以上に故郷を客観的に見ることができた、そんな旅でした。

             
   

帰りは滑川ICから北陸道を新潟へ。新潟で磐越道に入り、雪の降りしきる奥会津を抜けて郡山から東北道へ。仙台に着くまで約5時間の道のりだった。さすがに高速は早い。。(ちなみに距離は500kmくらい)

冬の日本海は天候も荒れていることが多いので簡単にはオススメできませんが、冬しか味わえない魅力があるのもまた事実。意外と北陸って行ってないエリアが多く、まだまだ楽しめるポイントがあるような気がしてます。

以上、2005年冬の日本海の旅でした。

             
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