5:20頃名瀬港着。まだ世が明け切らない中、フェリーから降り立つ。

記念すべき奄美大島への第一歩。フェリーから出て未知の世界に走り出す瞬間のドキドキ感が堪らないから、船旅はやめられない。

薄暗い町中はこの時間でも空気が生暖かくて、鹿児島とはまた違う気候なんだと肌で感じる。

← 名瀬港

 
                                         

奄美で最も大きな町である名瀬を通過して、国道58号を北西に向かった。

まずは名瀬以北を走り回る予定。最北端の岬や海岸を回って、また名瀬に戻ってくるつもりだ。

名瀬を抜けて龍郷に入る。窓越しに眺める海の色は明らかに南国のそれで、青と言うより水色。澄んだ淡い海の色に心が弾む。

 
                                     

笠利の町中で国道58号はおしまい。
ちなみに58号は、鹿児島市を起点に、種子島、奄美大島、沖縄本島を縦断して那覇市に到達する一級国道の最終号。ほとんどが海の上を走っている。
普通、海上区間はフェリー航路だけど、それなら奄美の起点は名瀬のハズ。でも58号の海上区間は全てがフェリー航路とは限らないから、例外もあるってことなのかな。

笠利からは県道602号。笠利岬に向かって半島を時計回りに回る。

                                     
   
 
奄美大島北端の岬。小高い崖の上に灯台が立っている。
北端ってことで、どことなく北の果てっぽい侘しさが感じられた(実際はすっごい南の地なんだけど)
                 
   
岬への道路はその麓で突然ちょん切れてて、ガードレールが無かったらダイブしてしまいそうでコワイ。
                       
笠利崎から今度は県道601号で東海岸を南下。 用海岸前の集落を通り過ぎて、変わった名前の岬にやって来た。
                         

国民宿舎の先にある丘から見渡す奄美の海。白い砂、水色の海、あぁ南国だなぁ。。

吹き付ける風にも湿気があって、九州とは全然違う空気感。ちょっと雲が多めなのが残念だけど、明らかに日本的ではない異国の風景に感動。。。

         

あやまる岬からすぐ南にあるのが土盛海岸。

ツーリングマップルに奄美No.1の美しさと書かれているので、サンダルに履き替えてビーチに下りてみた。

 
                 
                                   
                                   

奄美No.1は伊達ではなかった。抜群の透明度を誇る海と白い砂浜が、まさに南国の別天地を思わせる。

朝から曇っているので海水はやや冷たかったけど、せっかくサンダルを履いてきたし、軽く海に入って散歩を楽しんだ。目の細かい砂にズブズブと足を取られる。浅い岩礁が広がっていてちょっと泳ぐにはどうかなと思ったけど、それでも夏になれば最高の海水浴スポットになるだろう。

これだけのビーチは本土にはない。さすが南国の島。同じ日本だなんて信じられないよ。

 

驚愕の透明度

                           
 

土盛海岸で海と戯れた後は、島の東端部分をさらに南下する。

県道82号に入るとすぐに奄美空港がある。大抵の人はここから奄美に入るんだろうね。
空港を過ぎると、島の玄関口にふさわしい整備された道路が続く。道端のハイビスカスが色鮮やか。南国っぽい木の並木もキチンと並んでいて、道路は案外しっかりと管理されている印象だ。

 
                             

赤尾木で国道に戻り、龍郷まで来たところで今度は県道81号に折れる。

龍郷町の北側をまわる県道81号は、海あり山ありの変化に富んだワインディング。登ったり下がったりと忙しく、それなりにハードな印象が残る。でも全線2車線で道幅があるためか、不安な要素は少ない。
途中特に何があるわけでもないので、走るのが好きな人にオススメのルート。

                             
   

81号を走り切って、10時前には名瀬の中心部まで戻ってきた。これで名瀬以北の半島部分を、8の字型に走り切ったことになる。
ここからはいよいよ奄美の中枢に向かって走り出す。名瀬の中心街を通過して、国道58号を南へ。

← 名瀬のメインストリート=島で一番賑やかな所

 
                         
                                   
                                   
   

朝戸トンネル、新和瀬トンネル、三太郎トンネルと、2km級の長距離トンネルを立て続けに3本抜ける。

奄美大島は島と言うより海上に隆起した山脈といったカンジで、縦断するにもいくつもの峠を越える必要がある。
現在はトンネルがあるからいいけど、これができるまではひとつひとつ峠を越えてたわけだから、隣の町に行くにしてもそりゃ大変だったろうなぁ。

   
                                   

道の駅「奄美大島住用」

奄美大島にも道の駅があった。
住用村の中心を過ぎて少し行った所にある。名瀬と南端の瀬戸内町のちょうど中間地点にあって休憩所としてはなかなか上手い立地。

この道の駅の裏手にはマングローブの原生林がある。
国内でマングローブと言えば、西表島とここ奄美大島だ。奄美のマングローブには、広大なマングローブ原生林をカヌーで探索できるツアーがある。

 
道の駅に咲いていたハイビスカス
       

普段山登りするもんだからこういうのに興味がないわけではないので(ていうか思いっ切り楽しみにしていた)、道の駅から少し先に行った所にあった「マングローブ茶屋」って所(アジアちっくで怪しげな小屋が目印)でカヌーツアーに申し込んだ。(実際は道の駅でもツアーはできます)

非常にラフな雰囲気(「適当」とも言う)の中、クルマごと近くの桟橋まで連れて行かれ、軽くカヌーの操縦を習う。こういうのは全く初めてなモンで、真剣に教わった(教えるおじさんは「適当」だったが)

プラスチックの玩具みたいなカヌーに収まり、いざ出陣。乗り始めは糸の切れた凧のようにどこへ行くかわかったモンじゃなかったけど、いろいろ試してるうちに慣れてきて、ガイドのおじさんの後ろをじゃばじゃばと漕いでいく。
おじさんは音もなくすーすーと進んでいくのだが、こっちは若葉マークもいいとこなので、ロングストロークの割に前に進まず一苦労。ま、相方はもっと進まないので、気分的には落ち着いたもんでしたが。。

       

まずは幅のある川を悠々と漕いでいく。カヌーは普段見ることのない目線で自然を感じることのできる楽しい乗り物だった。

時折「ギャーッ」っていう動物の鳴き声が聞こえる。名前を教えてもらったが忘れてしまった。。鳴き声は汚いけど、見た目は美しい鳥なんだそうだ。

前にいるのがガイドのおじさん。後ろ向きで漕いでるのに速い。
最初は写真撮る余裕なんか無かったけど、そのうち慣れてきて、ばしばし撮った。
 

ここのマングローブは、潮の満ち引きで海水に浸かったり陸地になったりする。
潮が引いた所では、カヌーから降りて散策。にゅるにゅるの泥の中を裸足で歩く。

泥の表面には無数の白い斑点があって、よーーく見ると、これが小さな小さなカニなのである。シオマネキだそうだ。あの片方のハサミだけが異様に大きく発達したカニである。
近づくと一斉に近くの巣穴に隠れる。その動作が素早くて面白い。走り回ると自分の周りから波上に白い点が消えていくのがまたまた面白い。

写真の時点では、潮が引いている状態。
もう少ししたら海水が満ちてきて、一回引いてからまた入ってくるとのこと。実際、みるみるうちに海水が満ちてきて、新たな水路が出現した。

再びカヌーに乗って、マングローブのジャングルに侵入。

 
                     
 

ジャングルで記念撮影  
                           
   

マングローブは、オヒルギとメヒルギというヒルギ科の植物でほとんど構成されているらしい。

                           
       
                   
 

メヒルギは根っこが板状に縦に伸びていて、オヒルギは根っこがコブ状になっているのが特徴。
ヒルギの種は、細長い棒のような形状をしていて、これが成木から落ちると、泥の地表に突き刺さって成長を始めるそうな。
海水と泥という過酷な環境で子孫を残すための知恵ですな。

 
また、水路になる部分に面したヒルギは背が低く、奥に行けば行くほど背が高くなっている。
植物が自ら生き延びるための環境を整えているかの様だ。
   

ジャングルを探索するために潮が満ちてくるのを待ってたりしたので、いつの間にやらトータル2時間もカヌーに乗っていた。

たまたま客が自分たちだけだったので、ガイドのおじさんにはマンツーマンで連れてってもらったし、いろんな話が聞けて面白かった(ここまでのウンチクは、もちろん全部聞いた話です)
この内容で一人1500円は安い。他のメジャーどころのツアーだと相場はもっと高いみたいだし、何人もいっぺんに連れてきてたから、ここのツアーを選んで大正解。
フレキシブルにあっちこっち連れてってもらって、ホント楽しかった。カヌー大好きになっちゃったな。

   
・・・・・
   
 

ドライブ再開。

国道58号を更に南へ。残すは南端の瀬戸内町だけだが、住用村との間の峠だけはトンネルが開通しておらず、急坂の峠道を越えなければならなかった。ただ、道は広いし、住用辺りから交通量は激減してたし、走れないってことはない。
58号では唯一のワインディング区間で、むしろ楽しく走ることができる。

       
 

瀬戸内町の中心は古仁屋という町だ。58号はここで終点(沖縄本島まで海の上になる)

南端の町は、名瀬とはまた全然違う風情がある。何となくアジアっぽい。アジアの熱帯の集落、日本バージョン的な雰囲気。
そして蒸し暑い。ここまでの気候とまた違うのだ。本土の基準からすると完全に夏、という感じだろう。

 
             
 

これはご飯多過ぎ
スープひたひたの方が美味しい

 

そんな異国風情の町で、奄美の郷土料理を食べた。

「鶏飯」といって、奄美を代表する料理だ。簡単に言えば、鶏スープのお茶漬け。鶏肉とか玉子とか椎茸とかいろんな具をご飯の上にのせて、鶏のスープを浸して頂く。
美味いっ
。鶏のスープがこんなにご飯に合うなんて。
おかわりしまくって、お腹いっぱい頂きましたーー。

               
 

奄美の町はどこでもそうだが、実にゆったりとした独特の空気感がある。離島の時間の流れってのは、本土とは明らかに違う。
クルマの動きも総じてゆっくり。こういう所ではヘンに急いで走るのは格好悪い 。
何しろ交差点で犬が斜め横断しているのを、クルマが四方でのんびり待っているような町なのだ。
自然や味覚を楽しむと同時に、この土地独特の空気感に溶け込むという楽しみも味わいたいものだ。

                 
     

古仁屋からは県道626号でヤドリ浜方面に向かうことにした。

意外にも、奄美に入って初めての狭い道。海岸に沿ってとってつけたような道が続く。
海はますます澄んでいて、目にも鮮やかなライトブルーが視界に飛び込んでくる。

 
                 
                 
有名な観光海岸で、奄美には珍しい石の海岸。
拳サイズの白くて丸い石が、波打ち際に敷き詰められている。
周囲に巨岩が並んでいるあたりも、他の海岸風景とは随分と趣が異なり、奄美らしくない景観と言えなくもない。
 
                 
     

でもこれが非常に美しい景観なのだ。

透き通った海はもちろん、海岸の玉石とのコントラストといい、巨岩の迫力といい、非常に印象に残る風景。

   
それに加えて、波が打ち寄せ引いていく過程で、玉石が奏でるコロコロコロという音楽が物凄く心地良いのだ。
唯一無二のサウンドスケープ。あまりの心地良さに、波打ち際に腰を下ろして暫く聞き入ってしまった。
ホノホシ海岸入り口にあったカワイイ看板
                                       
 

対岸に見えるのが加計呂麻島

 
ホノホシとは反対側の大島海峡に面する海水浴場。さっきとは打って変わって白く細かい砂が特徴のビーチだ。
水色の海はこの上なく美しく、沖にはサンゴの楽園が広がっていることだろう。
対岸には加計呂麻島が見える。海峡なので波が穏やかで、海水浴にはもってこいらしく、泳いでいる人もいた。
今回訪れた中では一番人口密度の高いビーチだった(と言っても数えるほどなんだけど)
                                       
        ヤドリ浜から古仁屋に戻る途中、白ヤギさんと黒ヤギさんに遭遇した。この時以外にも野生のヤギには何度か遭った。
普通に野生のヤギが棲息している奄美大島。そして、町ではヤギ肉が売ってたりする。むむぅ。
       
 
             
こういう所も結構あるので気が抜けない。
             
そんな非日常性を求めて来てるっていうのも否定できないわけで、こういうのに遭うと案外嬉々としてしまう。
   

古仁屋のAコープで軽く買い物し、県道79号を宇検村の方に向かって走り始める。

地図上では物凄いウネウネ道に描かれているが、実際走ってみた印象としてはそうでもない。
リアス式海岸に沿って、入り組んだ海の際と山を交互に繋いでいく。海峡でかつリアスなので、波はほとんど立たず海面はいたって静か。
この辺りの海はダークグリーンで南国の風情は薄い。

       
 

県道はやがて内陸に入って峠越えの道になる。ここが狭くて峠らしい峠で、久しぶりにエンジンを回していたが、急に雨が降り出した。雨脚はさほどではなかったが、焼内湾に出て暫くすると止んだ。
夕立かにわか雨か、はたまたスコールか。

焼内湾沿いに県道627号を西へ。
工事の多い海岸線の道を延々と走り、屋鈍という集落に着いた所で、道が途切れて無くなる。
この集落の前に広がる屋鈍海岸が本日の宿泊地だ。

   
         

ビーチには先客が3組ほどいた。こんな最果てにレジャー客がいること自体オドロキ。かなり細長いビーチだから気にはならないけど。
さっそく適当な場所を見つけて幕営。層の厚い砂浜なのでペグは難しいかと思ったが、意外に締まりは良くて、石で押さえておけば心配ないほどだった。

美しいライトブルーの海を目の前にして夕食タイム。
奄美群島限定デザインのオリオンビールが美味い!

 

   
やっぱコレでしょ
こっちは発泡酒
 
この日のキャンプは、この上ないシチュエーションを舞台にすることができて最高だった。
今までこんなにワイルドでキレイな景色のキャンプはしたことがない。規則正しく打ち寄せる波音がまた心地良い。
                                   
奄美の美しい砂浜で野営できれば最高だろうなぁと漠然と抱いていた野望が思い描いていた通りに叶って、ツーリストとして最高に幸せな夜を過ごせた。  
                           
       
奄美はヤドカリもトロピカル
 
4日目 / 6日目