前川國男邸
定点観測の次の日のハナシになりますが、、久しぶりにお気に入りの住宅建築を見学してきました。
家からクルマで40分くらいの所にあるんですが、初めて見た時から非常に心に残っている建築のひとつ。
建築家前川國男の自邸(1942年築)です。
前川はル・コルビュジエの弟子で、日本でモダニズムを展開した先駆者の一人。
そんな彼が、自身の家を日本の民家を彷彿とさせるデザインとしていたという事実に惹かれます。
大きな屋根の勾配に支配されたプロポーション。それは北陸や飛騨などで散見する民家のそれに通じるものがあるんですよね〜。
柿渋に墨を混ぜた塗料で塗られた檜の板で覆われた外壁は、燻された木材のように深く落ち着いて、何とも言えぬ郷愁感が漂ってます。
この完璧なスタイリングと、風景に溶け込む控えめながらも深い色調が、一見して惚れ込んだまず第一の理由ですね。
サロンと呼ばれるリビングを中心に、書斎と寝室が両脇に並んでいる平面形状。
サロンの大きな開口部は、庭に向かって大きく開放できる硝子戸と、上部の格子の建具が、絶妙のバランスで建築に表情を与えてます。
両脇の窓も、一見しただけでは理解し切れないほどに、様々な仕掛けや工夫がされてます。本当にきめ細かにデザインされてるんです。
建築のファサードを形成するこれらのエレメントは、徹底的にシンメトリック(左右対称)になるようデザインされているのも凄いところ。
唯一サロンの雨戸だけが左右対称からは外れているんですが、これも戦時中の資材統制によって泣く泣くこうせざるを得なかったとか。
それでもあくまで拘りを維持し、破綻の無いデザインに仕上げているのはさすがとしか言いようがありません。
寸法的なバランスがこれほど身体感覚に馴染む住宅建築は、そうそう無いと思います。
どこから見ても、そのプロポーションには酔わされてしまう。それは何故なのか。。
この家には、開口部や内部の寸法も含めて、黄金比や1:√2の比率が意図的に仕組まれているんですよね。
極めて日本的な民家の容姿をしている建築ですが、寸法や開口、内部空間の雰囲気は、ずっと近代的な目線で構成されている気がします。
そういった意味では、この家だってモダニズムの具現化なのかも。
ただそれも、単に新しい様式を取り入れるのではなく、民家という伝統を受け継いで、その上に付加していくという思想を垣間見ることができます。
(つづきます)
2009/06/23(Tue) 00:44:42 | 以前のコメント
Re:前川國男邸
ある意味、住宅くらい難しい建築は無いかもしれません。作り手にとっても、住み手にとっても。建物の写真というのは、風景以上に撮影者の意図が現れるところが面白いですね。
だから、別に作り手の意図がわからなくても、自分が感じたままに撮ればイイんじゃないでしょうか(^ ^)
「剱岳〜点の記」僕も観ました。
またいずれ感想は書いてみたいですが、、難攻不落の未踏峰である剱岳に向かって徐々に盛り上がっていく過程が、ちょっと弱かったかなぁ。(簡単にルート見つけて簡単に登ったように見えてしまった)