懐かしいだけではない古民家の魅力


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日下部民藝館と吉島家住宅は共に明治期の再建だけど、両者の築年数には約25年ほどの開きがある。
日下部の方が古く、明治期の民家として初めて国の重要文化財に指定されたというが、それだからと言って吉島家に魅力が無いわけではない。
むしろ吉島家の方が新しい分、明治から大正にかけてのモダンな趣が随所に散りばめられていて面白いのだ。

勾配の大きな一枚屋根のせいで、2階は前の部屋に行くに従って、床も天井も低くなる。段差を伴った各部屋の連続性には、今の住宅には無い新鮮な空間性を感じることができる。
その天井は折り曲げられたり、緩やかに曲線を描いていたり。
ひとつひとつの部屋に個性があって、一言で言えばそれが実にカワイイのである。

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前の部屋の一角には、モダンなタペストリーとソファがコーディネートされていた。
古民家に西洋の趣の古家具の組み合わせ。身震いしてしまうほどにカッコいい。

1階の面積はべらぼうに広い。中庭だけでも2ヶ所ある。そうでないと奥の方が暗くなって仕方がない。

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縁側廻りはコンパクトかつ質素な設えで、侘び寂びの効いた空間を創り出している。そんなミニマムな構成の中だからこそ、円形の開口でコマイダケを露出させてみたりベンガラ色を配してみたりというアクセント的な意匠が、単なる古めかしい民家以上の何かを感じさせてくれる。

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その他にも縁なし畳があったりとか、手動開閉装置付きのトップライトがあったりとか、キュートな意匠の人研ぎ洗面台があったりとか、随所に目を楽しませてくれる遊びがある。

極めつけは土間の奥の井戸の廻りにあった超モダンなギャラリー。
まぁこれに関しては当然当時から合ったモノではなく、何かの企画によるコラボレートだろうが、でも、それにしたってこの古民家の趣に非常にマッチしているのに驚いた。

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ベンガラ色の壁面と家具、イサムノグチのあかり、剣持勇のラタンチェア、BGMとして流れるジャズのメロディ・・・・古い民家の構造体による空間に、なぜか不思議なほど溶け込んでいる。
それくらいにこの古民家の空間は器が大きく、画一化され商品化され過ぎた現代の建築空間には到底真似できない豊かさがある。
民家としての存在価値もさながら、空間の汎用性という意味でもとても興味深い。

かつて10年ほど前に訪れた際の空間の記憶が未だ残っていた住宅建築である。
生まれながらに持つ、安らぎを感じる自分に取っての空間の原型みたいなものが、ここには多分にあるのかもしれない。
2007/12/28(Fri) 02:25:22 | 以前のコメント
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