魅惑の天平建築


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先に進むことを躊躇しつつも、唐招提寺金堂へと歩を進める。
近付くと、やはり大きな建物だ。列柱の存在感、庇の張り出し、どれも古代木造建築のスーパースケールを語るに相応しい。

金堂の中には、盧舎那仏、薬師如来、千手観音といった乾漆造による国宝仏像群が安置される。そのお姿も圧巻の一言だが、やはりここは金堂の建築にこそ目も心を奪われる。

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お堂の正面の列柱群。巨大な縁側を思わせる庇下の開放的空間は、ありそうでないこの建築の特徴かも。
しかもこの列柱、よく見ると端に行くほど柱間が狭くなっている(ひとつ前のコラムの写真を見てもらうとよくわかる)。
この不均等さが視覚に与える影響は大きく、この建築をより大きく、奥行きの深い印象に仕立て上げているような気がするのだ。
美的なバランス感覚が、この時代から感覚的に実践されていたという文化と技術の奥深さに感動すら覚える。

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金堂の軒の出は、法隆寺のように深い。しかし法隆寺のような材のゴツさ、構造的な危うさは無い。
ひとつひとつの材は、小さな部材に分けられて幾重にも折り重なって軒を支える構造を形成している。法隆寺の軒裏と比べれば一目瞭然だ。

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これは法隆寺金堂の軒だが、軒を深く張り出させるために、大きな雲肘木でズバッと屋根を持ち出している。
それに対して唐招提寺金堂は、雲肘木ではなく、斗、肘木、尾垂木といった細かなパーツをいくつも重ね合わせて屋根を持ち出している。
法隆寺の時代は、国内でも大きな檜が調達できたけど、唐招提寺の時代には既にそれが難しくなっていた、ととこかで聞いたことがある。
その代替案としての三手先と呼ばれる形式だが、その知恵の輪・積木的な意匠であり構造形態が本当に面白い。

それでも庇の深さには飽き足らずに、地垂木のその更に先に、飛檐垂木を重ね伸ばしている。
庇の深さへの執着心は相当なものだ。庇の深さは日本建築の特徴だし、気候風土的にも理にかなった意匠形態だが、こんなにも執着しつつ結果的に美しいプロポーションを醸し出すのだから素晴らしい。

見所豊富な建築が法隆寺並みに揃っているのが唐招提寺。天平時代の素晴らしい文化遺産が揃っている。
奈良に行くなら、必見だ。

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2011/02/25(Fri) 02:29:13 | Touring & Driving
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