中国山地横断Touring


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3日目

夜半に寒くて目を覚ます回数は、昨夜より多かった。やはり高原というだけのことはある。
GWのこの時期に、東京より西の方で寒くて起きるなどといったことはあまり想定していなかっただけに、この後の野営がが思いやられた。

テントから這い出してエスを見てみると、ボディには冷たい露が・・・と思ったら、うっすら張り付いた水滴が凍っているではないか。
ボディ表面を拭き取るように撫でると、シャーベット状の氷が指の感触をあっという間に奪っていく。

寒いはずである。

 

陽が東の稜線から顔を出した頃、ヒーターをガンガンにかけて、でもオープンにして出発。

スコラ高原を横断し、県道23号に出て帝釈峡へと向かった。

   

帝釈峡

観光用の広い駐車場にはまだ誰もいなかった。
ここからは徒歩で帝釈峡の内部へと切り込んでいこうという算段だ。

帝釈峡は今回の旅で訪れてみたかったスポットのひとつだったが、何があるかは昨日スコラ高原に来てみるまで全く知らなかった。

 
渓谷なだけあり、クルマでアプローチしても核心部に迫るには、歩く時間が充分に必要らしい。
ここまでクルマで思い切り走るシチュエーションが不足がちなため、ここでも大きく時間を割かれるのは惜しい気がした。そこで、帝釈峡でも奇景として有名っぽい「雄橋」と呼ばれるポイントまで歩き、その間の散策で楽しむことにした。

雄橋に一番近そうな駐車場を起点としてみたわけだが、ここに至るまで、近くに渓谷があるという雰囲気はまるでなかった。この先歩いていける範囲に、帝釈峡という名で有名な渓谷が潜んでいるような気配すらないのである。

しかし、歩き始めてすぐにその印象は覆される。いきなり渓谷の中に立たされ、いつの間にか深い谷間の道に身を置く自分に気付くのである。

突如として始まった帝釈峡の渓谷は、蛇行しながら果てることなく奥地へと続いているようだった。

                     
   
                           
   

歩き始めてすぐに鍾乳洞の入口があったが、朝が早過ぎて、門は固く閉ざされていた。

歩いている人は皆無で、管理のための軽トラがたまに走っているだけ。朝の静かな渓谷には、ひんやりとした空気だけが静かに漂っていた。

雄橋まで50分程度らしかったが、実際にはそれよりは早く着いた。

橋と言っても、それは人工的に作られたものではなかった。
気の遠くなるような長い年月をかけて、少しずつ削り取られた石灰岩が、いつしかアーチ橋のようなカタチになって、渓流を跨ぐ自然の橋へと変貌した状態がそこにはあった。

 

頭上何十メートルあろうかという、巨大な岩の塊によるアーチ橋。迫力がないわけがない。そのスケールの大きさに一瞬言葉を失った。
自然の造形とは多くの場合想像を超えるものだが、この雄橋もまた、通常の想定を軽く超えるスケールを持っていた。

雄橋の景観に満足して、帰途に着いた。復路も来た道を引き返す。
駐車場に着こうかという所で、一組の観光客をすれ違う。結局歩いている人にあったのはそれだけだった。帝釈峡のGWはまだこれからなのだろう。

                           
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帝釈峡を出発し、県道23号を西へ向かって走る。

高原の爽快なドライビングルートを僅かな時間ながら楽しんだ後、県道26号にスイッチ。

                   

さらに国道183号に入り、備後西城まで来たところで、広島の地場コンビニ「ポプラ」で朝食休憩。

その後もR183で北上するルートを取る。

                           
山影に隠れた国道は、山陰へ抜ける幹線ルートなのか、交通量はそれなりに多かった。
                     
国道314号との信号のない分岐で、左に折れる。そこからはさらなるローカルルート。JRの単線路が存在感なく並行している。

国道は県境にある三井野原に向かって駆け上がっていく。途中の登坂車線で前走車をパス。

悠々と走っていると、アレ?ここが?ってくらい拍子抜けするようなタイミングで分水嶺の表示があった。

                   
           
県境を越えて島根県に入る。
スキー場を抜けると、とんでもなく深い谷を一跨ぎにする長大な橋が現れた。

R314島根県側の「出雲おろちループ」。その最高部に架かるのが三井原橋。この橋ができるまで、国道はいったいどこを通っていたのか想像がつかないくらい、ぱっくりと口を開けた大きな谷間をひとっ飛びで跨いでいる。

これを起点に、二重螺旋を描いて谷底へと至るのが、出雲おろちループだ。
同じ円弧を数回転するループ橋なら他にもあるが、大きなループの中に小さなループが混在している二重螺旋は、全国でもここだけの線形らしい。その円弧は巨大過ぎて、螺旋の中にある道の駅からでも道路の全景を見ることができないくらいだ。

そんなループなので走っていても今ひとつループっぽくないのだが、谷底までずーーっと右にステアリングを切った状態のまま、っていうのが実に不思議な感覚。曲率が刻々と変化するのが、単なるループ橋とも大きく違うところ。

こんな高低差のある地形に、これほどダイナミックに道路の線形を描く設計は、いかにも楽しそうである。

           

ループ橋で谷底に降りるとすぐに、道路沿いに駅(道の駅ではなく、鉄道の駅)があった。
出雲坂根駅と案内された駅舎には、なぜか延命水が湧き出ているらしい。

 
 
   

改築されたのか、できたてほやほやの駅舎にはまだ木のニオイが充満していた。
その駅舎の傍らに、タヌキの置物に囲まれた湧き水が確かにあった。

せっかくなので、ナルゲンボトルいっぱいに汲んでいくことにする。今晩の食後は、この水を沸かして淹れるコーヒーだな。

そこからのR314は、取り立てて特徴のない道になってしまった。
隊列を組んで淡々と走る。出雲へと続くこのルートは、島根県側でも交通量はそれなりにあった。

国道432号に合流するT字路で右折。R432へスイッチ。
こちらに向かうクルマは逆に皆無で労せずして単独行になったが、すぐに農道へと再スイッチ。
昨日に引き続き、広域農道ワインディングを楽しむためのルートセレクトだ。
 

大仁広域農道

やはりこちらも、地形を無視した(笑)ダイナミックな3次元線形を描くワインディングロードだった。

敢えてこのルートでそれほど長いとは言えないこの道を通そうという計画がよく理解できないのであるが、このカタチで存在している以上は、楽しまない手はない。

   
     

完全2車線、他に走るクルマもない状態で、気持ちのいいペースで走り込む。

写真を撮るために停車していると、対向車線から大きなトレーラーが走ってきた。
さらにしばらくのんびりしていると、アルファロメオが走っていった。

         
         

まるでだれも走っていないわけではないようだが、GWという期間に孤独に走りを楽しむステージとしては抜群だ。

いつまでも走っていたい衝動に駆られるコースだったが、地図上で確認した通りにそれほど長くは続かず、やがて県道に吸収されてしまった。

     

県道24号を北進。広く視界が開けた道で、晴れた青空が眩しい。ギラギラとした陽光は、夏のそれに近かった。

国道9号に近付く。
鳥取から出雲までの区間の9号沿いには、細切れに山陰自動車道が開通し暫定無料区間も多い。

         
県道から山陰道に入る手前。久しぶりに見たコスモ。
昔は日本でもこんなクルマ作ってたんだなぁって思っちゃう。でも、これくらいの個性がなきゃね、クルマには。
       

さて、ここから山陰道に入るか、R9に出るか。

迷った末に山陰道に入り、さらに進路は東に取った。

東。東に行くと戻ってしまうんじゃないかと気付かれた方は正しく、確かに鳥取方面へと向かってしまう。
帰路に着くにはどう考えても早過ぎるが、ここまで来たならちょっと立ち寄ってみたい所があったのだ。それは鳥取と島根の県境付近にある。全体的な進路としては、まだまだ西の方角へと向かうつもりでいたので明らかに遠回りになってしまうが、興味が勝って東の方角へとノーズを向けてしまった。

そんなアドリブ要素も、旅の醍醐味のひとつ。時間が足りなくなっても、それはその時、臨機応変に旅程を変えていけばいいだけのことなのだ。

山陰道は松江付近を抜けるまでは片側2車線で快適。追い越し車線をぶっ飛んでいくアリストに道を開けさせて、その後ろを悠々と行進。

1車線になる東出雲ICから有料の高速道路。なんか逆のような気もするが、渋滞対策的にはこれが正解かも。
これを米子西ICまで走る。山陰道はその先、大山の辺りまで暫定無料区間として伸びている。

鳥取県に入ってすぐ、米子西ICで降りてR9へ。今来た道をいきなり引き返すかのように、松江方面へと進路を取る。

再び島根県へ。鳥取滞在時間、ほんの数分
。島根県安来市に入って間もなく、右手の入り江側に赤い看板が見えてきた。大きく遠回りまでして訪れたかったのが、この赤い看板のお店だ。

 

CAFE ROSSO

至極交通量の多い、地方の主要幹線国道沿いに建つ店にしてはオシャレ過ぎる(笑)一軒のカフェ。

中海の入り組んだ入り江の奥まった部分に面していて、国道の喧噪に耳を塞げば、静かな水辺と一体化した風景が情緒を感じさせる。

 
                   
 

広い駐車場にエスを停めて店内へ。

カフェの店内はフレッシュなセンスでまとめられ、一層ここが遠く島根の国道沿いに建つ店であることを忘れてしまう。

                     
このお店の特徴は、センスのいいお店そのものだけではなく、バリスタ世界選手権で2位になった実績があるほど凄い技術を持ったオーナーバリスタがいることである。
その技術が生み出すカプチーノを味わってみたくて、わざわざ訪れたようなものなのだ。

カプチーノと言えばカフェアート。泡立てたミルクをエスプレッソに注ぐ際に、ミルクポットを微妙に操作して様々な絵をカップに描いていく。

普段から結構見ているカプチーノ&カフェアートだが、さすが世界のバリスタ、完成度が違う。
絵が上手いのはもちろんだが、カップ一杯に盛り上がったミルクとエスプレッソのフレーバーが段違いに素晴らしいのは、素人の自分でもわかるくらいだった。ホイップミルクの豊かな量感が醸し出す存在感と、事も無げに描かれた絵は、まさにアートそのもの。

味もまた抜群。一緒にティラミスも頼んでみたのだが、これもまた絶品だった。
味、センス、技術、そのどれもが恐ろしいくらいにハイレベルなカフェ。わざわざ訪れて正解だった。

オーナーは相当のクルマ好きでもあるらしい。
店内の至る所にフェラーリの絵やそれにまつわるグッズが。。お店の名前からしてそうだが、容易にそのコダワリがわかろうというもの。
そんなコダワリにまた、親近感を覚えるのだった。

コーヒー豆は自家焙煎で、販売もしている。

ドリップはカップで持ち帰りもできることを帰り際に知ったので、この後のドライブのお供に頂いていくことにした。このドリップがまた格別の味わいで、冷めてしまっても美味しいのには驚いた。

静かな入り江を望みながら、店内のみならずオープンテラスでまったりするもよし。ふと立ち寄ってドリップコーヒーを買いドライブのお供にするもよし。しかも味は一級品。
オープンドライブにもよく似合う、お気に入りの店になるのは間違いなかった。

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カフェロッソで至福の時間を過ごした後は、R9を今度は西へ。同じ山陰道を引き返すこともできたけど、何となくまったりと下道で戻りたくなったのだ。

R9はさすがに交通量が多く、トラックに揉まれながら走ることになる。道端のコンビニは、どこも駐車場が異様なまでに広い。トラック街道ならではの光景だ。

                     

松江に近付くにつれて、やや流れが悪くなってきた。
松江が混むことは想像できたわけだから、そこだけでも山陰道でパスする(松江区間は無料だし)のが得策だったかもしれないが、何となくR9を直進してしまった。

松江に入る手前で混んだくらいで、市内は車線が増えたこともあって、スムーズに抜けられた。

松江からは、宍道湖を右手に見てドライブ。
今回のツーリングは、海には近付かずに中国地方の山中を走り回ることをコンセプトとしていたので、水辺を走るのはちょっと例外的。
まぁでも、宍道湖は海ではないし(^ ^;

 
宍道湖を通り過ぎると、単調な内陸路。
出雲市街はバイパスでパスできるようなのでそっちに入ったが、広ーい道幅にも関わらず片側1車線しか設けられていなくて、今ひとつペースが上がらなかった。
     

県道28号を右折してすぐのスタンドで給油。1日目の最後、備前で給油して以来だ。

それより、エスの総走行距離を示すメーターが、あと数kmで80000kmに達しそうなことに気が付いた。
いいとこで一息入れたもんだ。

 
県道28号をメーターに注意を払いながら走った結果、国道431号に突き当たる交差点で停車したところで、ちょうど80000kmのキリ番を刻んだ。
       

ここを左に曲がればすぐに出雲大社である。思い出しやすい場所でキリ番になったもんだ(^ ^;;

出雲大社でキリ番ってことで、意味もなく何かご利益ありそうな気分にもなった(笑

     
                       

出雲大社

ここまで来たからには、寄らないわけにはいかないだろう、ってことで出雲大社。
かつての山陰ツーリングでも訪れているので再訪ってことになるが、確かあの時は土砂降りだったために人もいなかったけどゆっくり見ることもできなかったような記憶があるので、抜群の天気のこの日に、もう一度訪れてみようという気にもなったのだ。

しかし、本日から本格的なGWのスタートである。

超有名な観光地である出雲大社は混雑を極めていた。大社の駐車場にはクルマの列。思わず並んでしまったのでそれに付き合うことになってしまった。

数百台は収容可能な付属の駐車場も満車状態。参道に出ると多くの人が歩いている。

 

出雲大社の本殿は現在、大修復中。仮設で建物の姿を観ることはできない。それを知ってて来たので、別に何と言うことはないのだが。

拝殿の大しめ縄はやはり巨大だったが、何と言ってもこの左右比対称のデザインに神髄があるように思える。
この非対称性が醸し出す美的なバランスが絶妙なのだ。あまりに絶妙なので、巨大過ぎるしめ縄でわざとバランスを崩しているかのようにも見える。

前回は大雨でじっくり見ることはかなわなかった、古代神殿の柱が発掘された場所にその断面を示した床模様もじっくり拝見。

古代の出雲大社は、高さ40mとも50mとも言われる高層神殿だったと言われる理由のひとつである。

本殿は隠されて見ることはできないので、付帯の建物や景色をブラブラと楽しんだ。

なんだかよくわからないこの細長い建物は、神様のホテル。
何じゃそりゃ、と思われるだろうけど、出雲には毎年10月になると全国津々浦々の神様が集まり、会議が執り行われるのである。その際、出張してきた神様が泊まるのがこの社。言わば、神様用のビジネスホテルってとこか。

 

大社の参道の脇に、こんな広い芝生広場が広がっていたなんて、前回は気にも留めなかった。

この奥には、最近できた古代史博物館があり興味あったが、カフェロッソに遠回りしたこともあって、そっちはパスすることに。

混雑が続く大社の駐車場を抜け出し、参道前の通りを南下した。

 

旧JR大社駅

するとそこにもちょっとした歴史遺産が。
今は廃線になってしまったJR大社線の終着地点では、大社駅の駅舎が残されている。

 
その駅舎は重厚な木造駅舎で、出雲大社を模してデザインされたとも言われている。出雲大社っていうより、道後温泉本館みたい。大社の拝殿が非対称の美を印象付けていたのに対し、こっちはほとんど左右対称形だし。
それにちょっとバランスが悪い気がする。下に対して上に乗っているものの重量感があり過ぎるのだ。
まぁ細かいこと言っても、駅舎という機能を満たすという観点からは無意味なような気もするけど。。
     
駅舎内も歴史を感じる重厚な内装が残っていた。
この空間で、廃線まで普通に駅の業務が行われていた、という想像がなかなか付かない。
                       
 
一転してプラットホームはフツー。線路は駅内しか残されておらず、その先は撤去されていたが、線路が通っていたと思われる空間はずっと先まで開けていて、往時の線路風景が思い起こされる。
 

蒸気機関車がホームに横付けされていた。黒光りする筒状のボディが力強い。

当然自分なんか蒸気機関車が現役で走っている姿なんて見たことない世代で、デコイチで思い出されるのは小さい頃遊んだプラレールとかの玩具の想い出である。
そういった意味では懐かしい(^ ^;

 
 
大社駅を後にする頃には、強かった陽の光も落ち、徐々にオレンジ色の色合いを強めつつあった。そろそろ本日の宿泊地の目星を付けなければならない。
R9に戻って西に向かって走っていると、R431との交点でスーパーを見付けたので夕食の買い出し。
 
R9から県道38号に折れて南下し、国道184号に出る。
しばらく山中の集落を繋ぐ道が続くが、これが意外とFun to drive。楽しめた。
それが建設中のダムの脇の道になると、妙に単調になってしまったが。
   

県道40号との交差点で右折。三瓶山方面へと向かう。
三瓶山は小さな山だが、山脈からは独立した頂なので、山麓をほぼ円形に周遊するように道路が敷かれている。

 
 

この三瓶山も6年前のツーリング時に訪れているが、出雲の直後に訪れ、やはり雨天と霧で何にも見えなかったこともあり、ほとんどスルーしてしまった(温泉に入っただけ)場所である。なので、周遊道路はほとんど走っていないに等しい。

三瓶山は、その6年前のリベンジって意味合いも含めての訪問だ。

                       
県道40号から北側山麓に回り、林間の道を走っていくと、三瓶山北の原キャンプ場がある。
まずは今晩の幕営地の確保。広いキャンプ場は、フリーサイトとオートキャンプ場に分かれていて、出入口もしっかり分かれていた。管理棟も大きく、しっかりと管理された大規模キャンプ場だ。
                       
 

実質GWの初日ということだけあって、サイトは混雑していた。それでも快く受付してもらえ、数え切れないほどのテントが密集するフリーサイトの隙間を見付けてテントを張る。
そもそもそんなに荷物もなく、タープもテーブルもない地べたでのキャンプが信条なので、大してスペースがなくても全く問題がない。

寝床を確保したら、本日の温泉。
三瓶山周辺は、良質の温泉が集まるエリアとしてとても気に入っている場所だが、今回は未訪の三瓶温泉に入浴することにした。

 

再び三瓶山周遊道路にエスで出撃。キャンプ場から反時計回りに、今度は三瓶温泉がある南山麓へと向かう。

三瓶山を見据えながら疾走する林間のストレート。素直な中低速コーナーがテンポ良く連続し、リズムが掴めれば実に気持ち良く走れる。

 
西側はストレートが長いので、スピードレンジが高い。路面はあまりキレイだとは言えないのでそれなりに注意は必要だけど、この時間になるとほとんど走っているクルマもいない(事実、まったく出会わなかった)ようなので、相当面白い。山麓の林の中を疾走する環境も爽快だし。
 
牧場で草を食む牛達の脇をすり抜けたら、南山麓の県道30号に合流。この県道からの方が、三瓶山を眺めるには適していた。
 
草原と三瓶山をバックに愛機S2000を路肩に停めて、しばし景色を堪能する。すっかり低くなった陽の光が、色彩を濃く深く演出してくれている。
     
 

三瓶温泉「鶴の湯」

三瓶温泉は、県道からかなり下に下った所にあった。
源泉を中心に形成された集落の中に、共同湯の「志学薬師鶴の湯」がある。

簡単に見つかったのはいいが、隣接の駐車場が3台ほどしかなく一杯で停められない。
向かいの商店の隣に停められるスペースがあったので様子を伺っていると、店のおばちゃんがどうぞどうぞと誘導してくれた。ありがたい。

 

鶴の湯は共同湯なので、地元の人も入る素朴な温泉である。

浴室に轟音が轟いていたので何かと思いながら入ってみると、太い管から源泉が生き物のようにボゴッボゴッと噴き出しているのだった。その源泉は浴槽には直接注がれておらず、大きな瓶に蓄えられている。地元の方の動きを見ていると、どうもこれを桶で汲んで洗髪とかするようだった。

     
   
           
浴槽に溜められた温泉は褐色に濁っていて、成分の濃さを感じさせるものだった。
6年前に訪れ、今でも印象深い温泉であるこの付近の熊谷温泉、千原温泉、温泉津温泉の3温泉に通じる泉質である。やや温めで、じっと浸かっていると本当に気持ちがいい。
 

三瓶山周辺は観光地らしく、そういう感じの親子連れとかが入って後から入って来たが、瓶に溜まった温泉で身体を洗うという発想が無く、一様に右往左往していた。蛇口は一応あったが、水しか出ないのだ。
人が入ってくる度に、瓶のお湯で洗うんだという案内をするハメになった。それもまた、この温泉での良い想い出になるのだが。

風呂から出て、エスで出て行く時、たまたま外にいた店のおばちゃんが手を振り見送ってくれた。身体だけではなく、心も温まった。(ちなみに、店の横のそのスペースも共同湯の駐車場らしかった)

 
県道に戻って今度は東側山麓を回ってキャンプ場へと向かう。
今にも落ちかけている陽の僅かな光を受けて疾走。
   
スピード感溢れるワインディングドライブで、本日の走り納めとした。
 

暗くなりゆくキャンプ場は、にわかに賑わいを増していた。
キャンプ場は、明るい時間より夕食時の暗くなりつつある時間帯が、もっとも喧噪を増す。

 
 
 
その喧噪の中、スーパーで買った島根ワイナリーの赤ワインをちまちまやる。夕食は彩り野菜のペペロンチーノ。ライトボディの軽い赤ワインが食を進ませ、がっつりエネルギーを取って就寝。
   
3夜目ともなると、暗くなったら寝て明るくなったら起きるというツーリング時定番の原始的生活が、すっかり身体に染み付いているのだった。
     
2日目 / 4日目
     
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