十和田ゴールドライン/春の息吹を感じる(?)東北の山道を行く

ホテルは7時過ぎに出発。すぐに国道103号に入り、青森市南部、八甲田山に向かって南下する。
道は青森市の主要幹線道路で、ロードサイドショップが建ち並ぶ。青森自動車道の高架を通過すると、道路脇の賑わいは無くなり、八甲田の懐へと徐々に入っていく。

                                                 
   

八甲田へと続く国道103号は、ほとんどストレートに勾配を稼ぐ、ある意味豪快な道。
地元の走りのスポット(とスタンドの兄ちゃんが言ってた)モヤヒルズを過ぎると、いよいよ本格的なワインディングロードへと道は変化していく。

基本的には樹海の中の道だが、一部視界が広がる高原を抜ける区間があり、寒々しい八甲田山の姿を拝むことができた。

                               
 

国道103号の青森〜十和田湖温泉辺りまでを、通称十和田ゴールドラインと呼ぶ。
昨年暮れに走った際のレポでもわかるように、紅葉の季節の素晴らしさから付いたような名称だ。
よって、冬枯れたこの時期に来る者の姿も見えず、寂しい限り。

酸ヶ湯温泉までは通年通行可能だが、その先から谷地温泉までは冬期間通行止となる。
が、除雪が進んで例年通り4月一日に通行止は解除。この日はその翌日で、通り抜けが可能なはず。

       
                                           
       

国道394号、城ヶ倉への分岐を過ぎると、すぐに酸ヶ湯。青森市街から走ってもホントすぐ近くって感じ。
そんな立地でも例年積雪観測でニュースになるような超豪雪地帯。ここから冬期は通行止になるため、青森側の冬の終着点だ。

今回は朝風呂に利用する気満々だったが、訪れた時間が生憎だった。千人風呂が女性専用時間。待ってなんかいられないので、そのまま走り出すことに。

 
   

酸ヶ湯から先は雪も格段に多くなり、路面にもうっすらと圧雪が残る状況となった。

実は随分手前から電光掲示板に「酸ヶ湯〜谷地、吹雪通行止」という表示が出てたんだけど、どこまで行ってもゲートには遭遇せず。
ちゃんと通れるようになってるようで一安心・・

               
・・とか考えてたら、あれよあれよという間に道路脇の雪がそそり立ってきた。
あっという間に数メートルの雪壁に視界を覆われる。除雪車が引っ掻いた痕が、地層の断面を見ているようだ。
 
   
           
       

これが続くのかと思いきや、両脇の絶壁はどんどん高くなっていく。一体どこまで成長するのか。。

人工的な産物とはわかっているけど、あまりに圧倒的なスケールに驚愕。
こんなとんでもない所を走っていいんだろうか。。。

                             
     

見覚えある看板が現れた。傘松峠だ。
八甲田の北と南を隔てるゴールドライン最高所。

夏場なら高原風景の中、展望が開けて心地良い峠越えとなるのだが、、見えるのは雪の垂直壁ばかり。。
峠越えの感覚なんて全く無かった。

 
                                   
                                     
 

峠越えたら路面まで雪に覆われていた。一面真っ白の世界!
雪壁はこの日の最高点まで到達し、周りの景色を完全に遮っている。前方にも後方にも、雪壁の先は分厚い雲に覆われた冬の空が広がるのみ。

恐ろしい環境である。こんなとこホントに走っていいのか!?
吹雪いて視界が奪われたら、まさにホワイトアウト。間違いなく遭難だ。

 
                                     
                                     
 

観光のためとは言え、ここまで積雪あるのに無理矢理除雪して開通させてしまうのには恐れ入る。でも走る方としたら、こんな体験そうそうできないわけで、無理矢理開通してくれる青森県に感謝しなけりゃならない。普通ならGWに合わせて開通だろうから。

しかし昨日よりはるかに南の方にいるのに、景色のこのギャップは凄過ぎる・・・

 
                                     
  これを過ぎると、雪の絶壁は徐々にその勢力を弱めていった。
当たり前だが、元気よく走ろうだなんて気は全く起きず、ただひたすらこの光景に圧倒されながら走っていた。
       
                           
     

実は随分前から、開通したてのこの週末を狙っていたのだ。これが果たして大当たり。まさにできたてホカホカの雪壁を楽しむことができた。

こんな雪壁が存在するくらいだから、外気は氷点下、路面は凍結で、環境は完全に真冬。4月というのにだ。
関東地方では桜が見頃を迎えている時期である。東北ではこんな状況なのだ(極端な例ですが)。日本って広いねぇ。

ちなみに、開通した前日は天候不順で、結局午前中しか通れなかったらしい。
まだまだ冬の八甲田山中で、無理矢理開通させてる道路である。難なく通り抜けれただけでもラッキーだったのかもしれない。

     

ゴールドラインを南下し、谷地温泉、蔦温泉を通過。この辺は道路脇に雪が積もってるだけ。特別多いのは、やっぱり冬期閉鎖区間だけだ。

その後奥入瀬渓流方面に進路を取る。
冬の奥入瀬ってどうなってるんだろ?って興味が沸いたんだけど、なんてことなかった。
渓流は雪に埋もれてるし、、やっぱり清々しい森林の中を渓流と共に走るってのが魅力なわけで、こんな時期に来ても仕方無いよね。

程なくして十和田湖に出る。
紅葉の頃素晴らしかった湖畔の疾走区間を南下。

 
 

(4月だけど)の十和田湖は沈黙の世界。
波ひとつ立たない青灰色の湖面は、磨き込まれた鏡のように周囲の陸地を反転させて映し出す。

タイトなワインディングをクリアして休屋へ。
これも通過して抱返りから発荷峠へと駆け上がる。

このまま国道103号を南下しようかと思ったけど、峠から分岐する県道2号というのが気になった。
秋と同じルートになってしまうのもイマイチだし、ここは走ったことのない道を行こうと思って県道へ。
小坂と十和田湖を結ぶ最短路で、冬期通行止の印は地図には付いていない。

               
真っ直ぐ進めば国道103号で鹿角、国道104号で三戸。右折すれば県道2号で小坂。峠頂上での分岐ってのが面白い。
                 
       
                         
     

これが意外にも積雪の多い道で、入るなり圧雪路が待ち構えていた。ここまで真っ白の道は想定してなかったので、思わず運転が慎重になる。

十和田湖の外輪山の尾根筋を走っているので、季節が良ければさぞかし眺めがいいことだろう。あいにく展望台は全て雪に埋まっていた。。

 

小坂までは単独でクルージング。
国道282号を横切って、更に大館方面を目指す。
ここからは隊列組んでのイージードライブ。

総じてハイペースを保てる県道2号。大館〜十和田湖間の最速ルートの名はダテではない。

大館の街中に入ってくトコ。正面に見えてきたでっかいタマゴのような建物は、大館樹海ドーム。集成材を使った木造ドームだ。
 

この先のルートの選択肢としてはいくつも考えられたけど、さっき酸ヶ湯で温泉に入れなかったのがどうも引っかかっていた。ルート沿いにイイ温泉があれば寄っていきたいとこだったけど、今ひとつ思いつかない。

大館に近づいてきた頃、ふと気付いたことがあった。大館ってことは、矢立峠が近いかもしれない。ってことは、日景温泉あたりは行けるかも。

地図で確認すると、大館市街から片道15km程。南下していかなければなかないところを青森に向かって北上していくので完全に寄り道だが、そのくらいの余裕が旅には欲しいもの。
大館から国道7号を北へ行く進路を取った。

   

日景温泉

矢立峠に登り切る前に看板があってそこを左折。すれ違い困難な山道を500m程入った先に現れる秘湯。その名は結構有名で、ガイドブックには必ずと言っていいほど載っているくらいだ。

内部は湯治棟と旅館部が分かれた東北ならではのスタイルで、実に素朴な感じ。
入り組んだ廊下を奥へと進んでいく。

温泉は内湯が男女別で1ヶ所ずつ。露天が混浴で1ヶ所。
見た目は豪快に白濁。濃厚な溶液を思わせる。印象的なのがニオイ。いわゆる硫化水素型の温泉に見られる特徴的な渋〜いニオイ。あの国見温泉を彷彿とさせる。

ここまでくると相当刺激的な熱い温泉を連想するが、実際はそれほど熱くなく、肌への刺激もほとんどない。かなり長湯を許容してくれる温泉だ。
内湯が丁度良くて、露天はぬる過ぎるくらいだった(季節柄ということもあるが)

思わず何時間もゆっくりしていきたい衝動に駆られたが、ここは踏ん切りをつけて再出発。でもかなりいい温泉で満足。往復30kmの寄り道をしただけの甲斐は十分にあった。

   
 

国道7号を大館に戻り、そのままバイパスで鷹巣方面に抜ける。
鷹巣で国道105号にスイッチ。膨大な交通量から逃れられると思ったら、周囲もほとんどここで105号へと乗り換えてきた。

地図を見てみると、秋田市へと向かうには能代を経由する国道7号は遠回りで、国道105号〜285号を走ればショートカットする形で近道になるみたいなのだ。
予想は正しかったらしく、国道285号と分かれる森吉以南はほとんどクルマが通ることのない山深いワインディングロードとなった。

     
 

国道105号、阿仁街道。
森吉から阿仁を経て角館へと至るこのルートは、鹿角〜田沢湖を結ぶ国道341号と森吉山を隔てて並行しているので、まだ走ったことがなかった。

マタギの里と言われる阿仁地方の深淵部を縦断する長大なコースには当然惹かれるものがある。
そんな思いがどこかしらあったので、少し気合いの乗ったスタートとなった。

                               

阿仁川に沿って良好な2車線の道路が延々と続く。
見通しのいいストレートが続くので、時折現れる前走車は難無くパス。自分のペースでどんどんと距離を稼いでいく。

かつて通行できずに引き返したくまげらエコーラインを横切り、阿仁へと向かっていく。国道と阿仁川に並行して、秋田内陸縦貫鉄道の線路が走ってるので、駅の表示が断続的に現れる。

景色は単調だけど、徐々に山が深くなっていく。
通常なら飽きてしまう距離だが、何しろマイペースなので面白い。抜群のフットワークによるハイスピードコーナリングを楽しみながら疾走する(まースタッドレスだからたかだか知れてるんですが)
 
  道の駅「阿仁」でピットイン。丁度中間点辺りだろうか。ここまででも相当の距離を一気に稼いできた気がする。
食堂で鍋焼きうどんを食す。マタギ料理とは全く関係はない(笑)。マタギと言えば、産直に熊肉が売っていた。
   

道の駅以降は急に様相が変わった。急峻な渓谷に沿って走るタイトなワインディングロード。スピードレンジは一気に落ち、それに比例してステアリングの舵角が増える。更に積雪も多くなってきた。

さっき道の駅でうどん食べてる時、テレビでF1豪州GPをやってたもんで、必然的に(!?)力が入っていた。周囲の季節的な状況を忘れて、HONDA F1のパイロット気分でEK9を操る(どっちかってーとWRCなコースですが)

 

地図で見るよりずっとタイトなワインディング。VTECサウンドを響かせながら、無数のコーナーを楽しむ。

今でこそこんな感じで路面は見えてるが、通年通行可能な道である。これ真冬に来たらどういう状況なんだろ?

明らかに豪雪な地域なので、恐ろしいことになってるような気がする。EK9で来ようもんなら遭難間違い無しのような。。

とか思ってたらエライことになってきた。
路面に大量の残雪。轍ができてマトモに直進ができない。さすがに走れる状況ではないので、慎重にタイヤの通るルートを選択しながら積雪区間が終わるのを待つ。
ざくざくした感触のこういう雪道は、却ってハンドルを取られて走りづらい。

程なくして積雪は消える。4月とは言え、まだこんな状況。東京じゃ桜が満開だってのに。
今日は北東北の長い冬を身を以て体験しているような感じだ。

 

さっきの積雪区間で追いついたエスティマが飛ばす飛ばす。
こっちは走行性能が特化したEK9だからブレーキ性能もコーナリング限界も高いから余裕だけど、ああいうクルマであそこまで頑張れるっていうのはある意味凄い。

煽らないようミラーに映る程度につっついてみたが、直線でどーんと踏んでるだけなんだね。。
そんな激速エスティマ君は田沢湖方面へと折れていった。バイバイ。

 
ただひたすらに国道105号を走り続けて角館まで完走。100km以上は裕にあった阿仁街道。100番台国道なのに圧倒的な交通量の少なさで、終始マイペースで走れる気持ち良さが印象に残った。
       

角館からはまっすぐ帰ろうかなという気になり、最短経路で仙台に向かうことに。

県道11号で大曲を迂回して横手へ。湯沢横手道路(国道13号は混むので有用)で雄勝、国道108号に入って秋の宮、鬼首、鳴子。鬼首道路の下りは濃霧だったけど、単独だったのでかなり楽しんで走れた。

鳴子からは国道47号、岩出山で国道457号で、大衡から国道4号。18時頃には仙台へと無事帰還した。

       

こんなカンジで今回のツーリングも無事終了。振り返ってみると、1日目は晴れてて暖かな春の景色だったけど、2日目はすっかり逆戻りっていう印象だ。初日の方がよっぽど北の方に行ってるのにねぇ。やっぱり東北の山岳地帯をナメちゃいけないね。

2003年の夏に大間崎は一度訪問してるので、最北端の感慨はそれほど無く、どちらかって言うとダークな景色ながら要所要所で走りを楽しんだ2日目が印象的。
ゴールドラインの雪の回廊は、真冬の自然の直中に作った道路という感じで凄く生々しい感じがした。自然が今にも牙を剥きそうな状況の中で走るのは、一種危険な場所だからこそ挑戦したくなる本能なのかもしれない(大袈裟)

何はともあれ、今シーズンのスノードライブはこれにて終了。
今年はとにかくよく走った冬だった。

       
1日目 / Touring Top
R style since 2002. Copyright 1059. All Rights Reserved.