3日目

この日から道内は全体的に好天になる、ような予報が出ていた。予定では引き続き海岸線に沿って北上を続ける。ようやく北海道の夏らしい爽やかなシーサイドドライブが楽しめそうだ。

小樽から国道5号で札幌方面へ。銭函まで全線2車線が開通していた。月曜朝の通勤ラッシュに揉まれて走るものの、至極スムーズに流れる。
銭函から国道337号で札幌市街を迂回。途中石狩で軽く洗車して前日までのウェットコンディションによる汚れを落とし、国道231号に入って静かな海岸線をトレースする旅の続きを始める。

 
                                                         
 
 
                                                         
 

厚田村辺りまでは多少雲が残ってたけど、その後は青空が広がり、求めていた海沿いのドライブが叶いそうで気分が高揚する。

交通量はそれなりにあって、先導者が現れると苦戦を強いられる。

     
                                   
     

冬は荒れ狂うであろう日本海岸のこの風景も、この上なく穏やか〜である。

それも浜益村の辺りまで。そこからは、昨日の島牧付近のような断崖絶壁をくり抜くオトコらしい風景に様変わり。

 
                                                         
 

トンネルと覆道が息つく暇も無く連続する。
北海道とは言え海岸線の険しい道は多く、それが主に日本海側に多く見られるというのは、道外での法則と同じだ。

昨日走ったR229島牧付近、同じくR229積丹半島、そしてこのR231浜益増毛間が代表的なところ。太平洋側では襟裳岬に至るR336黄金道路くらいだろうか。

現在は大規模なトンネル改修が進んで、あまり走りにくいという印象はなかった。

   
ただ、距離が尋常ではなく長い(石狩〜留萌で120kmはある)ため、ともすれば退屈な道にも思えてしまう可能性もある。
そこはR style流に、地形の変化をコースのバラエティとして楽しんで走ることによって、単調さを回避していくのだ。
                                 

増毛を通過すると、すぐに留萌市街に突入する。札幌〜稚内を海岸沿いに行こうとすると、ちょうど留萌が気分的な中間点になる。実際にはここから稚内の方が全然遠いのだが。。

留萌、そして小平を通過すると、いかにも北海道らしいシーサイドロードの風景が現れる。この後のサロベツ原野へと続く、日本離れした海の風景の序章といったカンジだ。

道の駅「おびら鰊番屋」で小休止。エリア的にはもう道北だが、それを思わせない体感温度だ。オープンのコックピットを照り付ける日差しが暑い。

こーんな丘と海に挟まれた景色の中を、ひたすら北上していく。
丘の上には風車がいくつも立っているのだが、上手く写真に収められなかったので、敢えて逆光の広角写真で風景の広がりを記しておこう。

↓こんな感じ↓に風車は並んでいる。ただ、これもほんの序章だったのだが。。

 
           

苫前の辺りからは、海岸線べったりの道ではなく、ちょっとスペースを置いて、起伏の豊かな丘を直線的に登り下りする道に雰囲気が変わる。

見通しがいいので、マイペースを保てる(追い越しが容易)な反面、アベレージが必要以上に高くなりがちなので、程々に自制しながらの走行を心掛ける。

 

R232に沿って小平、苫前、羽幌、初山別、遠別、天塩と、行政界を跨ぐたびに道の駅が現れ、すっかり道の駅銀座と化していた。
以前は遠別にしかなかったものだが、、いつの間にやら。(写真は苫前の道の駅)

今やツーリングには欠かせない存在となった道の駅だが、僕が初めて訪れた道の駅は、遠別の「富士見」という道の駅だった。

 

そのルーツとも言える道の駅にも立ち寄ってスタンプを押す。

そこで見かけたWRCレプリカ307CC。電動メタルルーフを閉める動作を眺めさせてもらった。さすがに時間かかるな。ちなみに所沢ナンバー。ソロ旅かな?

 
   

天塩温泉 夕映

サロベツ原野の南端、天塩に着いたのは正午頃。小平では暑かったのに、遠別を過ぎた辺りからオープンでは肌寒さを感じるくらい気候が変化してきた。ちょっと身体を温める意味で、手塩温泉の入浴施設でひとっ風呂浴びることに。

見た目は非常に濃い焦げ茶色の温泉だが、特徴的なのはその強烈なニオイ。鼻にツンとくるこのニオイは、紛れもなくアンモニア臭である。

 
鼻だけじゃなく目にまで滲みるこの刺激は独特だ。(言い方を変えれば、便所のニオイ・・・)
ちょっと長湯を、、という気にならないのはご愛嬌。実に個性的な温泉だった。
     
             

R232は天塩から内陸に入ってしまうので、道道106号にスイッチして海岸沿いを走り続けることにする。
てゆーかここで内陸に入ってしまうツーリストはきっといないハズ。道道106号は、サロベツ原野と日本海に挟まれた原野の中を一直線に貫く、北海道を代表するルートのひとつだからだ。

のっけから原野の中を一直線に整列した風車の隊列に遭遇した。何も無い原野の中に一筋の道路と一筋の風車の列。いかにも絵になる風景だが、残念なことに天塩からはすっかり曇りとなってしまっていた。

それに加えてサロベツ原野の交通量。思った以上に多く、しかも半分くらいがダンプなのだ。なんでこんなに行き来してるのか不思議なくらい、猛スピード&轟音で走り去っていく。せっかくの風景なのに、少々辟易してしまう。

次に現れるのが、北緯45°のモニュメント。
東京が36°をちょっと切るくらいだったと思うから、それ考えると随分と違うもんだ。

なんか緯度単位で意識すると、「地球」を走った気分になる(笑

         
このモニュメントから連想する思い出として、札幌に住んでた頃にEG4で走った際のことが鮮烈に残っている。当時の写真。なつかしー。
   
                   
   

日本離れした一直線のストレートに、見慣れた青看板のミスマッチが、ドライブマニアの心をくすぐる(笑
左手には遮るもの無く海原が広がっている。海の向こうに見えるはずの利尻島が、雲に隠れて全く識別できず。残念。

   
   
ここに来たことは覚えてるけど、走ってる最中のことは覚えてないなぁ。
 
 

稚咲内過ぎてもまだまだ道は続いている。周囲には何も無し。電柱はもちろん、路肩表示やガードレールも何も無い、不思議な道路風景が延々と続いていく。

空を覆っていた雲が徐々に散らばり始めた。暖かな日差しが再び路面を照らし出してきた。

 
右手にサロベツ原野、左手に日本海の北端を望む県道106号。
緩やかな起伏をクリアしながら、その景色の特異性に改めて驚く。できれば晴天の透き通った大気の下で、この景色を味わいたい!という願いが通じたのか、厚い雲で覆われていた空は劇的に変化を遂げた。

晴れ渡った日本海の空の下に、うっすらと山影が見えてきた。やがてそれはしっかりと判別できるくらい、その山容を露にする。
利尻富士だ。

サロベツ原野が面する海の沖合には、利尻島&礼文島という最果ての離島が浮かんでいる。これまでサロベツ原野を走ってきて、どういうわけかその島影を沖合に見ることはなく、今回初めて肉眼で眺めることができたように思う。

稚咲内から抜海の区間は、緩やかな起伏が多くて却って眺めが良い。

利尻富士の方角からして、夕日の時間はさぞかし感動的な風景を拝むことができそうだ。逆に厳冬の時期は、地吹雪で何が何だかさっぱり分からない、文字通り「原野」と化していそうで想像するだけでも恐ろしい。周囲に樹木が一切生えていないからこその風景だが、裏返せば気候の厳しさを物語っていることは想像に難くない。

     

抜海に近付くと、広大なサロベツ原野は小高い山並みによって遮られて終結する。
いかにも寒さが厳しそうな漁村風景が連続して現れ、稚内の街が近いことを想像させる。

稚内へは近道せずに、海沿いをぐるりと回ってノシャップ岬経由で訪れることにした。
道道254号で最北端の温泉、稚内温泉を横目に見て、稚内の市街地北端の岬へと乗り込んでいく。

             

ノシャップ岬

遂に辿り着いた稚内。その市街最北端にあるのがこの岬だ。
日本最北端ではない(それは宗谷岬)が、妙に旅情があって人も多い。稚内港から出港したフェリーは、この岬を回り込んで利尻、礼文へと向かっていく。沖にはそのフェリーと思わしき客船が浮かんでいた。

到着と同時に団体観光客がなだれ込んできたので、ゆっくりする間もなく出立。
そのまま稚内駅方面へと向かう。

             
 

北防波堤ドーム

稚内駅は日本最北端の駅として見所だが、絵的にはむしろこちらの方が面白い。
フェリーターミナル付近にある防波堤で、古代ギリシャだかローマだかを連想させる列柱が独特の景観を生み出している。

防波堤そのものはドーム形状になっていて、それに包まれるように下部が回廊状になっている。クルマの通行はできず、ただ何にも無い空間が延びてるだけで、野宿家の方には格好の宿になりそうだ。

またまた新旧比較。左のEG4の写真は確か7〜8年前くらい。EK9では北海道を走っていないので、残念ながら3車揃い踏みとはいかないけど、当時をちょっと意識しながら撮った写真だ。
ちなみに防波堤の色が違って見えるのは、クルマを置いた場所が少し違ったのと、単純にカメラ(当時はフィルム)の違いかと。。
         

稚内ではこの後、セイコーマートでザンギを買って食べて(またか)通過。
国道238号で一路宗谷岬を目指す。

稚内空港くらいまでは片側2車線が続いていたが、その先はさっきまでの稚内市街の賑やかさがウソのような最果て感が漂っていた。
前方に迫るなだらかな起伏のある地形の先端が宗谷岬だが、そこに行く前に、その丘陵地帯の方へと足を踏み入れることにした。

 
           
 

ここまで来たら旅人たる者、最北端の地宗谷岬へ一直線!となるケースが多いためか、イマイチその影に隠れているような気がする宗谷丘陵。
僕もまたその一人で、宗谷岬には何回か訪れているものの、宗谷丘陵に足を踏み入れるのは恥ずかしながら初めてなのだ。

国道から逸れて、頭上の空がどんどん近付いてくるような不思議な感覚を感じながら丘の上へと登っていく。

丘のてっぺんに登り詰めると、そこは今日これまで見てきた北海道の景色とは全く趣の異なった眺望が広がっていた。

見渡すかぎりの台地。丘陵と呼ばれているが、本当に目の前には「丘陵」しか存在しない。しかも極度に高低差のある地形が目に入らないので、360°この眺望が自分とエスの周りにひたすら広がっているのだ。

恐ろしいまでに純度の高い景色。宇宙や海原に似た永劫性を感じる。

   

丘陵は果てしなく広大な牧草地でもある。放牧された牛達の鳴き声だけが空に響いている。
彼らの餌場をかい潜るように、道路は緩やかな弧を描きながら台地を乗り越えていく。(なんで牛ってこんな広いところでも1ヶ所に固まるんだろう?)

地図上で道道889号と記されているのが宗谷丘陵のメインロードだが、僕の古いツーリングマップルでは途中までしか開通していない。

しかし、行けども行けども道路が途切れる様子は無く、行き止まりの表示も出てこない。道路状況はすこぶる良い。思わずアクセルに力が入る。

 

道道889号を深入りしていくと、やがて丘陵に立つ風車が見えてきた。イヤ、正確には最初の内から数本は見えてたんだけど、進んでいくうちにどんどん本数が増えていって、やがてエラいことに。。
丘の上には無数の風車が群れをなして勢い良く回りまくっている。視界に入るだけで30〜50本はあるだろうか(数えたわけではないですが)。。

今日に限っても苫前とサロベツ原野で風車群を見ているが、3ヶ所目の宗谷丘陵はそれらが霞んでしまう程に圧巻のスケールだ。

道路はその風車群の足元へと入り込んでいく。
さすが巨大スケールなだけあって、プロペラの風切り音が重く鋭く耳に伝わってくる。

この宗谷丘陵は、氷河期時代の氷河が融けたり凍ったりしてできた地形だそうだ。何万年も前の原始的な地形がほぼそのまま残り、今日も変わらずいつもの風が吹いている。そんな当たり前の事実が、今この国でどれだけの場所で感じることができるだろう?

ほとんど誰も通ることのない宗谷丘陵のワインディングロードに、風車の風切り音だけがごく低い音色で響いている。
道北の短い夏を象徴するランドスケープ。今まで来たことがなかったのが惜しく思えたくらいに良いスポットだった。

 
 

宗谷岬

宗谷丘陵から岬の先端に下りることができる道がある。それを通って一気に岬へ。
ここが日本最北端の地、ということで、宗谷丘陵の静けさからは想像もつかない賑やかさだ。

               
 
間宮林蔵像と最北端の碑の前で、お決まりの記念撮影を求める人たちで溢れている。最北端の碑の前ではテレビ撮影が行われていたため、観光客は待ちぼうけを食らっていた。(ドラマなのかバラエティーなのかさっぱり区別のつかない中途半端な演技だった)

宗谷岬は、僕が初めて車中泊を試みた記念すべき場所でもある。
当時はレンタカー、しかも6月初めで気温は余裕の一桁(寝具はフリース1枚)、オマケに灯台がボーボーと大音量で鳴って全然寝れなかったのを今でも覚えている。あぁあの頃は若かった(笑

その後、脈々とクルマによる日を跨いだ旅は続けられ、今のスタイルになっていることを思うと感慨深い。
最北端の地は、多くの人が憧れる最果ての地だが、僕には旅のルーツのひとつが存在する場所として、何かのスタート地点という思いが強いのだ。
最北端から始まったツーリングスタイル。改めて振り返ると、なんかイイね。

   
     

今日はまだ一度も給油していないこともあって、ガソリンの残量がかなり心許なくなってきていた。
もう夕方ということもあり、道北という土地柄も考えて、とにかく営業しているスタンドで早めの給油を行ってしまいたいところ。
手っ取り早く宗谷岬のスタンドで給油した。

←「日本最北端給油所」とある。
給油後、最北端給油証明書なるものと貝殻を使った手作り感バリバリのキーホルダーが進呈された。
どーりで賑わってるわけだ!?

稚内からオホーツク海側を回る国道238号は、特にあまり大きな町とか無い長距離ルートなので、気付いた時に早めに給油したいところ。特にタンクの小さいバイクなんかは死活問題だろうな。

エスの場合、回しても400kmは走るだろうから別に心配は要らないのだが、本州のようにいつもスタンドが営業してるとは限らないのだ。(閉店が早いし、日曜日は営業してなかったりする)
それにできる限り回転の早い店でちゃんとした燃料を入れたいしね。(ノッキングの前科あるし)
     

宗谷岬からは、国道238号を南下するルートをとる。

北海道上陸後、ひたすら北上してきたわけだが、最北端を通過したので今度は海岸線をひたすら南に行く。
面する海は、遂にオホーツク海だ。

最果ての旅情は途切れることなく続く。以外と変化に富んでいて、走っていて楽しい。
やがて平坦な原野の道に変化してしまうが、それまで散々走ってきた日本海沿いの道からオホーツク海に変わったというだけで、新鮮味が増すものである。

       

とても面白い道を見つけました(笑
どんなに走っても走っても走っても走っても、とにかく真っ直ぐで風景の変わらない金太郎飴のような道

猿払村の浜猿払からR238は一旦内陸に入ってしまうが、ムリヤリ海沿いの道を走ろうすると現れる。何の表示も無く、ツーリングマップルにも載っていない(最新版には載ってるんだろうか)
ツーリングGO!GO!誌には載っていて、そこで表示されてる名称を拝借した。

とにかくどこまで行っても全然何も変わらないので、写真をいくら撮っても全部同じ絵にしかならない(笑
まるで滑走路のようで、その気になればいくらでもスピードが出せそうで、そういう衝動に駆られるのがフツーだろうが、あまり調子に乗るといきなり路面に凸が現れてジャンプしてしまうので危険。本当に離陸してしまわないように気を付けなければならない。

何だかやっぱり、とってもヘンな道
まーこれぞ北海道!という道ではありますが。。

     

浜頓別の市街地までやって来た。

今日の予定としては、本当はもうちょっと距離を稼ぎたかったところだったけど、すでに時刻は18時近く。暗くなる前に寝床は抑えておきたいので、今晩はクッチャロ湖畔のキャンプ場で停滞することにした。

湖畔のキャンプ場は、訪れてみると本当に湖畔で、湖に手が届きそうな近さにサイトがあった。既にいくつものテントの花が咲いている。しかし、サイトは十分広いので狭苦しさはない。

札幌へと続くR275との分岐の交差点

   
早速受付をして僅かな使用料金を支払い、テントを設営する。風が強くて苦労したけど、なんとか建て終えて隣接する入浴施設へ。

さっぱりしてテントに戻ると、ちょうど夕日が沈むところだった。
クッチャロ湖の静かな湖面の向こうに、音も無く落ちていく陽を見つめる。陽が沈むのを眺めるなんて、わざわざ見に行かない限りは滅多に遭遇しない。こうやって落ち着いて眺められるだけでも、十分に非日常的だ。それでなくともここは北海道。こうやって落ち着いてしまうと、それすら忘れかけてしまいそうだが。。

本日の夕食はセイコーマートで調達した味付ジンギスカン。それにじゃがりこサラダ(じゃがりこをお湯で戻しただけ。ウマイ)。ビールはサッポロクラシック。北海道限定銘柄で、これが美味いんだ!

食事後、月明かりに照らされる湖面を眺めた。澄んだ湖面に一条の光が射しているかの如く幻想的。
美しい風景が次々と現れる湖畔を一夜限りの停滞とするのが、いかにも勿体無い気がした。

 
2日目 / 4日目