4日目

朝起きると、テントの外には澄み渡った青空が広がっていた。
いかにも夏らしい色彩風景だが、これでも6時前。影の長さだけが早朝の静かな時間を物語っている。

前夜は風が強かったこともあり、芝生の上にもかかわらずテントは全く濡れることもなく、撤収はスムーズに行うことができた。

早速前日の続き、オホーツク海沿いのR238を南下することにする。

                                                                         
 
 

夏とは言え、オホーツク海に面するR238、朝のこの時間はオープンにすると結構肌寒かった。上着を羽織り、逆光に備えてサングラスを装備してのドライブ。

オホーツクの神威岬(写真前方の小高い半島)をトンネルでカットしてしばらく走り続けると枝幸。これも町中は迂回する。

                                   
         

枝幸の道の駅「マリーンアイランド岡島」は当然まだ営業していないため、スタンプは押せず。
この道の駅が、僕が初めてスタンプを押した道の駅。初めて訪れたのが遠別で、スタンプ押したのが枝幸・・・初めての場所にしては、どちらもかなり訪れ辛い場所である。

 
ずーっと走って次の町(この間約50km)、雄武の道の駅は早々と開いていた。
さっきまで肌寒いとか言ってたのに、早くもじりじり暑さを感じてきた。長距離ツーリングには紫外線対策は不可欠と判断して今回持参した日焼け止めクリームを塗る。気休めだけどさ。
   
                               
         
                                           

この雄武の町の外れに、なんとS2000が青空駐車してあるのを発見!イエローの初期or02モデルだった。

北海道で、しかも流氷が押し寄せてくるような場所で、まさかオープンカーのエスが潜んでいようとは。。。道内では通しで3台しか見なかったのに、その1台をオホーツク海沿岸で発見するとはビックリ。

もしオーナーの方これ読んでたら、ぜひご連絡頂きたいものである。

 
 

興部の道の駅は、案の定まだやっておらず、無駄足となった。

そろそろ出勤時間が近くなり、路上を走るクルマもボチボチ出始める。
加えて、道路工事が開始される時間になり、しょっちゅう片側通行の工事区間に遭遇した。

これは北海道走ってて全般的に感じたことだけど、国道でも何でも、やたら片側交互通行の工事区間が多かった。やはり、工事するなら今の季節のうち、ってことなんだろうか。

                     

紋別はオホーツク海岸を代表する都市のうちのひとつ。とは言ってもたかが知れてるけど・・

国道沿いにセルフスタンドを発見したので、ちょっと早かったけど一応給油。早め早めが功を奏するのだ。

道の駅「オホーツク紋別」では流氷やクリオネが見られる、らしい。入らなかったのでわかんないけど。
それより道の駅の近くに、→こんなオブジェ?があった。存在意味は不明。。

 
                     
         

紋別を過ぎると如実に交通量が増えた。
湧別、上湧別と通過し、周りの景色もそれまでとは異なって、雄大な耕作地帯になりつつあったが、周りをトラックが占めていて魅力も半減だった。

湧別の道の駅辺りから、サロマ湖が見え隠れしてきた。道もそれまでのフラット一点張りから、起伏の豊かな半ワインディングのようになってくる。

                                             
         

サロマ湖と言えばホタテ。で、相方がホタテを食いたいと言うので、道路沿いに現れる直売所とかに立ち寄ったけど、遂にありつけず。夏場は厳しいのか。

一般的にはホタテなのだが、昔サロマ湖産の牡蠣を食べたことがある。湖で育つ牡蠣は超大型でメチャクチャ美味かった記憶がある。あれって何処行けば食べれるのだろうか。。

そんなことはさておき、佐呂間町を過ぎて常呂町に入ると、道路脇の景色は道北から道東ちっくに変化していた。空に浮かぶ雲が立体的で美しい。

 

能取湖

網走と常呂の間にあるサンゴ草で有名な湖。
有名な湖とか言いつつ、サロマ湖と網走湖に挟まれて、イマイチ知名度に欠けてる気もする。

どーでもいいけど、今日は一段と日差しが強い。遮るもの無しで、しかも午前中は太陽に向かっていくような方角だったもんだから、写真撮るのに四苦八苦してしまう。失敗作を大量生産。うーむ。。

 
 
 

もう少しで網走、というところで道道76号へ寄り道。
能取湖の東岸に沿って北上し、能取岬に至って網走に戻ってくる、ちょっとした半島周遊道路なのだが、地図には途中ダート区間が残るとある。

そんな区間は分かってるなら絶対通らないのだが、ツーリング用の第六感がはたらいて(謎)、無視して突き進むことにする。(地図も古いことだし)

                                   
         

第六感的中、ダート区間と示された区間は、見事に整備された舗装路になっていた。不思議と悩んだ末、勘で進むルートには恵まれるケースが多いのだ。(逆にあまり悩まないと深みにハマるケースが・・・)

それでなくともメチャメチャ美しい周囲の景色。先端は一体どんな景色が待ってるのか。

                                     

緑の草原を貫く一筋の道路。マリンブルーに輝く夏の海に飛び込んでいくかのように滑空していく。。。

想像以上の絶景がそこには待ち受けていた。
能取岬の灯台へと通じる道は、遮るものの無い緑の絨毯の上を、海に向かって真っ直ぐに延びている。
ここまで純度高く現実離れした風景は、いくら北海道と言えどもそうそう巡り会えるものではない。

 
まるでツーリング妄想の劇中舞台のような道を、黒いオープンカーが軽やかなエキゾーストノートとともに駆け抜けていく。
目の前に迫る海原に引き寄せられながらも、消えかけたセンターラインに沿って右にステアリングを切れば、能取岬の広大な草原が見えてくる。
 

草原の主は、まるで太古の昔からそこに居座っているかの如く、この広大な平原の中で最も絵になる場所に鎮座していた。

能取岬灯台。小さな灯台だが、ブラックに塗られた胴体をアクセントにして個性を主張してるかのようだ。

エスを広場に停めて、ただひたすらに広がる草原を散策する。歩けど歩けど向こう側に辿り着かない。

抜けるように澄んだ青い空と海、それと盛夏の生命力に富んだ緑色の平原だけが支配する宇宙。。

                 

目に入るのは大地であり海であり空である。

変化に富んだ地形の中に、人為的な何かを感じることが無いと、こんなにも素晴らしい風景になるものなのか。。

 
                 

黒いオープンカーは、再び草原を貫く道路を疾走して岬を去っていく。
緩やかな時の流れの中、頬を撫でる爽やかな風と、さんさんと降り注ぐ太陽の恵みを全身に受けながら。

能取岬は、今まで僕が見てきた岬の中でも、いちばん雄大で開放的で、そして美しい岬と言っても過言ではなかった。あまりにもシンプルな構成が、そのスケール感を際立たせている。
今は夏真っ盛りだから、明るく雄大な景色で感動できるが、逆に真冬はどうなっているだろう。
真っ白で真っ平らな平原の向こうに、流氷に埋め尽くされた極寒の海。想像しただけでも身震いがする。

でもそんな状況でも、心揺さぶる素晴らしい風景なのでは、とも思う。
極限の環境を通して生まれたシンプルで雄大な景色。そこに一筋の道が、旅人を夢見心地にさせてくれる能取岬。この場を去るのが惜しかったのは言うまでもない。

 
網走市街を通過して、国道244号を斜里方面へと走っていく。
真っ昼間だったってこともあるけど、網走だというのに暑い暑い(汗
小清水原生花園の直線を走り切って、ようやく道の駅「はなやか小清水」に辿り着くと、まずは水分補給。
                             
           

んで昼飯。2日目のウニ丼以来の北海道らしい食材。(ザンギとジンギスカン食べてるぢゃないか)
道の駅の中にあるマーケットの総菜コーナーで即席で作ってもらえるイクラ丼で、お値段800円也。お味の方は???うーむ・・・

   
関係無いけど、この総菜コーナー、フライの種類が尋常ではない。  
     
   
               
R244を走ってると、右手に斜里岳がよく見えた。凄くキレイな山容の独立峰。こんなに目立ってたとは知らなかった。やはり年月や経験と共に、感性って変わっていくもんなんだね。  
                                                                     
                                                                     

斜里で国道334号にスイッチ、いよいよ知床半島へのアプローチということになる。

今や世界遺産でもある知床半島は、国内最後の秘境と言われる通り、R334で中央付近を横断するくらいしかクルマで楽しめる部分は無い。だからこそツーリストを惹き付ける魅力があるんだろうけど。

ウトロまでは、知床半島の険しい地形が海に落ち込むその境界線に沿って走ることになる。この手のワインディングを走るのって久しぶりだ。
やたら交通量が多く、知床が人気観光地であることを実感する。

ウトロを過ぎると道は急勾配になり、いよいよ久方ぶりの峠道か!?と胸が高鳴る。
眼前には堂々たる山容の山々が連なっている。

よーしこれから、というところでイキナリ脇道へ寄り道。一応知床五湖には寄っとかないと。。

 
       
     

知床五湖に通じる道道93号は、カムイワッカや岩尾別といった秘湯に通じる道でもある。

特にカムイワッカはダートの道を延々行った上に、あとは徒歩で岩登り滝登りしてやっと辿り着ける超人気の秘湯(!?)。おまけにハイシーズンのこの時期はバスでしか行けないときている。

ダートを走るのは論外、バスが大っ嫌いな僕は、いくら温泉好きな性分でもカムイワッカは行く気がしない。
あくまでエスという足ありきの温泉巡りが僕の信条なのだ。
       

で、肝心の知床五湖だが、本来五湖を巡ることができるそれなりのトレッキングコースが用意されてるんだが、ヒグマが出たら即刻立入禁止になってしまう(当たり前か)

この日もしっかり立入禁止になっていた。(写真モデルは知らないおばさん)
えーと、、今までここに来て立入禁止じゃなかった試しが無いんですが。。。
というわけで今回も五湖は拝めず(T T)
仕方無いので、展望台で知床連山を眺めておこう。

   

羅臼岳をはじめとする知床連山を一望に眺める展望台。その峰に大気がぶつかって生成したように、澄んだ青空の中にその部分だけ雲が浮かんでいたのだった。

知床を気軽に観光するには、この知床五湖周辺しか選択肢は無い。
あとは時間も気力も要する方法しか残されておらず、さすがに秘境なだけはある。いつかは冒険的な旅を織り交ぜてみたいと思いつつ、今回も不完全燃焼のまま知床を後にする。

 
  おっとその前に、知床横断道路をしっかりと走っておかなければ。
ウトロから羅臼に至る知床横断道路は、知床半島を唯一跨ぐ峠道として名高い。
こういう峠らしい峠道は、北海道ではその広さに対して本当に少ない。ワインディングを楽しむという主旨からすれば非常に貴重なチャンスで、いやがおうにも力が入る。
 
今回はウトロ側から登る形になっているが、これがストレートがずっぱーーーんと突き抜けまくる超高速コース。勾配はそれなりあるのだろうが、コーナーは緩やかでターンパイクもビックリのハイスピードレンジのコースなのだ。
 

羅臼岳の勇姿をずっと眺めながらのヒルクライム。

秘境とは言え、道路はバッチリ整備されて走り易いことこの上ない。青天井に上がるスピードを抑え、車体が切り裂く澄んだ空気の感触を確かめながら、知床峠へと登り詰めていく。

                           

知床峠

知床横断道路最頂部は、その名も知床峠。目の前に羅臼岳を望む。標高1661mという決して高くはない山だが、夏だというのに雪が残っていた。

ウトロと羅臼の両側に、数kmという距離で海に到達することを考えれば、急峻な知床半島の地形を察することができるというもの。

峠の展望台には黒山の人だかり。さすがに空気は冷えていて、上着を羽織らないと寒く感じる程だ。

 

海の向こう側には、大きな陸地がハッキリと見てとれた。

羅臼側の根室海峡を望んでいるはずなので、アレはおそらく国後島だろう。近くて遠い島だ。その広さからして、ドライブするには十分過ぎるスケール(道があるかどうかは別にして)を持っている。その先にある択捉島は更にその倍以上大きい。

いつかこの島々を自由に走れる時が来るのだろうか。

知床峠から羅臼への下りは、さっき登ってきた区間とは全く性格が違う感じ。
曲率の小さな低速コーナーが主体で、久しぶりにステアリングを大きく切り込み切り返すドライビングを堪能することになる。

羅臼温泉が近付いてくると、温泉のいいニオイが漂ってきた。露天風呂「熊の湯」と国設羅臼温泉野営場というツーリストにメジャーな施設が、知床峠麓のこのロケーションに存在している。

   

マッカウス洞窟

羅臼漁港に下りてきて、左に行くと知床半島最深部の相泊方面へと進むことになる。今回そこまで時間的余裕が無いので、その途中にあるマッカウス洞窟なる所まで来てみた。

この洞窟では、ヒカリゴケなるものが見られるという。そうは言われてもピンとこないまま観察してみると、蛍光色のコケが見る角度によって輝度が変化して見えるというものだった。
わざわざ「ひかりごけ↓」っていう看板立てているあたり、相当分かりにくいものと思われ・・・

 
                   
     
   

羅臼からは国道335号に切り替わる。根室海峡に沿って標津方面へ。交通量は少なく、追い越しポイントも豊富なので距離が稼げる。すでに夕刻になっており、そろそろこの日の停滞場所を確保しなければならないのだが、イマイチ決め切れないでいる。

スピードに注意しながら50km近く走り続けて標津。北海道の50kmは、感覚的にはホントあっという間。ただその間何も無かったりするので、燃料少なかったりするとヒヤヒヤもんである。
そんなこともあり、まだまだ余裕はあったけど標津のセルフで給油しといた。

                               

野付半島

海流によって砂が堆積してできた野付半島の先端に至る道道950号は、両脇を海に挟まれた絶景ロード。日もかなり傾いてきてたし行くか行かないか迷ったけど、とりあえず足跡だけ残しておくことにして、一直線の道路をただ往復した。
アクセル踏みっ放しの片道20km。辿り着く先は、トドワラと呼ばれる海水に浸食されたトドマツの風景広がる場所。ちなみにナラが立ち枯れている様はナラワラという。

           

国道に戻って別海に入り、道道363号、道道8号と走って別海市街を目指す。

別海は、道東特有の雄大な牧場景色が広がるエリアの中でも、景色的にもっとも北海道らしさを感じられる所として、僕の心に刻まれている場所のひとつである。

夕方の薄暗い中での眺望で残念だったが、牧歌的な牧草地の風景は相変わらず「これぞ北海道!」という魅力に満ちていた。

別海市街に入ったら、ツーリングマップルに載っているキャンプ場を探す。

 

目指したのは「別海ふれあいキャンプ場」という所で、地図にちょこんと載ってるだけで全然得体も知れず大して期待もしていなかったのだが、辿り着いてみると、ビックリするくらい体裁の整ったキレイなキャンプだった。

舗装された円形の園内通路の内側がサイトで、すぐ近くにクルマも停めることができる。芝生は青々として美しく、これ以上何も求めようにないくらい。料金も格安。北海道は旅人天国だなぁ。(九州も少しは見習ってほしい)

オマケに豪華入浴施設まで隣接している。昨日のクッチャロ湖もそうだったが、風呂が近くにあるのは本当に助かる。

琥珀色の温泉はなかなかの泉質。当初、別海温泉の温泉銭湯に行きたいと思ってたが、場所も分からないのでこっちで手を打ったのだ。こういう類の施設は、温泉的にはほとんど期待しないで入るのだが、北海道ともなるとちょっと話は違うらしい。

風呂上がりの別海産の牛乳がまた美味だった。

テントに戻ったら、ビール飲んでメシ食って寝るだけ。
前日はシュラフ無しで眠ってみたものの、夏とは言え道北の夜は多少寒かったこともあり、この日は今年導入したモンベルのU.L.アルパインダウンハガーサーマルシーツに入り込んで眠ることにした。
 
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