6日目

帯広の朝、路面は濡れていたが、空は晴れている。
この日のルート設定は大いに悩んだ。この日の夜は札幌で、というのは早々に決まったが、そこまでのルートがなかなか思いつかない。

とりあえず三国峠を越えて旭川道央方面か、というところで手を打ち、まずは国道241号を上士幌方面に向かって北上を開始する。
十勝大橋を渡ってすぐに、例のモダ石油があって給油。

     

 
   

帯広近郊の通勤の車列に混じって北上していると、音更と士幌の道の駅が連続して現れるが、当然早朝のためスタンプは押せず。

音更の道の駅は、車中泊のクルマでごった返していた。
中には駐車場にテントを張るライダーも。昔は僕も道の駅にテントを張ったが、今考えればこれって結構危険なような気がする。 (夜中にクルマが突っ込んできそう)

単車、テント、ホクレンという北海道ツーリングの風景らしい風景。

   
                                   

ナイタイ高原牧場

上士幌から一旦道道806号に逸れ、ナイタイ高原牧場を目指す。晴れていれば、十勝平野を一望のもとに見下ろすことができる絶景が拝めるらしい。

すでに解放されていたゲートを通過すると、緩やかな丘を次々越えていく牧場の通用路のような道をどんどん深入りしていく。

最初は晴れていたものの、空はだんだんと雲に覆われ始める。辺り一面の牧場にも牛たちの姿は見えず・・・

       
ひたすら走っても、人とも牛とも一切遭うことがない。
いつの間にか結構山になってるし、何だか来ては行けない場所に入り込んでしまったような気分。霧はどんどん濃くなっていくし・・・

レストハウスに着いても人っ子一人おらず。空もすっかり雲に覆われて、十勝平野の展望どころではない。

 
             
               
           

ここのレストハウスのソフトクリームがおいしいらしいのだが、当然そんなわけで味わうことはできず。
結局何もしないまま、景色も拝むこともないままナイタイ高原を後にするほかなかった。

あまり早くにこういうスポットに来るのも考えもの。早朝はワインディング走行に充てるのがやはり一番いい。

                                           
       

一旦上士幌に戻って、国道273号に入る。これを北上すると、石狩・北見・十勝を隔てる三国峠へと至る。その大きな峠を目指して突き進んでいく。

上士幌から三国峠まででも数十kmある。その間セイコーマートすら無く、あるのは糠平温泉くらい。

                                               
   
           
   

変化の無いただただ無限に続く森の中のストレートを突き抜けていく。峠道とは名ばかりの単調道路。

これが北海道の道の魅力、という見方が大半だろうけど、慣れてしまうと珍しくもなく、やはりステアリング回してナンボ、という気にもなる。

           

峠直前だけは峠らしくなった。樹海を橋で強引に飛び越えていく。ただそれも一瞬で、雄大な印象より単調な印象しか残らず。今ひとつのワインディングロードだった。

三国峠周辺は法面工事中で賑わっていた。
さすが道内最高所の峠(1150m)。気温は低く、かなりひんやりしている。

 
                                         
                           
そんな肌寒い中でもアイスは食う。ナイタイ高原で食べれなかったからね。
小さな丸太小屋風のレストハウスには、土産物がぎっしり詰まっている。
 
   
                           

峠のトンネルを抜けて上川側へ出ると、少しはワインディングっぽいコーナーが連続するダウンヒルとなった。

スピードレンジの高いコーナーを、ベストなラインを探りながらクリアしていく。 久しぶりに多少上の回転を使った走りができて気持ちがイイ。

ここの登りにしろ、北海道は山道でも5速とか6速を使いたくなる緩勾配の直線中心のコースがほとんどなので、ここ数日ギヤの選択が随分上寄りになっている。なんかヘンな感覚なのである。

                                 

三国峠はそんな感じで終了し、国道39号に合流して旭川方面へと向かう。

すぐに層雲峡があり、右に左に豪快な渓谷の岩肌が展開する。
層雲峡は大きなホテルが建ち並ぶ温泉街の顔も持つ。思えば、北海道に来て初めて行った温泉が、層雲峡温泉だったような気がする。(自分のクルマではなかったけど)

そういった意味ではここも一つのルーツが潜んでいる場所であり、個人的趣味活動である温泉クラブを語る際には、初期のページに登場する場所ということができる。

                                                 
 

R39を走ってると、高速道路の緑看板が。
こんなとこに高速なんて無いはず、と思ってたら、旭川紋別自動車道なる路線がかなり開通していて、一部無料共用中のようだった。

ちょうど行く方向にハマるので、上川層雲峡ICから旭川方面に乗る。

       
   
       
   

自分が北海道にいた時に比べると、ほとんどすべての高速道路で延長が進んでいる。これも広くてゴミゴミしてない北海道ならではの工事のし易さか。本当にそれが必要なのかどうかは置いといて。

当然片側単車線で、ともすれば下道とペースが変わらないのはご愛嬌。

この先、愛別ICで一般道に復帰。混み合う国道や旭川の市街地を避け、道道140号、37号と繋いで東神楽、美瑛方面へと向かうつもりだった。

が、道道を走ってるとそこかしこに、あの動物園の行き先看板が・・・
全く気にしておらずノーマークもいいとこで、近くを通るのは全くの偶然だったのだが、せっかくここまで来たんだし話題性のある所なので、寄り道感覚で訪れることにした。

日本一の集客数と人気を誇る動物園に。。。

   

旭山動物園

旭川市の外れの山の中という、全然利便性の良くない立地に決して広くない敷地の動物園が、全国的に脚光を浴びて久しい。

一体何がそんなに違うのか。動物を見たいとかそういうのは二の次にして、人を楽しませる演出に激しく興味を惹かれて訪れた。

まずは、すんげぇ人の数である。狭い園地にぎっしりと家族連れ。夏休みとは言え、世間一般にはただの平日の昼間なのに、である。

あっさり入ったように見えるけど、実はクルマ停めるのにも一苦労。付属の駐車場はとっくに満杯。周囲の有料駐車場に停めるしかなかった。

驚くべきは観光バスの量。鈴鹿のF1の時みたい(@ @)
ディズニーランドもかくや、というような周辺状況にまずは度肝を抜かれたのだ。

 
 

あんまりゆっくりするつもりもなかったので、さっさと見て回る。
有名なペンギン館、シロクマ館、アザラシ館辺りを集中的に。

この動物園、本当に間近に動物を見ることができる。
(50mmで撮ってこの距離)

そしてどの動物もイキイキとしてるのだ。どいつもこいつも毛並みの美しいこと。。んでまた営業上手なのだ。
 
僕らを惹き付けてやまない動物たちの愛嬌あふれる仕草とともに、この動物園特有の「仕掛け」が何となく理解できてきた。

建物の雰囲気といい内部空間といい、どこかほのぼのとした手作り感に溢れているのだ。
壁面に描かれた絵やサイン一つをとっても、子供から大人までが興味を惹かれる暖かなデザインが施されていて、それが一貫して旭山動物園というひとつの世界を作り出してしまっている。

シロクマってのはホント見てて楽しい動物である
しかし北海道とは言えこの暑さ、大丈夫なもんなんだろうか

                                       
ただ動物を飼って見せているだけでなく、子供でも理解できるビジュアルと説明で、動物のことが説明してある展示も凄くいい。入場料も安いし、子供たちも大喜びで楽しんでいる。確かに凄い所だここは。
   

旭山動物園を後にし、東神楽に出て国道452号を通ってパッチワークの丘を抜ける。

言わずと知れた美瑛の丘は、北海道を代表する景観として名高い。大規模な農地が広がっているだけなのだが、その中に並木が立ち並ぶとメルヘンチックで日本離れした景色として人気を呼んでいる。

なんてわざわざここで紹介しなくてもね。。
個人的には好きな風景だけど、今日はずっと雲がかかってるし、幾度となく探索したエリアなのでさらっと流す程度にした。

本当は立ち寄るつもりすらなかった美瑛の丘。あのまま旭川に抜けると、ちょっと面白そうな所が無さそうだったので、思いに反して来てしまった。

まぁ「ルーツを辿る」という目的からすれば、寄って当然なんだけど。

それぞれのスポットが、すっかり観光客対応な場所になってたのにはなんかがっかり。

 
    美瑛の町立病院前にある「富川食堂」にてランチ。
ここの名物はなんと言ってもトンカツ定食!?
とにかくボリューム満点な上、凄く美味しいのである。
とても感じのいいご夫婦が切り盛りする町の食堂。旅の途中ってことを察してか、帰りがけの「気をつけてね」という一声も暖かい。
 

たらふく食べた後は、道道966号を十勝岳方面へと疾走する。
丘のイメージの強い美瑛だけど。東側には北海道の屋根とも言うべき大雪山系の山々がそびえている。
中でも十勝岳、トムラウシ山の両百名山が有名だ。

いつも丘を巡って自分だけの風景を探すことに一生懸命だったので、この山々の懐まで走ったことがない。
美瑛まで来たのは丘が目的なのではなく、ひとえに十勝岳山麓まで足を踏み入れたかったからに他ならない。

 

望岳台

白金温泉を過ぎると、望岳台という展望台らしき場所があるというので行ってみると、これが遮るもののない大パノラマが拝める別天地で驚いた。
正面にあると思われる十勝岳、美瑛岳、美瑛富士の辺りは分厚い雲に覆われていたけど、それ以外、周りを見渡す限り荒涼とした山肌が広がっている。

この日唯一の大絶景に感動。北海道でこの類いの景色を見られるケースはほとんどない。樹海であったり牧草地であったり、そういう風景の多い土地で、いわゆる山岳風景というものを間近に見ることができたことは今までなかったような。

       

僕が登山とかアウトドアとかに興味を持ったのは、北海道を離れてツーリングらしい旅を始めた後である。

だから、北海道に住んでた頃は、とにかく名の通った場所に行くことは行くにしろ、地図と道路状況を読んで絶景を探したりワインディングロードを探したりすることはあまり無かったと言ってもいい。

 

そう考えると、かつての自分とは視点がまるで変わっているのだから、今この景色を見てgreat!!と思ってるのが数年前なら少し違う感想だったろう。数年後にはまた変わってるかもしれない。

クルマが変わって走り方も変わって写真も撮ってキャンプもして、旅の仕方が変わって景色の見方が変わる。
同じ場所でも感じ方の変遷を思い起こせば、何か自分の歴史を紐解いているようで、これからどういうふうに生きていくのか、という難解な領域にまで思考は及んでいく。

久しぶりに出会う大地でそこまで考えることができるなら、封印を解いてまで訪れた価値があるというものだろう。

 

十勝岳温泉 凌雲閣

その十勝岳の麓には温泉がある。吹上露天を通過して、つづら折れの急登を這い上がっていくと、十勝岳の登山口。そこにあるのが凌雲閣。名前が大規模ホテルっぽいけど、現れたのは山小屋のおっきいヤツみたいな建物だった。

温泉の写真は人がいたので撮らなかったのだが、それが悔やまれるくらい凄くイイ温泉だった。
まずは源泉掛け流しのオレンジ色の温泉。その色彩は深く濃く、鮮やかである。やや温めで長湯が利くのもイイ。

そして露天から眺める絶景。十勝岳の勇姿を真っ正面に見ながらの湯浴みである。
入浴時はさっきの望岳台でかかっていた雲も晴れて、ピークまで見渡せていた。

温泉と景色がここまで高レベルに揃っているのは貴重。大雪山系にはまだまだ良い温泉がたくさんありそう。大満足。

麓への帰りは道道291号で上富良野に出た。

   
                       
     

上富良野からは、夕方で混雑してそうな国道を避けて、道道298号で富良野市布部まで。

富良野にもいろいろあるけど通過。
国道38号を南下し、途中で国道237号にスイッチ。それまで多かった交通量が激減する。

   
                                 
                   

金山峠はなかなかいいカンジで走り切ることができた。

峠から降りてくると、そこは占冠。
道の駅で小休止するけど、すでに店仕舞い状態だった。
時刻はすでに17:30。あとは札幌へと向かうのみだ。

                                         

登坂車線後に1台だけ届かなかったのが、週末の参院選の選挙カー
こんな「樹海」の中で熊にでも訴えかけているのか
(最後はなぜか穂別町営キャンプ場に入っていった・・)

   

国道274号、通称「樹海ロード」に出れば、あとは国道沿いに進むのみ。
とは言っても札幌までまだ結構ある。何となく安心感があるのは、このR274は季節を問わずかなり頻繁に走った道だからだ。

日勝峠は越えないものの、日高から夕張へはかなりの山越えとなる。
さすがによく走った道なだけに、かつてのEG4と現在のエスとの走りの感触の違いを体で感じることができた。
EG4じゃあんなに頑張って登った坂道も、エスだと楽々。登坂車線のコーナーも実に気持ちよく弧を描いていく。1ランクも2ランクも洗練された走りに生まれ変わっていて、ちょっと感激。

車格が違うから当たり前なのだが、運転してる人間は一緒だから、離れていた時間で磨かれたドライビングを感じられたのが嬉しかったのだ。

                                         
夕張、由仁、長沼、北広島と来ていよいよ札幌。日高から2時間くらい。
札幌は大谷地から南郷通に入り、白石で環状通。
あぁ懐かしい。10年前初めてクルマを買って、最初の夜にドライブした道であり(その後も毎夜のようにぐるぐる走っていた)、その後のメインの生活道路だ。

内回りで東区、北区と回って札幌駅周辺のビジネスホテルにチェックイン。

走ってる間はずっと「あ、あの店まだある!」「ここでこういうことあったなー」と随分盛り上がってしまった。
たった数年離れてるだけだからそんなに変わりようもないんだけど、やはり思い入れのある街だから、変わっていない事実が単純に嬉しく感じたのだ。

                                                         
                                 
                               
     

札幌の夜は、昔よく行った居酒屋でプチ宴会。
駅周辺(ていうか駅そのもの)はすっかり変わってしまったが、どこか旅情溢れる雰囲気とか、北の都の華やかさとか、そういうのはちゃんと健在だった。

明日はまず札幌をゆっくり楽しんでから、いよいよ道内ラスト、函館を目指します。

                                                       
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