有峰林道国道471号 を行く

 

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9月の2度目の3連休は、とにかく天気の良さそうな方角へと出掛けることにしたけど、これがどこへ行ってもイマイチパッとしない予報が出ていて直前までかなり迷った。

迷った末に走り出した方角は、西。中央道方面から北陸入りして能登半島を目指すことにしたのだ。
では能登地方は快晴の予報だったかというと、それは否。3日間とも曇りの予報だった。それでも候補になってた目的地の中では条件が揃ってた方だった。

そんな消去法から始まった今回のツーリング。
能登と言えば、以前訪れたのは2002年の春。もう5年近くもご無沙汰なのだ。
走り応えがあったにも関わらず、なかなか再訪が叶わなかったので、最近になって行きたい気分が盛り上がっていたところだったのだ。

そんなわけで消去法から一転、目的地として不足のないエリアを据えてのツーリングができそうな気分が早々としてきた。
それが朝寝坊せず予定通りの5時出発に繋がったようである(笑

                                       

3連休の初日なので、中央道が早朝から渋滞するのは間違いない。それでなくとも練馬から調布ICまでは結構なロスになりかねないので、今回初めて関越から圏央道経由で中央道入りすることにした。

今年開通した区間によって、こういう芸当が可能になる。
そもそも圏央道は走ったことすらなかったのだが、走ってみると交通量の少ない郊外の都市高速って感じだった。

明らかに遠回りで通行料金もかさむけど、渋滞とは全く無縁だった。中央道は流れてるものの、既に非常にクルマが多かったので、この選択は悪くなかった。

国道158号→国道471号

一気にハナシはすっ飛ばして、中央道から長野道、松本ICで国道158号に下りる。そのまま上高地方面へ。

上高地へと向かうクルマ(正確にはその手前の沢渡までだが)で隊列を組んで走る。
安房トンネルを抜ければ、もうそこは飛騨。平湯温泉から国道471号で奥飛騨温泉郷方面へ。

初日から2日目にかけては、このR471がひとつのキールートとなる。 (とはこの時気付いてなかったのだが)

道の駅「奥飛騨温泉郷上宝」でひと休み。今後のルート確認。
この時点で9:30くらい。いいペース。
             
 
 

R471をずーっと西に向かって走って行けば、そのうち国道41号に出て富山へと出ることができる。ものの60kmくらいなハズ。
急ぐ旅であればそれもアリだが、今回は3日間もあるのだ。すんなり能登に到達するだけでは、いかにも勿体無い。ってワケで、旧上宝村から山吹峠に向かって折れた。

         

高山大山林道

ローカルな山道で、地図上で確証が無ければ絶対に入り込まないような道である。
今回は確証があるので、迷い無く入り込みアクセルを開ける。

まずは山吹峠。タイトという程でもないが、山深いワインディングをこつこつと登っていく。

 

峠を越えるとそれまでの様相とは少し変わって、明るい高地の植生風景に取り囲まれた。

しかしそれも一瞬。牧場を過ぎると断続的に民家が現れる。奥飛騨の奥の奥、といった地理関係だが、こんなとこにもこんなにたくさん人が住んでるのか、と思ってしまう。

                   
民家が周りから無くなると、再び峠道が始まる。
北アルプスの東端に位置し、高所感のあるワインディングロードが続く。
                   
 

上り詰めるとトンネルが現れる。
名前は「飛越トンネル」とある。

飛騨と越中を隔てる峠という意味合いと、トンネル入り口に設けられた木製の扉が、どこか歴史を感じさせる佇まいだ。

                                       

有峰林道

トンネルを抜けると、そこは富山県。そしてのっけから料金所に出くわす。

ここから先には、有峰林道という大規模な有料林道が山中に展開しており、複数の路線はすべて均一料金で、普通車だと1800円である。

 
                     
         
 

地図上のビジュアルと、北アルプスの山中を蛇行する林道というイメージからは、想像できないくらいキレイで整備された道だった。

緩やかな複合コーナーをクリアして、その後に待ち受けるタイトコーナーに照準を合わせる。
交通はバイクが多く、四輪は山菜採りだか何だかしている地元の方々らしき様子だ。

                   
     
           

片側2車線が確保され、ラインの自由度からダイナミックな走りを許容するコースに感激していると、それまでの飛越峠の下り勾配が終わるとほぼ同時に、道は一気に幅を狭めてきた。やはりそうきたか(笑

道幅がタイトに変化するのは、有峰湖の湖形に沿って走る区間に突入する辺り。そこからは対向車に注意しながらのトレッキングドライブ・・・となる以前に、こっちがヒヤヒヤしてしまうほどフラフラと走るコンパクトカーの後ろについてしまったため、微低速の走行をしばらくの間強いられてしまった。

               

ようやく譲られた後は、リズム良く林道コースを走っていく。
あまり展望が開けたりとかはしないので、時折立ち止まっても華のある景色が拝めるというわけでもない。

でもまぁ、ここは林道だから。本来、観光の為の道路じゃないんだよね。
でも料金所で手渡されるパンフにはトレッキングコースが紹介されてたり。。

少なくとも、(一般的には)ドライブするような道ではないってことか。

           
           

大多和峠に至る1つ目の分岐を過ぎると、杉の木立のトンネルを抜ける比較的平坦なコースに切り替わる。

タイトなコーナーが影を潜めると、道幅は十分余裕があるように感じられ、自然とスピードレンジは上がっていく。

木立の間からは、より明確に湖の存在を確認できるまでになってきていた。
湖とは林道の名前にもなっている有峰湖で、県下では黒部湖と並んで存在感たっぷりの大ダム湖だ。

                           
 
                                     
 

その有峰湖が一気に視界に現れた。

深く折り重なった山岳地形を利用して形成された人造湖には、特別暑かった今年の夏を越してきたとは思えないほどに、豊かな水量をたたえている。

それは、豪雪の北アルプスの雪解け水による恵みよって支えられる、人々の暮らしの源。現代のそれとは違い、必要性をもってして作られた景色に美しさと力強さが共存して見えてくる。

                                     

2つ目の分岐を、右へと進路を取る。

有峰林道は1本道ではなく、複数の路線の集合体で形成されている。
今回は東谷線から小見線へと走っており、大多和峠と折立に至る線、それとこの分岐で直進する小口川線は走っていない。(小口川線は土砂崩落のため通行止だった)

ガイド的なスタンスで走るなら全線レポートするべきだが、全線制覇より走りのリズムを重視したかったので、枝線は省略させていただいた。
(モリタさんのLONG TOURING CLUBに有峰の詳しいレポが掲載されてるので、興味ある方は是非)

         

林道の一部となっている有峰ダム上を走行し、分岐を折立方面に進んで少し行った所にダム湖の展望台があった。
真新しいモニュメントとは別に、見覚えのある「有峰湖展望台」の碑が展望スペースの角に立っている。

そう、僕がここに来るのは今日が初めてじゃあない。もう20年以上も前に一度だけここに来ている、はずなのだ。
富山在住時代に家族でドライブに来た記憶が残っている。この展望台で、この碑の横で、家族で写真に収まった思い出が、実家の押入のアルバムを開けば出てくることだろう。

             

そんな大昔の記憶が残っているのは、ここが特別心に残るほど素晴らしい風景だったからとか、たまにしか観光地に連れて行ってもらえなかったからとか、そういった理由なんかではない。

ズバリこの道がその理由。当時バリバリ小学生の僕は確か、親父のクルマの後部座席で激しく車酔いしたのである。
当時あまりに未体験な蛇行する山道に完全ノックアウトされたのが相当堪えたらしく、しっかり記憶に刻まれてしまったらしい。

今でこそ好んで全国津々浦々のこんな道に走りにきてしまう自分のイメージからすると、随分ギャップがあると自分でも感じるのだが、今でも乗り物酔いはしやすい体質というのは変わっていない。(特にバスがダメ)
でも自分で運転するのは大好き。単なるワガママなのか。。。

   
 
     
有峰林道小見線は、断崖沿いの狭い道が続く。これを有峰湖から北に向かっているので、勾配は下り方向となる。
豪雪の冬期は当然通行止になるのだろうが、覆道やトンネルが連続するので、冬でも管理用に走れるようにしてあるのかもしれない。
   

にしても意外だったのは、道路幅は拡幅され、規格の整った長大なトンネルがいくつも開通していることだった。

子供の頃の僕を打ちのめした断崖絶壁の逃げ場の無い狭路は一部しか残っておらず、巨大なダンプが平気で行き来するイージーな山道に生まれ変わっている。

                         
           

→こんな「隧道」なんて、上の写真のニンニク隧道くらいなもの。昔はこういうトンネルの連続だったような気がするが。。

そんな遥かな記憶を前提にしてたもんだから、有峰湖から下りてくるまでの区間は拍子抜けしてしまうくらいにあっという間の出来事だった。

 

最後のトンネルを抜けると料金所が現れて、国民宿舎の脇を通り過ぎる。ここまで来れば立山街道県道6号へはすぐに出ることができる。

有峰林道は大昔の記憶から、さぞ狭くて心細い山道が延々続くんだろうという先入観があったが、実際にはむしろ走りやすい部類に入る林道コースだ。
対向車の存在が気になる狭路区間はもちろん残っていて、森の中を探索したり崖っぷちに身を寄せながら歩を進めるようなトレッキング的ドライブが楽しめる上、ダイナミックに展開するワインディングロードを堪能することもできる、バリエーション豊かなコースだと言うことができる。距離がある割には単調さを感じない。それぞれの区間に特徴がはっきりしているからだろう。

これが紅葉時期だったら、更に間違いなく素晴らしいコースになるはずだ。欠点を挙げるとすれば、山深いので万が一何かあった場合には致命的というところか。
すぐ隣の立山黒部アルペンルートがクルマで楽しむことができないという性質からすれば、 有峰の道は北アルプスを間近に感じる貴重なワインディングロードである。

 

県道6号を立山町の市街地方面へと向かい、途中県道35号に折れて、大山町(現在は富山市に編入)の中心を抜けてそのまま国道41号まで走る。

R41を一旦北上して昼飯を食べた後給油し、神通川の西側に渡って県道7号を八尾方面に向かった。

八尾の市街地は雰囲気ある町並みが残る「風の盆」の町だが、これを迂回して国道472号へと出る。
これを南砺市方面へと向かうため、平野を離れてどんどん山の中へと入っていく。

                         
         

国道472号(八尾〜利賀)

さっきまで平野を走ってたと思ったら、いつの間にやら周囲を山々に取り囲まれている。

それにしても9月も後半だというのに暑く、R41を走っている頃から一度ルーフを閉めている。
エアコンを作動させることによるパワーロスがもどかしい。。

 

ほとんど水の溜まってないダム湖の淵の断崖上を走り切ると、国道471号との分岐になる。
右へと続くR471は明らかに枝道の風情で、入り込むのに大いに躊躇う雰囲気を醸し出している。

しかし、目指す利賀村はこの先なのだ。

     
 
               

国道471号(利賀村)

果たして予感的中。車幅に限りなく近く、スレ違う余地なんて全然と言っていいほど狭く、今にも山に埋もれていきそうなほどに線が細い山道である。

これでも一応国道。しかも通年通行ができるみたい。

 
               
   

R472と別れた後の、栃折峠までの区間が圧巻。
一部2車線に拡幅された部分はあるけど、それも焼け石に水状態。生い茂る木々に視界を阻まれた狭路がタイトなコーナーを連続して伴って襲いかかってくる。

コーナー手前で1速にシフトダウン。低速のトルクを補いつつ、次のコーナーに備える。

峠を越えると、浅い谷間に小さく広がる細長い田園地帯となる。

百瀬川が形成するこの谷と隣の利賀川の谷が、村域のほとんどを山が占めている利賀村の人の手が入ったわずかな部分だ。

利賀村の中心部に向かうR471と一旦別れを告げて、県道229号を直進する。

       
       

県道から百瀬川の渓流を挟んで、古い小学校の校舎のような、大きな切り妻屋根の建物が目に入り、その前で作戦タイムとなった。

というのも、この建物向かいに非常にキレイなキャンプ場があり、14:30という停滞には明らかに早すぎる時間と天秤にかける結果になったからだ。

結論は、多少(かなり?)時間が勿体無いが、たまにはゆっくりキャンプもいいだろうということで、本日の行程を終わらせることとした。

利賀国際キャンプ場

それほど広くはないものの、芝生のフリーサイトには開放感がある。

トイレやら炊事場やらは清潔感が保たれててこの上ないのだが、いかんせん利用料金がべらぼうに高い。4000円!にはビビる。ある意味、この時間からじっくりキャンプでもしないと、勿体無くて気が気じゃない(貧乏性)

 
     
    早速テントを立て、川遊びをする前に薪拾いをする。今回は焚き火ができる用意があるのだ。いつもの寝て起きるだけの味気ないキャンプに僅かながらのロマンを求めて(笑
         
     

キャンプ場から更に山奥に少し行った所に日帰り入浴施設があるそうな。
キャンプ場の受付時に割引券をもらったことだし、行ってみることにした。

温泉の名前は「天竺の湯」。天空の村利賀村には、不思議としっくりくるネーミング。
実際には温泉など湧いていない場所で、動力で無理矢理汲み上げてるありがちな入浴施設だが、残暑の下流した汗を拭うには十分。さっぱりした。

 

風呂から上がってキャンプ場に戻ろうと外に出てビックリ、いつの間にか土砂降りになってるじゃないか!
テントを張ったと同時に、それまで晴れてたのが一気に曇り空に変化したのでヤバいかな、とは思っていたのだが、結局バケツをひっくり返したような豪雨に。。

キャンプ場に戻ってテントに入った頃には多少収まってはいたものの、これで外で焚き火やら調理やらするのは不可能になってしまった。せっかく拾い集めた薪が・・・
睡魔によって焚き火どころか調理する気にもなれず、まだ日が落ち切らない夕暮れの時間に、缶ビールを飲んだ後に早くも眠りに落ちてしまう。

キャンプのロマンどころか、いつもより早い時間に活動を停止することになってしまった。

 
 
2日目 / Touring S2000
   
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