■深夜の北海道弾丸ドライブ


7月最初の土曜日。前日の残業もあって、出発は7時となった。いつものツーリングのスタートから比べたら、ほとんど大失敗に近い遅出だ。
しかし、今回の行き先は北海道。この時期、北方向に向かう高速道路の渋滞はほとんどないので、週末であろうとこのくらいの時間に出ても許されるのである。

 
                                                     

荷物の積み込みを終えて、自宅駐車場からエスをスタートさせる。
大泉ICから外環に乗り、川口JCTから東北道へ。

3年前の北海道ツーリングでは、関越道から日本海周りで青森まで到達していた。
今回はそれとは異なり、ごくフツーに東北道で青森まで行っちゃう予定。別にラクしちゃおうというわけではないのだが、せっかく高速料金安いわけだし、行けるとこまで行っちゃって、時間の余裕次第で寄り道しちゃおうという魂胆だ。

予想通り、東北道の流れはスムーズ。クルマの数は多いけれど、渋滞には程遠い感じだ。
東北道はGWや盆休みといった例外を除けば、紅葉の時期以外はいたって平和である。年中混んでいる東名や、冬期の渋滞が激しい関越なんかと比べると特に、持てる時間的余裕の差は大きい。

 

淡々と距離を稼いで宇都宮を過ぎ、上河内SAで朝食休憩。100km程度しか走っていないので給油はまだ。東名で言えば、富士川SA休憩辺りの距離感だ。

今回の東北道は1ストップ作戦。青森市内の安価な給油所で、できるだけ多く給油できるように途中のスタンドを設定。
次の休憩は、その給油所に設定した仙台北の鶴巣PAの予定だ。

那須高原を過ぎると福島県。これよりみちのくの看板が現れる。
東京仙台間は、仙台在住時代に通い慣れた道。これといって目新しさがあるわけではなかったりする。
 
     
               
                                     
東北道は、仙台を中間点とし、青森に至る約700kmの日本一長い高速道路だ。
前半にあたる仙台以南の特徴は、何と言っても高速らしからぬワインディング区間がいくつも存在することだ。
イメージ的に意外だけれども、東京仙台間にはトンネルが福島トンネルの1ヶ所しか存在しない。その分なのか、やたら山道が現れるのが、仙台までの東北道なのだ。
                                     

そしてそれがめっぽう楽しく感じられて、これといって目新たらしさがないとか言っておきながら、実は結構好きな高速だったりする。

       
                                     
               
佐野~栃木間、那須~白河間はそれほどでもないが、郡山を過ぎた後の二本松IC前後の区間、福島宮城県境の国見峠、白石を過ぎたら始まる村田JCT付近~仙台南IC、仙台市内なのに随分と豪快な仙台南IC~泉IC区間といった具合。
東名で例えると、これらすべてが大井松田IC~御殿場ICみたいな感じ。意外と刺激的な高速道路なのである
                                                     

それら高速ワインディングを楽しみながら仙台通過し、予定通り鶴巣PAで給油。セルフ給油所だった。

ついでにトイレ休憩。横に並んだシャコタンのBMW、長崎ナンバーだった。そんな長大ツーリングしてそうな感じではなかったが。

再び高速上へ。

仙台を過ぎると、岩手北部までは真っ平らな高速らしい高速道路になる。 加えて交通量が激減するので、すごく走りやすくなる。どんどん距離を稼いで北上。天気は悪くなかったが、電光掲示板にはこの先で雨の表示が。。。

   
       
                                       
  赤い秋田ナンバーのVGSに、滝沢IC付近で遭遇 >>
                           
盛岡を過ぎて八幡平の東側を通過する頃には、周囲にほとんどクルマがいない閑散とした状況になった。
安代JCTで八戸道と分かれたら、東北道は八甲田山塊をぐるりと西側に迂回する。この辺りから路面が徐々に濡れ出した。

鹿角八幡平ICを過ぎてすぐの花輪SAで昼食休憩とした。
小さなSAの食堂で、「花輪ハヤシ」なるハヤシライスをいただく。
美味。

 
休憩がてら電話で仕事のやり取り。一週間休めるのはいいけど、現場は動いている。自分がいないことで影響が出ないなんてのは既に過去の話。 いつまでこんな自由に旅を続けられるのかな。。

話し込んでるうちに、本格的に雨が降ってきてしまった。
前回のロングツーリング(中国山地横断)がずっと晴れ続きだったので、まともに雨が降るツーリングは、屋久島のタイフーン以来かもしれない。(レポになってないショートツーリングでも、基本的に天気のいい日に出かけてるので)

本日の予定で決まっているのは、青森を出港するフェリーの時刻のみだった。
この青森函館間のフェリーも事前に予約していた。というのも、前回帰路のフェリーは前日予約で取れなかったこともあるし、何しろ昼間の便は思いのほか少ない上、航路的にも混みそうだったのでそうしたわけだが、それでもスケジュール上一番都合が良かった便は取れなかった。(1ヶ月以上前の予約でも)

仕方なく予約したのは、青森発18時の便。これって前回と全く一緒の便だったりする。
前回は日本海側からのんびりアプローチしたが、今回は東北道で一気に距離を稼いでいる。時間が余るのは当然だ。

    そこで、東北道は小坂ICで降りてしまうことにした。
7時に東京出て青森港18時発だから、時間がだぶつくのは簡単に想像できてたので、頃合い見て寄り道するつもりではいたんだけど。
                               
                   
小坂ICからは秋田県道2号を使って一気に十和田湖にアプローチできるので、そっち側に行ってみることにした。
すっかり雨の中となってしまっていたので、ルーフは閉じたまま、濡れた樹海のストレートをすっ飛んでいく。

十和田湖の外輪山の峠、発荷峠に向かって駆け上がるにしてはストレート主体の高速ワインディング。
一気に登り切って、今度はつづら折れの道を十和田湖畔に向かって降りていく。

十和田湖畔に出た所でエスを停めてみる。ドス黒い空の下、湖面も暗く沈んでいた。

     
     

しかし、湖畔の国道103号は、木々のトンネルを抜ける快走路で相変わらず気持ちがいい。

国道103号に沿って、奥入瀬方面へと折れる。
夏の午後の奥入瀬渓流は、観光バスも含めた数多くのクルマで混雑していた。
雨天の中、混み合った駐車スペースにねじ込んでまで散策しようとは思わなかったので、奥入瀬はパス。そのまま国道103号、十和田ゴールドラインへと入っていく。

                           
     
     
   

ここでも前走車の後について走る形になってしまったので、少々眠気が来てしまった。

谷地温泉を過ぎて傘松峠に至る低速コーナー区間で、多少間を開けながら楽しんでみる。視界の開けるこの辺りで、上手い具合に陽が射してきた。
夏の八甲田山塊も、秋冬に劣らずまた美しいものだ。

     

酸ヶ湯を過ぎると、青森市街に向かって一気に降りていく。結局十和田湖からノンストップで青森市街まで来てしまった。
寄り道にしては意外と距離があったので、結構いい時間になってしまいそうだったのだ。

青森バイパスで2度目の給油をし、中心街を横断してベイブリッジを渡り、フェリーターミナルへと辿り着いた。

     

今回も前回往路と同じく青函フェリー。
船は大きくはないが、アメニティが限られている分、料金が他社より安い。

乗船手続きをし、乗用車の列に並ぶ。
前回も同時期だったが、ほとんど乗るクルマもない状態だった。
しかし、今回の乗用車の列は長い。車両甲板はともかく、あの狭い客室に入り切るのだろうか。。

案の定、2等客室は大混雑。まぁたかだか4時間程度の航行時間、ガマンできないほどのものではないが、このフェリー乗船時間は貴重な睡眠時間でもあるのだ。
朝早い出発ではなかったとはいえ、前日は深夜まで仕事だったし、何より今晩の宿のアテが今んとこ無いのだ(爆

この先どこでどれだけ寝られるか予想できない状況の中では、この船内で横になれるこの時間は貴重である。ここぞとばかりに横になり、出港するなり眠りに落ちた。

 
                         
・・・・・・・
 
      22時前に函館港到着。青森港出港から約4時間。
津軽海峡縦断にそんなにかかるものなのかという思いと、北海道って近いもんだなぁという相反する思いが交錯する。
   
                           
           
                                     
  晴れて北海道上の人(とクルマ)となり、夜の函館市街を抜け、国道5号を北上する。        
3年前はそのまま函館市内のビジネスホテルに1泊したが、今回はあくまで原始的なキャンプツーリングを指向するつもりだ。敢えてホテルは取らずに走り続け、眠くなったら寝ればいい、としか考えていなかった。
車中泊によるツーリングから一歩抜け出して以来、最近ではちょっと無い、懐かしい感覚の夜のドライブだ。
       

将来の道央道だと思われる函館新道を走り切り、大沼の坂を駆け上がるとそこは霧の中。
オレンジに照らされる路面をひた走り、森町に入ったところで遅い夜メシ休憩。

函館名物ラッキーピエロ
前回は北海道最終日の同じような時間に、倉庫街の本店に立ち寄ったシーンが思い出される。
長らく函館にしかない貴重なチェーン店だと思ってたら、近隣の森町にも進出していた。

中に入ればラッピ独特のこの世界。オールドアメリカンな雰囲気の中、名物チャイニーズチキンバーガーを食す。ウマい。
 

何と言うか、メニュー構成含めた店全体に漂うこの独特な脱力感(笑

好きだなこういうの。

 

この森町赤井川店、札幌函館間の幹線であるR5沿いにあり深夜までやってるので、ドライブイン代わりに使えるのがいい。

こんな場所でも入れ替わり立ち代わり客は入ってくる。

                                         
                                               

再び夜のR5に復帰。
当初森町の中心部にある道の駅で車中泊も考えていたが、全然眠くないので通過。噴火湾沿いのルートを走り抜け八雲。それを過ぎるとストレート中心の北海道らしい道となり長万部に至る。

周囲のクルマのペースは、トラックだろうと乗用車だろうと軽自動車だろうと、とても速い。これぞ北海道。北海道の人はこれがフツーだと思っているだろうが、外地(本州以南)とのスピード差は凄まじい。(特に夜)
景色は暗くて見えないが、クルマの流れの速さに北海道に来たなぁ~という感慨を覚えてしまった。

喉が渇いてしまったので、長万部のセブンイレブンで飲み物を買う。ついでにグミも。(最近マイブームの眠気覚まし)
北海道に来たらセイコーマートがキホン(!?)だが、既に深夜で閉店していたので、向かいにあったセブンで済ませた。

そうか、もう0時回ってたのか。

日付が変わってもまだまだ走り続ける。

R5沿いには道央道がどんどん延伸し並行していたが、深夜の下道はそれ同等のペースを許容するのが北海道の現実。
高速の存在は無視して国道を乗り継ぐ。長万部でR5から国道36号にスイッチ。太平洋沿いに室蘭、苫小牧、千歳と繋いで札幌へと至る幹線国道である。

R36に向かうクルマはほぼ皆無に等しかった。
長万部からしばらくの間は荒野の中を行く長大なストレートが続く。遥か彼方へと続く、路側帯を示すの看板が、まるで流れ星のように光の矢となって、道の行く先を照らし出している。

ふと今どこを走っているのかがわからなくなる。あまりにも日常ではない道を、ただ何かに取り憑かれたように突き進んでいる。
理性があるとすれば、R36のこの区間には白黒の迎撃機がよく潜んでいるという、大昔の記憶が右足を綿密にコントロールさせているという部分。一定の排気音を響かせながら、エス自らも光の矢となって、荒野を切り裂いていく。

   

R36の直線区間は礼文華峠への登りで終わりを告げる。ここから豊浦の辺りまでは割と峠道な区間が続く。

そんなに険しくない山道だが、高度を上げると瞬く間に濃霧によって視界を奪われた。道路を照らすナトリウムランプが、乳白色の煙霧をオレンジ色に染める。

トンネルを抜けたらいきなり霧が晴れたり、また突然濃霧に巻かれたりを繰り返す。それも結果的には深夜の単独走にメリハリが出て楽しめてしまった。

                                     
               

国道230号との分岐でR36とはお別れ。
R230は入るなりトンネルが続き、あっという間に洞爺湖畔に出る。
この辺りは10年程前の有珠山噴火で国道が流されてしまい、新たに通されたルートのはず。まったく記憶に無いトンネルだ。

洞爺湖の西側湖畔をぐるりとなぞるようにして北上ルートを取る。洞爺湖から留寿都、喜茂別、そして札幌。今走ってきたこのルートが、札幌函館間の最短ルートのはず。今、そのルート上を単独ペースで走り続けている。

喜茂別を過ぎると、いよいよ中山峠が始まる。札幌近郊ではかなり大きな峠道で、前回も帰路に通過している。

しかしこんな時間に越える機会もそうそう無い。周囲に全くクルマが走っていない状況は変わりなく、ここは一発挨拶代わりにと、元気良く中山峠越え。登りの途中にようやく前走者が現れたが、喜茂別側はオール登坂車線付きなのですんなりオーバーテイク。
一気に峠を越えて、遂に札幌入り。時刻はちょうど深夜2時。そのままの勢いで定山渓に下りてきた。

札幌市内はR230で北上。途中、北海道に入って最初の給油。ここで入れておけば稚内まで無給油で行けるはず。
道内のガソリンスタンドは夜間はもちろん休日もやっている保証は無いので、大都市で補給しておくのが鉄則だ。

給油後のスタンドで、地図を睨みながら今後の作戦を練る。
久しぶりの北海道、それも自分の青春の舞台(!?)の札幌に一気に到達してテンションが高過ぎるのか、まるで眠くない。
こんな夜通しドライブは、それこそ札幌時代には散々やってきたものだが、生活リズムを崩すと後々大変なので、ここ最近は全くやっていなかった。(てゆーかもう体力的にもたない)

あの頃、免許を取って最初のシビックをを手に入れ、運転することが楽しくて楽しくて食べるのも寝るのも忘れて走り続けていた情熱的ドライブと、ロングツーリングという形態に形を変えたこのドライブが、札幌の地でオーバーラップする。
10年以上前の自分と黒いEG4シビックが、今、目の前を走り抜けていく・・・錯覚に陥る。そうとはわかっていてもなぜか探してしまう。

あり得ない話ではあるが、そうとはわかっていても少々感動的な気分になった。
札幌は自分にとって、いろんな原体験が潜んでいる街である。クルマとの出会い、人との出会い、一生の糧とするものの出会い、生涯大切にするものとの出会い・・・・・それらと過ごした時間は、十数年経った今でも、この街に来れば蘇ってくるのだ。しかも時間が経つにつれて鮮明に。。

     

結局、この時間じゃただ通り過ぎるしかなかった札幌だが、いろんな想いを交錯させながら走り続けた。

大通公園を通過しすぐに右折。北1条通を進むと駅前通から国道12号に切り替わる。
ここでちょうど午前3時。札幌中心部を通過。距離計を見たら、ものの見事に1000kmピッタリだった。

東京(練馬)から札幌までちょうど1000km
途中、八甲田の寄り道はあったが、キリが良過ぎて気持ち悪い(笑

R12を直進し続けると、豊平川沿いで国道275号になる。
空知国道R275は、R12のバイパスとして旭川方面に向かう際に有用な「裏道」という認識。
とは言えその全線を走るとなると、ほとんどその記憶がないことから、改めて今回辿ってみようという気になった。

     

札樽道を過ぎると大都市札幌の面影は無くなり、北海道らしい平坦な景色に様変わりする。
江別を迂回するまで片側2車線のまさにバイパス路。この2車線区間は、かつて本当によく使った道だ。

開け放ったルーフの上空は、漆黒の闇から徐々に淡いブルーに変化している。刻々と変わりゆく澄んだ空が、たまらなく美しい。
どこまでも続くR275ストレートは、終わりを告げようとしている闇夜を背景に、どこまでも続いていた。

                           
             

1台の黒いクルマが追い越し車線をかっ飛んでいく。EGシビックだ。太い排気音を置き土産に走り去っていく。まるで札幌市内で感じた錯覚が具現化したかのよう。

間を開けて追いかけてみたが、石狩川を渡って1車線になり、当別に近付こうとする頃に見えなくなってしまった。

   

当別で空知国道は一旦右折する。その後は、右手に石狩川、左手にJR札沼線を従えて延々と行く道になる。

さすが札幌旭川間という道内一の幹線路R12に並行する裏道なだけあって、そろそろ明け方という時間になってもそれなりに走ってるクルマは多かった。
ただ、トラック含めたそのペースは尋常ではないので、ペース的にはあまり支障無いのだが。

     
   
     

当別、月形、浦臼と、町を繋いでいくので割と変化はあるのだが、さすがにここらで断続的に睡魔が来た。フェリー乗船時間(約4時間)の睡眠による覚醒時間は使い果たしてしまったらしい。
空はすっかり明るくなり、早朝のこれからが走るには一番気持ちのいい時間で勿体無かったが、そろそろ停滞しなければならないようだ。

   
     
とは言え、どこか泊まるあてがあるわけでもないので、そこらで停車してエスの中で仮眠する程度。
ちょうど浦臼に道の駅があったので、その駐車場に滑り込んで仮眠することにした。
       

久しぶりに車中泊!
・・・でもエスで寝たことなんか、初期の頃に1回しかない。しかもその頃はまだフルバケではなかったので、ある程度寝そべることはできたのだ。

足を伸ばさないと寝ることができないという不便な習性なので、エスの車内で、しかもフルバケに身を落とし込んで寝る、というのはきっと不可能に近い気がしていた。
でも、極限まで疲れていて睡魔バリバリならば、そんな状況でも寝られるような気もする。

道の駅「つきがた」で頑張る?こと小1時間。結局、一睡もできなかった(爆

外で手足延ばしてみたり、気分転換に歩き回ってみたりして、無理矢理目を閉じてみたりしたけどダメ。あんなに眠かったのになぁ。
たぶん、旅が始まったばかりで、まだ気分が高揚したままなんだろうな。

そんなわけで、車中泊は未遂に終わる。ただの大休憩になってしまった。。
寝られず意識的に1日目と2日目の区別がつかないので、このまま話は進んでいく(笑

・・・んですが、長くなり過ぎるので、続きは次のページへ。。

   
プロローグ / 2日目
   
R style since 2002. Copyright 1059. All Rights Reserved.