■利尻富士
利尻山登頂には、途中で泊まれる山小屋が存在しないだけに日帰りするしか術はない。しかも登山道は限られている。(この鴛泊ルートか、もうひとつ上級者向けの沓形ルートしかない) 遅れてはならぬと登山の準備をする。 とその前に、登山届を忘れずに提出。昨日の管理小屋にあったポストに投函する。 それはそうと天気である。 |
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予定通り5時過ぎには出発。 甘露水を過ぎると、そこからはどこからどう見ても登山道で、自然の香り豊か、というか、ただひたすら山中を歩いていくことになる。 しっとりと濡れる森は、一層濃くなっていく。道端ではリスが木の実を頬張っている。 |
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いつしか周囲には、うっすらと霧がかかってきた。 あまりに高度の低い位置に雲が漂っていたのには少々戸惑ったが、徐々に上り坂を登り雲が薄らいでいくにつれ、雨が止んでいくのに気付いて、それは期待に変わった。 |
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歩き始めてからそれほど時間が経たない四合目辺りで、雨は止んだのだ。 登山道には多くの登山者がいた。「晴れてきそうですなぁ」と期待を込めた声をかけられる。 |
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さらに登り6合目まで到達すると、視界が開けた。 適度に小休止を取り、水と行動食を口にする。 利尻山の登山道は幅が狭く、追い越しにも気を使う。本当に人一人やっと通れるくらいの藪道みたいな感じなのだ。 |
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登り坂の勾配は、最初のうちは緩やかだったが、高度を上げるにつれて徐々に急登が立ち塞がる。ただ今回は、荷物が軽いのでそれほど苦にはならない。 昨年の屋久島の宮之浦岳の際とは、途中で1泊を控えていた(結局使わなかったけど、テントも担いでいた)のが大きな違い。 |
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北の果ての島での登山は、夏だろうがきっと寒いだろうと思っていたが、歩いていれば本州並みに汗はかくので、結局半袖Tシャツ1枚で充分だ。 歩いているうちに、あんまり北の果ての山に登っているという感覚が薄らいできた。 |
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ただ、いつもと違うのは、徐々に道端に増えてきた高山植物の類。 利尻山は花の山である。次に目指すことになる礼文島の方が花の島としては有名だが、「リシリ」という枕詞が付く固有種がいくつも存在することからもわかるように、この島でしか見られない貴重な高山植物が何種類も存在する。 |
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登山道の道端に咲く花の名前を特定できるほど詳しくはないので、可憐さで目に止まった花を撮影して歩く。 登り中盤の胸突く急坂を難なくクリアできたのは、そういった小さな楽しみを見付けたということにも理由があるかもしれない。 |
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視界はスッキリ晴れないものの、谷間は雲が切れて高所感を実感する。 | |||||||||||||||||||||||
そうこうしているうちに、9合目まで登ってきた。 開けた平地にはいくつかのベンチとトイレが設置されていた。 |
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9合目からは、特に足場が悪くなった。9合目手前も、崩落していく登山道を補修している区間が続いていたが、ここからは崩落が進む斜面そのままの登山道を登っていくことになった。 頂上へと続く道は勾配がキツい上に、足場は細かく砕かれた石が堆積していて、足を踏ん張るとそのままズルッと流されてしまう。 |
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勾配はどんどんキツくなり、それにつれて山肌は赤みを帯びてくる。 |
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利尻山の頂部に近い斜面は非常に脆く、崩落が続いているようだ。 登山道はさらに人の足によって削られ、山肌はえぐり取られているかのよう。山に登ることによって山の形状を崩している事実は疑いようもない。それと自然破壊と何が違うのかと、思わず自問してしまう。 |
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大きな岩の谷間を通り抜けたら、いつの間にか頂上はすぐ目の前に迫っていた。 最後の登り坂を進んでいくと、険しくそそり立った岩の地形が目の前に迫り、そのもっとも高い位置に、小さな社が建っているのが見えた。 |
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利尻山頂 9:40、利尻山山頂に到達。所要時間は約4時間40分。それなりにペースは良かったかも。 山頂は登頂した人で賑わっていた。頂は踏み均されて平地が形成されていたので、それほど狭いという感じではない。 |
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低くたれ込めた分厚い雲の大海原の中に、ぽつりと漂う孤島のように佇んでいるであろう独立峰、利尻山の山頂部からの景色。 晴れていればおそらく、サロベツ原野を始めとする道北の大地が一望できたに違いないが、雄大な雲海も素晴らしい景色である。 |
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直下の山肌には色とりどりの花が咲き、ちょっとしたお花畑を形成していた。険しい斜面の一角に、可憐な花が咲き誇る光景に目を奪われる。 斜面だけでなく、頂上の足元にも無数に花が咲き、まさに雲上の楽園といった感じだ。 |
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頂上中央の社は立派で、登頂を果たした人の格好の記念撮影場所になっていた。珍しく記念撮影をしようという気になり、近くにいた若い男女に頼んで、数枚撮ってもらう。 この男女、利尻山に登っている最中に唯一と言っていいほど、自分より明らかに若い2人で、いかにも今風のアウトドアルックなファッションをして目立っていた。 利尻山は年齢層が高い(笑 この2人とは、後日礼文島でも再会することになるのであった。 |
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頂上でじっくり景色を楽しんだ。 それほど空腹でもなかったので、昼飯はパスしようかなと思ったが、途中で食べたくなっても困るので食べることにする。 |
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登山途中は晴れ間はなく、涼しく歩きやすかったのに対し、頂上は快晴で、とても暑かった。 標高差1200mもありながら、麓より頂上の方がよっぽど暑いという事実。 おかげで汗に濡れたTシャツもすっかり乾いて爽快そのものだった。 |
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下山ルートは、登頂のそれと全く同じルートを辿ることになる。 どちらかと言えば、出発も登頂も早い方だったので、下山直後から多くの登山者とすれ違うことになった。 |
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頂上~9合目のガレ場は、登りよりも下りで神経を使った。 脆く崩れた山肌は細かい砕石となって路面を覆っている。荷重をかけるとすぐに崩れてバランスを失わせる。 勾配もそれなりにあるので、緊張感を保ちながら下っていく必要があった。 |
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9合目を過ぎれば、ペースは通常通りになった。 景色は登りで見てきたものとほとんど変わりはないので目新しくはなかったが、雲が晴れ、そこそこ遠くの地形まで見渡せたので、時折立ち止まって写真を撮る。 それ以外はあまり立ち止まることもなく、どんどん下っていった。 |
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下り始めて4時間程度、14:30頃に麓の山麓野営場に帰還。最後の方は結構長く感じた。 野営場でサンダルに履き替え、ドロドロになった登山靴を洗う。 |
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その後、温泉へと赴いた。山麓の野営場から鴛泊の集落に向かうまでの間に日帰り入浴施設があるのだ。 利尻富士を眺めながら入れる温泉施設ということだが、当然ながら利尻山は雲の中。でも、9時間歩き続けた後すぐに汗を流せるというのは本当にありがたい。 この日は普通に平日だったが、明らかに旅行者っていう風情の人より家族連れがなぜか多かった。広い露天風呂に浸かり、上がった後は休憩所でしばらく横になった。すぐに睡魔が襲ってくる。 温泉後はそのまま鴛泊へと向かう。夕方になったこともあり、曇った7月の利尻は本当に肌寒かった。 |
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セイコーマートで酒の買い出し。夕食には味付きジンギスカンと野菜炒め用のカット野菜を購入。その他にもつまみをいくつか買って野営場に戻った。 テントの傍らで夕食を作っている間も、下山者がパラパラと下りてきていた。下山するにはちょっと遅過ぎる時間である。 なかなか訪れることができない遠い山だけに、登頂の余韻は格別だった。 |
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