車中泊した道の駅は国道45号の思惟大橋(洒落た名前だな)の袂にある。
これがまた豪快な橋で、尋常じゃない深さの谷間を一発で跨ぐ。そういや海の近くを走ってたんじゃなかったっけ!?

海岸からこの距離でこの地形なのが三陸。すげーや。

     
 
                                                     
    谷底を走る心細い道に入ってみた。
見上げるは先程走った思惟大橋。この高さである。
 
                                                     
   

結局と言うか何と言うか、昨晩も大雨に降られ、路面はまたまたウェット。 結果的にテント泊して面倒なことにならなくて済んだ。。のだが、天気は回復するんじゃなかったっけ?

また天気(ていうか天気予報)に騙されたらしい。バッチリ晴れる予定だったのに。。

 
                                                                           
 県道44号 岩泉平井賀普代線

北山崎

海沿いの県道44号を走って、昨晩蠅の強襲を食らった明戸キャンプ場を過ぎ、北山崎の展望台へとやって来た。
昨日の夕方、無念の敗退に終わった鵜ノ巣断崖に並ぶ、三陸の断崖絶壁海岸を堪能できる場所として名高い。それだけに駐車場も広く、土産物屋やペンションが立ち並んでいたが・・・駐車場でもはやこの状態。。雨は強さを増し、ビニル傘を片手に展望台を目指す。

言わずもがな。

ここは雲の上かい。真っ白い空間の中に突き出す展望台の視界は全くもってして0%。ほんと何っにも見えません。
ここから本当は一体どんな絶景が拝めたのだろう??ちょっとでも微かでも見えればその全貌を想像できたろうに、、まったく不可能。
まぁこれだけ視界がきかないと、雲の中に突き出しているかのような展望台に立っているのは不自然な感じがする。
ある意味、絶景なのかも(んなわきゃない)

   

黒崎展望台

最後の勝負は黒埼灯台の展望台。
ま、北山崎からほとんど離れてないので、さっぱり期待できませんが。

                                                         
                                       
さっきとは違う場所だからね、一応

こっちでは何とか少し見えた(全然迫力不足だけど)。これだけだったらこんなもんかいという感じだ。

延々と続く海岸線が断崖絶壁で覆われているような、そんな景色が見たかったのに。三陸海岸のハイライトと言えるこの周辺で3戦全敗。。
いったい何しに三陸走ってるのか。。

嗚呼。        
           
 
← 黒埼灯台
                                     

今回のツーリングは、景色に関しては散々たる結果に終わってしまったが、こと「走る」ということに関しては、意外にも収穫の多かったイメージがある。

三陸の道はとにかくどこを走ってもワインディング度が高く、幹線道路であるはずの国道45号とて例外ではない。一部の区間を除けば交通量も少なく、エンジンを回しステアリングを切る楽しみが味わえる。

   
 
   
   

国道でコレだから、一歩脇道に入ると極上のワインディングが潜んでいる。今回で言えば、重茂半島の県道41号や北山崎の県道44号のような区間だ。人の気配はほとんどないものの、東北の山中のような道路の荒さは少なく、比較的安心して走ることができる。

それに加えて、今回はことごとく雨にたたられたので、その分走ることに集中できたという理由もある。晴れた日だと案外のんびりシーサイドドライブにでもなりがちだが、雨の中だと景色を楽しめない分、走りで楽しもうと腹をくくれるのだ。

ミューの低い路面でタイヤのグリップを感じ、車体と対話しながら距離を刻む。いつもより密度の濃い受け応えができる。そう思えて、天気が悪くて景色が楽しめないという不運も少しは和らいだのが幸いだった。

3回目の車検が間近に迫ったEK9。走行距離は12万kmを軽く超え、車体は決して若くはない。
あちらこちらから聞こえる軋み音、エンジンノイズ。もうオイルを替えないとダメだ。ミッションが引っかかるのはマウントのヘタリ?アイドリングが安定しないのは点火系がおかしいのか?・・
運動中にもEK9は自身の状態を刻々と伝えてくる。対話は何も操作に関することだけではない。

こういう時間がじっくり得られるのも、ロングツーリングの醍醐味だったりするのだ。

   
 

普代で国道45号に戻り、再び北上を開始する。
野田までの区間は、それまでよりもさらに輪をかけて旅情をそそるひなびた道でイイ感じ。海を右手に見ながら、緩やかにアップダウンを繰り返す。

野田から久慈まで国道は内陸に入るので、県道268号へとスイッチ。地図上では不安になるくらい細い地道のようだ。

 
 県道268号 野田長内線
     

果たして予感的中で、港町からいきなり内陸部に入って登坂路を繰り返し、かなり楽しい。

北限の海女漁で有名な小袖漁港から海沿いの道へ。
荒々しい岩壁の海岸線に沿って、やや狭めのシーサードウェイが展開する。なかなかの趣だ。

                                             
つりがね洞
三陸には国道45号がほぼ海岸線に沿って走っていて、コレを走るだけでもかなり満足できるほど走り甲斐があるのがビックリだけど、こういう枝道もやはり捨て難い。
45号はナンだカンだ言って交通量はそこそこあるんだけど、枝道の方はほとんど皆無と言っていいくらい。どこもそれなりに距離があるにもかかわらず、1,2台程度にしか会わないのだ。走りを楽しむことに対してこの要素は重要である。
         
  また、想像以上に地形に変化があって、山あり海あり谷ありで本当に飽きない。これだけのボリュームで続く起伏のある地形というのは、そうそうあるもんではない。それだけで三陸を走る理由にできるくらいだ。
                           
久慈市はバイパスで通過。三陸には所々町中を迂回する高規格バイパスがある。将来、三陸自動車道になる道路だと思うけど、もう全線開通はないだろう。今の状態で十分な気がする。
ここらで朝飯を・・と思ってたけど、高架で町をすっ飛ばしてしまったので機会を逸してしまった。

久慈からはなぜか、国道を走る交通量が極端に多くなってしまった。のろのろ隊列を組んで、我慢の走行が続く。。

やがて青森県に入り、すぐに県道1号へと折れる。三陸ドライブ最後の枝道へと進入。

   
     
 県道1号 八戸階上線
  海沿いの林の中を疾走し、いくつかの海水浴場を過ぎる。
海岸の景色が良くなってきたら、そこは種差海岸、大須賀海岸。
ちょうど半島の突き出た辺りで展望台があったので立ち寄ってみる。
         
       
                 
             

葦毛崎展望台

小高い展望台からは、大小の岩が転がる海岸と芝に覆われた丘が見渡せた。こういう組み合わせって珍しくて面白かった。
ここらでようやく天候が好転。陽の光が射すようになってきた。三陸海岸のドライブも終了しようかというこの時になってようやくかい。。

また天気に弄ばれてしまった。

             

八戸

そして八戸へ。言わずと知れた国内随一の漁港を抱える港町だ。
三陸のリアス式海岸は、一応この辺りで姿を消すので、八戸をゴールと考えていた。ここからは内陸を通って徐々に帰途に着くつもり。
八戸の町はまともに通過したら時間かかりそうなので、臨海道路でショートカットした。漁港の他にも工場やらフェリーターミナルやらで、とにかくデカイ港である。

県道15号に折れる所で2度目の給油。八戸もショートカットしてしまったので、またしても食料にありつけなかった。。
     
  八戸からまっすぐに西に向かう県道15号で五戸方面へ。田んぼの中の一本道で気持ちイイ。
五戸でようやくコンビニに辿り着いた。ヘンな道ばっかり走ってるから、コンビニみたいな店には驚くほど遭遇しないのだ。日本中コンビニだらけという感のある昨今だが、こういうことやってると、そうでもないんですよ実際は。
     
 国道454号 五戸〜十和田湖

時間的には完全に昼飯になったが、ヤキソバ食って再出発。国道454号で更に西へと走り続けることにした。
454号に入ると、強い日差しが車窓から降り注いできた。澄んだ青空に大きな雲が泳いでいる。あぁ、こういう空の下で三陸を走りたかったなぁ。。

道は五戸川沿いに長閑な風景を伴って延々と続く。
東北の夏の風景を楽しみながら倉石、新郷を通過。二の倉ダム手前で急に登坂区間が現れ、道の駅を通り過ぎると完全に山中の道になった。

 

道の駅から出てきた前走車をパスした後は、思う存分アクセルを踏まさせて頂いた。

今回初めて走るドライ路面のワインディング。路面状態は申し分無く、ストレートとタイトコーナーの組み合わせも素晴らしい。
今朝減衰力を更に2段上げて出発したのがここで功を奏する。タイヤの設置感を腰で感じて、右足の動きとシンクロさせる。

タイヤが鳴る鳴る
   

それまでの鬱憤を解き放つようにエンジンを回す。B16Bの甲高いエグゾーストノートに奮い立たされて更にムチを入れ、迫るコーナー手前でブレーキング。公道なのでもちろん余力は残して。荷重の移動を感じながらコーナリング、次のコーナーに向かってすぐさまラインを読み取る。
EK9と一体になる瞬間。今まで幾度となくやってきた対話だが、まだまだ精度が足りない。精進あるのみ。

外輪山の峠付近 →

そんなこんなで、気が付けば十和田湖畔に出ていた。十和田湖を周遊する国道は、夏の日差しが木漏れ日になって路面に降り注ぐ爽快ルート。
まずは国道103号を奥入瀬方面に向かって半時計回りに周回を開始した。

 
 国道102号 十和田湖周遊(子ノ口〜滝ノ沢)
奥入瀬は間違いなく混んでいるだろうと思ったので、そっちには行かずに国道102号で周遊を続ける。
十和田湖の北側区間はほぼ外輪山の尾根伝いを走るので、南側と違ってほとんど人の手が入っていない中を走ることができる。つまり観光客も少ないので、ワインディングを楽しむにはもってこいなのだ。

この十和田湖周遊コースは、以前青森ツーリングの時に一気に一周してかなり印象の強かったルート。今回はその時の逆向きに走っているのだが、当時の記憶が鮮明に蘇ってきて、コースの先々を大方予想することができた。

 
 
まーとにかく気持ちのいいコースである。
道幅は意外なほど狭めだが、そんなに走ってるクルマもいないので気にならない。ただ、現れるコーナーは結構タイトなことが多いので、見誤らないように気をつけたいところ。
   
  ← 御鼻部山展望台からの十和田湖の眺め
  ここから見る十和田湖が一番好き
 

この展望台の駐車場でフト携帯を見ると、珍しく複数のメールが入っていた。
何だろ、と見てみると、内容がどれも「地震!大丈夫か〜生きてるか〜」的な内容だった。は?地震?

宮城県沖地震でもあったんだろうか。確かめようにもここではほとんど電波が届かない。唯一何とか届いたメールで、仙台で震度6弱ということを知った。

それ以上は携帯が繋がらなかった。住処は免震だし、会社もまぁ大丈夫だろうが、仙台にいる同僚や現場とかはちょい心配(それ以上に交通が遮断されてたら帰れなくなるので困る)
とりあえず麓に降りないとどうしようもないので走行を再開。
   
  十和田湖を丁度半周したところで外輪山を越え、国道102号をそのまま黒石方面へと向かう。
虹の湖手前で再び国道454号にスイッチ。碇ヶ関を目指す。
 
   
 国道454号 虹の湖〜大鰐
 

取り立てて特徴の無い峠越えだが、素朴な感じがするワインディング(!?)でなかなかイイ感じ。

最初から最後まで、ミニクーパー(現行のやつ)が前を走ってた。あのミニって結構速いんだよね。走行会でもそこそこのタイム出してる人もいるし。

 
水戸ナンバーで「水」色だった。ツーリング中なのかな。凄くキレイなスカイブルーだ。ああいう色のクルマでツーリングってサマになるね。ヨーロッパのツーリングスタイルを彷彿させるね。
 
それに比べたら、自分はただの俗っぽい走り好きに見えるかもねぇ。。
   
峠を降りてリンゴ園の中を通り過ぎたら国道7号にぶち当たる。7号を南へ。
この辺りで大体14時頃。そろそろ南下を始めるかといったところ(地震あったのにノンビリしてるな)
     

湯の沢温泉 湯の沢山荘

秋田県境の矢立峠近くの山中にある温泉にやってきた。
鄙びた湯治宿の趣で飾り気の全く無い外観だが、これぞ東北の湯治宿といった感じだ。
温泉は木造の湯小屋のみでシンプルそのもの。注がれる薄灰色の温泉は濃厚だ。浴室の床は温泉成分が固着して鍾乳洞みたいになっている。
これも自然が作り出す芸術だろう。いい温泉だった。

     

古遠部温泉

更に近くの古遠部温泉をハシゴ。この真夏に温泉ハシゴはさすがの私でもキツイものがあるが、好奇心の方が勝ってしまった。
こっちは国道282号から林道を1km程入ったところにある秘湯。小さな建物に湯小屋と宿泊室が収まっている。
湯小屋に降りていくと、これまたシンプルな内湯に源泉がドバドバと掛け流されている。この湯量が尋常じゃなく、浴室全体が洪水状態なのが凄い。
これまた最高レベルの温泉で大満足。今回の温泉はどれも大当たりだった。

                                     

国道282号に戻って坂梨峠を越える。
しかしこの天気の良さは何だ!?しかも暑い。今朝はあんな視界不良なまでの天気だったのに。まったくどうなっとるんじゃ。

既に16時頃でそろそろ高速にでも乗って帰りますかと考えてたが、282号を走りながら、小坂ICを通過、十和田IC通過、鹿角八幡平ICも通過してしまう。あまりに(久しぶりに)天気が良かったので、高速を走るのが勿体無かった。
これだけ雲もないドピーカンなら、八幡平でかなり極上の景色の中走れるかも知れないと不覚にも思いついてしまい、どうしてもそこまで行かないと気が済まなくなってしまったのだ。(アレ?地震はどうなったの)

 
                                       
 八幡平アスピーテライン

んで来てしまった。夕方だがまだ十分に明るい。今回最後のシメは定番のアスピーテラインだ。

平日でしかも夕方ってことで、前を走るクルマはいない。ここぞとばかりにアクセルを踏み込む。アスピーテラインの秋田側の登りは、タイトな上に勾配がある。力強くグイグイと走るにはパワーをかけ続ける必要がある。

どこまで走っても前走車が現れる気配はない。このワインディングで、これだけクリアラップがとれるケースは珍しい(ていうか初めて)。嬉々として走り続ける。

熱い走りに応えるEK9だが、ある程度のところから水温が上昇し出して下降しなくなってきた。95℃に達したところで救済措置。真夏にヒーター全開で走ってしまった。。(滝汗)

                                                 
                     
                                             
        蒸の湯から更に登り続けたところで、残念ながらミニバンに引っかかってしまったが、十分に満足できた。
そこからは八幡平の景色を楽しむ。ややオレンジ色がかった山肌と青空とのコントラストが美しい。
 
                                             
                           
                                                         
  峠を越えて岩手県側に入ると、そこは雲の中だった。山頂を境にこれだけ天候が違うものなのか。景色を楽しむことなどできずに、淡々と降りてくる他なかった。
それでも、八幡平のヒルクライムを独り占めできたのは嬉しかった。またしてもEK9と一体になった瞬間だった。
       
                                                                           
    アスピーテラインを降り切って、ようやく高速に乗った。
これで20時くらいには仙台に着くかなー上々だ、と思ってたけど、よく考えたら今日ってモロ盆休みの帰省ラッシュやん。。仙台に来てから帰省方向は逆向きだからすっかり忘れてた。仙台に向かうクルマで築館より先はノロノロだった。
幸い地震の影響はどこにもなかった。
     
                                                                           

というわけで今回の三陸ツーリングはおしまい。
結局読みが外れて、またしても悪天候に阻まれる形になった。今年に入ってから一度もスカッと晴れたツーレポがないので、今回こそは!と満を持して出掛けたのだが・・・

そんなわけで景色的にはイマイチでしたが、走行内容的にはかなり密度が高いツーリングができたんじゃないかと思います。とにかくよくエンジンとステアリングを回した旅だった。走行距離の割に余韻の大きなドライブだった気がするね。(ちなみに総走行距離は1000kmくらい)
そういった意味では、Rstyle的なツーリングの本質に近い走り方ができたんじゃないかな。天気も観光もツーリングには不可欠だけど、走るという行為に主眼を置いて、そこにコダワリを持つっていうことを忘れないで走り続けたいね。

                                                                           
     

ところで・・・

後から今回の地震について調べると、地震が発生したのは五戸の町中を走ってた頃。その五戸の震度は4だった。
いくら走ることに熱中しちゃうとは言え、この揺れにまったく気付かなかったっていうのは。。どうなんでしょ。(おめでたい人デスネ)

       
                                                                           
1日目 / Touring Top
                                                                           
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