4日目 fourth day

後から思えば、この小浜海水浴場でのキャンプは、最高のシチュエーションで凄く気持ち良かった。
静かな波音、砂浜の奥行きがほとんどないことによる海辺までの近さ、砂浜から一段上がったレベルにある芝生のスペース、テントのすぐ裏に生け垣を挟んで駐車場と、並のキャンプ場以上にキャンプに適した場所だった。
キャンプ場ではないので、積極的にオススメすることはできないが、静かに幕営するくらいなら許していただきたいものである。

早朝、水平線にまだ残る漁火を眺めながら、朝の風に吹かれる。

即席のサイトを撤収し、昨日の日帰り温泉の向かいにあった道の駅で顔を洗う。
その後、R389を南下。黒之瀬戸大橋で九州本土に渡るとすぐ阿久根、と思い込んでいたら、阿久根にはR389から国道3号へと、結構な距離を走った。

 

阿久根市街手前のコンビニで朝食。九州(特に南九州)地場のコンビニ「everyone」。今回も非常にお世話になりそうな予感がする。

阿久根市街を過ぎると、ちょっとしたシーサイドロードが待っていた。薩摩おれんじ鉄道なる鉄路が並行して走っていたが、電車と並走する機会には恵まれず。この地域の通勤時間の光景と思われるクルマの隊列に混じって、異質な練馬ナンバーのオープンカーがゆく。

                                           

県道43号 川内串木野線

薩摩川内の川内港入口で、原発方面に折れる。
川内川の河口に架かる長大な橋を渡って、県道43号。
退屈な幹線道路を外れて、海沿いの静かそうなルートを走りたくなったのだ。

 
                             
   

思った通り、原発を過ぎると前を走っているクルマも消えて、良好な2車線路を独り占め!
海沿いのルートかと思いきや、延々森林や畑地の中を行く。
そうかと思うと、豪快なアップダウンと共に、海の気配が感じられる景色に変化したり。

 

しかし、素晴らしく気持ちのいい高速ワインディングロードだ。
3、4速を主体に、緩やかなコーナーを駆け抜け、遥か向こうまで延びていくストレートを空気を裂いて走り抜けていく。

コーナー進入でわずかなブレーキタッチの変化を感じ、ロール感から荷重の変化とアシの動きを感じ、アクセルを踏み込んだ時のエンジンの鼓動を感じる。

4日目にしてようやく、走ったなぁ!って気のするシンプルで魅力的なワインディングに出会うことができたカンジだ。

                 
                                             
 

串木野市街に吸収される形で、県道43号は終わり。
国道3号で市街を一瞬走った後、国道270号にスイッチする。

串木野から日置を経て南さつまへと向かっていく道だが、なーんとなく退屈な道路。走ってるクルマも微妙に多い上、これといった景色も無いし。

そんな中、テールに「日置市」と書かれたHR-Vを見つけた。HR-Vが市の公用車!?だとしたらなかなかのセンスである(笑
この後、園芸店みたいなとこに入ってったけど・・・

                                             
 

吹上浜

薩摩半島のちょうど鹿児島市の反対側の西側のくびれ部分にある吹上浜。
南北に長い全国でも有数の砂丘とのことで、これは見ておかねばなるまいと訪れた。

駐車スペースを見つけて、小さな砂の丘をひとつ越えると、そこはもう海岸だった。

えっ・・・コレが砂丘?

・・・ただの砂浜じゃん。。

って思うのは僕だけだろうか??
あんまりにも長細過ぎるのか、全然砂丘って感じがしない。鳥取砂丘みたいに砂の丘がどでーんとあって、見渡す限り砂の丘と海、ってのを想像してたのだが。。

             

先入観に捕われるのもアレだが、それにしたって砂丘ってカンジじゃないぞ。全然砂の丘なんて無いじゃないか。(あっても草で覆われてるし)

と、砂丘という名前からくる想像と現実のギャップに苦しんでも仕方ない。とりあえずは目の前にある青空の下の海原の景色を楽しむことにする。

周囲では貝穫りが盛んに行われている。
見た目、クルマで疾走できる千里浜に似ているが、吹上浜は車両進入禁止。産卵に訪れるウミガメ保護区になっているからだ。

               

吹上浜は、ちょっと期待してただけにかなり不完全燃焼。まぁ数多く行けば、そんなのひとつやふたつあるってことさ。

吹上浜からの道が難解。
R270に戻って南さつま市街に向かえば目指す方向には行けたけど、遠回りだし市街地は微妙に迂回できそうだったことから、吹上浜に沿って適当に走る。

適当過ぎて農道をあっちこっちしつつも、海の存在を感じながらの方向感覚は正しく、結構最短路に近かったんじゃないかというルートで国道226号へと出た。

               

R226に入ってすぐに、またしてもeveryoneで小休止。
その後、国道を辿る形で野間半島の先端を目指していく。

天草からこの野間半島の辺りは、鹿児島を訪れたこれまでのツーリングでは足を踏み入れていないエリアだ。
今回のツーリングでは、これらの空白地帯を走ってみたいという思いが強くあった。
後回しにされているくらいだからスポット的には弱いかもしれないが、野間半島に関して言えば、海に突き出した岬という地形と、そこに至る国道の険しさは地図から容易に読み取ることができ、十分に足を向ける価値はありそうなのだ。

R226をどんどん走っていくと、道と周囲の景色は徐々に僻地へと向かっている風情に変化していく。

野間岬まであと少しという所で、エメラルドグリーンの海面越しに小さな半島と集落を見下ろすことができる下り坂でエスを停めた。

集落は、石垣の里で有名な大当集落のようだ。

崖っペリの狭路と化したR226。頭上に新しいバイパス路の工事風景が。

遂に先端の漁村内へと入っていくが、野間岬へ向かう道がまた冒険心をそそった。

集落内の単なる路地を看板に真っ正直に曲がって坂を上っていくと、クルマ1台がやっと通れるだけの幅しかない道路、てゆーか通用路みたいな道をどんどん走っていく。道路脇は草ボウボウで、ボディすれすれって感じ。対向車が来ないからいいものを、どこですれ違えっていうんだろう・・

               

野間岬

そんなアドベンチャーはことのほか長く感じるものである。
しかしそれは遂に終焉を迎え、広々とした駐車スペースが終点には控えていた。

野間岬ウィンドパークと書かれたクジラと波を象った碑。
そのモニュメントの前にいるのはエス、それと除草作業中の作業員のトラックが2台。周囲では草刈り真っ最中だった。

四季咲岬といい、岬の草刈り時期にバッティングしてるのか?

 

ウィンドパークと命名されていることからも推測できる通り、風の巣になる地形なのだろう。岬の丘の上には、発電用の風車がまばらに立っていた。
九州電力の施設らしく、メルヘンチックな風車の趣はまるで無い。(しかも回ってないし)

ちなみに、岬の先端までは道路は繋がっていないようで、この駐車スペースが実質先端のようだ。
岬には九電の風車以外何もないから、ここまでの道が通用路っぽいのかも。

 

なーんかさっきまで青空だったのに、ここにきて薄雲が張ってしまった。
どんより薄暗い岬の風景になってしまったが、とりあえず一番高台にある展望台に登ってみることにした。

展望台でも何人もの除草隊員が作業中だった。
僕が行くと、隊員は機械を止めて立ち去るまで待っていた。

邪魔した感じでバツが悪いじゃないか。。(イヤ、決まり事なんでしょうけど)

展望台から岬の先端を遠望

 

風の音より除草マシンの爆音が轟く平日の野間岬。
日差しも無くなっちゃったし、何となくこんなもんかーで終わってしまった。。

帰りはもと来た通用路を引き返す。
今度は対向車(いかにも商用車なバン)に会ってしまった。離合できるとこまでバックバック。
休日はそれなりに賑わうのだろうか。にわかに信じ難い、ちょっと微妙なスポットではあった。

     
         

野間岬から引き返して、引き続きR226で野間半島周遊を続ける。
半島を半時計回りに周遊しているので、ここからは南西側が海に面した海岸沿いを行く形になる。

野間岬までの北側区間は比較的道は良かったが、今度の南側はいかにも辺境の断崖路といったカンジの道が続く。

                 
 
   
モコモコとした緑の道のように見えるけど、実際は海に落ちる断崖に沿った道で、入り組んだ地形に忠実に敷かれたコーナーを繋いでいく。その距離、地図上で見てもかなり長い。けれど不思議とこういう道は、走っている時は時間を忘れるものだ。  
 
                   
                   
もう少しで坊津というところの今代鼻というちょっとした岬に展望台があったので、エスを停めた。
そこから眺める丸木浜と目の前の湾の光景が美しかった。
反対側には坊津の泊の町が見える。坊津は遣唐使の出発地。古代の要所には、その面影はほとんど感じられない。わずかに史実を知らせる案内板があるのみだ。
                   

坊を過ぎると断崖路は終焉を迎え、同時に街中の道へと変化した。
既に枕崎市街へと入り込んでいたので、そのまま港の方へとエスを走らせた。

港の一角にあるお魚センターで昼食タイム。
観光市場の2階がレストランになっていたので利用したが、いかにも団体客向けのだだっ広いだけの風情も何も無いテーブル席でカツオの刺身などをいただく。

・・・港に面した立地で新鮮な魚介類が堪能できると思っていくと、いささか後悔するかも。。

                         

枕崎は、南鹿児島地域では大きな都市なのでいろいろ店が揃っていると思い、まずは薬局を探した。
枕崎駅近くで発見し、ようやくムヒを買う。

そう言えば枕崎駅って終着駅なんだなぁ。
この後指宿方面に向かうつもりだから、日本最南端のJR駅とやらにも行ってみるかー。

 
                     

ガソリンスタンドにも寄って給油しておく。

引き続きR226を東へと進んでいく。薩摩半島の南側沿岸を沿って指宿方面へと向かう道。

となると当然ながら、やがて正面には←この山が現れる。

                                           

開聞岳

陸地と海との境目に、突如隆起し現れたかのような流麗な円錐形の山、開聞岳。南九州と言えば、霧島や桜島がシンボル的だが、開聞岳の存在感は僕の中では群を抜いている。

かつて奄美大島ツーリングの時に訪れた際は、小雨の降る生憎の天気で、開聞岳の容姿も一瞬の雲の晴れ間を突いて楽しんだに過ぎなかった。
そんな過去の経験もあったので、今回こそは晴天の青空をバックに開聞岳を拝みたい!という気持ちがあり、そのリベンジが今ここで見事に叶ったのだ。

開聞岳の南半分は海の上から隆起しているような地形なわけだが、その裾と海岸線の間には、一応道が通っている。
全開開聞岳に訪れた際にも走った開聞岳周遊道だ。

山裾の緑とやや眼下の位置に広がる海原。それとたまに畑地が見えるだけで、後は何にも無い静かな道。通るクルマも皆無。

                       
出入口がわかりにくい道だけど、その「何にも無い」風情は素晴らしいものがある。
ツーリングマップルにはオススメルートで色付けされているので、それを頼りにすればこの感覚を味わえるだろう。
忘れちゃイケナイのが、公園内のトンネル区間である。
クルマ1台通るのがやっとの幅しかない真っ暗なトンネルには、なぜか天窓が規則正しく並んでいる。
唯一その光を頼りに進んでいくのだ。

抜けたと思ったら、もう1本長いトンネルがあって、それを抜ると公園の入口の脇道に出てくる。この脇道の分岐に、唯一周遊道入口の看板があるので、こっちから入る際はコレを目印に。

ツーリングマップルには、この周遊道には所々トンネルがあって怖いとかいう注釈があるけど、実際はトンネルがあるのは公園下の2本だけ。

                                             

周遊道を抜けて、開聞岳の北側山麓へと向かう。
こちら側には大きなレジャー公園があって、そこにはオートキャンプ場もあるようなので、開聞岳を眺めながらのキャンプに惹かれて訪れてみたものの、定休日で敗北。

R226に復帰して、南薩摩路を東へ進む。
先程、枕崎で思い付いたJR最南端の駅がこの付近にある。さすがに観光スポットとなっているのか、国道からも明確な表示が出ていてわかりやすかった。

                                             

西大山駅

JR指宿枕崎線で、JR全線の中で最も南に位置する駅が西大山駅。無人駅である。

ちょっと前までは「日本最南端の駅」だったが、沖縄に駅ができてその座を奪われる形になったので、今は「JR日本最南端の駅」になっている。

 
 

明らかに後から「JR」と書き加えられた形跡のある最南端の碑が微笑ましい。ちょうどバックに控える開聞岳は、西日と重なってその姿を認めることは難しかった。

ちなみに最北端は稚内駅、最東端は東根室駅だと思ったが、最西端は佐世保駅とか。。(JR駅としてだと思うが)
こっちの方面は疎いのでよくわからないっす。

                           
 
 

この後長崎鼻に向かい、オートキャンプ場を探したが見当たらず。長崎鼻のパーキングガーデンで聞いてみたら、既に無くなったとのこと。

既に陽は傾きつつあり、あまり時間の猶予が無い。
この周辺にはもうキャンプ場もキャンプできそうな所も無いので、少し広範囲に探してみたところ、指宿温泉の休暇村にキャンプ場があるのを発見。
そこがダメなら、諦めて鹿児島市内のビジホにでも泊まることにした。

 

指宿温泉街に向かってR226を走っていくと、やがて海沿いに立ち並ぶ温泉ホテル街が目の前に見えてきた。

この温泉街を通り抜け、市街地を通過して田良岬に程近くに休暇村指宿があって、その敷地の一角にオートキャンプ場があったが、やっぱりというか、門はチェーンで固く固く閉ざされていた。。

休暇村のオフィスまで行けば受け付けてもらえるかもしれなかった、こういう拒絶感満開のキャンプ場で金払ってまでキャンプするなどという気は起きないのだ。

キャンプは諦めることにした。

                     
     

しかし指宿まで来ておいて、温泉のひとつも入っていかないで鹿児島に向かうのは勿体無い。

指宿と言えば砂蒸し風呂だが、さらりと入っていきたい気分なのでフツーに近くの入浴施設に向かう。休暇村の近くに「こころの湯」という比較的新しい施設があるようなので、そこに向かった。

訪れてみると、入浴施設の隣には「こころの宿」という建物が併設されていた。
見た目温泉ホテルのようだが、夕刻時に入っていくのはスーツを着た出張風の会社員ばかり。ビジネスホテルなのか!?

試しに空室と値段を聞いてみると、和室が素泊まり6000円で空いているとのこと。当然温泉付き。イイんじゃない!?
ってことで、急遽鹿児島ではなく、指宿こころの宿で1泊と相成った。
 

宿はビジネスホテル以上温泉宿未満といったカンジだったが、まだ新しいだけになかなか気持ちがイイ。和室も畳の部屋があるだけのごくシンプルなものだったが、十分広くてノビノビ。

温泉は隣接の日帰り入浴施設「こころの湯」が自由に利用できた。
何種類も浴槽のある広ーい浴場。ここ最近の温泉施設の流行に忠実なデザイン。
「千と千尋の神隠し」がヒットしてから、その後の温泉施設の雰囲気は明らかに変わったと思う。基本は和風でありつつも、少し現実離れした幻想的なテイストを散りばめる。それを地でいっているような感じ。

 

その雰囲気は悪くなく、指宿だからといって砂蒸し風呂があるわけでもなかったが、満足感はあった。
メシは無いけど、大きな風呂に入って広い部屋で手足延ばして寝られるんだから贅沢なもんだ。
今回のツーリングも中盤に差し掛かったので、ここらで骨休め体力回復というのも、仕方無しとは言え悪くはない選択だろう。
今回はキャンプに拘るという当初の目標を早速逸脱しているが・・・

・・・よくよく考えたら、今日は誕生日だし(爆
コレッくらいの贅沢はまぁいいか(^ ^;;

 
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