5日目 fifth day

指宿を出発し、そのまま池田湖に向かって登っていく。
つづら折れのコーナーをクリアしていくと、やがて左手に池田湖。その向こうに開聞岳。
薄曇りの空の下、南薩摩路の風景に別れを告げる。

池田湖からは、県道17号で鹿児島方面を目指す。海沿いのR226に対して、南北の尾根筋を辿るのがこのルートだ。

   
                                               
   

県道17号 指宿鹿児島インター線

この県道17号の池田湖〜頴娃インター区間が素晴らしい。広々とした高原風景の中、延々と続く登坂車線を伴った高速コーナーとストレートが連続し、爽快なことこの上ない。

朝っぱらから心地良いGに身体を預ける。

 
                         
     

まさにジェットコースターな気分で、豪快にアップダウンを繰り返しながらコーナーをクリアし、加速していく。

この後そのまま有料の指宿スカイラインに接続するのだが、なんでこっちが無料なのか不思議なくらい、整備された気持ち良いワインディングロードなのだ。

                                               
   

指宿スカイライン

続けてその指宿スカイライン。頴娃インターから鹿児島までの尾根筋を走る有料道路。
平日のしかも朝の有料道路ときたらほとんど走ってるクルマもないだろう、と予想してたら本当にその通りだった。ずーっと一人っきり。まぁその前の17号もそうだったけど。

そんな状況なので、存分にワインディングドライブを楽しむことにした。
途中、展望ポイントとか駐車帯があったりするけど、リズム重視で立ち止まるのは程々に。

 

さっきとは打って変わって、ガードレールに挟まれた狭い(さっきが広かったからそう感じるだけだが)2車線の道路をクネクネと走っていく。

有料道路なだけあって2車線の幅が狭まることはないが、路面のつぎはぎが多くてスムーズとは言い難い。

コーナーは低中速が連続し、2速に落とすか、3速ホールドが気持ちイイか迷うような感じ。

 
 

鹿児島に近付くにつれ、何となくコーナーもトリッキーになってきたような。複合コーナー、荒れた路面、絶妙な勾配・・・♪

この道には、ツーリングの最大の楽しみであるワインディングドライブの快感が詰まっている。

加えて今日のように自分一人のために開放されたクローズドコースのような環境なら尚更のこと。
数日間掛けて楽しむロングツーリングならではの、豪華なワインディングドライブを楽しませていただいたわけだ。

                                           

指宿スカイラインは谷山ICから、高速道路のように中央分離帯付き片側2車線に変化して、ワインディング区間は終わりを告げる。

そのまま直進していくと九州自動車道に入ってしまうので、鹿児島ICで下道に降りて国道10号を錦江湾沿いに行くつもりだったが、ぼーっとしてて鹿児島ICを通過してしまい、結局九州自動車道に入ってしまった(笑

まぁ別にいいやということで、そのまま高速ドライブ(^ ^;
鹿児島らしく、さつまあげのトラックを追いかける。

 
桜島SAで休憩。ここのフードコートにはさつまあげのコーナーがある。ファーストフード風にかじりつくのが鹿児島風?当然食べました。
お土産の物色もしてみたけど、日程も半分の今買っても邪魔になりそうだったのでヤメておいた。ロングともなると、荷室にそれほど余裕があるわけでもないのだ。
 
 

加治木ICで降りて(通勤割引ラッキー)、国道10号に入ってすぐ継ぎ足しの給油をする。

九州では自転車に給油する人(右端の麦わら帽子のおじさん)もいるらしい。
荷台に装着された給油タンクを見る限りタダモノではない。

               

そしてまたしてもコンビニ「everyone」だ。

北海道におけるセイコーマート程の頻度ではないにしろ、南九州(特に鹿児島)のちょっとした町に1軒はあるような気がする。(調べてないのであくまで感覚的に)

everyoneはデリカが素晴らしい(店内にパン焼き工房まである)その辺はセイコーマートと通じる部分も・・
九州の地コンビニなのになぜか九州フェアをちょうどやっていて、黒豚メンチカツが激ウマ。見かける度に食べてるような気がする。

 

R10はさすがに交通量が多かった。
ついでに日差しも強烈になってきて、乗員保護を優先してルーフを閉めることにする。

隼人で国道223号にスイッチ。霧島へと登っていくメイン道路。すぐさま渓流沿いの清々しい雰囲気の道路になっていく。
この辺り一帯は妙見温泉郷と呼ばれ、豊富な源泉が全国的に有名な所。あんまりにも源泉が多いので、野放しの野湯も数多く存在する所だ。

実は今まで、この一帯の温泉には入湯したことがない。
ぜひ今回はということで、数多くの温泉宿の中からこの温泉を選んで入湯を試みた。

 

妙見温泉 石原荘

国道と渓流の間の石畳を下りていくと、その宿はある。
和風モダンな旅館はハイセンス。落ち着いた趣は、僕みたいなツーリストとは全く相容れないようなそんな雰囲気だが、受付のお兄さんは丁寧に応対してくれた。

浮世離れした旅館の風呂は、さぞかし豪華絢爛か?と思う節もあるけど、実はその真逆なのがここの面白いところ。

                                   
 

旅館の母屋とは少し離れた所に温泉はある。

椋の木露天風呂と名付けられた男性用露天風呂には、渓流の音を聞きながら木立の中を下りていく必要がある。

その先に待っていたのは、渓流と一体化したような野天風呂!

ほんのり漂う温泉の香りも香しいが、このビジュアルに圧倒される。なんとも風流で贅沢でありながら、源泉がその場で溢れるという温泉の魅力を存分に楽しめるシチュエーション。

岩の間から湧き出る源泉を背にして、ざんざんと惜しげもなく川へと流れ行く温泉。たまたまそこに湧き出た温泉が風景と一体化して、結果的に素晴らしい景色が目の前に存在しているのだ。

温泉は鉱物の香りが豊か。特に炭酸成分が多いようで、身体への泡付きが非常に豊富。掛け流しであることは当然のこと、源泉が至近距離にあって特に新鮮でないとこうはならない。それだけでも貴重体験なのだ。

 

その上、この環境。妙見温泉は、温泉そのものも素晴らしいが、渓流沿いであるという立地を上手く演出できているところに人気があるのだろう。石原荘だけでもそれは十分に予測できた。

今回は露天だけだったが、石原荘には4本の自家源泉があるとのこと。雰囲気から何から隅々まで楽しむには、やはり宿泊するのがイチバンなような気がする。

 
 

嘉例川駅

妙見温泉から少し上流側に走って県道に逸れると、レトロな駅舎が残る嘉例川駅がある。

年季の入った板張りの外壁と瓦屋根に漆喰の白。大正時代あたりにタイムスリップしたかのような空気が、駅前周辺に流れていた。

御歳105歳。そのくらいになると、初代の駅舎だったりするのだろうか。
こんなふうに木造の建物は思いのほか長寿命だったりする。そして何よりも、年月と共に「味」が出てくるのが一番イイところ。

アスファルトのプラットフォームと、木造上屋のミスマッチ。時間の流れの交錯が、またイイ感じ。

結構有名な観光スポットなのか、入れ替わり立ち替わり観光客が見学に訪れていた。(電車を待つ人はゼロ)

                             

R223に戻って次なる温泉へと向かった。

旅も5日目に入り、幾分のんびりしたいなという気持ちと霧島温泉郷に至るルートが重なって、今日は温泉三昧にしようか、と気持ちは傾いていた。

九州に来れば温泉ハンティングが当然だった過去のツーリングを思い出し、少々ペースを緩めてでも、ここでしか味わえない温泉を探索しよう。
そう思うと、今日は霧島周辺を走って温泉と高原ドライブを堪能しようという気になった。

そう思って気分が高まった矢先のラムネ温泉は定休日(涙
まぁ正確にどこに行くと決めているわけではないし、霧島にはたくさん温泉があるから別に問題無いけど。

ラムネ温泉はまぁついでだったけど、温泉はだいたいココとココ、って具合に頭の中では自然に決まっていた。
どこも唯一南九州に訪れた前々回の奄美ツーリングで、興味あっても選から漏れた温泉たちだ。

R223を霧島に向かって北上する。

やがて霧島温泉郷の中心部の温泉街に差し掛かり、県道1号にスイッチ。直後から急勾配の低速ワインディングが始まって、噴出する温泉の湯煙の中、霧島連峰の高原地帯に向かって駆け上がっていく。

県道104号との分岐を過ぎると、ワインディングは一転、長大ストレート主体の高原ルートに切り替わるが、残念ながら展望は無し。

 
 
 
えびの高原のレストハウス前を通過し、そのまま県道1号を進んでいくと、ようやく展望が。
霧島連峰、韓国岳山麓の賽の河原が見えてくる。
   
 

高原の空は薄曇り。小高い山は全て雲によって隠されている。

奄美ツーリングの際にも訪れているが、この場所(正確にはえびの高原市営露天風呂)で、当時の愛車EK9のダイナモベルトが裂けるというアクシデントが発生した。
そんなちょっと苦い思い出が残る地でもある。

                                           
 

霧島新湯温泉 国民宿舎新燃荘

その苦い思い出に関わる温泉が、今日2つ目の温泉だ。
今来た県道を鹿児島県側に戻って、県道104号に入ってすぐにあるのが霧島新湯温泉。国民宿舎という名前が付いているが、見た目はどう見ても素朴な湯治宿風。

奄美ツーリングの際は、クルマのトラブルとGWによるあまりの混雑度に、入浴を回避した温泉だ。

さすがの人気温泉も、平日の昼間とあっては閑散としたもの。それでも相客は数人いたが。

先程の石原荘の半値以下の入浴料を払って湯小屋へ。
男女別浴の内湯がこの湯小屋の中にあるが、一応屋根で覆ってある程度の、気密性もへったくれもない小屋。
ちゃんとそれには理由があって、硫化水素が溜まらないようになってるわけ。

内湯は人が入ってたので撮影は遠慮したけど、開放感抜群の混浴露天を代わりにパチリ。
内湯も似たようなカンジです。

素朴を地でいく湯治宿の温泉は、浴感たっぷりの白い濁り湯で、皮膚病やアレルギーによく効くことで有名だそうだ。
その名声に頼って、全国から患者が訪れるらしい。その温泉とこの素朴さを、延々と守り通そうとする精神も素晴らしい。

本物志向の温泉好きに、是非オススメだ。

                               

新燃荘で茹で上がった後、県道104号をそのまま行く。
霧島神宮の裏道的なルートで、神宮の古宮跡の前を通って、県道480号に番号を変えて現神宮に至る道。

以前走った際には、木漏れ日が美しい森の道、という印象だった。
森の道、という印象は変わらなかったが、以前とは違って感じられたのは、舗装がやたら良いっていうことくらいかな(笑

                               

霧島神宮

定番ですが、やはり前回は、前を通っておきながらトラブルの後遺症(?)で通過しちゃってたスポット。

その仰々しい名称から、どんな巨大な社殿群なんだろう?と期待していったが、朱塗りの本殿以外にこれといった見所がなかった。。。

                               

神宮を出発した後は、R223を東に行ってみることにした。
地図では霧島バードラインの一部になっており、木々のトンネルが気持ちいいとか交通量が少ないとか書いてるので、走ったら面白いんじゃないかな、と考えたからだ。

ところが、バードラインに入るなり空はドス黒くなり、路面はウェット。しかも前を塞がれ対向車に水しぶきを浴びせられる。

どこも気持ちいい道なんかじゃなかった(- -;

 
     
 

暗闇の木々のトンネルを抜けた先にある御池に寄ってみたが、土砂降りの後の泥濘が湖との間に広がっている上、今にも再び泣き出しそうな怪しい空。
そのまま踵を返すことにする。

期待と正反対の悪条件が重なって印象が悪くなってしまったR223を、また再び引き返した。
そのまま抜けてしまえばよさそうなものだが、まだ霧島で入らなければならない温泉があるのだ。

     
                           

さくらさくら温泉

霧島神宮近くにある温泉宿。名前の由来は知らないが、泥湯系温泉として結構有名な温泉である。

泥湯というと真っ先に思い浮かぶのは、別府の明礬温泉「別府温泉保養ランド」。アレは強烈。
あと入ったことはないけど、北海道の登別温泉に川の野湯がある。
それと霧島のこの温泉で、全国的に見てもそれくらいしかないのが泥湯。霧島のそれはどういったものか、興味津々で本日3湯目の入浴に向かう。

民家調の建物の内部を進んでいくと広い脱衣場に出る。
一部工事中のようでブルーシートがかかっていて工事機械の音がしていたが、温泉自体は問題無く入れる模様。

まず内湯に入ったが、別に泥ってカンジもなくお湯が灰色なだけで普通に温泉。
すぐに露天へと移ったが、湯船が3つくらいある広い露天って以外は割と普通。

うーん、どの辺が泥湯なんだろう?

と考えていたら、泥溜めを見つけた。
別府のように田んぼのようなモノを想像していたが、ここのはあらかじめ採取された天然の泥を、自分で塗ったくる仕組みのようだ。全身に塗って10分くらい放置し、泥が乾き出した頃に湯に入れ、という説明書きがある。

早速泥パックを試してみる。全身に塗った状態でじっと待つのは端から見ると異様だが、ほとんど相客はいないし、いたとしてもみんな同じことをやるので別にどうということはない。(知らないで来て見たらビビるだろうが)

乾いた頃に湯に入って泥を落とすので、なかなかコレが落としづらい。が、ゆっくり温まってるうちに、肌がスベスベになったことを実感。泥パックはダテじゃない。しかも天然で成分豊かな温泉泥なら効能抜群。
間違いなく女性にオススメできる変わり種温泉。施設の雰囲気も、田舎風の落ち着いた感じでなかなかイイ。

ちなみに天然泥はお土産でも売っていたが、高価で手が出なかった。やはり当地に来て体感せいということなのだろう。希少な泥湯、近くに来た際は是非。

 

温泉に3つも入って結構ウダウダしてた時間もあり、ほとんど霧島周辺でしか動いてないにもかかわらず、すでに時計は17時に近付いていた。
早いうちから霧島周辺で温泉巡りと決めていたので、この停滞っぷり(笑)は一応想定内。そして本日の寝床も頭の中では抑えていた。

その寝床となるのが、霧島高原国民休養地キャンプ場。霧島温泉郷からやや下りた所にある広大な芝生のキャンプ場。霧島では割とメジャーなキャンプ場なので、こんな平日真っ直中でもきっと大丈夫だろう・・という期待感が大きいのが選択の理由だったりする。

いざ行ってみたら、さすが、ちゃんと管理人常駐で受付可能だった(^ ^
が、こんな広いサイトで本日テントは僕の1個だけ。その分(!?)雨降りそうだからなるべく高い場所に立てた方がいいよ、とアドバイスを受ける。ついでに買い出し用のスーパーの場所についても親切に教えてもらった。

オートキャンプ場じゃないから安く済むだろうと思っていたサイト使用料が、実は今回のツーリングで使用したサイトの中で最高額だったことは思い出さなきゃ別にどうでもいいくらい、確実で平穏なキャンプができそうで(毎回裏切られる九州だけに)嬉しかった(笑

 

教えてもらったスーパーは、絶対訪ねなきゃ入り込まないような所にあった上に、結構充実していた。

帰ってきて早速テントを立てる。エスの近くでテントを張れるのが嬉しい。
嬉しいのだが、このエスが停まっている舗装路は、芝生の広場の周回路になっていて、ウォーキングと犬の散歩でやたらと通行量が多い(笑
ちゃんとキャンプ場の中でキャンプしてるのに、衆人に晒されているような気分なのがちょっとテンション↓。。

                               
今回持参しながらも今まで使用の機会に恵まれなかった焚火台が、ここにきて初登場。
ちなみに炭は天草のホームセンターで買ったもの。ようやく使う時が来た感じ。(ここまでただのお荷物扱いだっただけに)
 
 
   
  炭に点火したということは焼肉!まぁ豪華(笑
個人的には砂肝焼いたのがヒット!
もう若くないので油コテコテのカルビとかは必要なくて、鶏肉とか内蔵とか、そういうのが好みのオッサンです(爆
                   

霧島高原だけに、夜は冷え込むだろうと心配していたが、そうでもなかった。どっちかっていうと雨が心配だった。
ここまで幸いにして、ここぞという時に雨にたたられてはいない。降ったのは移動日の初日の夕方の一瞬だけ。
このままイケると思うのはムシが良過ぎるので思ってはいない(イヤ本心では降らないと信じている(爆)が、できれば日中はもってほしい。この先も。

そんなことを考えながら、ちょうど中日となった5日目の夜を過ごした。

                                           
4日目 / 6日目