Epilogue・・・


長い屋久島の旅が終わった。

初めて1カ所に滞在するというツーリングをやってみたわけだが、これは思った以上に面白いものだった。
クルマで旅をするという前提ならば、ノマドのように移動しながら各所を旅するスタイルがマッチする。それには揺るぎがない。バリエーションとして、場所によってはこういったツーリングスタイルもまた格別、ということだと思う。屋久島はその変則スタイルに、バッチリはまったようだ。

離島ツーリングは毎回密度の濃いものになっているが、今回のは特別色濃いものになっているような気がする。
クルマで走ることもさることながら、自分の足で歩いて島を感じる場面も多く盛り込んだ結果だ。

旅の3日目の宮之浦岳。
九州最高峰の洋上アルプスの主は、島中心部の深淵近くにあり、容易に近付くことを許さない位置にある山だった。

キャンプツーリングの道具を持ちながら、1泊以上を登山途中で要するだけの装備をエスに積んで行くことは、当初は不可能だと思っていたが、案外できるものである。装備は厳選し、軽量化というより「低容量化」に励んだ結果であることは付け加えておきたい。昨年までのロングツーリングの荷物そのままでは到底無理だっただろう。

そこまでしてチャレンジした宮之浦岳は、屋久島なら避けては通れない「雨」という状況の中でも、何とか計画通り制覇することができた。
雨は降るわ降るわで、結構サバイバルな状況もあったりしたが、それも原生の森や山を歩くことの醍醐味のひとつとして楽しめたような気がする。
     

その翌日の、縄文杉やウィルソン株が点在する大株歩道のトレッキング。

縄文杉はウワサに違わぬ巨大さで神々しい存在感を感じた。ウィルソン株や幾多の巨木も然り。宮之浦岳から下りてきて、小屋に泊まって山と森にすっかり染まった後に出会えたのがまた良かった。

本編でも書いた通り、島一番の人気スポットである縄文杉へは、荒川登山口から日帰りでピストンが通常になる。

しかし、その途中の道が単調だったり、タイム的な余裕がないことによってゆっくり森を楽しめないことから、この人気コースは正直どうなのかな、と思わざるを得ないのだ。多くのツアー客と列をなして、後ろからつつかれながら急いで歩く森って楽しいだろうか?

ある程度歩き慣れは必要だけど、ちょっと滞在時間を長くして、じっくり森に入ってみることが、屋久島をより濃く味わう上で必要なのかなと思う。

     

そして7日目の白谷雲水峡。

素晴らしかった。屋久島に来たならここだけはハズせない。

ズバリ宣言してしまうと、縄文杉に行くのに1日費やすなら、白谷雲水峡をゆっくり1日かけて散策した方がいい。
その方が、屋久島独特の原生の森を味わうことができるような気がする。

縄文杉に行く途中の大株歩道もいい森だが、いかんせんいつも人が多い。(と思われる)
それに対して白谷雲水峡はそれほど混雑していない。特に白谷雲水峡の原生林歩道からもののけ姫の森、太鼓岩に至るコースは絶品だ。名も無き巨木と苔の織りなす森のハーモニーは、これぞアジア随一の照葉原生樹林が残る屋久島である。

縄文杉もいいけれど、そこに至るコースに時間がかかりすぎる。歩き慣れていないと結構ツラいコースでもある。それに対して白谷雲水峡は、道はさほど険しくないし、最初から原生の森を堪能できるので、ライトにトレッキングしたい人にもオススメできる。それでいて、どこにもないここだけの森の景色を堪能できる。

屋久島に来たら、白谷雲水峡、である。

 

以上は、自分の足で歩いた場所の感想。
ツーリングは本来、クルマで走った記録であるので、あくまでこれらはオプション的な内容に過ぎないのだが、相当準備の必要な行為だったので、メインにすり替わってるような気がするのはご愛嬌(^ ^)

本来のツーリングとしては、6日目の屋久島一周、ここがメイン、てゆーかここくらい?になってしまった感は否めない。
当初は、種子島にも寄ろうかとか、帰り道に九州縦断でどこ走ろうかなどいろいろ考えてはいたのだ。
しかし、想定外だった台風の襲来に加え、屋久島が想像以上に濃い島だったこともあって、屋久島に注力する結果になった。

ツーリングの内容が、様々な状況で変化していった結果なのだ。当初より決め込んだ計画をなぞるように旅するよりも、その時々の状況と気持ちによって行程が変化していく旅っていうのが旅らしくあり面白い。
その結果がこのツーリング、ということにしておこう(^ ^;

ただこれだけは。

屋久島に滞在したのが7日間。山に入っていたり、台風で全く動けなかったりした日があるので、実質エスで走っていた時間というのは限られる。
それでも島内で走った距離は、なんと700kmをオーバーしているのだ。屋久島7周分である(爆
2日間ひたすら走り回った奄美大島でさえ400kmそこそこだった。いったいどこでそんなに距離を稼いでいたのか。

これはキャンプ場の位置に原因があると思われる。どこに行くにも遠いのだ(笑
ただキャンプ場自体は居心地良かったので、別に選択に失敗したというわけではない。計らずも多く走ることができたと思ってるくらい。

屋久島は一周がちょうど100km程度だったので、距離感の参考にしていただければ。

 
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R style 屋久島ツーリングガイド

島ではいろんな人に出会い、お世話になった。
また、ここはなかなか素晴らしいという場所も多く、ガイドブックだけではわからない評価の部分でもあるので、ここでちょっと紹介しておこうと思う。

 

・フェリー「屋久島丸」

屋久島に行く交通手段は、通常は飛行機か高速フェリー。でもクルマで行く場合は、普通のフェリーしか選択肢が無い。今回利用したのは「屋久島丸」。ピンクのラインが目を引く船体は、船内リニューアルが済んでいて快適だった。
オフシーズンだったため空いていたが、クルマを載せる場合は、基本的に予約が必要。クルマが無く乗船するだけなら、もっとも安価な交通手段になる。(時間は一番かかるけど)
ちなみに今ならETC高速1000円乗り放題に便乗したキャンペーン中で、通常運賃よりかなり安く乗れる。

URL:http://www.yakushimaferry.com/
TEL:099-224-2468

 

・タクシー「まつばんだ交通」

荒川登山口から淀川登山口に移動する際に利用した島のタクシー会社。島内ではタクシーだけでなく、同社の観光バスも非常によく見かける。
特に宮之浦岳を縦走で登る際には交通手段が限られるので、バスの時間が合わない限りはタクシー利用になる。
運転手氏の印象が非常に強い。予約配車の際の対応も丁寧で良かった。それだけの理由でオススメしておく(笑

URL:http://www.yakushima.co.jp/
TEL:0997-43-5000

 

・キャンプ場「屋久島青少年旅行村」

栗生にある総合野外活動施設。芝生のサイトの他に、コテージや集会場もある。
芝生のフリーサイトはとてもキレイ。よく手入れされている感じ。ここを管理してるおじさん(軽トラで現れるのが全く似合わないアウトドアマン風(笑)は、いろいろ気にかけ良くしてくれた。
島内には他にもいくつか民間のキャンプ場があったが、宮之浦からはるばる来て(遠い・・)滞在する価値はある。フリーサイト料金は200円/張、入村料400円/人。営業期間は4月〜10月。

住所:屋久島町栗生字塚崎2911-2
TEL:0997-48-2871

 

・尾之間温泉

尾之間の集落にある共同湯。町の中心部の交差点を北側に入っていくとある。
普通の町の銭湯的感覚で入る(実際そんな位置付けなのだが)と驚く。浴槽の底は砂利になっていて、そこに直接湧き出る自噴源泉なのだ。ほのかな硫黄臭に気分が休まる。200円で入れるのもいい。

営業時間:7:00〜21:00

 

・ガソリンスタンド

行ってみてビックリしたのだが、屋久島にはガソリンスタンドがたくさんある。おそらく、観光客の多くがレンタカーを借りるから、と推測した。ただし離島価格に違いは無い(汗
ほとんどが島を周遊する県道沿い、特に宮之浦から安房、尾之間間にある。セルフスタンドも2件ほど。当然ながら西部林道には無い。ほとんどがエネオスである。
屋久島はクルマで行ってもガス欠で困ることは、たぶん無い。

 

・スーパー「わいわいらんど」

滞在中よく利用したのは尾之間のAコープだったが、これはキャンプ場に近い(ていっても相当離れてたが)から。
一番印象に残ったのは、宮之浦の総合病院前にある「わいわいらんど」だ。
日用品から業務用の食材までいろんなものが売っているが、特に総菜の充実度が素晴らしい。「三岳」も売っている。多分ここで買うのが一番安い。

住所:屋久島町宮之浦2464-17

 

・屋久杉工芸品店「杉の舎」

本編には登場しないが、屋久島特有の屋久杉を加工した工芸品を扱う店。屋久杉工芸品は、島のいろんな所で売られているが、屋久杉工芸品だけを扱うのはここだけとか。
高価な工芸品が大半を占めるが、お手頃だったアクセサリーを購入した。ちょっと洗練された想い出の品を求めるなら、訪れる価値あり。屋久杉で箸を作るワークショップも開催している。空港前の交差点付近にある。

営業時間:9:00〜17:00
TEL:0997-43-5441

 

・民宿「清流」

宮之浦の町中にある民宿。泊まってはいない。だからどんな宿かもわからない。
じゃなんでここに書くかというと、最後に宮之浦の神社で出会ったカリスマばあちゃんが経営する民宿だからだ。
昔からある古風な民宿っぽいが、屋久島は旅人を受け入れる民宿やゲストハウスが多いので、そういう感覚で行くならOKかと。話したその日は、筑波大の学生グループが泊まっていると言っていた。リピーターに愛されているようだ。レンタカーも扱っているらしい。

住所:屋久島町宮之浦132
TEL:0997-42-0036

 

クルマで島に渡ったので、島の交通手段はタクシー以外は不明である。ま、ここ読んでくれてる方は、屋久島に行くならきっと愛車で渡ってくれると思う(^ ^;;)ので関係無いかな。
島内にはレンタカーがやたら走っている。観光の島だから当然だろう。バスも走ってるが、本数は?である。
また、レンタバイクもあるが、雨がやたら降るので覚悟の上で。

ちなみに今回フェリー代が安く済んだ上、滞在期間が長かったので、レンタカーを借りた場合と比べてもコスト的に安かった。
まぁクルマを借りるなんて選択肢は、ハナっから無いんだけど。

 
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恒例のロングツーリングデータ。

総走行距離:3577.4km
ま、今回は特殊なのであまり参考にならないけど。(鹿児島往復だけで2800km近い(爆)

平均燃費:11.80km/L
島内ぐるぐると、高速道路のみって感じだけど。
一番悪かったのはやっぱり島内で、10.36km/Lてのが1回あったけど、あとは全部11km/L台後半以上の数値を叩き出していた。

 

かなり特殊な内容だった今回のロングツーリング。
離島のツーリングは昔から継続的にやっているけれど、そこに滞在するというのは初めてだった。
それもこれも、屋久島にはクルマで訪れるだけでなく、歩いてこそ得られる素晴らしさというのがあるから、という気がしたから。

屋久島に行こうかな、とぼんやり思った時、どうせ行くなら宮之浦岳に登ってみたいという欲が出た。
しかし宮之浦岳に登るには、いろんな問題があった。荷物の量の問題と、単純に体力の問題(^ ^;
前者は先に書いた通り、戦略的に装備を整えて可能にした。
後者にはトレーニングしか無いので、1ヶ月前から連続的に、八ヶ岳、剱岳といった険しい山に登って鍛えることによって自信をつけた。この山登りトレーニングは効果テキメンで、余裕を持って屋久島の山と森を歩くことができた。

いろいろ戦略的に屋久島ツーリングを組み立て、それが結果的にこういった想い出深い旅になったというのが感慨深い。
現地に行った後に台風が来て、どうなることかと思ったけど、それも旅にイレギュラーな要素が加わったという結果論として、良かったんじゃないかな、と今になっては思っている。

これからもこういうツーリングをするかというと、それに適した場所があればあり得るけど、たぶんそんなには機会が無いだろう。あくまでバリエーションのひとつということになりそうだ。
ただ何年もツーリングやってきて、マンネリするどころか、こういうバリエーションを考え計画して楽しめるということが嬉しい。屋久島はそれに十分応えてくれた。

 

クルマで行く旅に、山歩きという楽しみを加えたハイブリッドツーリング。

元はクルマのドライブだけだったものに、その派生として山登りという趣向が加わり、過去にショートツーリングでは実行してきたものの、今回離島を舞台にしたロングツーリングで結実した。こんな楽しみ方も、やろうと思えばできるものだ。
こんな具合に、既成概念にとらわれないで、いろんな旅のカタチを探ってみたい。

 

屋久島Typhoon 2009 autumn

その旅はR style史上、エポックメイキングなツーリングとして、いつまでも心に残り続けるに違いない。

 
おしまい
 
プロローグ / Touring S2000