先週末のことですが、仕事をさっさと切り上げ(上司の顔を伺いつつ)定時で上がって、文京区にある「東京カテドラル聖マリア大聖堂」というカトリックの教会堂に訪れてきました。
今から40年以上前に建てられたこの教会堂、一度見たら忘れられないような流麗な外観が特徴で、一度内部を見学してみたい!と常々思ってたんですよねー。
そしたら昨年大改修を終えて、そのお披露目的公開イベントをやるってのを新聞の隅っこの記事で見つけて、これは何としてでも行かねばなるまい!と鼻息荒く乗り込んだ次第。
結論から言うと、こりゃ凄過ぎる!
写真や外観からは想像だにできない、とんでもなく個性的な大聖堂の空間に圧倒されてしまいました。。
教会堂の地下礼拝堂など一通り見学することができて、40年前の計画とか大改修の苦労とかが紹介されてて見応え有り。
講演会的な催しは、イベンターのオペレーションが素人同然でガッカリだったので、メインの大聖堂に向かう。
大聖堂では光のパフォーマンスと題したLED照明の動的ライトアップと、パイプオルガンによる生演奏が行われていて、幻想的な空間が広がっていた。
この建物、構造体は鉄筋コンクリートで、HPシェル構造(HP=双曲方物面)というあまり例を見ない形式で構築されている。
3次元にねじれた8枚のコンクリート壁が、お互い寄り添い支え合うようにして自立し、その隙間に生まれた空間が大聖堂になっているようなものなのだ。
ねじれたコンクリート壁が覆い被さるようにして迫ってくる大空間は、それだけで圧巻。
それに加えて、真上を見ると十字形にトップライトが配されているという演出。つまりこの建物、上空から見下ろしたとすると、異型四角形の対角線を結ぶトップライトが、十字架そのものの形に見えるのだ。
複雑な立体ボリュームに見える建物だけど、実は単純な法則による、シンプルな形態なのである。
この建築を設計したのは、広島平和記念館や国立代々木競技場、新旧東京都庁舎等を設計した、故丹下健三氏。
氏の建築の凄いところは、シンプルな形態に複雑な機能を入れ込んで、現代の建築物として無理なく成立させてしまっているとこだと思う。
それに加えて代々木やカテドラルは、構造の成り立ちからして斬新。それでいて創り出す空間や建築の存在感は、どんな建築家のそれよりも日本的なのである。
(左:コンクリート打放しは松の化粧型枠模様 右:パイプオルガンは戦艦大和のような迫力)
東京カテドラルの大聖堂も、その空間に身を置いていると、今年初めに訪れた京都の古寺に佇んでいた時と同じような感覚になった。
同じ宗教空間であるということもあるだろうけど、もたれかかるようなコンクリートの壁面で覆われた空間にもかかわらず、そんな印象が色濃く残ったのだ。
丹下氏は教会の空間とは何ぞや?というところからイマジネーションを広げていったのだろうが、意図してその日本的なる空間を教会空間に重ねて創造したとなると、とにかくすげぇーと言うほかないのだ。。
この建物が竣工したのは昭和39年ということで、施工の困難さは推して知るべし。
しかし技術的困難さを知恵で解決していくのは、現代にだって必要な能力。高いハードルが技術を押し上げるのは、今も昔も変わらないはず。
困難な問題に果敢に取り組んで成功を収めたとき、感動を与える創造物ができるのだと思うのだ。(プロ○ェクトXみたいだ・・(爆
シンプルでありつつ前衛的な造形、それを解決する技術力。
何も名建築に限ったことではなく、クルマのトータルデザインにも通じると思いませんか?(そこに繋げるか(笑
エンツォやクアトロポルテをデザインした奥山清行氏だって、とにかくシンプルな造形を心掛けているそうだ。(「シンプル」はピニンファリーナの哲学でもある)
余分な造形や奇をてらった装備品なんかなくていい。
一貫したデザインでシンプル、それでいて個性的、っていうようなクルマが身近にもっと溢れてこないかなぁ。
(一連の写真は画像を加工しているわけではなく、ホントにこういった様々な色彩にライトアップしているイベントだったのだ)
ハナシは逸れたけど、幻想的なライトアップもさることながら、厳かに反響するパイプオルガンの音色もファンタジックで凄く良かった。
とにかくいろんな意味で貴重な空間体験で、いやぁ感動しちゃったなぁ。