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9月 182023
 

2023 09 09 09

スリーブを挟み込むように設置される、計4本のシフトフォーク。
複雑な形状の金属部品が溶接固定されて、鈍い輝きを放っています。
こんなところにも、剛性を高めシフトフィールを良くするこだわりがあるというわけ。

シフト操作の動きを伝えるレバーとの接触面も、艷やかに磨きを入れてもらいました。
磨きの入っていない接触面と比較すると、一目瞭然。
金属との接触面において、引っかかりのないスムーズな摩擦面とすることで、シフトフィールの向上を狙っています。

磨いていないフォークは、要交換部品なのかも。(未確認)

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カウンターシャフトにシフト操作を伝えるレバーの先端もこの通り。

ここまではミッション内部の部品と、その加工状況でしたが、以下はミッションケースについて。
ケースは基本的に再利用に支障はないので、ブラストかけた上で再使用します。

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ブラスト処理する前のクラッチケース内部。
軽く汚れは掃除してあるようですが、バラした直後も割ときれいな状態でした。
最後にクラッチ交換して、それほど距離走っていない(5万kmくらい)ので、当然か。

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外側のフィンの一部が、豪快に欠け飛んでいたのは衝撃的でした。(今まで気付かなかった)
岩でも巻き込まない限り、こんな割れ方しないと思いますが・・・身に覚えがないこともない– -;

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ケース交換も考えましたが、シリアルナンバーも入っているし、実際の走行には支障がないとのことだったので、再利用することにしました。
傷口を研磨してもらったら、あたかも最初からあった「逃げ」加工のようになりました(笑
その他の部分についてもバリ取り。その後、ブラスト処理の予定です。

 

さて、ここまでバラした部品を眺めつつ、お勉強の成果を報告しました。
あとは組み上げと取り付けを待つのみ。完成時期未定ですが、取り付け完了したら、また続きを報告します。

 Posted by at 2:07 PM
9月 152023
 

2023 09 09 05

#1と同じような写真ですが、わかりやすいのでもう一度眺めてみます。
左側がメインシャフト側で、上から3速ギヤ、シンクロとスリーブを挟んで4速ギヤ、5速ギヤ、シンクロ・スリーブ挟んで6速ギヤ。
右側がカウンターシャフト側で、上からリバースギヤ、1速ギヤ、シンクロ・スリーブ挟んで2速ギヤ。

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これらギヤの集合体は、ニードルベアリングを介して、それぞれのシャフトに取り付けされます。
真ん中がメインシャフト、下がカウンターシャフト。(上はセカンダリーシャフト)
メインシャフトには3〜6速のギヤが取り付きますが、左から2速、1速の各ギヤが最初からシャフトと結合しています。

対するカウンターシャフトには1〜2速が取り付きますが、左から6速、5速、4速、3速の各ギヤが最初からシャフトに結合しているのがわかります。
つまりメインとカウンターは、ニードルベアリングを介して取り付くギヤと、シャフトに結合しているギヤのそれぞれが向かい合うように配置されることになります。
ギヤは常時噛み合って回転し、シフト操作によりスリーブが動くことで、シンクロを介して動力が伝達されるわけです。

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このシャフトに「結合している」ギヤは、よく見たら何と一体成型!、つまり削り出しなんですね。
もちろん剛性があったことに越したことはない部分ですが、コストも技術も求められる部分に妥協がないのは、さすがホンダのスポーツモデル。
金属加工技術が生み出す芸術と言っていいレベルの機能部品に、ずっと眺めていたいくらい惚れ惚れとしてしまいます。

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先程スリーブという部品が出てきましたが、シフトフォークによってスライドするこの部品の内側には、剣先状の突起が成形されています。(写真上部の部品)
これが写真中央のシンクロナイザーハブに嵌合していて、一体となって回転しているのですが、スライド方向の動作を許容します。

シフト操作を行うと、スリーブが動いて剣先状の突起がシンクロナイザーリングを介して、各ギヤの突起と噛み合います。
シンクロナイザーハブはシャフトとセレーション結合しているので、スリーブがスライドして噛み合った先のギヤに動力が伝わるという仕組みなわけです。

で、その剣先状の突起ですが、これがシフト操作の度にシンクロナイザーリングやギヤ側の突起に点的に衝突を繰り返すので、スリーブ側とギヤ側の突起が摩耗します。
これが度を過ぎると、ミッションのフィーリング悪化やトラブルにつながるというわけ。

逆に言うと、この部分の金属同士ができるだけスムーズに当たるようにすれば、フィーリング改善には大きな効果があるわけで。
なので金属干渉が起こるこの部分を加工してもらっている、ということになります。

(つづく)

 Posted by at 8:32 AM
9月 102023
 

2023 09 09 01

北海道レポの中でも話題として出しましたが、現在、ミッションのオーバーホール中です。
バラして加工までは早かったけど、交換部品が揃うのに時間がかかったりしているため、およそ1ヶ月経った今もまだバラバラのまま。
急ぎではないので、問題はありません。むしろ、不安要素は全部しっかり潰しておきたい。

とはいえ分解中はヒマなので(笑)、バラバラになった部品を見ていろいろと考察してます。

2023 09 09 02

27万km走行で初O/Hですが、症状とは裏腹に、各パーツは思いのほかキレイな状態でした。
摩耗が進んでいて交換した方が早い、というパーツも無いことはなかったですが、距離を考えると許容範囲かと。
交換かどうか迷うパーツは、新品が出る限り、基本的に交換。それ以外は洗浄、一部研磨加工していただきます。

シンクロを司る金色と銀色の2つの山型の突起部分の隙間に、スリーブが嵌まり込むことによってギヤチェンジが完了するわけですが、その際のスリーブの接触によって、金属の先端が摩耗していきます。
激しく摩耗し角が丸まっているような状態は見られず、距離の割には状態は良い模様。
それでも手には引っかかる感触があったわけで、人間の手の感覚って鋭いってことです。

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再利用するシンクロナイザーの突起部分については、ひと山ずつ手作業で研磨を入れてもらいました。
なかなか骨の折れる作業ですが、単純に新品部品に交換して組み上げるよりも何倍も効果がありそうなわけで。
ただのO/Hではなく、オリジナルのミッションを制作してもらってるような感じです。

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一つ前の写真の金色の歯車(シンクロナイザーリング)の拡大写真。
ピンボケで見づらいですが、、内側が黒っぽくなっているのは決して汚れではなく、カーボン素材です。

AP1後期モデル(04〜05)より「カーボンシンクロナイザー」採用というのは有名な変更点ですが、その実態がコレ。
たったこれだけの変更ですが、シフトフィールや耐久性は激変するらしく、同時に2速がトリプルコーンシンクロからダブルコーンシンクロ、3速と4速がダブルコーンシンクロからシングルコーンシンクロと、シンプルな構造に変更されています。

AP1前中期モデル(99〜03)のシンクロナイザーリングは真鍮製で、これはこれでダイレクト感のある操作性になるとか。
その結果、後期はスムーズなシフトフィールで、対する前期はガチッっと入るようなダイレクトなフィールという噂は、コレが要因でしょう。
部品の違いを理解しつつ、乗り比べてみると一層興味深いかもですね。

(つづく)

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 Posted by at 1:20 PM
9月 022023
 

2023 09 02 01

レポート完結した北海道ツーリングですが、ルーティングに関していろいろコメントいただいたので、今回のGPSログを貼っておきます。

HPにツーレポを公開していた頃は地図を貼り付けていましたが、blog形式になってからはほとんどやっていません。
地図がない代わりに文章を豊かにして、想像力を張り巡らせていただくことで、旅をより濃密に疑似体験してもらう、というコンセプトを大切にしてきたからです。
今もその思いは変わりませんが、せっかく手軽に(しかもそこそこ正確な)ログを取ることができる世の中なので、データを仕舞い込んでおかずに共有しようかなと。

ログを見ながら、レポを再度楽しんでいただくも良し、次の北海道ツーリングに思いを馳せるも良し。
旅心を掻き立てることができれば、これ幸いです。

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 Posted by at 11:13 AM
8月 262023
 

2023 08 23 01

北海道6日目。
実質の最終日となるこの日は、旭川を朝一番に出て美瑛方面へと向かう。
R452からパッチワークの路に入れば、広大な丘陵地帯を真っ只中に見を投じることとなる。

久々に訪れる美瑛の丘には、人の生業が創り出す絶景が、今も変わらず点在していた。
北海道の中でも定番中の定番スポットと言うこともあり、どこかで見たような景色が連続するが、やはりその中に身を置いてこそ感じるものがある。

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広大な農耕地の中ではたらく車両の巨大さに驚く。
北海道を走っていると、公道を走っていいいのか?と思ってしまうほど様々な農耕作業車に出くわすが、それも独特の景観を形成するひとつの要素なのだと思う。

朝の丘陵地帯を走り回って、走りと景色の両方を堪能した後、美瑛駅前の道の駅に立ち寄る。

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駐車場は埋まっていたが、いずれも車内就寝中のクルマばかり。
睡眠を妨害しては悪いので、離れた駐車スペースにエスを停める。
富良野線周辺の佇まいも、旅情を掻き立てる。

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美瑛の街からは、置杵牛広域農道で十勝岳山麓方面へ。
前半は果てなきストレート。山中に入ると路幅は狭くなり、アップダウンを繰り返すという二面性を持った道。
交通量はまったく無いと言ってよく、気持ち良く走りを楽しむことができる。

道道966号に出ると、美瑛のもうひとつの道の駅と「青い池」がある。

2023 08 23 06

かつてあのAppleが、MacのRetina Displayの壁紙に日本人カメラマンのこの池の写真を採用したことで、一躍有名になった場所。
自分のMacにも一時期設定していたあの美しい風景を、実際に目にするのはこれが初めてである。
壁紙は初冬の雪の池だったが、真夏の景色も十分独創的だった。

立ち枯れた木々の足元を覆う目にも鮮やかなライトブルー。
一時期、台風の影響か何かで水質が変わってしまったこともあったはずだが、かつての壁紙のような美しい色彩は健在だった。

2023年夏の北海道ツーリングは、本州並みの暑い夏の旅となったが、色鮮やかな色彩の共演を至る所で堪能することができた。
青い池は、その極めつけの絶景と言ってもいいかもしれない。

2023 08 23 05

白金温泉を過ぎると、D966はそのまま山岳ワインディングへ。
十勝岳スカイラインと銘打たれた道は、急勾配を伴いながら十勝岳を急登していく。

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途中の望岳台で眺める十勝岳。
展望台の駐車場は広いが、十勝岳の登山口となっているらしく、1台の空きもないほど混雑している。

2023 08 23 08

振り返れば、美瑛の丘。
短い北海道の夏。登山は今がハイシーズン。十勝岳温泉の駐車場も隙間がなく、車中から眺めて終わり。

道道291号で上富良野の街へ一気に下りていく。
十勝岳スカイラインから位置エネルギーを開放したまま上富良野駅の脇を通過し、その勢いでR237も横断して突き進むと再び登り道となり、千望峠へと行き着く。

2023 08 23 10

今度は上富良野の丘陵と街を挟んで十勝岳方面を望む。
峠のイメージとは裏腹に、周囲はなだらかに畑地が続く。
その向こう側に、幾重にも丘の地形が重なり、独特の景観を生んでいる。

2023 08 23 09

視覚的な楽しみもさることながら、その起伏をなぞるように走る楽しみも忘れ難い。
高い山と美しい水の風景も相まって、素晴らしい景観特性を持つ美瑛・富良野エリア。
道北・道東エリアに流れてしまいがちだが、改めてその魅力を再認識した。

2023 08 23 11

7月なので、富良野はラベンダーの季節。というわけで、ファーム富田に訪れた。
旅の終盤で、遂にベタな観光地に足を踏み入れることとなったが、たまにならよしと自分に言い聞かせる。

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残念ながらラベンダーの開花時期はほぼ終わっていたが、収穫後のラベンダーの精油作業等を間近に見られたので、来て良かったということになった。

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大人気観光地には長居はせず、道道298号で富良野盆地を大回りして富良野市街へ。
混雑する市街地を通過し、R38で芦別、赤平方面へと向かう。

2023 08 23 14

赤平より道道114号で歌志内へ。
全国で最も人口の少ない市である歌志内市。その人口は、なんと3,000人にも満たない。
炭鉱都市の行く末を体現する山間の集落的都市の沿道風景は、どこか悲哀に満ちている。

かつて黒いシビックに乗っていた頃に開業した道の駅さえも、場末的な雰囲気に変わり果てていた。

歌志内から上砂川、R12に出て奈井江へ。
道の駅ハンティングをしながら進み、最後の三笠の道の駅が、51駅目となるチェックインとなった。
その後は道央自動車道に乗り、一気に距離を稼ぐ。小樽港を17:00に出港する新日本海フェリーに乗船するためだ。

2023 08 23 15

往路と同じ、あざれあ号に乗船。小樽を17:00に出て、新潟に翌日9:15に着く。旅の足として、理想に近いダイヤだ。
往路の出発時間(12:00)到着時間(翌日4:30)と合わせ、かなり使い勝手の良いダイヤで、いつもより北海道が近く感じられた。
過去に利用した際には、もっと航行時間が長かった気がするが、船体が新しくなったことも影響しているのだろう。

新潟港に到着し、新潟市街で給油と朝食を済ませて、北陸道・関越道で一気に帰還。
計9日間に及ぶ、夏の北海道ツーリングは終幕を迎えた。

 

・・・・・・・

 

2023年、記録的な暑さが続く夏。
涼を求めて渡ったはずの北海道は内地と変わらぬ暑さで、地球沸騰という言い得て妙な気候変動を、肌で感じざるを得ない環境だった。

気温に体力を奪われる人間を尻目に、S2000は終始好調。熱い北海道の路面にラバーを残し続けた。
唯一不安のあったミッションは、この北海道ツーリング中に限っては、気になるような操作感はほとんど発生しなかった。

今回の走行距離は3,568km、平均燃費は10.6km/lだった。
フェリーの距離が長かった分、絶対的な距離は伸びていないが、走り込んだことで得られる一体感は、しっかり身体に残っている。
ステアリングから得られるインフォメーションは常に確実、雨の中でも不安になる挙動は無く、全天候型ツーリングマシンとしての面目躍如だった。

 

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北の大地で出会う独特の景観。
時間が止まったかのような、その地にある風景のひとつひとつが愛おしい。
目まぐるしく変わり続ける世の中で、ずっとそこにある原風景は、疲れた心と身体を癒やす存在になり得るのではないか。

ふと大切なものに気付き、原点に立ち返る、そんなきっかけを与えてくれるかもしれない。

 

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北の地で嗜む食と酒。
年齢を重ね、ようやくそれを楽しむ入口に立てたような気がする。

思う存分、走った後に楽しむ食と語らいの時間は、旅の時間の魅力を増幅させる大切な要素となっている。

 

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2023 08 23 23

 

夏が夏らしいからこそ、得られた経験がある。

フロントガラス越しに見た鮮やかな原色の風景は、これまで見たことがないほど、色彩の魔力に満ちていた。
折り重なる立体的な雲は、大気の芸術。地球の息吹を感じるほどの迫力に満ちている。

そんな非日常的な境界なき空間に、吸い込まれるように走り続ける。
それは欲望であり、快楽であり、生きている証。

 

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2023 08 23 20

2023 08 23 24

 

この旅で得られた経験を糧に、S2000という小舟に乗って、これからもどこまでも突き進んでいく。

 

2023 Summer Touring in Hokkaido

いつかまた、訪れる日を夢見て。

 

2023 08 23 27

 

・・・ END ・・・

 Posted by at 5:06 PM