3日目の早朝、愛しの島、奄美大島近くを航行中
19年前のこの島へのツーリングが、自分を島旅の虜にした
出港前の乗船時風景。
今回のフェリーはそれほど大型ではないことから、乗用車と大型車、コンテナ(貨物)の積み込み口が1ヶ所に集中し、内部で階層に分かれるタイプだった。
S2000はその他の乗用車とともに、最上段の3層目へ。ロフト構造とともに、外部に開放された明るい車両甲板というのも新鮮だ。
この構造が、帰路で波飛沫の餌食となる原因だとは、この時点では露知らず。
鹿児島新港から錦江湾を抜ければ、奄美大島に寄港するまで漆黒の海原を進んでいくだけなので、船内ロビーにて酒盛りタイム。
絶妙に混み合った2等船室は、寝心地が良いとは言えなかったが、19年前の2005年に乗船した奄美行きフェリーの2等船室の惨状を思えば天国のようなもの。
目覚めた時には、既に奄美大島、名瀬港に入港した後だった。
日の昇った海原越しに、加計呂麻島を見る。
平成から令和に変わったその時に訪れたカケロマが、これまで自走で訪れた最南端の地となる。
それを越えた。いよいよ、未知の領域に足を踏み入れていく。
奄美大島以降、奄美群島の島々に次々と寄港していく。
まずは徳之島。もちろん実際に目にするのは初めて。思いのほか大きな島で、ここだけでも立派な島旅ができそうだ。
次に沖永良部島。徳之島に比べると、島が平べったく、圧倒的に小さな世界。
奄美群島の島々からは、中高生の団体が乗っては降りていく。部活の試合は隣島まで船で行くのが日常らしい。
また、停泊中はコンテナの積み下ろしが手際よく行われている。
旅客船ではあるが、その実は、島への重要な補給船であるというのが本来の姿なのかもしれない。
寄港する中で、一番小さいのが、次の与論島。鹿児島県最南端の島である。
次は沖縄本島なので、本島のすぐ北の与論島までは鹿児島県なのだ。
とても小さな島の港は、まるでサンゴ礁の上に造られたかのような、唐突感満載の景色の中の構造物だった。
船の甲板上から眺める景色は、既にコレである。早くも楽園感満喫。
港に停泊する度に外に出て、段々と鮮やかさを増幅させる景色を楽しんでいたが、目的とする沖縄本島の本部港の到着は夕方。
乗船から約23時間の船旅。洋上なので、携帯の電波は届かない。船内には一応Wi-Fiはあるが、ほぼ使い物にならないので、航行中は外部から遮断される。
船内のアメニティは皆無に等しく、何も対策がなければ、なかなかに暇である。
睡眠で時間を潰すことができる人であれば支障はないかもしれないが、あいにくそういった体質の持ち主ではない。
ただ、船旅には多少慣れているつもりなので、事前の対策は施している。今回はポルシェの雑誌がMVP。定番モノと普段触れない紙面を携えるのがR style流なのだ。
与論島を出港すると、次はいよいよ沖縄本島だ。
沖縄本島までは、ほぼ丸1日を船上で過ごすことになる。それすらも楽しみに変えて、未知の島の上陸に備える。
16:30頃、沖縄本島中部の本部港に入港。
車両甲板に戻ると、すぐに下船案内が始まった。船はこの後、最終目的地の那覇港に向けて出港する。本部港での停泊時間はほんの僅かなのだ。
本部港に降り立つと、上陸の感慨もそこそこに、真っ白な路面の国道449号を走り出す。
シーサイドハイウェイを軽やかに走っていると、やがて名護市街に入っていく。
信号待ちの眼の前には、同じ船内で異彩を放っていた沼津ナンバーのベントレーが。
下船が既に夕刻だったので、この日のホテルは本部港にほど近い名護市内に確保しておいた。
本土でもお馴染みルートイン。その佇まいと内部の設えは、沖縄らしさなど微塵もない。(謎の屋上露天風呂は異様だが)
沖縄らしさの堪能は明日以降と割り切ったうえでの、敢えての選択である。
上陸して間もない沖縄だが、その違いを身を持って知る。
雨が降っていたわけではないと思うが、空気のまとわりつき感が本州のそれとは全く異なる。
この日の名護の最低気温は25℃。昨日出てきた九州での最高気温と同じくらいである。体感が全く異なるのは当然だろう。
ホテルにチェックインしたら、近所のレストランへ。初日から、沖縄名物のステーキ!
沖縄に来たら、本場?のステーキと沖縄そばは絶対に堪能したいと思っていた。
人通りのない海岸堤防沿いのステーキハウスが至近距離にあるからこそ、敢えてのルートイン選択だったとも言える。
名護市に工場があるオリオンビールで喉を潤し、塊肉のステーキを食す。
ミディアム・レアに仕上げられたビッグサイズの肉塊は、食べごたえたっぷり。沖縄の人はこんなものを日常的に腹に蓄えているのだろうか。
とはいえ、赤身のヒレ肉はまったく油っ濃さがなく、意外とペロリと平らげてしまった。
飲んだ後のシメに、ラーメンではなくステーキを食べる文化があるのは那覇周辺だけと聞く。
沖縄本島最北端の市である名護市においても、レベルの高いステーキに巡り合うことができて、初日から大満足。
ステーキに満たされた後に立ち寄ったホテル隣のコンビニ。
コンビニ自体は本州のそれとまったく同じだが、入っている建物が一風変わっている。
店や道路は本州のそれと変わらないのに、建物ひとつひとつが独特の特徴を携えている。
多くはコンクリートでできていて、軒が異様なほどに深い。それが密集した街路景観は、日本で見慣れたそれとはまったく異なっている。
むしろ、かつてマレーシアをはじめとするアジアの各国で見た風景に近いと感じた。
更に隣のハンバーガーショップに至っては、ガソリンスタンドの如き複数台対応のドライブスルーと大きな駐車場。その風景は、むしろアメリカのようでもある。
アメリカの風景とアジアの風景が降り混ざり、そこに日本のクルマが往来しているという得体の知れない景観。熱帯を思わせる空気感が、それを助長する。
あまりの異景に、感覚中枢が刺激されまくり。
初日から、この味の濃さ。いったい明日からはどうなることやら。