
サヨナラ、OKINAWA Blue
翌朝のフェリーに遅れず乗船するために早起き。8時までには本部港に行って受付を済ませておきたい。
そのための停泊地の選択で、本部港までは5分程。この心的余裕が、見知らぬ土地では大切なのである。

7時には宿を出発できたので、港に向かう前に瀬底島に行ってみることにする。
昨日の夕方に行ったスーパーから眺めた瀬底大橋を渡る。

島にはこれといって何があるわけではなかった。
ビーチが有名なので、そこまで行けば美しい景色もあったのだろうが。
県道が行き着くところまで走ってUターン。改めて本部港を目指す。

本部港の駐車場には既に多くのクルマが停まっていたが、これらが全て船に乗るわけではないだろう。

車検証を持って乗船受付に行くが、まだ窓口は閉まっていた。
1日1便しかない長距離フェリーで車両を搬送する際は事前予約が推奨されるが、予約していたとしても、窓口での乗船手続きは必須である。
書類に必要事項を記入し、車検証を持って窓口で手続きをする。どのフェリー会社でも、このプロセスは一緒。
料金の支払いには、最近は大抵、各種クレジットカードが使える。
車両を搬送する場合は、搬送料金が高額になるのでありがたい。
今回は往復料金を先に鹿児島新港の窓口で払っていたので、手続きのみ。

駐車場から移動して、搬送車両の車列に並ぶ。
早めに来ていたにも関わらず、周辺をうろうろしていたら、最後尾近くになってしまった。
この後、神戸ナンバーの白いGRスープラがS2000の後ろに並んだ。

港の風に身を任せていると、フェリーが岸壁に近付いてきた。
往路に乗船した船体と同じ、マルエーフェリーの「フェリー波之上」。
船内の状況は、往路の23時間ですっかりアタマに入っているので、話が早い。

ギラギラのマリン塗装の船体が眩しい。
マイクロバスが何往復もしながら、徒歩乗船客を入口に運んでくる。
車両はコンテナの後らしく、いつまで経っても誘導されない。
船というのは重要バランスが重要なので、重量物を緻密に振り分けて船内に格納する。
貨物や車両は、重量バランスと荷下ろしの順序を総合的に加味して配置されるのだ。
そんなわけで、間もなく出港時間というところでようやく乗船。往路と同じ、ロフト形状の車両甲板に誘導される。
船体によっては、暗い船内で狭い隙間にバックで格納、みたいな初心者泣かせの状況が割と普通にある。
このフェリーもその類だったが、誘導員の指示に従って、慌てずゆっくりと駐車すればいい。
無事駐車したら、サイドブレーキを引き、ドアミラーをたたむ。
結構隙間なく詰め込まれるので、ドアミラーを格納していないと、隙間を歩く人や荷物が当たるリスクが大きい。
電動格納ミラーではないS2000は面倒ではあるが、フェリー内ではたたんでおくのがベターだ。
客室のある甲板に上がる際、忘れ物をしないように細心の注意を払った方がいい。出港したら、車両甲板には戻れなくなるからだ。
そのため、船内に持っていくものは事前にひとまとめにしておくといい。特に今回は個室ではないので、サンダルやタオルは必須である。
船内は冷房がガンガン効いているので、上着もあったほうがいい。今回は薄手のシーツ生地の寝袋も持参した。
船旅も慣れてくると、自然と装備品も固定されてくる。

復路も二等船室。往路は指定席だったが、復路は部屋のみが指定。
下船する港ごとに部屋が分かれており、鹿児島新港下船組の部屋は思った以上に空いていてラッキーだった。
9:20に出港し、沖縄本島の北側の海を進んでいく。
沖縄との別れが惜しく、外の甲板に出て最後の沖縄の景色を楽しむ。

進行方向右手に沖縄本島、左手に伊平屋島と伊是名島。後方には伊江島。
青い海と空に包まれた島々に見送られて船は進んでいく。
沖縄本島の北端、辺戸岬が見えてきた。やんばるドライブで訪れた思い出も、既に遠い昔のことのよう。

舳先がかき分けることで生じる波の様子を見ていると、知らずに時が経っていく。
往路とは逆の順序で、与論島、沖永良部島、徳之島、奄美大島と寄港していく。
港につく度に、上下船する人の声で船内は賑わいを増す。
昨日のスーパーで買い込んだワインとアテで、洋上の時間をのんびりと過ごす。
何もすることがない、何もできないがゆえに、こんなに何も考えなくていい時間の使い方は、とても贅沢だ。

翌朝、目覚めると洋上が黄金色に照らされていた。
遠くに見えるは、佐多岬。錦江湾に入っていく。
本土に帰還する時が来た。

8:30、鹿児島新港着岸。
そのまま港の道を走り、今度は桜島フェリーのりばへ。
どれだけフェリーが好きなんだ?という声が聞こえてきそうだが、桜島フェリーは超有用な定期便なのだ。
錦江湾をショートカットして短時間で大隅半島に行くことができ、しかも24時間!運航。時間にもよるが、15分に1便という頻度で運航されている。
この日は休日の朝だったからか、出港便待ちの車列に参加することとなったが、普段は待つこともなく乗船できる。
航行時間はたったの15分。さっきまで23時間乗っていた身としては、瞬きの如く。
先ほど紹介したような長距離フェリーのような乗船手続きはなく、料金はかつての高速の料金所のような感じで支払うドライブスルー形式。
鹿児島の日常インフラの一部として、完全定着している桜島フェリー。ツーリングにも有用である。

桜島に着岸した後は、国道224号&220号。県道479号にスイッチし、内陸部を目指す。
いったん国道504号に出た後に、県道516号&495号。
3桁県道ならではの、渋いカントリーロードをひた走る。

旅も終盤にして今回初めてと言っていい、R styleお馴染みの狭路ワインディング。
大隅半島はジャングルのようなワインディングの宝庫だが、その片鱗をまたしても見たような気がする。

とはいえ、大半がのどかな田舎道。どこが県道なのか、トレースすら難しいほどの道が延々と続く。
ツーリングマップルだけを頼りに、県道513号&523号と繋いで志布志市街へと入っていく。

大隅半島の東の入り口である志布志。その市街地の中に、ちょっとした有名店がある。

マルチョンラーメン。
志布志という、あらゆる大都市から遠く離れた地において、客足が絶えない人気店。
開店時間は7:00〜。いったいいつ仕込みをしているのだろうか。
鹿児島から足を伸ばし、ちょうど昼頃になったため、多くの客で溢れていたが、洗練され尽くしたオペレーションで恐ろしく回転が早く、まったく待った感じがしなかった。

少し酸味の効いたあっさりスープがクセになる、シンプルなラーメンが美味い。

このマルチョンラーメンに訪れるのは、今回が初めてではない。
昨年のGW、種子島ツーリングのやはり帰路において立ち寄っている。
上の写真はその際の写真であるが、1年前は店の前に下屋がなかった。
でも味は変わらず美味しい。混んではいるが、ベテラン店員のテキパキとしたオペレーションは清々しく、奇をてらわないシンプルな美味しさも相まって、すっかりファンの一人となってしまっている。

志布志で目的を達成したら、県道65号と国道222号で都城へ。
都城と志布志を結ぶこの区間は、気持ちのいい快速ワインディング。荷重をコントロールしながら、ヒラヒラと舞うようなドライビングを楽しめる。
都城市街を抜けた後は、国道10号経由で都城ICから宮崎自動車道へ。

本日の停泊地である福岡天神までは、一気に高速移動することとした。
ちょうどUターンラッシュのピークの日と重なっていたため、渋滞で時間を要することが予想されたためだ。
渋滞で体力と時間を消耗することほど、無駄なことはない。
どうしたって、少しは渋滞に巻き込まれるだろうが、最小限に抑えたい。

熊本の手前と鳥栖の先で流れが悪くなったが、なんとか最小限、に近い形で切り抜けることができた。
天神のホテルに到着したのは17:00前。上出来。
天神近くにありながら、自走式立体駐車場が付くビジネスホテルがここ最近のお気に入り。
レジデンスを所有する方々の高級車に囲まれて駐車。写っていはいないが、S2000の前にはフェラーリやポルシェが何台もいる。

とりあえず飲みに行く。
今晩が、この旅の最後の夜になる。
沖縄の余韻を噛み締めながら、盃という名のジョッキを傾ける。

穴場的な既知の店だったが、連休中ということもあり、席には時間制限が付いていた。
それでも、ここまでの道のりを振り返るには十分な時間と酒と肴を堪能できた。

翌朝は5:00にチェックアウト。静かな立体駐車場で、S2000のエンジンに火を入れる。
外に出ると、大粒の雨が降っていた。
天神北ランプから福岡高速、福岡ICから九州自動車道へ。

最初の給油は、普段通りの中国道/七塚原SA。朝ご飯もついでに。
ここまでかなりの雨量で、今回の旅の直前に新調したPS5と、直進安定性に寄与するデフを駆動系に装着するS2000を持ってしても、轍だらけの路面には神経を使った。
中国道の復路は大雨のケースが非常に多い、のはナゼなのだろうか。

2回目の給油は、新名神/土山SA。ここまで順調。雨も上がっている。

土山SAからは無給油で東京に到達できるが、先の渋滞に備えて、新東名/清水PAで一息入れる。これも定番の行動パターン。

東名高速ではUターンラッシュに巻き込まれたが、連休最終日ということもありピークは過ぎていたので、それほど傷口は大きくならずに済んだ。
自宅に到着したのは19:00前。総走行距離3,690kmの旅が、遂に終わった。
・・・・・・・
いつか、自分の愛車で沖縄に行ってみたい。
ずっと秘めていたその夢は、現実のものとなった。
47都道府県の中で唯一、足を踏み入れたことがなかった沖縄の地。
自走で行くハードルを超えるには、準備と経験、そして時間が必要だった。
満を持して南の海を渡ったR style S2000。
北海道から九州まで、様々な道を走ってきた愛機は、確かに沖縄の地に踏み入れ、そのエクゾーストノートを響き渡らせた。
この経験は、自分とS2000にとってかけがえのないものとなり、記憶に刻まれることだろう。
Last Pieceに足跡を残したわけだが、だからといって、何かが終わってしまうわけではない。
行ってみたいところ、再訪してみたい場所はまだまだたくさんある。
S2000のドライビングも、まだまだ進化の余地がある。
ひとつの達成を得たとき、次の高みが見えてくる。
そんな経験の積み重ねが、人生を豊かにする。
だから誓おう。
S2000と過ごす未来に向けて。

沖縄 Touringの経験を糧として、これからも人生のアクセルを踏み込んでいく。
これから先、もっと素晴らしい旅の時間と出会うために。
2024 OKINAWA Touring
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