【国道398号 花山峠付近】
夏休みを利用したツーリングは、東北に向かうことにした。
東京は8月に入って毎日のように雨。東京以外も特に天気が優れているエリアというのもなく、そもそも暑くてかなわない時期である。
ならば、天気はある程度無視してでも、涼しいエリアに向かうべき。ということで決定した次第。
東北って、去年の秋にも来てるんだよなぁ。
別に何回行ったっていいわけで、そんなの悩むようなことじゃないけれど、せめて前回と少しでも雰囲気を変えるべく、いつもとはちょっと違ったアプローチを選択することとした。
自宅ガレージを5時に出発。練馬ICから関越自動車道へ。お盆の帰省ラッシュを避けるには、ギリギリの出発だ。
いつもなら東北道を利用するが、今回は関越。それも小出ICで途中下車して、あとは気の向くまま風の向くまま、走り続ける心づもりなのだ。
小出ICから県道70号〜国道252号へ。このルートは言わずと知れた、六十里越。山深い只見の山中を越えるワインディングロードだ。
ただ、交通量もそれなりなのが玉にキズ。今回は(も)、おっかなびっくり走る前走車にリズムを崩されたまま、只見の町へ降りていく。
只見からは、ひたすらR252を只見川沿いに。
これはこれで風情あるルート。長期に渡って不通状態が続いている只見線が、今にも土に還ろうとしている光景が、なんとも言えない郷愁を誘う。
沿線の道の駅にいちいち立ち寄って、会津坂下から国道49号。
坂下の街中は混んでいたが、県道33号に移ってようやくスルスル。会津縦貫道で喜多方へ。
国道121号沿いのGSで、今回最初の給油を済ませた後に、県境の大峠を越える。
米沢と南陽の市街地は、米沢南陽道路と国道13号南陽バイパスでパス。
・・・までは良かったが、ここから上山に向かうR13の流れが悪く、気温も高い中、ジリジリ進むこととなった。
上山から東北中央自動車道で山形市街をパスして、一気に北上。
東根ICから国道287号〜国道347号へと乗り継ぐ。
山形盆地北部の田園地帯を縦断するR347は、この辺りのお気に入りの道。
単に景観だけの話ではなく、ここら一帯は山形名物の田舎そばの名店が揃っているから気に入っているのだ。
その中で今回は、ツーリングマップルにも長らく載っている「三郎兵衛そば」に訪れることにした。
あぁもう何年ぶりだろうか。(たぶん10年は軽く経っている)
それこそ仙台在住時代にはよく来た店。普通の民家の広い座敷で味わう、典型的な山形の板そば。これが実に美味いのだ。
ボソボソとした十割のぶっとい田舎そばなので、更科そばとかとは対極をなす素朴過ぎるそばなのだが、自分はこれを愛して止まない。
来た時間が昼を大きく回っていたので、帰り際には閉店。この日最後の客となった。
夏休みに実家に帰ってきたかのような、懐かしい雰囲気が今も変わらず残っていて、何だか嬉しかった。
腹を満たした後はR347を更に北上し、県道28号にスイッチ。
赤倉温泉で国道47号。鳴子の手前あたりで抜群に眠くなってきたが、耐え忍んで岩出山の道の駅へ。
山形までは陽が差したり、悪くない天気だったが、ここで遂に雨が降り出してしまった。
混雑する道の駅でソフトクリームを味わいリフレッシュしてから、国道457号へスイッチ。途中で国道398号に乗り換えて、一路栗駒へ。
ここから登ると、湯浜峠、花山峠を越えて栗駒、あるいは小安峡へと向かうのだが、この道はマイナーながら走りが楽しいワインディングとして、絶対オススメできるコースである。
温湯温泉を過ぎるとハードな(というか薄暗い)コーナーが連続し、ドライバーを叩き起こす。
その後は中速コーナーがこれでもかと連続し、時折胸のすくストレートが待ち受ける。
アップダウンも激しく、マシンのスタビリティと、姿勢をコントロールするテクニックが要求される、何とも素晴らしいコース。
花山峠を越えて、県道282号栗駒道路、栗駒峠(須川温泉)手前で国道342号にスイッチして、東成瀬方面に下っていく・・・この組み合わせに、栗駒山ワインディング・ゴールデンルートとして太鼓判を押したい。
R342からの高速ダウンヒルは、爽快さを通り越して恐怖感を覚えるほど。
これを確実に踏破し、舞い降りた後は、国道397号を選択。
実はこのR397、東成瀬〜水沢間は初走行。ずっと、ずーーっと走りたいと思いながらも、その機会に恵まれなかったこのコース、本日が初体験である。
大森峠に向かう登りは、つづら折れのヘアピンカーブが連続するコースレイアウト。
ここで軽四ワンボックスに追い付いて、忍耐を強いられる。
ところが峠を越えると、軽四が掌を返したかのようにペースアップ。
明らかに走り慣れた通勤路であろうライン取りで、迫りくるコーナーを次々得意気にクリア。後ろから接近する黒い悪魔を嘲笑するかのような、見事な身のこなしだ。
峠を越えてから、雨が本格的に落ち出し、徐々にコックピット内にも侵入する本降りとなってきた。木々の枝葉から落ちてくる大粒の雨水が、時折冷たく身体を濡らす。
それでもルーフを閉じることなく、次々に現れるコーナーを夢中でクリアし続けたのは、眼の前を走るアグレッシブな軽四レーサーに焚き付けられたからに他ならない。
結局、県道37号を北上して北上に向かうルートを取るまでは、雨中のランデブーが途切れることはなかった。
K37は、牧場の中を走る孤独なルート。既に周囲は薄暗くなりつつあり、閉じたルーフを雨粒が叩きつけていた。
県道122号経由で北上市街へ。先の三郎兵衛そばにて、この日の宿を北上駅前に確保していた。
全国チェーンの味気ないビジネスホテルだったが、時期も時期だからか超満員。
何とか駐車場に空きスペースを見つけ、やはり味気ない全国チェーンの居酒屋で寂しい晩飯を取ってこの日の旅程は終わり。
後から思えばこの日は、六十里峠で新潟から福島、只見を走破して会津から大峠で山形へ。
山形を縦断して宮城に入り、栗駒を越えて秋田に入り、トドメは大森峠越えで岩手は北上へ至るという、700km超の大移動だった。
明日どこへ向かうかは、明日の天気と気分次第なのだ。