池島の周遊道、県道216号から、郵便局のある角を曲がって枝道に入る。
先には立派な学校があり、その前には島唯一の信号機が。
更に進むと、またしても異様な光景が眼前に現れる。
8階建て高層アパート群。周遊道で見たそれとは異なり、高さによる存在感が圧倒的。
4棟が並んで、壁のように空を覆い隠している。
これは凄いものを見つけた予感。
どんどん進むと、アパート群の中に入っていく道が。。
ヤバくね?
でも、好奇心が勝ってしまった。
島を走っているクルマなんて皆無。対向車の心配なんて、全くいらない。
夏草をボディに擦り付けながら、そろりそろりと侵入していく。。
後戻りが必要になったら、、、それはその時考えるのだ。
勇気と好奇心(と無謀)の産物は、島に多くの人の生活があった過去を雄弁に物語る景色だった。
入口がどこにあるかもわからないくらい、鬱蒼とした夏草に埋もれた鉄筋コンクリート造の高層アパート。
先程のアパートと異なり、人の気配は全くせず、完全に廃墟と化している。
各棟をつなぐ鋼製のブリッジは朽ち果て、少し足を乗せただけで脱落してしまいそうだ。
海側のアパートの間には、海に向かって降りていく階段があった。その先には炭鉱の施設があるようだ。
建物間に掲げられた看板に「御安全に」と書いてあるのが、かろうじて判別できる。そして裏側には「御苦労さん」。
かつて多くの鉱員たちが行き来したであろう階段。今はその人影はない。
国の繁栄を支えた人々の生活の一端を見る。
今は哀愁が漂うその風景の裏側に、多くの人々が幸せを願い、豊かさを手に入れようとした時代を思い描く。
廃墟に身を置くということは、いまの世がいまの形であることへの感謝、それを創り出した先人たちの汗に感謝をすることなのである。
・・・・・・・
島をぐるぐるしまくっていても、それほど時間は要せず、滞在時間はほんの2時間と少し程度。それでも十分だった。
本気で楽しもうと思ったら、炭鉱ツアーがあるらしい。実際、船に同乗した観光目的の客人は、ほとんどがそちらに流れていった。
クルマで上陸して自由に楽しもうというのは、自分だけだったことを付け加えておこう。
帰りのフェリーは、同一の発着場から。券売開始を待って、帰りの切符を購入する。
待合室には、島の案内地図が置いてあった。到着時はそのまま走り出してしまったので気付かなかったのだが、最初に寄って事前学習するべきだったかも。
でもまぁ何の知識もない方が、先入観なく見て感じることができて、個人的には満足感得られるわけだけど。
やってきたフェリーに乗船する。クルマはS2000が1台のみ。旅客船というより、渡船である。
行きは瀬戸港から乗船したが、帰りは神浦港行きだ。時間の関係でそうなった。
上陸後、県道57号へ。早速のワインディングロードで走りを楽しむ、が、昼下がりの時刻、エアコン全開のヒルクライムは少々息苦しい。
尾根筋付近まで走って、県道204号にスイッチ。西海オレンジロードへと繋いでいく。
道の駅「さいかい」で小休憩したら、西海パールライン経由で西九州道へ。
かなり飲まず食わずでエネルギーを欲したため、走りながら算段した結果、武雄北方ICで一般道へ。
国道34号をちょっとだけ行ったところにある、この店に滑り込む。
井手ちゃんぽん
何かの本で知って、以来ずっと気になっていたにもかかわらず、訪問できていなかった店。佐賀ちゃんぽんの有名店?だ。
昨日もちゃんぽんで、またかい!というツッコミはおいといて。
オープンなキッチンの周囲にカウンター。その頭上にでっかいメニューが掲げられている。
なんかもう、こういうの見るだけで気分がアガってしまう。つべこべ言わずに食ってみな!と言わんばかりだ。
スイッチが入った?ので、特製チャンポンをオーダー。でっかいコンロで、これまたでっかい中華鍋で調理された結果。
ド級のが出てきました。野菜がどっさり過ぎて、麺にたどり着かない(笑
しかし強烈に美味い。なんだろうこれ。やっぱり炒め方に秘密があるんだろうか。
こってりスープも野菜、麺と絡んで大変美味しい。最初は食い切れるか心配だったが、これがなかなかぺろりと。。
ちなみに九州には同名の店舗が各地に存在するようだが、味が異なり、本店のちゃんぽんは本店でしか食べられないとか。
武雄北方に訪れる理由はそうそうないと思われるけど、これだけのためにルートを変えてしまう魅力がある。いずれまた再訪してみよう。
満腹を抱えてエスに乗り込み、武雄北方ICから再び高速へ。
長崎道を東脊振ICまで走って、国道385号へ。トンネルで峠を越えたら、あとは福岡市街、天神目指して一直線。
エスも満腹にするのを忘れずに。明日はいよいよ最終日、東京への帰路が待っているのだ。
天神近くのビジネスホテルに投宿。今回の九州ツーリング、最後はやはり福岡締めだ。
といっても連日の夜の街徘徊と、先程のド級ちゃんぽんで、腹も気持ちも既に満たされ気味。
軽く一杯という気持ちで、宿近くで見つけたビアパブへ。
時間が早過ぎるのか、貸切状態でクラフトビールを楽しむ。
ビールはコストパフォーマンスが悪いので(笑)、あまり長居はできない。さらりと楽しんで、すっかり暗くなった天神の街へ。
道端には屋台がちらほら。フレンチの屋台なんてのもあり、時代に即して姿かたちを変えていくのが文化なんだなぁ、と妙に感心してしまった。
本来、福岡の街に来たら屋台を楽しんだ方がいいのだろうけど、既に満たされてしまったようで、食指が動かない。
セレクトショップを冷やかしで見ていたら、疲れでダルくなってきたので、そのまま宿に帰ることにした。
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翌朝、ホテル裏手のコインパーキングで最後のトランク・パッキング。
キャンプツーリングをしなくなった(決して飽きたわけではない)ので、パッキングに気を使わなくともいいのだが、見えない部分にも生活感を出さないのが、マイ・ツーリング・ルール。
オープン・スポーツカーでのグランドツーリングは、それだけで絵になる。そう思われる姿を目指したい。
旅の最終日に思う。今回の旅は、美しい筆跡をもって描かれただろうか。
天神北ランプから都市高速に乗り、福岡ICへ。
ここから一気に帰京するのは初めてではないので、特に新鮮味はない。九州最後のパーキングである、めかりPAでの最後の記念撮影もいつもの通り。(だが、PAの売店は新しくなっていた)
本州に渡って、中国道をひたすら走るのもいつも通り。
何の目新しさもない、はずだったが、実はこの日、運が良いのか悪いのか、こんなイベント?が待ち受けていたのだ。
逆走台風!!
奇跡の線形を描いた、2018年夏の珍事。(この日は7月29日だった)
関門海峡の青空からはまったく想像できないが、予報通りに行けば、この後この台風の進路に真っ向からぶつかることになるのだ。
果たして黒悪魔号は、夏の反逆者との真っ向勝負に打ち勝つことができるのか・・・!
大阪を過ぎて名神高速に入ってもほとんど天候に変化はなく、嵐の前の静けさという感じ。
伊勢湾岸辺りから風が出だし、新東名に入り、3車線の道を快走していると・・・
あっという間に視界はゼロ。滝に打たれているかのように、雨水が容赦なく車体を叩きつけてくる。
こんな状況でも、日本の大動脈は台風ごときで通行止になったりはしない。(高潮は別)
だからこそ真っ向勝負を挑めるわけであるが。
あまりの雨量の多さに、幌とサイドガラスの接合部(正確には、ウェザーストリップの切れ目)から、雨水が滴り落ちてくる。
これまで雨漏りとは無縁だったエスだが、容赦なく吹き付ける風圧と水量に悲鳴を上げた。
それでもR style S2000は、全天候型ジャパニーズスポーツカーとして、抜群の信頼性を誇る。川のようになった路面でも、矢のように突き進むスタビリティ。
これこそTouring Special Concept。この安定感がなければ、異常気象が続くこの国で、旅を続けるのはままならない。
清水PAで最後の休憩。台風の中心に入ったのだろうか。一時、休戦状態。
東京ICまで、最後の気力で雨の中を走り抜ける。
IC到着はちょうど21時。無事走り切った心地よい疲労感に包まれ、帰宅後はぐったりと眠りに落ちたのだった。
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長きに渡ってレポートした、2018年真夏の九州ツーリング。以上でようやく完結です。
8日間の旅の間、最初と最後こそ雨に祟られましたが、それ以外はほぼ快晴。
普通なら喜ばしいことで、こんな恵まれたツーリングはないわけですが、問題はその気温。
真夏なので仕方ないですが、連日35℃付近をマークする中で走り続けるのは、ドライバーにもマシンにもなかなかのストレスでした。
これほどの酷暑の中の連続走行なので、オープンにすることはもちろんハナから諦めていましたが、エアコンも常時フル回転(幌の断熱性なんか無いに等しい)で、日に日に車体にストレスが溜まっていくのが手に取るようにわかる。徐々に車体下部からは異音が・・・
エスには相当の負担をかけてしまいました。(思えば、マトモにエアコンの効くクルマを所有したことがないワタシ)
ひたすら暑かった、しかも走りたかったR448は完走できなかったし(3日目)、というイメージだけだとイマイチなツーリングだった、ってことになるけれど、実のところはそうではなく。
今回、九州各都市に停滞するのが裏テーマ(佐賀を除く(爆)だったのは、たぶんお気付きのことかと思いますが、中でも今回いちばんヒットしたのは鹿児島。2泊してますからね。
日南の飫肥も良かったですが、仙巌園がとても印象的で、帰京以後、昨年の大河ドラマに興味を持ち、幕末の薩摩藩に熱中してしまいました。
その地に行って、初めて身に沁みて感じることがある。旅の醍醐味のひとつであり、旅を続ける大きな理由だと思っています。
今回の総走行距離は、4,015.6km。
走りの要素は少なかったかもしれないなぁ。阿蘇と霧島の2大巨塔に行ってないし。ま、それは次回の楽しみとして。。
See you again, Kyushu.
7月後半のツーレポを、翌年3月末まで引っ張るという、前代未聞のサボり癖を発揮したにもかかわらず、ここまでお付き合いいいただいた読者の皆様に感謝。
今回のようなスペシャルなロングツーリングは、書く方も多大な労力が必要になってしまい、楽しみにしている方には大変申し訳なく思っています。
昔のように時間が取れるわけでもないので、遅筆は治らないと思いますが、、、これからも素敵な旅と物語を刻みたいと思ってるので、どうかお見逃しなく。。。