1月 062012
 

2階はいわゆるリビング的な空間で、対外的には一応「居間」としていますが、自分の中では単純に「生活スペース」として捉えています。
ここにテレビ、ここにソファみたいな、そういった使い方を敢えて限定しない空間というのが、ここでいう「生活スペース」です。

機能的な空間ならまだしも、そうでない様々なアクティビティが想定される空間には、あまり制約を設けたくありませんでした。
生活スペースは、様々なアクティビティを許容し、いろいろな使い方が可能な空間さえあればいい、そういう発想です。感覚的に気持ちのいい空間ボリュームを用意しておき、使い方によってその都度、様々に形を変えていくのが理想。

襖で仕切ったり開けたりすることで、様々な状況に柔軟に対応できたかつての日本家屋は、まさにそういった空間の集合体でした。
このような空間の可変性が生活スペースには相応しいと考え、できるだけ用途は規定せずに、プレーンな空間を用意することを念頭に置いています。

ただし、その場合でも、あくまでそこにいて気持ちのいい空間であることが条件です。
面積や高さに制限がある中で、できるだけのびのびとしたボリュームを確保して、狭さをできるだけ感じないような広がり感を重視しています。
それも単に大きな空間というわけではなく、奥行きの深さや窓の位置、動線上のシークエンスを考えることで味付けを忘れないように。
この辺りのシュミレーションは、脳内での空間展開と共に、スケッチや模型で検証していきました。

そしてもうひとつ、生活の舞台となるこの大きな空間には、いくつもの「領域」を潜ませておくことを心掛けています。

「領域」とは、「居場所」というニュアンスに近いかもしれません。
人は誰でも落ち着く場所、空間というものがあると思います。家の中でも然り。いろんな生活パターンを想像して、その時々でまるで巣籠もりするかのように留まる部分を想定して、そのうちのいくつかの領域には、体感的に居心地良く感じる仕掛けを施すようにしました。
それは大きな空間とは性質の異なる付属空間であったり、隅っこに設けられたアルコーブ的な空間であったり。
生活の中でいろいろな居場所を設けておくのは、その家で生き生きと活動していくための重要な要素になるのではないかと考えてのことです。

これとは逆に、ある行為にしか使えない空間(トイレとか風呂とか、ごく機能的な空間は別)の集合体では、却って使い難いと思います。やたら個室の数だけ多い家は、それだけ家族の人数がいたとしても、生き生きとした日常になるかは疑問に感じます。
柔軟に可変する空間に様々な居心地のいい「領域」を仕掛けておくという方法は、決して広くはない、世間一般では狭小住宅の部類に入る家をいかに効率良く計画するか、というところから出てきている発想ですが、一方で、nLDKに固執する現代の一般的な家の構成に対するアンチテーゼであると言えるかもしれません。

 

その生活スペースに付随して、機能が限定されるキッチン空間を配置しています。

昨今のキッチンは対面タイプが主流ですが、R style Houseのキッチンは、生活スペースと敢えて分け、ほぼ別空間として計画しています。キッチンをリビングの一部にするのではなく、厨房のように空間的に分けるスタイルです。

この辺は生活者の趣向や家族構成によってスタイルが異なってくる部分。これが絶対良いという性質のものではありません。
ただひとつ言えるのは、キッチンにしたって開放的で家族と一緒がいいのか、閉鎖的で集中できる方がいいのかは、居住者の生活スタイル次第ということ。盲目的にイメージと流行だけで決めては勿体無いと思います。

(紆余曲折のロフト空間へ・・・)

 Posted by at 2:34 AM
1月 052012
 

「基地」と「山小屋」というコンセプトで位置づけたR style Houseのプランニングの結果、各階の骨格は以下の通りとなりました。

・1階:趣味的空間(car pit)と生活機能空間(水廻り)
・2階:生活のメインステージとなる空間
・3階(ロフト): 秘密の空間(プライベート空間)

空間の機能によって分類、集約させる「ゾーニング」という手法で、階層別に空間を序列化しています。生活動線を考慮してプランニングをするのは当然ですが、それだけに偏って計画すると複雑でまとまりのないプランになってしまうので、すっきりとしたゾーニングを心がけて計画しています。

まず1階については、「基地」と位置付けた空間の核となるcar pitを配置。
一般的には「ガレージ」とか「車庫」と言われる空間ですが、最近定着してきた「ガレージハウス」のようなイメージで家の特徴を代表されるのには違和感があるので、敢えてcar pitと呼んでいます。(通じないので、対外的にはガレージとしていますが)

car pitは、S2000を格納して整備が可能な空間として計画。
当初はS20001台が入れば少なくともOKとしていましたが、最終的に決定した敷地は、広さと形状的に2台格納も不可能ではなかった(てゆーかそれが大きなポイントのひとつだった)ので、思い切って2台格納が可能なように、面積を確保することにしました。S2000とアルファGTの2台をcar pitに収納し、整備が必要な際は1台を外部に出して、広々とした空間で整備が可能なように計画しています。その分、家の生活空間の面積は少なくなってしまいますが、使うアテのない部屋を無駄に増やすよりは、自分にとって有用だと考えた結果です。

クルマの保管・整備という機能の他にも、クルマ関係の書籍、パーツ、工具類や、山用具やキャンプ道具もこの空間に収納できるよう計画。半分アウトサイドな倉庫的な位置付けでもあります。
それだけだと完全な車庫・倉庫となり、ジメジメした暗い空間になってしまいそうですが、せっかくお気に入りのクルマを格納する場所なので、内装と照明計画を考えることで貧相にならないよう配慮しています。

 

面積的にはcar pitが大部分を占めるので、その他は水廻り(トイレ、風呂、洗面所)と、ささやかな程度の玄関と収納です。
水廻りのうち、特に風呂とトイレ、洗濯機置場に関しては、個人的にはあまり安易に上層階に載せるものではないと思っています。その理由は主に、どんなに施工に注意したとしても、生活に使用する限り漏水のリスクを背負うという技術的な側面から。漏水は家として最悪の事態のうちのひとつなので、そのリスクはできるだけ避けたい。無理のない範囲で、下階に設けるのが基本だと思っているからです。

その反面、生活動線の計画で非常に大きく絡んでくる諸室なので、水廻りのプランとゾーニングは、実際の生活行為と照らし合わせて考えていかなければなりません。

(2階へと続く・・・)

 Posted by at 10:46 PM
12月 312011
 

コンセプトからイメージを引き出し、それを空間構成として具体化して初めてプランニング、いわゆる「間取り」の作業に入ることになります。

プランニングとして作成するのは、間取り図として比較的馴染みのある設計図面です。
家を平面的に、真上から見た際の状態を考える行為なわけで、この部屋がこの位の大きさで、部屋の数がこれだけで、収納がこのくらいで、とやっていくのが通常だと思います。
実際、誰でも考えやすいので、まったく建築のことを知らない人でも使うことができる間取り作成ソフトなんかが存在したりします。

でも、ここでひとつ気を付けたいのは、プランニングは決して平面的な要素で成り立つのではないということ。当然ながら家というのは立体的な存在であり、間取り図というのはあくまで3次元の物体を2次元に簡略化して示しているということを忘れてはなりません。間取り図には示されない高さの情報を並行して考えながら、プランニングすることが重要になってきます。
間取りをつくるというより、「空間をつくる」という意識が大切ですね。プロの設計者は、常にこの「空間」を脳内に描きながら建築を考えています。

そういった意識を持ちつつ、空間構成の章で組み立てた内容を、紙上に平面図として落としていきます。ただし、この時はまだ、厳密な寸法は無視して、「だいたい」の寸法に従いながら進めていくことにします。
それにもちゃんとした理由があって、最初から寸法に縛られ過ぎると、自由な発想を制限してしまうから。できるだけ理想の空間を組み立てておき、後で実際に実現可能な寸法に落としていく、という作業がベターですね。

最初に考えたプラン(平面計画)は、大きなコア空間に小さな空間がいくつか繋がっているものでした。家の形状は、ごくシンプルな長方形。出っ込み引っ込みは全くなく、上下階とも同面積の3層建てとしました。
ただし、面積や高さの制限によってフル3層の家はつくることができないため、2層+ロフト的なプランです。

事前にある程度コンセプトによる構想が進んでいたので、最初に考えたイニシャルプランが既に、最終的に決定したプランにかなり近いものとなっていました。
最初に考えたプランから、細かい変更や修正を加えることにかなりの時間を費やし、熟考に次ぐ熟考を重ねています。
しかし、基本となる空間構成はプランニング以前に固まっていたので、大きく方向性を変更しなければならないような場面には遭遇せずに検討を重ねていくことができました。

(具体的なプランについては、また来年・・・)

 Posted by at 5:04 PM
12月 132011
 

前々回説明したイメージから計画に落とし込んでいく過程で、さらに細かい「イメージのイメージ」を連想していきます。
「基地」とはどういったイメージでどんな印象を指すのか、「山小屋」とはどういったものでどういった体験をもたらすのか、という感じで更に掘り下げていくわけです。

そういう過程を踏んで、それぞれのイメージから更に具体的な印象が明確になってきました。細かい過程は省きますが、以下のような感じ。

コンセプトイメージ①:「基地」
・機能的でシンプル、都会的
・様々なアクティビティを内包、活動的
・いろいろな趣向に対応できる、可変性のある空間
・多様に変化するライフスタイルに対応できる、機能と空間

コンセプトイメージ②:「山小屋」
・木の小屋のフォルム、大きな屋根、郷愁感
・大きな居住空間、包まれ感
・秘密の寝床のような、心地のいい自分だけの居場所が散在する
・休息を得られる暖かみのある空間

考えていくうちに、この2つのイメージがどこか相反するイメージに収束していきました。
片や積極的に生活を楽しもうとする姿勢を支えるイメージ、片や外部のストレスから守られ休息を得たいとする姿勢のイメージ。それが非常に面白く感じましたね。
であれば、敢えてこの2つの相反するイメージをぶつけ合って、機能や空間、意匠を考えていったら、面白い家ができるんじゃないか。そう思うようになってきました。

ここまできてようやく空間構成の話になります。(まぁ実際はこの辺の思考順は入り乱れていて行ったり来たりで検証しているわけですが)

空間や形態のイメージを想像しつつ、どういった空間構成が適当なのかを模索していきます。
まったく間取りになっていなくて問題なく(むしろキチッとしていない方がいい)、どういった空間や機能が必要で、それがどういう関係性を持って繋がり、エリア分けされるのかといったことを考えました。

この時点では、イメージを連想することによって、ある程度空間のイメージは頭の中にできつつあるので、それを整理するために行う、と言えるかもしれません。
とにかく間取りを考える前に、ここまで詰めておくと、一本筋の通った、空間的骨格の確かな家が計画できると思います。

まず間取りから設計に入ったとしても、その間取りが本当に適しているのかということを精査する方法として、こういった一連の思考プロセスは使うことができると思います。
ここまで言っておきながら、実際自分も間取りを想像するところから設計に入ったというのが至極正直なところですが(汗)、その一方で、こういうプロセスを踏むことの重要性を意識し、軌道修正しながらやっていました。

設計っていうのは、他分野のデザインと同様、ロジカルに突き詰めていく経緯が重要だと思います。
そのプロセスの先に、プラン等の具体的な各種計画があるのではないかと。そういう経緯を大切にすることで、芯のしっかりした存在感ある家ができるのではないかと思うんですよね。

(そろそろプランニングを・・・(笑)

 Posted by at 8:39 PM
12月 092011
 

ここまでかなり抽象的な話をしてきましたが、一方で、具体的にどれくらいの大きさでどんな形状の家が建つのかという部分についても検討していきます。
設計って言われると、とかく間取りに走りがちですが、それよりも先にこういったことを考えておくことで、より合理的で洗練された設計を生むのではないか、と思っています。

日本では、敷地の面積に対して建てられる規模が決まっています。いわゆる建ぺい率、容積率と言われる概念です。建ぺい率、容積率の制限値は、都市計画によってその敷地に定められている用途地域に紐付けて定められています。
ざくっと言うと、商業系用途地域は制限値が高く(床面積の大きな建物が建てられる)、工業系及び中高層住居系が中間、低層住居系が最も制限値が低く(敷地に対して床面積の小さな建物しか建てられない)なっています。

R style Houseの敷地は、用途的にも規模的にも最も制限の厳しい「第一種低層住居専用地域」に指定される一帯の中にあり、建てられる家に大きな制限がかかる代わりに、家並みが低密度で環境良く感じられます。
本当ならば、もう一段階緩い制限の用途地域の土地が良かったんですが、練馬区は区域の大半が第一種低層~であり、そうでない(条件の緩い)用途地域の土地は値段も段違いになるので、敷地面積がある程度広いことを条件に、この厳しい制限の土地を選択しています。

面積の制限の他に、家の計画で非常に影響が大きいのが、高さ制限です。
高さ制限は複雑に絡み合っていてなかなか理解しづらい概念ですが、都内で建てる場合、一番悩ましいのが「高度地区」による高さ制限だと思います。

高度地区は自治体によって指定の有無、内容が違うので、都内での話に限定しますが、今回の敷地はこれまた最も厳しい「第一種高度地区」に指定されていて、敷地の形状によってはかなりの制限を受けます。
ケースバイケースですが、この地区で3階建を建築するのはかなり難しくなってきます。

以上のような法的制限によって建てられる規模が必然的に決まってくるので、その制限を理解して家の大きさや形態を考えていきます。これをボリュームチェックと勝手に呼んでいますが、慣れてくるとその敷地の制限(属性)を見ただけで、建築可能な家の規模がだいたいわかるようになってきます。
必要になりそうな空間の規模や機能に対し、それを内包するだけのボリュームが確保できるかどうかを、敷地毎に検討していきました。

最も厳しい制限がかかる敷地でも、敷地の形状や道路の接し方等の条件によっては、望む家が建てられることがあります。逆に、制限は緩いのに、ほとんど面積が取れない場合も多々あります。
慣れてくれば、そういう目線からの敷地の価値が読み取れるようになってきます。
それはそれで面白い作業なんですが、一生の買い物なので失敗はできない(笑
当初の予定に反して制限が厳しい敷地を選んだわけですが、ボリュームチェックによってこれならイケるという確信ができたからこそ決断できたわけです。

(まだつづきます)

 Posted by at 1:11 PM