サニーロードは至極気持ちのいいシーサイドロードなのだが、内陸に入ってから大月までは前走車に引っかかることが多く、大月から宿毛までの区間は今ひとつかったるい。
この区間を長く感じるところが、サニーロードを遠く感じさせる一端なのは間違いない。
宿毛からは、県道4号を選択した。
通常であれば、国道56号を選ぶところではあるが、宇和島に向かうならK4は魅力的な選択である。
といっても、これまで一度だけ逆方向に走った経験があるだけなので、エラそうなことは言えないのだが、極めて交通量の多いR56よりはツーリング向きと言える。
宿毛から走ると、しばらく、というかずっと続くのかと言うほど快走2車線が続く。
その名も「どんぐり湖」というダム湖の湖畔を激走して、キャンプ場を過ぎると、道は突然狭路に変貌。クルマ一台通るのがやっとのある意味四国らしい道になるので、思わず安心してしまう(笑
この狭路も、K4の全体からするとごく一部の区間。
2車線が復帰すると、今度は農村の中を走る感じの不思議なワインディング。平坦な地形に出たと思ったら、突然また坂道が現れたりして気が抜けない。
地図で見る通り、なかなかしっかりとした距離で、走った感もたっぷり。隠れロングワインディングの代表格と言えるかもしれない。
津島でR56に出て、すぐに給油。
この後のルートを考えると、ここで給油は懸命な選択だが、辺鄙な場所で満タンにするほどのものでもない。
都市部で給油はツーリングの基本と、この場では20リッターの指定容量給油としたが、この選択が後に大きく裏目に出るとは、この時は思いもよらなかった。
道の駅で、西予の名物であり大好物の「じゃこ天」を(2枚も)頬張った後、宇和島道路で宇和島中心部へ。国道320号で鬼北方面に向かい、舵を切る。
R320は交通量が多く、トラックの後ろについて延々と走る羽目に。
日も大きく傾いている。そろそろ店じまいを考えつつ走らなければならない。
このまま普通に走っていれば、梼原と津野を経由して、またしても高知市街へ到るところだが、そんな生半可なルートはR style Touringには似合わない。
夕暮れの薄暗くなりつつある谷間の県境手前で、R320離脱。ここに来て、山中の林道へとスイッチする。
東津野城川大規模林道「西線」。
前々回の四国ツーリングで快走した、あの林道ワインディングに、逆方向から挑む。
想像通り、いや、想定以上に路面は荒れていて、かつ汚れ放題。
薄暗くなりつつある四国の山中。1台のオープンスポーツカーが、路面を覆う小石と落ち葉を跳ね飛ばしながら、急勾配のタイトコーナーを次々とクリアしていく。
路面状況は季節的なものなのか、想像以上に悪く、こんな時間に単独で入り込むのは自殺行為と言われても可笑しくはない。追いつくクルマはもちろん、対向してくる他走車すら1台もいないのだ。
全くの孤独。不安になる気持ちをよそに、標高は止め処なく上昇し、夕日に照らされた山並みが展開する。
長い長いワインディングを、取り憑かれたように走り続けると、県道36号に合流。
大規模林道から県道に入ると、却って狭路になるのは常。これを登っていくと、ようやく人の気配のある牧場に出た。
県道383号にスイッチすると、道はますます細くなり、すれ違いはほとんど不可能な1車線路になる。対向車はまず現れないので心配無用だが。
K383は狭路だけれども絶景路。果てしなく続く四国の山並みを、天井から見下ろすような素晴らしい道だ。
しかも、ちょうど日没の時間。夕日の波長が辺りを包む込み、視界のすべてがオレンジ色に染まっていく。
地芳峠を通過すると、四国カルスト。水溶性の地質が生み出す特異な景観は、何度来ても驚きに満ちている。
そこにオレンジの日没の世界。遮るものは皆無。
まさに陽が沈むその時、絶景の中に僕らはいたのだ。
走って走って走り続けて、たどり着いた最後の刻。
カルスト台地が炎に包まれたかのように燃えて輝くその時、波乱万丈の2018年ツーリングシーズンの終焉を迎えた気がした。
・・・・・・・
カルスト台地から、東津野城川大規模林道「東線」を、転げ落ちていく。
四国カルストへとアプローチするメインルートたるこの林道は、初めて四国に訪れた頃に走って以来、幾度も訪れている。
個人的にはサニーロードと並ぶくらい、四国を代表するワインディングという位置付けだ。
真っ暗闇のワインディングを堪能して国道197号に下りたら、津野じゃなくて梼原方面に折り返す。
梼原から国道440号で地芳峠、の下のトンネル。
地芳トンネルが開通するまで、さっきの地芳峠を越える難儀な狭路峠道だったが、数年前に長大なトンネルで四国カルストを一突きで超えられるようになった。そうでなけりゃ、この時間にこのルートを選択したりはしない。
R440で、ひとまず国道33号を目指す。
なんとなくの記憶で、すぐにR33という感覚だったが、道は意外と曲がりくねっていて時間がかかった。
R33に出て高知方面に舵を切るも、これまた長く感じる。周囲が暗くなると、より一層ドライブに集中してしまうのか、時間の流れが昼間とは大きく異なった感じ方になってしまう。
仁淀川町の川口で、国道439号にスイッチ。新大峠トンネルで大峠を越える。
ここからのR439、通称「ヨサク」は、前回ツーリング2日目で激走走破した思い出の道。その時の経験から、この先大豊まで狭路はないと踏んでいたがゆえの選択だ。
道の駅「633美の里」でトイレ休憩。既に辺りは漆黒の闇に包まれている。
このところ、暗くなり始めたら停滞することが多く、こんな時間に走っているのは若い頃を思い出すようで新鮮な気持ちになる。
新鮮な気持ちはまぁいいとして、ここまで走りながら、大きな選択ミスに気付いていた。
さっき宇和島の手前で中途半端に入れた燃料が、早くも尽きようとしていたのだ。
また給油すればいいというのは甘い考え。ここは四国なのである。
国道ですらGSの数が少ないだけではなく、この時間になったらほとんど営業終了になっている、それに今さら気付いたのだった。
それでも現代ならば、スマホという強力な武器がある。
最寄りのGSを検索すると、相当先ではあるが、目ぼしきGSがあることが判明。
しかし!安堵したのも束の間、閉店はわずか30分後だったのだ。
周囲は心細い山道。絶望的な条件である。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。チャレンジこそ我がツーリングの真骨頂!?
エンジンスタートボタンをグッと押して、F20Cを目覚めさせる。
いざアタック。四国の山中に、R style S2000, Black Devil の雄叫びがこだまする。。。
たぶん、それ以後の区間の走りは、S2000と共に走り続けてきたからこそ可能だった、そう思える走りだった。
結果、想定より10分も早く目的のGSに到着。しかし、Webの情報とは裏腹に、既に閉店して時間も経過した様子。。(ツーリングしてると、よくあるハナシだけど)
万事休す。失意の状態でR439を走る。この先、近くにGSはない。
高知自動車道大豊ICの入口が迫る。フューエルメーターはまだ5目盛ほど残っている。もう、高速に乗って直近の市街地まで一気に行くしかない。
ところが!
高速に乗って緩やかに加速していくと、フューエルメーターの目盛は1つ2つと消えてゆき、あっという間にブラック・アウトしてしまったのだ。
S2000オーナーの方なら知っていると思うが、S2000はどういうわけか、ガス欠直前のメーターの減り方が異様に早いのだ。
当然それを知らないわけではないのだが、この日はいつにも増して可怪しかった。フューエルエンプティ警告灯を煌々と表示させながら、高知道のトンネルをいくつも通過していく。
最悪の事態。
一般道であればまだしも、高速道のしかも長大トンネルばっかりの区間でこの状況。生きた心地が全然しない。
S2000の場合、残り7リッターで警告灯が点灯するので、冷静に考えれば50km以上は走れる計算なのだが、 漆黒の闇に包まれた山中の高速では、その冷静が難しい。
しかもICの少ない区間だから、余計に八方塞がり。新宮ICで降りたって、そこも山の中。結局、何の解決にもならない。
腹をくくって、新宮ICを通過。その先の川之江東JCTと川之江JCTのコーナーを、禁断のニュートラル走行でクリアし、高松自動車道の豊浜SAに這々の体で転がり込み、無事に燃料補給。
近年稀に見る、燃料パニックだった。ツーリングしてるとこの手のトラブル?はまぁまぁないことはないのだが、今回のは正直アカンかと。。
補給してしまえば、こっちのもの(笑
高松道をバキューンと走って、高松中央ICから高松市街へ。
高松港近くのGSで、心もタンクもようやく満タンに
本日の宿、高松駅真ん前のビジネスホテルに入った頃には、既に21時を過ぎていた。
体力は残っていたけれど、飲み歩くには少々過ぎた時間。この日の夜街探索は、繁華街まで歩かず、駅前で済ませることにした。
1軒目は、料理は手が込んでて美味しいのに、オペレーションで損をしてる店だった。
あまり長居せずに、食欲を満たしたところで店を出る。昨日はハシゴできなかった分?、今宵はもう少し飲みたい気分。
2軒目に見つけて入ったアイリッシュパブは、掘り出しモンだった。高松に置いとくには勿体無い。
ここのところ、日本各地でクラフトビールの専門店が楽しめるようになってきたのは、個人的には嬉しい傾向である。
そんなこんなで、長い1日は終わり。
翌日、再び高松中央ICから高速に乗って、一気に帰還。夕方前には帰京。11月の3連休を利用した四国ツーリングは、無事終了した。
後から見返してみると、これ以上ない天候の下、美味しい道を詰め込んで贅沢なツーリング内容になった、今回の高知ツーリング。
暦通りの週末連休でも、ここまで走り切れるのが嬉しい。来シーズンに向けてのいい布石になった。
また来年、コンディションを万全に整えて、大きな旅に出かけられることを期待して。
今年も素晴らしい旅を、ありがとう。