【謎の島 迷走中】
あと少しのところで大きく間の空いてしまった真夏の九州ツーリングレポート。
正直書いている余裕などない毎日ですが、意地でも終わらせます。
7日目の朝、旅もいよいよ大詰め。通勤ラッシュの長崎の街を走り抜け、国道202号へ。
左側に海を望むサンセットロードだが、通勤車両が多い。トラックの数も多く、しばらくは淡々と。
途中のコンビニで朝食休憩とした後、ようやく道行くクルマも落ち着き出した。
陽が徐々に高くなり、容赦ない陽光が降り注いでくる時間になった頃、眺めの良さそうな道の駅があったので立ち寄ってみた。
雲ひとつない青空に気分も上がる、はずなのだが、そんなこと言っていられないくらいに既に暑い。
真夏のカンカン照りの九州を、7日間もドライブし続けるというのは狂気の沙汰に近い。
今回ほどルーフオープン率の低いツーリングは、よほど趣旨替えをしない限り、この先ないだろう。(写真がオープンなのは、もちろん撮影用)
後から写真で見る分には、最高の景色、なんだけどねぇ。(ただひたすら暑いという記憶しかない)
前日の夜に閃いたツーリングプラン。
これから向かうその地を、遥か彼方に望む。
行くぜ、離島へ。
・・・・・・・
向かう先は「池島」。長崎県西海市に属する、小さな有人島だ。
島ならゴマンとある長崎だが、「池島」が目に止まった理由は、かつて多くの人が暮らした炭鉱島だったということ。
ご多分に漏れず既に廃坑しているのだが、驚くべきことに、何とまだ人が住んでいる。つまり「生きた廃坑の島」なのだ。
有人島なだけに、自由に往来ができる。
上陸が制限される軍艦島に行けないなら、池島があるじゃないか。(てことに昨晩、居酒屋で気付いた)
小さなフェリーに乗船すると、ものの30分ほどで島に着岸する。
明らかに場違いなオープンカーで、島の道へと走り出すと、のっけから威容な構築物に歓迎を受けることとなった。
発電施設か何かだろうか。
既にその役目を終えて久しいと思われる佇まいだが、それが当然のように完全放置されている状態が衝撃的である。
地図を見ると、小さな島に小さな周回路(県道216号)が巡っていて、島のまともな道路はそれくらい、といった雰囲気である。
まずはそれを反時計回りに周遊してみる。島は起伏に富んでいて、徒歩や自転車だとこの暑さではツラいはずだ。
道路には草が蔓延り、今にも埋もれていきそう。
ただ、使われず朽ちていくような雰囲気はない。不思議な生命力が宿っている。
炭鉱の町を象徴する建造物、鉄筋コンクリート造のアパート群が現れた。
昨日対岸から眺めた軍艦島が有名になったのは、小さな島に所狭しと建てられたアパート群の廃墟が織りなす風景が異様だからだ(たぶん)。
この池島にも、その特異な風景が存在していた。
朽ちたベランダの手摺、ツタが絡まり見えなくなりつつある外壁。
しかし、どことなく生気が感じられる。それもそのはず、ここにはまだ住んでいる人がいるのだ・・・!
スクーターが走ってたり(当然のようにノーヘルで)、おばあちゃんが歩いていたりする。
廃墟と見紛うこの建物には、信じられないことに、まだ人の営みが残っていた。
さらにエスを走らせる。
港のある小さな湾口に戻ってくると、不可思議な巨大産業機械が放置プレイ。
石炭を運び出す機械の一部なのだろうが、何かの基地でもあったようにしか見えない。
かつて炭鉱が最盛期だった時代には、忙しく稼働していた機械たちが、今はその役目を終えてひっそりと佇んでいる。ただ朽ちていくのを待つかのように。
そんな異世界とも現実とも判断つかないような場に迷い込んでいく・・・過去と現在、記憶と現実が混ざり込んで、今を見失いそうになる感覚。。
ただひたすらに青い海と空。そしてあれだけ滅入っていた酷い暑さが、現実に繋ぎ止めてくれているかのようだ。
周回路はあっという間だった。
走って楽しいかという次元ではない。周囲に展開する廃墟の景色と青い海原に目を奪われながら走っていれば、いつの間にか元に位置に戻っている。
さながら無限ループに迷い込んだようである。
池島はとても小さな島だが、実は同じ海底炭鉱の島である軍艦島よりもかなり大きい。
軍艦島は、池島港のある穏やかな湾と同じくらいの面積だという。
いかに軍艦島が小さな島かというのが、池島に来てみるとよくわかる。
ちなみに、池島港のある湾は元々「鏡池」という名の池だったらしく、石炭船を停泊させるために浚渫して港にしたそうだ。
島の名前も、池があったというのが由来とか。
これで池島の見どころは終わりなのか。
いや、この島にはまだ隠された風景がある。
島を周回する県道から、僅かに放たれた枝道。その奥底に入り込んでみるのだ。
(池島エクスプロール、後編へつづく)