翌朝、鹿児島港に到着。
素晴らしい快晴の鹿児島市内を突っ切って、九州道へと入線する。
鹿児島空港まで高速にてショートカット。
下道に降りて立ち寄ったコンビニで、厚手のロンTを半袖に着替えた。
夏のような日和の九州本土ツーリング、再開。
県道56号経由で、国道223号。
交通量の多いルート。霧島温泉郷からえびの方面に向かうと、数日前のルートと一緒になってしまうため、霧島神宮方面へ。
神宮までは、とても眺望がいい。
神宮以降は森の中の道となり、様々な表情を見せる爽快なドライブルート。
そのまま高原町方面に抜けようと思っていたが、気がつくと県道31号を走っていた。
普段なら道を間違えてもすぐに気付くことがほとんどだが、県道表示が無かったのと、前を行く単車を追走していたことで、気付くことのないまま、都城近くまで来てしまった。
奄美から帰還以降、特に明確な目的地があるわけではないツーリング。それも旅の一部と受け入れて、ルートを再セッティング。
県道42号と広域農道「御池野尻湖ロード」で、国道268号へ。
宮崎市に向かうR268は、交通量は多いものの流れは良い。
国道10号との合流点で、広域農道「中部グリーンロード」へとスイッチ。
県道40号と体を入れ替えながら、西都まで。その先は「尾鈴サンロード」と名の変わった広域農道で都農まで行く。
宮崎県中部地域を南北に移動するとなるとルートは限られるが、走って楽しく、かつ時間もかからない選択となると、このルート一択だ。
そのK40を気持ちよく流しているちょうどその時、見覚えのある紫色のS2000とすれ違った。
やはり、考えることは同じということか。
都農の道の駅で休憩。国道11号沿いということもあり、大盛況。
都農といえばワイン。数年前のツーリングの時のように、ワイナリーに寄ると時間もかかるので、道の駅でマスカットベリーAを調達。
さらには、冷凍マンゴーでクールダウン。後半戦に備える。
再び、尾鈴サンロードへ。
都農から日向の先までは、アップダウンを繰り返す快速ワインディングロード。
日向灘沿いの淡々とした道のりの中で、異彩を放つツーリング向けコースだ。
これを終点まで走りたいのは山々だが、今日はメインディッシュを控えている。
県道51号に乗り換え、国道327号、同446号、388号とつないでいく。
美郷町南郷から先、県道39号に回れば、昨年と同じルートセッティングになるが、今回は南郷の手前で林道にスイッチ。
九州の最も山深いエリアに分け入っていく。
宇目須木大規模林道
国道から分岐してすぐの看板には、「緑資源幹線林道」とある。
上辺だけのお役所的なネーミングはくすぐったいので、ツーリングマップルに記載の大規模林道名で通そうと思う。
南郷から諸塚、つまり北の方角に入ると、しばらくは谷筋の2車線路が続く。
道幅もありイージーなコースだが、交通量はほとんどないに等しく、路面はお世辞にもキレイとは言い難い。
登坂路に差し掛かると、道幅は当然のように狭くなる。
狭くなると言っても極狭路というわけではなく、すれ違いも十分に可能な道幅だ。
とはいえ、まったく他車と遭遇することはないのだが。。
思うように走行ラインを描きながら、どんどんと登っていく。
案内表示の類は、まったくと言っていいほど、ない。山はどんどんと深くなり、道路以外に何もなくなってくる。
この先、本当に道がつながっているのかを考えると、少しだけ背筋が寒くなる。
登っても登っても、まだまだ続く。この時点ですでに、超ロングコースのお墨付きは間違いない。
九州山地の深淵部を、ひたすらに駆け上った結果、いつしか周囲は高所感たっぷり。
道路からの展望はさほど良くなく、走りに熱中していたため、しばらくは気付かなかった。
稜線をしばらく走った後、谷筋に下りていく。
そういった意味では、スケールの大きな峠道とも言える。
登った分、下りも長い。
ただ、前走車が現れることも、対向車に遭遇することもないため、非常にペースはいい。
エスを自由に泳がせながら、屈曲したコースレイアウトを楽しむ、至福の時間。
谷間に下り切ると、発電所や道路が見えてきた。
大規模林道は、国道327号に突き当たる。久しぶりに見る他車。
この山中になぜ、と思うとともに、ほのかな安心感を得られた、谷間の集落。
ここは諸塚村の中心部。
平坦な場所などほとんど皆無に等しく、谷筋の国道沿いの建物以外は、斜面に建造物がへばりつくように並んでいる。
R327を西に行けば、九州の秘境と呼ばれる椎葉村。
椎葉村のみならず諸塚村も、都市部から遠く離れた、紛れもない秘境だ。
2008年に国道265号を走破して到達した椎葉村もアドベンチャー・ツーリングだったが、今回の大規模林道を走破しての諸塚村も負けず劣らずアドベンチャーだ。
宇目須木大規模林道は、R265のように走りづらいということはない。
ただ、林道はまだ終わったわけではない。諸塚は中間点。まだこの先がある。
いったん県道50号に入り、村の中心部を抜けた辺りで、再び大規模林道に入る。
谷間から一気に高度を上げていく区間、見事な2車線ワインディングが続く。
急勾配にもかかわらず、ストレート区間や美しい複合コーナーが連続する。これぞスカイライン。素晴らしいワインディング・ロード!
と思ったら、本当にスカイラインらしい。
村内からの行き先表示にも、地図にも記載がない「諸塚山スカイライン」のネーミング。
そしてなんと、全長55km!
このレベルのコースが55kmも続くなら、国内最強レベルのワインディングではないだろうか。
看板に記載の地名がまったくピンとこないので詳細はわからないが、おそらく宇目須木大規模林道から九郎山林道を、諸塚山を目指して周回するルートだろう。
このような山奥に、恐ろしいほどの超ロングコースが潜んでいるとは。
これぞまさに「裏・オートポリス」!
「諸塚山スカイライン」なるコースは、登坂路が落ち着いたその先も、2車線路が続く。
相変わらず、他走車は皆無。恐ろしく贅沢なこの状況に、テンションが上がらないはずがない。
ざらついたアスファルトにタイヤを押し付け、4輪の荷重移動を感じながらコーナリング。
パワーを溜め込んだ内燃機関から駆動力を放出させて加速、突き抜けるような排気音の共鳴に酔いつつ、次のコーナーへ向かって制動、次なる荷重移動を開始する。
一連の操作とそれに対する動きが自らの感覚とシンクロした時、ドライビングプレジャーは生まれる。
より集中できるコース環境で、それが続けば続くほど、快楽は深まっていく。
奥豊後の広域農道群と同等かそれ以上、九州随一のスーパーワインディング。
素晴らしいコースを知ってしまった。
コースをトレースするには、いくつかの分岐を間違えることなくクリアする必要がある。
南郷〜諸塚区間とは異なり、諸塚〜日之影区間は比較的、案内はしっかりしている方だと思うが、地名がわかならないと判断に迷う。
諸塚〜日之影という区間名を覚えておけば、正しい道を選択できる。
あまりにも素晴らしいワインディングで、走りに熱中した結果、ほとんど撮影もせず、かなりの長距離を走り切ることになった。
最後は日之影の青雲橋辺りで、国道218号に突き当たって、宇目須木大規模林道は終焉を迎える。
手元のツーリングマップルでは、このルートは示されておらず、判別しトレースするのはやや難しい。
「宇目」と「須木」という行政区域名も現在は残っておらず、始点終点のイメージもつきにくい。
さらには、これで全区間というわけでもなく、全区間を探訪しようというなら、それこそ壮大なプランになるだろう。
長大なアドベンチャー・ワインディングを一気にクリアして、身も心も昂ぶった状態のまま、R218を高千穂方面へと向かう。
高千穂から国道325号で高森。またまた阿蘇の内部へ。
南阿蘇からグリーンロード南阿蘇に入り、本日最後のワインディングを楽しむ。
途中の展望台で、何時間ぶりか、エスから降車。
ゾーンに入ったら、とにかく走り続けてしまう癖が出てしまっていたようだ。
夕刻の阿蘇が、静かに眼前に佇んでいた。
外輪山を越えて、西原村経由で大津町へ。
前回給油時からの距離計は、既に400kmを超えている。国道57号のGSに到着する直前で、フューエルメーターはブラックアウト。
空の燃料タンクに入った燃料は、ちょうど43リッター。残り7リッターでエンプティーというところだけは、実に正確。覚えておいて損はない。
R57沿いのビジネスホテルにチェックイン。
街中ではないため、居酒屋探訪は休止することにした。
旅もいつの間にか8日目。ちょっと疲れが出たのかもしれない。