
ぐるぐる島を走る
ここに訪れた証を遺すように、路面にラバーを擦り付けながら

次の日、部屋のカーテンを開けると、陽光に照らされた那覇の市街地が目に飛び込んできた。
実質の沖縄最終日。最高の空に恵まれる予感。
連日の泡盛祭りの余韻は吹っ飛び、朝からテンションはMAX。
いそいそと出発の準備を整え、ホテル専用の機械式駐車場に獲物を狙うような姿勢で収まるS2000を始動する。

朝の那覇市街を抜けていく。
ホテルの窓からの眺めのように、那覇市は離島とは思えぬほど、立派な市街地を形成している。
それも中心部だけでなく、市内の大半が市街地で、それもかなりの高密度である。
それもそのはず、那覇市の人口は約30万人。沖縄本島全体でいうと、約130万人にものぼる。(つまり、那覇市以外に100万人も住んでいる)
比較的面積は広いとは言え、本土とは比べ物にならないくらい小さな島に、130万もの人が住んでいることに驚く。100万しか住んでいない知られざる県、富山県(故郷)よりはるかに多い。
しかも、市街地は本島南部に密集しているので、その人口密度たるや・・・
興味深かったので、昨晩泡盛飲みながら軽く調べた(笑)ところ、那覇市の人口密度は、本土有数の大都会である名古屋市や福岡市よりも高いそうな。
そりゃこんな市街地になるわな。本島南部はほぼ市街地で、海に出ない限り、離島感はほぼゼロなのである。
このギャップが離島好きには堪らないわけだが。。

海岸道路に出ると、那覇港、那覇新港と港巡りの道となる。流通の要の道路といった感じで、終始、大型車に挟まれながらの走行となる。
港には巨大な客船が停留していた。

海岸道路ではなく国道58号という選択肢もあるわけだが、小さな離島に130万の人口、渋滞は日常茶飯事。
特にR58の渋滞は有名なので、敢えて避けて北上することにした。R58走破も魅力的ではあったのだが、、わざわざ渋滞に参加するまでもない。
那覇から浦添、宜野湾と、海岸道路は片側2車線が続き、流れも至極スムーズで快適。
R58の本道に合流すると間もなく、北谷(ちゃたん)町に入る。

北谷にアメリカンビレッジなる場所があるとのことで、興味を惹かれて国道から入り込んでみる。
海岸近くまで走ってくると、そこはまるで異世界。。テーマパークの中に迷い込んでしまったかのようだ。

でも決して囲まれたテーマパークではない。これだって普通の道端の風景。
明らかに日本の風景からは逸脱している。駐車しているクルマの車種だけが、ここが日本の一部だということを思い出させてくれる。

しかし、目が痛くなるほどのビビットな色彩は強烈。
旅の一時ならまだしも、日常では耐えられないだろうな。。

シーサイドは散歩道になっている。
公共空間のつくりこみも、日本のそれとはまるで違う。
日本でも海外でもない風景。これぞOKINAWA、といったところか。

シーサイドウォークに面したカフェで、遅めの朝食を摂ることにした。

海を眺めながらカプチーノ。
朝食に選んだホットサンドは想定以上にアメリカンサイズで、満腹になってしまった。(でも美味しかった)
街並み同様、食文化も非日本的スタイルである。

ボード・ウォークからの海岸の眺めはリゾートそのもの。
本島の西海岸には、ビーチリゾートが集中している。昨日までに走った東海岸と本島南部は、いわば沖縄本島のウラの顔。
沖縄のイメージを牽引している西海岸は、誰が見ても華やかだ。



極彩色の街並みが良いか悪いかはさておき、エリア内をそぞろ歩く楽しみは十分にある。
入居している店も、一般的に国内で見られる内容とは一線を画している。これをテーマパークとしてなんと言おう。
那覇の雑多な市場の飲み歩きも非日常的で楽しめたが、まったく異なる沖縄のカオである北谷の街並みも、ここでしか体験することのできない空間。
その土地でしか味わうことのできない文化。それこそ、旅の醍醐味であり、価値なのだ。


北谷でたっぷりと時間を費やした後、再びR58で北上する。
片側3車線の大動脈。行き交う車の種類も豊富。
沖縄には1990年代のジャパニーズ・スポーツカーが多く走っている。大抵、大口径のマフラーと車高短。年代的にストライクで大変懐かしい。
そんなイケイケのシルビアやスカイラインを駆っているのは、ほぼ米軍関係者。
必ずと言っていいほど2名乗車で、窓全開にして太い腕をドアにかけて、陽気に会話とドライブを楽しんでいる。

そんなゴッパチを、澄んだ排気音を響かせフルオープンで疾走するS2000。ほんの短時間ではあるが、90’sとランデブーを楽しむ。
南国の青空の下の爽快R58ドライブは、忘れ難い記憶となった。

嘉手納基地に隣接する道の駅「かでな」に寄った後、読谷(よみたん)村の道の駅「嘉納番所」に立ち寄る。
隣に停まっていたのはVWルポ(GTI?)。沖縄を走っているとあまり見かけない輸入車だが、なぜか4バンバー。

伝統的な沖縄民家のような道の駅の建屋はごくシンプル。
案内所のおばちゃんが「沖縄県内の道の駅で唯一、売店も食堂もない道の駅」と真顔で自虐していたのが印象的だった。(沖縄県内というか、全国的にも珍しい)
これで沖縄県内10ヶ所の道の駅を制覇したことになる。
奄美大島も攻略済みなので、九州沖縄地方の全駅制覇が見えてきた。

道の駅にて、読谷村内に気になったスポットがあったため、国道から逸れて立ち寄り。
沖縄で生産される焼き物「やちむん」の窯元が集まった「やちむんの里」。昨日訪れた那覇の壺屋から派生して形成された窯元集落だという。
集落の観光駐車場に停めると、隣にはやっぱり輸入車。ただし今度はレンタカーである。
沖縄では、輸入車のレンタカーもよく見かける。ミニやボルボも見かけた。輸入車ではないが、ロードスターも多い。
でもS2000については、レンタカーであるかどうかにかかわらず、1台も見かけなかった。それは沖縄に限ったことではないが。。

やちむんの里は開放的な雰囲気。そこかしこに沖縄独特の屋根の建屋が立ち並んでいる。
傾斜を利用した登り窯もあって本格的。涼しい風が、草原の中に密集したかのような集落内を吹き抜け、大変心地良い。

窯元の直売店も多く存在するが、読谷山焼北釜の売店を覗いたら、ググッとくる一品に出会ってしまった。
日常品の小皿たちとはまったく別物で、B級品として扱われていたにも関わらず、存在感抜群の器。
見た目は「ザ・やちむん」といった意匠ではなかったが、土着的な素材と形状に一目惚れしてしまったのだ。

昨日は我慢したのに、思わぬ所でハートを射抜かれてしまった。
S2000のトランクに、厳重に忍ばせて持ち帰る。茶碗の形状だが、焼酎や泡盛を嗜むことを期待して。

読谷村のもうひとつのスポット、残波(ざんぱ)岬。
昨日まで「残波」という名前の泡盛を好んで飲んでいたが、岬の名だったとは露知らず。


溶岩が流れ出して形成された地形と植生が印象的。
日中の陽の高さ、日差しの強さは、まさに沖縄。岬を吹き抜ける風が無ければ、散策もままならないだろう。

走行中にS2000のサイドコンソールに充電のため置いていたiPhoneが熱暴走してしまった。
南国の日差しは、気温以上に強烈だ。ドライバーのケアも必須である。

残波岬の次は、恩納(おんな)村にある万座毛(まんざもう)に立ち寄ることにした。
半分はドライバーへの水分補給が目的だ。
残波岬とは別格クラスの観光地のようで、駐車場は満車。新築のレストハウスも多くの人で賑わっていた。
岬の散策も、協力金程度ではあるが有料。
海水によって侵食された絶壁の地形が眼前に迫る。


澄んだ南国の海の向こうに、本部半島と伊江島を臨む。

散策路の終盤では、万座ビーチが眼下に広がる。
本土でも、何かと耳のすることも多いリゾートビーチの代表格。
本島にあるのかどうかも知らないほど、地理には疎かった沖縄であるが、今回の旅である程度、全体感がアタマに入った、ような気がする。
万座毛を後にした後は、R58を海岸線沿いに走り続け、許田で名護東道路。県道71号経由で国道505号へ。

R505で今帰仁村を東から西へ横断。
県道114号で、本部半島の北西端を目指した。
その北西端の集落でS2000をデポ。
備瀬という名の集落は、約2万本とも言われるフクギの木の防風林によって守られているという。

集落内の細い路地は、背の高いフクギの並木で覆われており、独特の景観に包まれている。
集落に並木が配されたのか、雑木林の中に集落が形成されたのか、まるで見当がつかない。

集落には縦横無尽に路地が巡らされており。そのほとんどすべてが並木に覆われている。
分岐の度に観光地っぽく順路を示す看板が現れるが、それに従っていると完全に方位を見失う。ゴールに辿り着くと、ココハドコ?となること請け合いだ。


備瀬の集落を散策し、S2000に戻った頃には、日は相当傾いていた。
明日の朝は、遂に沖縄を発つ。沖縄の旅を最後に締めくくるのは、本部半島で最も有名なスポットであるこの場所だ。

沖縄はもとより、日本で最も有名な水族館の一つであろう、この施設。
いわゆるテッパンの観光地ではあるが、少なからず時間の猶予があるのであれば、ということで立ち寄ってみることに。

黒潮の海を模した大水槽は、この水族館の白眉。
ジンベイザメとマンタが悠々と回遊する姿は、確かに迫力満点だ。
この日最後のイルカショーも運良く鑑賞。最後の最後まで、沖縄本島を楽しみ尽くすことができた。

夕暮れ時の水族館を後にして、本部町を目指す。
沖縄最後の宿は、本部町にあるコンドミニアムだ。
リゾート需要の多い沖縄には多数のコンドミニアムがある。
一日中走った後のホテルは寝るだけのツーリングでは、コンドミニアムを選択する理由はないのだが、明日の出港時刻を考慮して場所を選択した結果、選択されたのが今晩の宿で、それがたまたまコンドミニアムだっただけ。なのだが、最後くらい、ちょっと雰囲気が異なる宿で時を過ごしてみたかったというワケもあり。。

コンドミニアムだけにキッチン付きなので、チェックイン後に瀬底大橋の展望抜群のスーパーで買い出しを実施する。
こういう合宿風味の宿泊も、たまには悪くない。キャンプツーリングが当たり前だった頃は、こういった行動パターンがむしろ普通だったものだが。

海原に沈む夕日を眺めながら喉に流し込むビールは、格別以外の何モノでもない。
いよいよ明日は沖縄を離れる。
実質たった4日間の沖縄は、本当に瞬きが如きの一瞬の出来事だった。
その一瞬を惜しみ、感傷に耽りながら最後の夜を過ごす。
沖縄の夜は、東京の夜と変わらないはずなのに、ずっと深く、特別な時間に感じられた。