ウトロで迎えた朝、空は断然曇り。だが、雨が落ちていない。
この日は今回の道東ツーリングで唯一明確な目的地と言っていい、知床岬に向かう予定の日だ。
数日前の釧路でネット予約した観光船の集合場所へと向かう。エスは駐車場にてお休みである。
ウトロから知床岬に向かう観光船には、大小いくつもの運航会社が存在するが、Webで目についたクルーザー観光船を選択していた。
さすがにハイシーズンということもあり、ほぼ満席。しかも予約順に席を取れるので、直前に予約した自分は、自動的に後方の余った席に。
写真を撮りたいので、雨風が当たらない外部という場所は、特段悪くはなかったが。
午前10時出航。国道334号知床横断道路の登り口を横目に、クルーザーがスピードを上げていく。
後ろからは同時刻に出向したと思われる大型船がついてきたが、あっという間に引き離してしまった。
のっけから奇岩奇景のオンパレード。クルーザーはその度に速度を落とし、可能な限り岸まで近づいていく。
とは言え常に動いているし、今にも降り出しそうな暗い空でシャッタースピードが極端に遅いこともあり、画像は流れ気味。
フレペの滝(乙女の涙)
出航してそれほど時間も経たないうちに、最初の絶景スポットに到着した。
優しく流れ落ちる二筋の滝。よく見ると、岩の割れ目から直接流れ出ているのがわかる。
この滝には川がなく、地中に浸透した雨や雪解け水が、直接流れ出ているという珍しい光景。
ちなみにこの滝には、崖上に展望台があり、遊歩道を歩いて到達することもできる。
湯の華の滝(男の涙)
乙女に対して男の涙。
海上からしか見ることができないので、隠れて涙を流すという意味から、この通称があるらしい。
奇岩にはそれぞれ名前が付いていて、事細かにガイドが説明してくれる。(覚えてないけど(笑)
海上には定置網の位置を示す浮きが並んでおり、クルーザーはその間を縫うように航行する。
ずっと岸辺を走っていてくれると、間近に見る圧倒的迫力の地形を楽しめるのだが、この時期はそうもいかないようだ。
この時期は樺太マス漁の定置網だそうで、例年より早く網が敷かれているそうだ。
昨年は爆弾低気圧で網という網が流されてしまったそうで、今年は漁師の気合いが違うとか。。
象岩
これだけは覚えていた。見たまんまだし(笑
野生動物の宝庫でもある知床。断崖には、羽を休める鳥たちも多く見られた。
これはオジロワシ、かなぁ。他の場所ではウミウも。写真は失敗したから載せないけど(汗
カムイワッカの滝
あの有名な「カムイワッカ湯の滝」ではない。湯の滝が、海に落ちる滝のことだ。
カムイワッカ湯の滝は、札幌在住時に何度か行こうとしたことがあるけれど、結局行かずじまいだった。
有名になって観光客が多くなり、転落や落石の危険性から規制がかかっていると思っていたのだが、普通に自家用車で行けるらしい。(ただし時期によってはシャトルバス以外は規制される)
ただ、ダートを延々走るので、エスでは向かう気がしない。てゆうか温泉に対しては、もはやそこまでの情熱は無いので。。
ルシャ海岸
このカムイワッカの滝から、断崖は影を潜めて、海岸に平場が続くようになる。
かなり大きな番屋があったりして、珍しく人の気配のするエリアだ。
番屋には重機やトラックが停まっている。ここまでは林道がつながっているらしい。
知床岬クルーズの過程で唯一と言っていい人の気配が感じられるルシャ海岸で、遂に現れたこの訪問者。
ヒグマの親子連れである。
大きな石の上をヨタヨタと歩く子グマを、母グマが時折振り返りながら連れ立っている。
至近距離では絶対に遭いたくないが、海上からだと、単なる微笑ましい風景になる。
しかしながら番屋の直ぐ側で、ヒグマが普通に散歩しているのには驚く。
知床は、ヒグマの密集度が世界有数であることが注目されているわけだが、人との共生の姿とその歴史も、注目すべき事実だと思う。
知床の住人たちとヒグマは、お互いに過度に干渉せず適度な距離を保ちながら暮らしてきた。その関係が、ここ知床の奥地では今も続いているのである。
野生動物との共生の、究極の風景と言っていいのではないだろうか。
わかってはいても、目のあたりにすると衝撃的だった。
(後編に続く)