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8月 262023
 

2023 08 23 01

北海道6日目。
実質の最終日となるこの日は、旭川を朝一番に出て美瑛方面へと向かう。
R452からパッチワークの路に入れば、広大な丘陵地帯を真っ只中に見を投じることとなる。

久々に訪れる美瑛の丘には、人の生業が創り出す絶景が、今も変わらず点在していた。
北海道の中でも定番中の定番スポットと言うこともあり、どこかで見たような景色が連続するが、やはりその中に身を置いてこそ感じるものがある。

2023 08 23 02

広大な農耕地の中ではたらく車両の巨大さに驚く。
北海道を走っていると、公道を走っていいいのか?と思ってしまうほど様々な農耕作業車に出くわすが、それも独特の景観を形成するひとつの要素なのだと思う。

朝の丘陵地帯を走り回って、走りと景色の両方を堪能した後、美瑛駅前の道の駅に立ち寄る。

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駐車場は埋まっていたが、いずれも車内就寝中のクルマばかり。
睡眠を妨害しては悪いので、離れた駐車スペースにエスを停める。
富良野線周辺の佇まいも、旅情を掻き立てる。

2023 08 23 04

美瑛の街からは、置杵牛広域農道で十勝岳山麓方面へ。
前半は果てなきストレート。山中に入ると路幅は狭くなり、アップダウンを繰り返すという二面性を持った道。
交通量はまったく無いと言ってよく、気持ち良く走りを楽しむことができる。

道道966号に出ると、美瑛のもうひとつの道の駅と「青い池」がある。

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かつてあのAppleが、MacのRetina Displayの壁紙に日本人カメラマンのこの池の写真を採用したことで、一躍有名になった場所。
自分のMacにも一時期設定していたあの美しい風景を、実際に目にするのはこれが初めてである。
壁紙は初冬の雪の池だったが、真夏の景色も十分独創的だった。

立ち枯れた木々の足元を覆う目にも鮮やかなライトブルー。
一時期、台風の影響か何かで水質が変わってしまったこともあったはずだが、かつての壁紙のような美しい色彩は健在だった。

2023年夏の北海道ツーリングは、本州並みの暑い夏の旅となったが、色鮮やかな色彩の共演を至る所で堪能することができた。
青い池は、その極めつけの絶景と言ってもいいかもしれない。

2023 08 23 05

白金温泉を過ぎると、D966はそのまま山岳ワインディングへ。
十勝岳スカイラインと銘打たれた道は、急勾配を伴いながら十勝岳を急登していく。

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途中の望岳台で眺める十勝岳。
展望台の駐車場は広いが、十勝岳の登山口となっているらしく、1台の空きもないほど混雑している。

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振り返れば、美瑛の丘。
短い北海道の夏。登山は今がハイシーズン。十勝岳温泉の駐車場も隙間がなく、車中から眺めて終わり。

道道291号で上富良野の街へ一気に下りていく。
十勝岳スカイラインから位置エネルギーを開放したまま上富良野駅の脇を通過し、その勢いでR237も横断して突き進むと再び登り道となり、千望峠へと行き着く。

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今度は上富良野の丘陵と街を挟んで十勝岳方面を望む。
峠のイメージとは裏腹に、周囲はなだらかに畑地が続く。
その向こう側に、幾重にも丘の地形が重なり、独特の景観を生んでいる。

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視覚的な楽しみもさることながら、その起伏をなぞるように走る楽しみも忘れ難い。
高い山と美しい水の風景も相まって、素晴らしい景観特性を持つ美瑛・富良野エリア。
道北・道東エリアに流れてしまいがちだが、改めてその魅力を再認識した。

2023 08 23 11

7月なので、富良野はラベンダーの季節。というわけで、ファーム富田に訪れた。
旅の終盤で、遂にベタな観光地に足を踏み入れることとなったが、たまにならよしと自分に言い聞かせる。

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残念ながらラベンダーの開花時期はほぼ終わっていたが、収穫後のラベンダーの精油作業等を間近に見られたので、来て良かったということになった。

2023 08 23 12

大人気観光地には長居はせず、道道298号で富良野盆地を大回りして富良野市街へ。
混雑する市街地を通過し、R38で芦別、赤平方面へと向かう。

2023 08 23 14

赤平より道道114号で歌志内へ。
全国で最も人口の少ない市である歌志内市。その人口は、なんと3,000人にも満たない。
炭鉱都市の行く末を体現する山間の集落的都市の沿道風景は、どこか悲哀に満ちている。

かつて黒いシビックに乗っていた頃に開業した道の駅さえも、場末的な雰囲気に変わり果てていた。

歌志内から上砂川、R12に出て奈井江へ。
道の駅ハンティングをしながら進み、最後の三笠の道の駅が、51駅目となるチェックインとなった。
その後は道央自動車道に乗り、一気に距離を稼ぐ。小樽港を17:00に出港する新日本海フェリーに乗船するためだ。

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往路と同じ、あざれあ号に乗船。小樽を17:00に出て、新潟に翌日9:15に着く。旅の足として、理想に近いダイヤだ。
往路の出発時間(12:00)到着時間(翌日4:30)と合わせ、かなり使い勝手の良いダイヤで、いつもより北海道が近く感じられた。
過去に利用した際には、もっと航行時間が長かった気がするが、船体が新しくなったことも影響しているのだろう。

新潟港に到着し、新潟市街で給油と朝食を済ませて、北陸道・関越道で一気に帰還。
計9日間に及ぶ、夏の北海道ツーリングは終幕を迎えた。

 

・・・・・・・

 

2023年、記録的な暑さが続く夏。
涼を求めて渡ったはずの北海道は内地と変わらぬ暑さで、地球沸騰という言い得て妙な気候変動を、肌で感じざるを得ない環境だった。

気温に体力を奪われる人間を尻目に、S2000は終始好調。熱い北海道の路面にラバーを残し続けた。
唯一不安のあったミッションは、この北海道ツーリング中に限っては、気になるような操作感はほとんど発生しなかった。

今回の走行距離は3,568km、平均燃費は10.6km/lだった。
フェリーの距離が長かった分、絶対的な距離は伸びていないが、走り込んだことで得られる一体感は、しっかり身体に残っている。
ステアリングから得られるインフォメーションは常に確実、雨の中でも不安になる挙動は無く、全天候型ツーリングマシンとしての面目躍如だった。

 

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北の大地で出会う独特の景観。
時間が止まったかのような、その地にある風景のひとつひとつが愛おしい。
目まぐるしく変わり続ける世の中で、ずっとそこにある原風景は、疲れた心と身体を癒やす存在になり得るのではないか。

ふと大切なものに気付き、原点に立ち返る、そんなきっかけを与えてくれるかもしれない。

 

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北の地で嗜む食と酒。
年齢を重ね、ようやくそれを楽しむ入口に立てたような気がする。

思う存分、走った後に楽しむ食と語らいの時間は、旅の時間の魅力を増幅させる大切な要素となっている。

 

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夏が夏らしいからこそ、得られた経験がある。

フロントガラス越しに見た鮮やかな原色の風景は、これまで見たことがないほど、色彩の魔力に満ちていた。
折り重なる立体的な雲は、大気の芸術。地球の息吹を感じるほどの迫力に満ちている。

そんな非日常的な境界なき空間に、吸い込まれるように走り続ける。
それは欲望であり、快楽であり、生きている証。

 

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この旅で得られた経験を糧に、S2000という小舟に乗って、これからもどこまでも突き進んでいく。

 

2023 Summer Touring in Hokkaido

いつかまた、訪れる日を夢見て。

 

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・・・ END ・・・

 Posted by at 5:06 PM
8月 222023
 

2023 08 20 01

柔らかな朝日に包まれて目が覚める。
闇夜に包まれていた湖畔の景色は、漆黒の時間など無かったかのように煌めいていた。

津別町西部に位置するチミケップ湖。湖面はどこまでも穏やかで、爽やかな朝風によってわずかに揺らめいている。
湖畔には今回の宿の他にキャンプ場があるくらいで、全くと言っていいほど人工的な気配を感じない。
決して大きな湖ではないが、目に入る景色はどこまでも自然のままで、小さなこの島国で人工物に慣れた身には違和感しかない。

ただひたすら、無音の時が流れる。

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澄んだ空気に身も心もすっかり快くなった。
柔らかな朝の光に包まれながら、朝食も美味しくいただいた。

北の大地をただひたすらに走り続けるツーリングの中における、一時の休息。
「何も無い」が「ある」周囲の環境と、過ぎることのない宿の風情、そしてどこまでも心の籠もったもてなし。
ある年の夏の長旅という記憶の一片の中において、確実に刻まれるであろう余韻を感じつつ、宿を後にした。

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昨日の道道494号を戻る。
チミケップ湖へはいくつかのアプローチ路があるが、湖に至るまでにはいずれのルートでも未舗装路区間を走る必要がある。
今回走ったD494は、おそらくダート区間が一番短いであろうという予測で選択している。

天候が良く路面状態はほぼ問題がなかったが、雨天などではまた異なった状況が生まれることが予想できる。
少なくとも自分にとっては、様々な条件が揃わないと訪れることができない秘境の湖。
エスで訪れ、一晩を過ごすことができた経験は、かつて利尻・礼文島に訪れた時と同様に、永く記憶に刻まれることだろう。

 

国道に戻ったら、すぐに道道51号にスイッチして陸別方面へ。
津別と陸別という名も似て区別がつきにくい2つの町を結ぶD51は短絡路として有用と思われるが、考えることは皆同じようで、意外なほどトラックが多かった。

陸別と言えば、日本一寒い町、というイメージがある。
実際に昨冬もマイナス30℃程度まで記録したことが道の駅に掲示されていたが、本日の気温は既に30℃を裕に超えている。
年間を通して気温差が60℃以上にもなる場所は、日本全国探してもそうあるものでない。

チミケップにて朝の時間をゆったりと過ごしたので、この時点で昼前。
今日は淡々と移動する日になってしまいそうだ。

 

陸別からはR242で足寄方面へ。
高速で次々に追い越しをかけていくトレーラーに感心しながら、後ろをついていく。

足寄からR241にスイッチし、芽登で道道468号に入る。
起伏は無いが所々狭くなるD468は、舗装に横溝が入っていて走り心地が悪い。
ただし上士幌をショートカットするには有効で、スムーズにR273へと入線することができた。

R273は打って変わって、どこまでもアクセルを開けていけるようなスーパーハイウェイ。
糠平温泉を過ぎたら、ますますその傾向は強くなり、自制心が問われる。
前走車についたり追い越しをかけるより、前後車間を十分に取って、開放的なドライビングビューを楽しみたい。

2023 08 20 05

広大な原生林を抜けると、三国峠に到達する。道内で最も高所にある峠だ。
1,000m超というだけあって、わずかながらに涼しい。

峠から見る大樹海の景観を堪能した後は、駐車場にある山小屋風の小さなカフェで一休み。
自家焙煎のハンドドリップを、道内最高所のこの環境で味わうことができる。

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席数は僅かだが、平日ということもあり、難なく腰を下ろすことができた。
窓から差し込む柔らかな陽光と風が心地良い。

2023 08 20 06

ゆったりと流れる時間を、味わい深いコーヒーとともに楽しむ。

峠の小さなカフェの一角には、地元作家による多種多様な雑貨が販売されている。
以前訪れた際に、ひと目見て気に入ったアイアンアートは、今でも大切なコレクションだ。

数年ぶりの今回も、同じ作家の作品がないか探してみると、、発見。しかも、なかなかの大物。
長旅のエスのトランクを圧迫する恐れががあったが、今回も気に入ってしまったのは仕方ない。
旅の荷物の隙間に、念入りに保護してしまい込んだ。

2023 08 20 13

・・・・・・・

北海道の屋根である大雪山系を間近にしながら、大雪湖方面へ。
R39に合流し、層雲峡、上川と進んでいく。

西側へと移動するには、大雪山を大きく迂回する必要があり、ルートが限られている。
各都市を結ぶ幹線道路で交通量が多いとわかっていても、どうしてもこのR39は避けて通れない。
案の定、先に進むに連れて交通量が多くなり、ペースは大きく鈍る。絶妙に中途半端なスピードの直線路が続き、この日の眠気もピークに差し掛かる。

無料供用中の旭川紋別道と並行する区間となれば、交通量は減少して事態は打開されると思っていたが、さして状況は変わらず。
仕方なく道道140号に逸れることとする。結局、前走車には阻まれたが、眠気覚ましにはそれなりの効果を発揮した。

2023 08 20 08

旭川市街に入る前に、給油を済ませておく。

市街地に入れば、格段にシフト操作の機会が増える。北海道の郊外と比較すれば尚更のこと。
ずっとマニュアル・トランスミッションばかり乗っているから、シフト操作は無意識の動作ではあるのだが、ここのところその操作に若干の違和感を感じている。
今回のツーリングで、というわけでなく、年単位で徐々に操作感が変わってきた、という程度で、調子が悪いというほどのものではない。

ただ、常に操作し触れる機会が多い部位だけに、そのフィーリングの良し悪しは、ドライビング・プレジャーに直結する。
官能的なフィーリング、とはよくエンジンに使用される形容だが、ミッションにもその表現は当てはまると思っている。
しかも手という触覚の敏感な身体の部位で操作するわけだから、変化には余計に敏感で、少しの違和感も増長される傾向にある。

各ギヤの入りがやや引っかかる、またはゲートに入れるのに力を要する感じで、特に高いギヤでその傾向が強い。
S2000では典型的なミッションの疲労症状のようだ。
一般的に言えば気にする程度の症状でもないのだが、先に書いたように、常に触っている部分であるから、軽視はできない。

2023 08 20 14

27万km超を特段の不具合もなくNon O/Hで駆け抜けることができたのであれば、上出来だろう。
より症状が悪化する前に手を打つことも重要なこと。
北海道から帰還後に、予定通りミッションを下ろしている。

交換でなくO/Hであり、再使用が相応しくない部品のみ交換し、再使用できる部品は洗浄し、部分的に手を入れて組み直す。
Assy交換では得られない、極上のフィーリングが今から待ち遠しい。

・・・・・・・

さて、旭川だ。

2023 08 20 09

旭川は、言わずと知れた北海道第二の都市だが、どういうわけか、これまでほとんど訪れたことがなかった。
ましてや停泊したことも当然無く、記念に旭橋を渡った後に、駅前のホテルの駐車場にエスを滑り込ませる。

買物公園を歩き始めたのは、まだ夕刻になりかけたばかりの時間帯だった。

2023 08 20 10

初めての旭川では、どうしても行ってみたい店があった。
旭川ジンギスカンの名店「大黒屋」。
エキシージに乗るスポーツカー・ライフの大先輩であるハリソンさんのツーリング・レポートで教えていただき、いつか訪問したいと思っていた店だ。

人気店であるため、いつ回ってくるか想像できないほどの順番待ちが形成されている。
何時間レベルの待ち時間を覚悟したが、幸い夜はまだ。などと考えていたら、思いのほかすぐに順番が回ってきた。
入店してわかったが、ジンギスカン専門店だけに、メニューがあっさりしているので、回転が早いらしい。

食レポではないので、写真の掲載は控えるが、なるほど人気店だけのことはあり、肉質が段違い。これは並ぶ価値がある。
ぜひその目と舌で確かめてほしい。

2023 08 20 11

ジンギスカンの後の、ラードが決め手の獣臭いラーメン(これがまた美味い)で、脂質の過剰摂取を敢行。
昨日朝の体調不良疑惑はどこへやら。

散歩がてら、夜の旭川の街をぶらついた後、ホテルへと帰還。
これが今回のツーリングでの、最後の北海道の夜。
あっという間だった旅の日々を早くも懐かしみ反芻しながら、道内最終日のルートを検討しつつ、深い眠りについた。

2023 08 20 12

 Posted by at 12:09 AM
8月 192023
 

2023 08 19 04

5日目の北海道。
網走の朝同様、釧路の朝も、道東とは思えない高温に見舞われる。
湿気の無い乾いた暑さであることが救いではあるが、半分避暑のつもりでやってきた北の大地だけに、思惑との乖離は甚だしい。

何年もドライブ主体の旅をしているので、長時間の運転に必要な体力は備えているつもりだったが、寄る年の波には勝てないらしい。
想定外の暑さも相まって、この日は朝から頭も身体も冴えが無い。身体の各部が離れているような感覚を覚える。
ドライビングに対するアンチエイジングを目的としたトレーニングは日常的にしているのだが、体力と集中力の増強が重要なテーマとなっている昨今である。

 

釧路の街を出発し、R391で釧路湿原道路へ。
一度走ってみたかった道路だが、防風林で釧路湿原を眺めながらのドライビングは叶わず。
ネイチャーアクティビティが充実している釧路湿原は、いつかじっくりと楽しんでみたいと思ってはいるのだが、今回も周囲をドライブすることが中心となった。

道道53号から道道243号で標茶へ。
標茶からは道道13号。多和平へと向かう。

2023 08 19 02

牧草地帯がどこまでも続くなだらかな地形の中心部にある多和平。
訪問者が侵入できる草地はキャンプ場にもなっており、滞在中と思わしき旅人の寝蔵が立っていた。
これだけ広ければ、周囲をまったく気にせず野営できて快適だろう。

2023 08 19 03

広域農道で弟子屈方面に向かい、900草原にも訪れてみる。

標茶・虹別・弟子屈を結ぶ三角地帯は、牧草地の景観が特に素晴らしい。
ルート上には何も観光的な設えは無いのだが、走っているだけでもその圧倒的なスケールの地形美を堪能できる。
頭が冴えていれば、もう少し枝道に入って、緩やかな起伏を伴いながらどこまでも続く地形に沿ったドライビングを楽しむアイデアも浮かんだのだろうが。

摩周の道の駅で水分補給休憩。
通常の気候なら必要ないからなのかもしれないが、建物内でも冷房があまり効いておらず、暑さから逃れることができないのが厳しい。

気合を入れ直して、道道52号へ。
摩周湖へと登る、ワインディング・ロードだ。

2023 08 19 06

北海道では珍しい、峠道のような線形。
距離は短く、走っているクルマやバイクも多いが、真っ平らな道ばかりで飽きてきた頃には、ちょうどいい具合の道である。

摩周湖第一展望台は、レストハウスが併設されており、観光バスも含めて駐車台数と人の数がもっとも多い。駐車場も有料となっている。
目指したのは、第三展望台。道端の駐車帯には、数えるほどしかクルマは停まっていない。

2023 08 19 05

静かな展望台から眺める摩周湖が、冒頭の写真。
足元には恐ろしく鮮やかな青と緑のコントラスト。
北海道を代表する自然景観の観光地のひとつだが、その名に違わない色彩の共演に言葉を失う。

摩周湖外輪山の縁にある展望台には爽やかな風が舞い、火照った身体を優しく包み込む。
それに加え、眼前に広がるこの景色。天上にいるかのような環境に、引き返すことを何度も躊躇うこととなった。

 

後ろ髪を引かれながら、D52を下ってR391へ。野上峠を越えて、札弦の道の駅を目指す。
摩周同様、冷房の効きが悪い札弦を早々に後にし、次は東藻琴。この辺りまで来ると、特に国道は交通量が多くなる。

その国道を避けて、道道995号へ。
屈斜路湖の外輪山の山腹を横断する線形に惹かれたが、いくらかも走らないうちに通行止を示すゲートに行く手を阻まれる。
枝道を迂回路として、近くを通る道道249号に逃れて、R243へと至る。

こういった想定外の細かいルーティングは、ツーリングマップルでは追い切れない場合も多い。
その際は長年の経験と、多少は優れていると自負する方向感覚を頼りにして進むしかないが、それこそが走り主体の冒険的ツーリングの醍醐味でもあるのだ。

 

R243で美幌峠を越える。
峠の道の駅は、いつの間にか近代的となり、お店も休憩所も充実している分、訪れる人の数も多く賑わっている。
屈斜路湖畔に向かっていくと、また弟子屈の街に戻ってしまう。R243は交通量も多いので、森の中の交差点を折れることとする。

道道588号で目指すは、津別峠だ。

様々な地図に「狭路注意」と記されている津別峠への道。
道路環境の良い北海道で、わざわざ注意喚起されるくらいだから、よほど路面状況が悪いのだろうとこれまで避けてきたのだが、実走してみると印象は真逆だった。

確かに北海道の道としては珍しく、センターラインのない峠道なのだが、本州の狭路に比べれば、道幅は広く、見通しも悪くない。
何と言っても舗装状況が良く、さらに路肩の状態も良いので、むしろライン取りの自由度があって走りが楽しい。
森の中を走るので景色は皆無に等しいが、それだけに走りに集中できる。

これまで避けてきたのが勿体なく感じるくらいの、優良ワインディングだった。

2023 08 19 07

津別峠には展望台があるようだ。
訪れてみると、美幌峠とは正反対。誰もいなかった。

と思ったら、先客が一人だけいた。

2023 08 19 08

展望台からは、屈斜路湖の大展望。美幌峠では省略してしまったので、ちょうど良かった。
スケールの大きなカルデラ湖である屈斜路湖。午後の時間に順光状態で堪能できるポイントは貴重かもしれない。

2023 08 19 01

エゾシカならまだしも、高確率でヒグマに出くわしそうなニオイが特別濃い津別峠には、特にオープンカーでは長居をする勇気が出ない。
景色を堪能したら、そそくさとD588に戻り、津別側へと下りていく。

津別で道道494号にスイッチ。
最後の酪農民家前を過ぎると、アスファルトの舗装が潰える。

つまり、ここからは未舗装路。
S2000界隈ではラリー・カーと囁かれているR style S2000とはいえ、あくまでターマック・ステージでの話。
これまでダート路を走ることは極力避けてきたのだが、今回、満を持しての突入。未知のグラベル・ステージが始まる。

2023 08 19 12

どんなダートが待ち受けているのだろうと、内心ヒヤヒヤしながら突入した道は、よく絞まった路面で比較的走りやすい。
もちろん車体へのダメージを最低限としたいがために、速度は十分に落とさざるを得ないが、危険なポイントはほとんどない。

にしても、なぜ未舗装路など選んだのか。

それは、この先に本日の宿があるからに他ならない。

2023 08 19 09

未舗装路の先、チミケップと呼ばれる小さな湖の畔に、ぽつんと佇む山荘のような建物が本日の宿。

以前よりその存在は知ってはいたが、ダートを通らなければ行き着くことができないことがハードルとなり、これまで訪問が叶わなかった場所。
旅の準備期間中、運良く予約が取れたことで、封印を解く決心が着いた。
周囲にはただ森と湖しかない、静寂に支配された環境で一夜を過ごす。

2023 08 19 10

宿は北欧風のヒュッテで、内装の意匠も家具も照明も統一感があり、宿のコンセプトが明確に伝わってくる。
宿泊室は山小屋風だが、行き過ぎた装飾もなく適度な生活感を残していることが、この環境にはふさわしいと思える。

そんな瀟洒な宿でのディナーは、地元素材を活用したフレンチのフルコース。
十分な時間を費やされた料理には、一品ごとにストーリーがある。

2023 08 19 11

本格的なコースディナーには、特別なフランスワインを。
五感で味わうことができる、素晴らしいディナーだった。

窓の外はいつの間にか漆黒の闇に閉ざされ、何も窺い知ることはできない。
闇夜で仰ぎ見る星空は、きっと素晴らしかったと想像できるが、素晴らしい料理とワインに満足が過ぎてしまったために、そうすることができないまま夢の世界に落ちてしまったことだけが心残りだった。

 Posted by at 5:45 PM
8月 162023
 

2023 08 10 03

北海道4日目は、網走から出発。
朝のR244を、トラックと隊列を組みながら斜里方面へ。

2023 08 10 01

並走する釧網本線は、味のある駅舎ばかり。
前回は藻琴駅に訪れた記憶があるが、今回は止別駅に。

情緒あふれる喫茶が併設された藻琴駅に対し、「ラーメン喫茶」という興味深い響きの止まり木が、この駅にも併設されていた。

2023 08 10 02

旅人を乗せた単編成の車両が、網走方面からやってきた。
ディーゼル機関が発する音圧は、汽車というよりバスやトラックに近いにもかかわらず、その佇まいが旅情を掻き立てる。

停車中の車両の乗客に、この近くの住民と思わしき女性たちがホームから手を振っている。
これも日常の光景なのだろうか。

オープントップのS2000を見て「暑くないの?」と訊かれたので、「そりゃ暑いですよ」と応えた。
網走にいるとは到底思えない、熱気を帯びた朝の一時。

 

トラックが行き交う朝の国道を避けるように、海側の道を選んで斜里を通過。
R334は知床国道。澄んだ青い空と濃く没むような青い海のコントラストに目眩を覚えるほど感覚中枢を刺激されながら、知床横断道路へ。

2023 08 10 04

知床の雄、羅臼岳は圧巻の存在感。
頂に悠々と雲を携えた山塊が、コーナーを抜けるごとに眼前に迫りくる。
その迫力たるや。

あまりの迫力に、時間を忘れて見入ってしまう。
頂上を覆い隠す雲は、刻一刻と流れ形を変えていくが、一向に消え去る気配はない。
風上の斜面から次々に雲が生成される様に気を取られ、時間だけが過ぎ去っていく。

ワインディングとしての知床横断道路も、その走り応えは超一級。
2速をリミットまで使い切り、3速、4速とパワードライビングするも良し、高めのギヤで高速コーナリングを堪能するも良し。

迫りくる連続コーナーとダイナミックに展開する景色のコンビネーションは、北海道随一と言っていい。
ここまで晴れた天候の中で走ったことが無かったからかもしれないが、感動と言っても過言ではない体験だった。

 

知床峠を降りると、羅臼の街に入る。
道の駅で大休止し、R335を標津方面へ。
道道1145号で逸れるまで、奈良ナンバーのS2000とランデブー。初期型の白、社外ボルドー幌を纏ったセンスの良いS2000だった。

道道975号に入ると、突然の大雨。
空は晴れているように見えるが、局所的に発達した雨雲の下に入ると、大粒の雨が屋根のないオープンカーの頭上を容赦なく襲う。
それなりの速度が出ていれば何とかなる?が、前方を塞がれると悲惨。前走車には申し訳ないが、先を急がせてもらった。

2023 08 10 05

やってきた開陽台からは、先程襲撃を加えた雨雲たちが、広い空を漂っていた。

虫(アブ?)の大群に纏わりつかれ、早期の退却を余儀なくされたが。。

2023 08 10 06

開陽台からは、中標津の街へ。

おそらく前回の道東ツーリングでも登場している、中標津の回転寿司屋に再訪する。
当時よりちょっとだけパワーダウンしたような気もしたが、それでも平均以上。内地の回転寿司とはワケが違う。
この地域でしか巡り会えないようなネタと値段に満たされて、中標津を後にする。

中標津から道道で海側に抜け、R244へ。
厚床でR44。根室方面へと向かい、定番の納沙布岬へ。

2023 08 10 07

この日は移動距離も多く、目的地から外すことも考えていた納沙布岬だが、やはりここまで来たら除外することはできなかった。
先端に行き着くことから逃れることができないのは、ツーリストの性なのか。

根室に戻って、道道142号。
どちらかと言うと、ここからこのルートを取るために根室に来たと言った方が正しいかも。
北太平洋シーサイドライン。根室〜厚岸間を結ぶ、北海道の中でも指折りの快走絶景コースだ。

その魅力は、一言では言い表せない。
北海道らしい雄大な海岸地形を這う道路の線形はもちろん、北部太平洋の荒いようで静かな波形と取り巻く豪快な地形。
サロベツ原野にも劣らない雄大さを誇る霧多布湿原や、太平洋の只中に投げ出されたかのような孤独感を覚える絶景の霧多布岬。

底知れない魅力に酔うように走り続け、気が付けばどこかに立ち寄ることも忘れ、ひたすらに地平を追い求めていた。

2023 08 10 08

厚岸の道の駅に立ち寄り、この日最後の小休止。
駐車場は車中泊の陣取りで満車状態。旅の非日常感が、生活感満載に切り替わる瞬間。

2023 08 10 10

厚岸からR44に出てしばらく走り、再びD142北太平洋シーサイドラインへ。

R44の交通量から打って変わって、誰もいない異世界へと続く道。
そこにいるのは、エゾシカ、キタキツネ、そしてカラスの群れ。
陽も傾き、動物の気配を気にせずにアクセルを開けタイヤを路面に押し付ける時間は過ぎつつある。

2023 08 10 12

釧路に着いた。

本日の宿は、幣舞橋の袂という極上の立地。
もっと簡易なビジネスホテルで良かったが、この日は釧路の繁華街で旅情を楽しみたかったのだ。

2023 08 10 11

北海道の中でも有数の都市である釧路の繁華街は、街の規模に比例して賑わいを保っていた。
いくつか候補のあった中で、気軽な大衆酒場へと足を踏み入れる。
あっという間に夜の帳が降りていくのも知らずに、この日も呑んで食べて。。

それは別に釧路ではなくても同じ行為なのだが、この場所でこの空間でこの時間をいろんなものと共にすることが旅する者にとって重要なのではないか、と勝手なことを今日も思いつつ、この日を終えることにした。

2023 08 10 09

 Posted by at 10:46 PM
8月 092023
 

2023 08 07 01

北海道3日目、名寄の市街地を出発。

いったんR40を南下し、士別のセイコーマートで朝食を摂る。
ひと頃前まではセイコマのデリが充実していたものだが、ここ最近はその面影もない。
地場コンビニの雄も、遂に合理化の波に飲まれていくのか。

2023 08 07 02

剣淵まで南下して道道205号ビバカルウシ線に入り、上士別で道道61号&道道101号で下川へ。
昨日から残っていた雨は、下川町に入った頃にようやく一段落。ルーフを開け放つことを決断した。

下川からは道道60号を北上。
サンルダムに向かって豪快に登っていくこのコースは、道北ワインディングの中でもお気に入りのひとつだが、下川から北上する方向に走るのは初めてかもしれない。
爽やかな森林を縫って走る道には、獣のニオイが充満している。手つかずの異世界感こそ、道北ワインディングの真骨頂。

D60の路面は荒れている。横割れしたアスファルトを物ともせず突き進むシャシーと足回りに感謝しながら道道49号へ。
先程とは打って変わって広大な農地の中を行く大陸的なルートを走り抜け、再びオホーツク海沿岸へ。
雄武から、興部へと駒を進める。

2023 08 07 03

興部の道の駅にて小休止。
日が差すといきなり猛暑になる今回の北海道。とてもオホーツク海沿岸に身を寄せているとは思えないほどの熱気。
せっかく空模様は回復傾向にあったが、道北らしからぬ気温が原因で、最果て感は激減だ。

2023 08 07 04

R239をしばらく走って紋別へ。
紋別は、今回の旅で宿泊候補地にも挙がったオホーツク海沿岸の主要都市。
流氷を切り裂いて進む「ガリンコ号」が発着する街として有名だが、この季節は当然ながら、そういったアトラクションはない。

代わりではないが、海産物由来のアトラクションへ。
かまぼこの名店、出塚水産で揚げたてのかまぼこを食す。

2023 08 07 05

見た目がマドレーヌのようだが、熱々のかまぼこである。
ホタテがまるごと入ったのやら、チーズが入った変わり種やら、とにかく種類が豊富。
同じ揚げたてのすり身でも、四国のじゃこ天とは全く異なる味わい。

ツーリング中は夜会以外はあまり食に時間をかけないスタイルだが、揚げ物関係のファーストフードは例外的に登場機会が多いのは気のせいだろうか。

紋別からはR273で滝上へ。
滝上から選択した道道137号は、道北の中で最も印象深いワインディングロード。
テクニカルな線形も、極小な交通量も、さらにはそのケモノ臭さも、全てにおいてスーパーなコースだ。

地図を一目見れば分かる通り、国道に囲まれた山中を無理矢理繋いだ「無駄感」が、R style的には素晴らしく良い。
路面状況は、道北ワインディングとしては奇跡的に良く、動物の存在さえ細心の注意を払えば、この上ない走りを体験することができる。

期待を裏切らない、絶品ワインディングをしゃぶり尽くし、道北エリアに別れを告げる。

2023 08 07 06

D137には、遠軽で別れを告げる。
遠軽に新しくできた道の駅に立ち寄ったが、これがなかなか秀逸だった。お土産品のセレクトが素晴らしい。

遠軽からは、R333で佐呂間方面へ。
午後の国道に出ると、車列の一分となるのは北海道と言えど仕方がない。
道道109号でR239に再会を果たし、常呂へ。

2023 08 07 07

ここまで来ると、どうしても寄りたくなるのが能取岬だ。
夕刻の頃に到達するのは初めてかもしれないこともあり、自然とノーズは道道76号を向く。
能取湖から岬へと向かう開放的な道を、オホーツクの波に乗るようなステアリングコントロールで、気持ち良く流していく。

2023 08 07 08

もう、何も語る必要はない。

走り続けることでしか体感できない、一日のフィナーレ。

・・・・・・・

2023 08 07 09

この日の停泊地は網走だ。
昨日に続き、格安ビジネスホテルにエスをデポしたら、早速、繁華街へと繰り出す。

2023 08 07 10

オホーツクならではの味をゆっくりと楽しめる酒場で、至極の時。
昔々、訳あって網走の隣町に公園の計画でよく訪れていたが、網走に停滞して、その魅力を味わう経験は無かった。
長年の課題をようやく解決できたような、そんな気分。

北海道に訪れるのは、もちろん初めてではない。それでも今だに、発見に満ちている。
新しいことを見つけて、感じて、心動かされることこそ、ツーリングの醍醐味。

明日はどんな発見で、心が満たされるのだろうか。

2023 08 07 11

 Posted by at 10:23 PM