8月 102019
 

日田から国道212号で山国方面へ。途中で国道496号に乗り換えて、英彦山方面を目指す。
素朴な田舎道から、狭路の山道へ。既に陽は傾いている時間帯であり、山中の路面は薄暗い。

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R496は完全な単独行だったが、尾根伝いを走る国道500号に出ると、急に賑やかになった。
薄暗い道には変わりないが、クルマもバイクも多いため、R496とは走り方も変わる。

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コースのラインを自在に選択しながら、R500を攻略。
県道52号にスイッチすると、それまで山道からは一変、突如、農村風景の中の道になる。

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添田の道の駅で小休憩。揚げたてのかまぼこで小腹を満たして再スタート。
徐々に交通量が増え、大任町を過ぎて国道322号に出る手前で、信号待ちの渋滞の列に捕まる。

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R322を直進し、バイパスで一気に北九州へ。
今回のツーリング最後の街は、小倉である。

これまで門司港に停滞したことはあったが、北九州で停滞したことはなかった。
九州の玄関口である北九州は、九州を訪れる際は必ず通過する場所。
必ず「通過」するだけで、特にこれといって訪れたことがない。せいぜい九州道の小倉の名の付くICで下道に降りて、他の町にまっしぐらというのがいつものパターン。

そんな不遇の都市、それも中心部である小倉の街で今宵は過ごし、ここまで9日間に渡る旅路に思いを馳せよう。

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小倉の中心部に接近すると、道路の車線は増え、頭上にはモノレールに都市高速。
北九州市は、古くからの100万人都市。九州では福岡市に次ぐ規模であることを、まざまざと見せつけてくる。

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小倉の駅前から少し離れたホテルに到着。敷地内に駐車場があることを優先した。
市街地からは少し離れているが、そこまで散歩がてら歩くのも楽しみの一つだ。

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既に薄暗くなりつつある街に繰り出す。
まず向かったのは、ホテルの部屋の窓から見えた小倉城。
派手なビルに囲まれた立地がとてもシュール。景観って何ですか?と言わんばかりの扱いが、却って印象的だ。

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城内に入ってみたが、あちこちでスマホ片手に立ち尽くしている人、人、人。ポケモンだろうか。
毎度思うが、一言も発さず、一心不乱にスマホを見つめる大人たちが集うのは、異様な光景である。

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何かにつけて不思議な小倉城を後にし、川を渡って旦過市場へ。

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小倉でもっとも訪れたかったのが、古くからの台所である旦過市場。
古さと賑わいが同居し、独特の空気感を醸し出す。

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残念ながら、時間帯と曜日が市場が賑わうそれではなかったので、ほとんどの店が閉まっていた。
かろうじて、通りの電灯は点いていたので、色鮮やかな看板が折り重なりつつも、どことなくレトロな情感を醸す雰囲気は楽しめた。

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市街地の中心にありながら、これだけ歴史ある市場が今も残っているのは奇跡的。
都市防災の理由で、いずれは無くなっていく運命にあるのだろうが、それまでに再訪は叶うだろうか。

 

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旦過市場の散策を終えたら、近代的なアーケード街を通り、小倉駅方面へ。
さすがは小倉で、人の数が多い。どの居酒屋も盛況。軽く下見をしながら、駅へと向かう。

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旦過市場の次に見たかった小倉名物。それは小倉駅の駅ビル。
何の変哲もなさそうな、新幹線も停車するJRの近代的なビルの何が見たいのか。
その理由はこれ。

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発射(発車)! と言わんばかりに、ビルの腹から放たれるモノレール。
駅ビルのど真ん中に垂直に突き刺さるように、モノレールの駅が設置されているのが何ともユニークなのだ。
実際、モノレールが発車(発射)していく駅前広場の光景を、真下のペデストリアンデッキで眺めていると、ベタな近未来都市を見るようでとても楽しい。

 

短時間で小倉城、旦過市場、小倉駅ビルを観光し満足した後は、今宵の晩餐。
しかし、目をつけた酒場が連休で休みだったことで彷徨う羽目に。

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昨日から疲れも出ていて、細かく調べる気も失ったので、安酒で済ましてしまうことに。
最後の夜にしては、情緒もへったくれもない。奄美に渡るまでの夜はいずれもいい思いばかりしていたので、ここらでバランスを取ってしまったことになる。

早々に退店した後、締めにうどん屋へ。
北九州は知る人ぞ知るうどんの街である。数あるうどん屋から、小倉出身の子から聞いたことのあったオススメの店へ。

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「資さんうどん魚町店」で食すは、ごぼ天うどん。
べちゃべちゃのうどんに薄い出汁。アツアツのごぼ天が、疲れた胃に優しい。
特にこのやたらコシのないうどんがいい。讃岐うどんの真逆。特に飲んだ後は。

旅の最後の夜にしては、寂しい内容だったが、これも成り行きの結果。
明日は一気に帰路につくのみ。いよいよラスト1日となった。

 

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翌日、大手町ランプから北九州都市高速に乗り、4号線で門司ICへ。関門橋を渡って、九州に別れを告げる。

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以後は、いつものルート。中国道は往路と同様、七塚原SAにて給油。
神戸JCTから新名神経由で名神。往路は混雑で避けた新名神の東側区間に入り、土山SAで2度目の給油ピットイン。

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亀山西JCTから新しく開通した三重県区間で、東名阪の渋滞を回避。素晴らしくスムーズな東西移動が可能になった。

伊勢湾岸から新東名へ。120km/h試行区間も幾度も走っているが、相変わらず、特に周囲のスピードが上がっているわけでもない。
難なくクリアするが、新富士IC手前で原因不明の渋滞。すぐ先で、単独事故を起こした乗用車が、走行車線を塞いでいた。
幸いドライバーに怪我はないようだが、この先も気を抜いたら何が起こるかわからない。気を引き締めて、ラストスパート。

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東京ICには、16時台に到着。
明るい時間帯に、無事帰宅することができた。

 

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平成の時代から令和の時代へ、時代を跨ぐツーリングが終わった。
1年を数えないうちに渡った九州の地だが、その目的が最終的には奄美群島に渡ることにあったことは、スタートしたその時には既に思い描いていたプランだった。

2001年から続けてきたツーリングレポートの中でも、燦然と輝く印象を残してきた2005年の奄美大島ツーリング。
以来、奄美の島にS2000で上陸することが夢であり、それを成し遂げることを思い描いてきた。
今回、時代が変わる瞬間に重ねる旅を実行する上で、それに相応しいテーマは何かと考えていた時、思いついたのが奄美だった。

レポートの最初の投稿で綴った「特別な旅」。
その結果は、天候に恵まれたとは言えなかったものの、加計呂間島という憧れの離島に渡ることも達成されたことで、新しい時代のはじまりの旅に相応しい内容となった。

ひたすら走って、その地でしか見られない風景と文化を味わい、夜は身を埋めて飲んで食べて、翌朝になればまた走って・・・
旅のスタイルが常に変わり続けていることで、過去に訪れた時とはまた異なった楽しみを味わうことができているのは、幸せなことだ。

次に訪れることができるのは、いつのことだろうか。

いつも思うことがある。
いま、この時の旅、このチャンスを楽しまないと、次はいつその機会が来るか、わからない。
時間は容赦なく進み、周囲の環境変化も待ってはくれない。

いまの愛車との蜜月。それは揺るぎない信頼と愛情で成り立っているが、様々な要因で継続することが難しくなることだってあるかもしれない。

だから、いまこの時を楽しむことが大切なのだ。
いつかできる、そのうちできるという発想は、この際かなぐり捨てて、今すぐ行動を起こすのだ。

時は待ってはくれない。
新しい令和の時代は、自らアクションを起こし、この時を楽しむことを追求する時代にしよう。
クルマであれ、仕事であれ、人生であれ。すべてが一つの線で繋がっている。

 

2019年、九州・奄美の旅。
この先、果てしなく続くストーリーの1ページとして。

 

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さあ、新しい旅に出かけよう。

 

・・・ END ・・・

 Posted by at 5:14 PM
7月 282019
 

2019 07 28 01

九州・奄美に訪れて9日目を数える朝、ミルクロードをひた走り、大観峰へ。
阿蘇山を中心に、切り立った外輪山が取り囲むカルデラ地形の特異な光景が、もっともよく見て取れるスポットのひとつ。

訪れる時間帯は、決まって朝。
白い陽光が、阿蘇の山並みを照らしている。

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今回のツーリング前半でも訪れた阿蘇ではあるが、前半は悪天候で思うように楽しめなかった。
申し分のない空となった終盤のこの日、阿蘇をもう一度楽しみたい。

結果的に今回の旅は、奄美と阿蘇にフォーカスするという、いつもとは異なった色合いの九州ツーリングとなった。

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国道212号でカルデラに下り、阿蘇登山道路へ。
詳細は3日目にレポートした通りの道。しかしこの日は、空と山の色彩がまるで違う。

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メジャーな観光道路ゆえ、自由に走りを楽しむという類のコースではない。
ただ、それを補って余りあるほどの絶景が次々に展開するのが、登山道路の真骨頂。

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ハイライトは一般的には草千里ヶ浜や米塚だが、個人的には外輪山とカルデラ内の風景を一望する北山麓を走るゾーンと、荒涼たる火山地形の風景を楽しむことができる古坊中がお気に入りだ。

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いずれのスポットも、足を止める人はほとんどおらず、広大な大地の風景を独り占めできてしまう。
ただひたすらに走ることに徹した昨日からは一転、じっくりと景色を堪能。阿蘇の雄大な景色を、この目に焼き付けるように。

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登山道路を南側に下り、阿蘇南部広域農道経由で、国道265号箱石峠。県道11号で一の宮に向かう。

 

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阿蘇神社

本来であれば真っ先に訪れて、阿蘇の神々に感謝と旅の安全を祈願しなければならないところだったが、後回しになってしまった。
肥後国の一の宮であり、農耕の神様を祀る由緒ある神社。
先の熊本地震により、重文の楼門、拝殿が倒壊してしまったのは記憶に新しい。

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境内の中心的な建造物が両方とも無くなってしまったことによる痛手は計り知れない。
倒壊した建物は、既に基礎石を残して撤去されており、再建の時を待っている。
ここまでの旅路に感謝し、残りの旅の安全を祈願しつつ、早期の再建を願って神社を後にする。

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阿蘇神社には、通常正面にある参道が、横向きに形成している。
この参道が、等身大の佇まいの中に、自然な賑わいを見せていて印象的だ。

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ひとしきり参道の散策を楽しんだ後、ゆっくりコーヒーでもいただこうとエスに戻り、カルデラの農村内の道を行く。

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カルデラ内の広大な農地の中に。ぽつんと佇む農家の家屋。
その農家の敷地内に、レストランやカフェが点在する謎のスポット。

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ヒバリガレージ&ヒバリカフェ

一面に広がる田畑の中に、まさに異世界と言っても差し支えないほど、センスフルな空間がそこにあった。
元は加工食品の工房から始まったというが、今はその敷地内に、カフェ、レストラン、ガレージが建ち並ぶ。
そのひとつひとつがセンスの塊のような建物。オーナーの優れた才能を垣間見る。

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特に楽しいのは、敷地内で中心的位置に配置されるガレージ。
農家の納屋を改造したと思われる建物だが、ブラックのサイディングと木板を基調とした、シンプルなリフォーム手法にグッと心を掴まれる。

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ガレージの内部も、実に魅力的。オーナーの遊び心があちこちに散りばめれられていて、見ていて飽きさせない。
懸命に仕事して、真面目に遊ぶ。そんなスピリットを感じると、居ても立ってもいられなくなる。

自分はいま、自由な発想で、毎日楽しんで生きているだろうか。

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運良く、ちょうどカフェの開店時間となった。
窓際の席に陣取ると、目の前の窓から阿蘇五岳。 これは絵画か!?素晴らしい眺望だ。

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ヒバリカフェの名物は、工房で作る少量手作り生産のソーセージを挟んだホットドッグ。となれば、それを頼まない手はない。
ボリュームたっぷりの「ヒバリドッグ」を頬張りながら眺める阿蘇の絶景。どんなに有名なグルメやレストランよりずっと贅沢で心に残る、極上の体験となった。

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遮るものがない阿蘇山の勇姿を眺めているうちに、そろそろこの地を離れなければならないことに寂しさを感じ始めた。
今回ほど阿蘇を味わった旅は、これまでになかった。それほど走りの楽しみが詰まったエリアだということと共に、非常にスケールの大きいエリアということもあって、常に新しい発見があるというのも大きい。

名残惜しさに後ろ髪を引かれつつ、旅人を包み込むように愛してくれるこの地を後にすることとなった。

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県道11号、通称「やまなみハイウェイ」を行く。
九州で一、二を争う観光道路ということもあり、特に晴れたこの日は交通量が多い。
県道40号に逃れると、周囲から一瞬クルマはいなくなる。ただそれも束の間、すぐに観光中の軽自動車に追いついてしまう。

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このルートは温泉の宝庫であり、数々の温泉地をつないで蛇行していく。
高原風景となったところで、「四季彩ロード」にスイッチ。高速コースを一気に走り切り、国道210号を経由して、水分峠から再び「やまなみハイウェイ」へ。

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水分峠から南、九重に向かうコースは、中速コーナーが連続する快走区間。
しかも、奇跡的なクリアラップ!次から次へと迫りくる大きなコーナーに、S2000は水を得た魚のようにコーナーをクリアしていく。
ドライバーの身体には心地よいGが加わり、ステアリングとシートから得られる路面とマシンからのインフォメーションが、次へのアクションへといざなってくれる。

クルマからのフィードバックが確かなものとして感じ取れる瞬間、それこそがドライビングの快楽。
インフォメーションが多く、それに対して自然とアクションできるクルマこそが、真にドライビングを楽しむことができるクルマであると思うことがある。
パワーがあるとか速いとか遅いとかは関係なく、ドライバーとマシンの感性がシンクロできる関係性こそ、重要なのではないか。

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長者原から牧ノ戸峠を越えて、瀬の本に戻ってきた。
飯田高原の周囲を、K40とK11で大きく周回したことになる。交通量は多いが、走って気持ちが良いことには変わりはないので、よく選択するルートである。

国道442号で小国方面に向かい、黒川温泉を過ぎたところで、広域農道「ファームロードわいた」にスイッチ。
この広域農道、確か2008年のツーリングで走行しているのだが、その時は夕暮れ時にも関わらずとんでもない濃霧で、ほとんど走った気がしなかったのを覚えている。
その時の霧は自分の経験上でも最悪の視界で、一寸先も見えず、以後は大抵の霧でもビビることなく走れるようになった。

今回も同じように夕刻が近づく時間帯だったが、空が雲に覆われつつあったものの、天候は悪くない。
視界を奪われる心配はまったくなく、安心して走りを楽しむことができそうだ。

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広域農道らしく、地形を無視したストレートとアップダウンの連続。谷間は大きな橋が架かり、完全無欠の快走路線。これが日田までずっと続くのだから末恐ろしい。
途中、国道387号を跨ぐところが、行き先表示がないので迷いやすい。今回は勘が外れて、鄙びた温泉集落に迷い込んでしまった。

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すぐさまリカバリーして、再スタート。
コースは相変わらず、高速走行を許容する。しかし、対向車などいないわけではないので、あまり調子に乗ると痛い目を見そうだ。
実際にこのコース上で、対向車同士のアクシデントを目撃。先程、やまなみハイウェイの峠区間でも衝突事故を見たところだったので、いつも以上に安全性を考慮してドライビングを楽しむ。

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非常にロングなコース。広域農道は日田市街を迂回するようにして続いて、国道212号へと至る。
飯田高原からここまで、一気走りに近い形で走り切った。トイレ休憩に立ち寄った日田市郊外のコンビニで、じっとりと汗をかいた身体をクールダウン。

さて、そろそろ再スタートとコックピットに収まった時、頭上から声をかけられた。
プリウスで買い物に来ていた年配の男性だったが、S2000に乗っているという。少し前までバイクに乗っていたが、エスに乗り換えて走りを楽しんでいるそうだ。

様々な年代の人が、様々な楽しみ方をしている。
S2000は量産車ではあるが、極めて趣味性の高いクルマだから、所有できること自体が一般的には難しい。
それを13年以上も継続していられることに感謝しなければならないし、その素晴らしさを広く伝えて、後世にS2000が1台でも多く残り、多くの人が楽しめるように貢献していきたい。

エスを走らせることができる、喜びと幸せ。
永く付き合って、多くの人と共有したいと思う。

改めてそう感じた旅も、フィナーレは近い。 

2019 07 28 40

 Posted by at 3:52 PM
7月 212019
 

2019 07 20 01

翌朝、鹿児島港に到着。
素晴らしい快晴の鹿児島市内を突っ切って、九州道へと入線する。

鹿児島空港まで高速にてショートカット。
下道に降りて立ち寄ったコンビニで、厚手のロンTを半袖に着替えた。
夏のような日和の九州本土ツーリング、再開。

2019 07 20 01

県道56号経由で、国道223号。
交通量の多いルート。霧島温泉郷からえびの方面に向かうと、数日前のルートと一緒になってしまうため、霧島神宮方面へ。

2019 07 20 02

神宮までは、とても眺望がいい。
神宮以降は森の中の道となり、様々な表情を見せる爽快なドライブルート。
そのまま高原町方面に抜けようと思っていたが、気がつくと県道31号を走っていた。

普段なら道を間違えてもすぐに気付くことがほとんどだが、県道表示が無かったのと、前を行く単車を追走していたことで、気付くことのないまま、都城近くまで来てしまった。
奄美から帰還以降、特に明確な目的地があるわけではないツーリング。それも旅の一部と受け入れて、ルートを再セッティング。
県道42号と広域農道「御池野尻湖ロード」で、国道268号へ。

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宮崎市に向かうR268は、交通量は多いものの流れは良い。
国道10号との合流点で、広域農道「中部グリーンロード」へとスイッチ。

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県道40号と体を入れ替えながら、西都まで。その先は「尾鈴サンロード」と名の変わった広域農道で都農まで行く。
宮崎県中部地域を南北に移動するとなるとルートは限られるが、走って楽しく、かつ時間もかからない選択となると、このルート一択だ。
そのK40を気持ちよく流しているちょうどその時、見覚えのある紫色のS2000とすれ違った。
やはり、考えることは同じということか。

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都農の道の駅で休憩。国道11号沿いということもあり、大盛況。
都農といえばワイン。数年前のツーリングの時のように、ワイナリーに寄ると時間もかかるので、道の駅でマスカットベリーAを調達。
さらには、冷凍マンゴーでクールダウン。後半戦に備える。

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再び、尾鈴サンロードへ。
都農から日向の先までは、アップダウンを繰り返す快速ワインディングロード。
日向灘沿いの淡々とした道のりの中で、異彩を放つツーリング向けコースだ。

これを終点まで走りたいのは山々だが、今日はメインディッシュを控えている。
県道51号に乗り換え、国道327号、同446号、388号とつないでいく。

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美郷町南郷から先、県道39号に回れば、昨年と同じルートセッティングになるが、今回は南郷の手前で林道にスイッチ。
九州の最も山深いエリアに分け入っていく。

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宇目須木大規模林道

国道から分岐してすぐの看板には、「緑資源幹線林道」とある。
上辺だけのお役所的なネーミングはくすぐったいので、ツーリングマップルに記載の大規模林道名で通そうと思う。

南郷から諸塚、つまり北の方角に入ると、しばらくは谷筋の2車線路が続く。
道幅もありイージーなコースだが、交通量はほとんどないに等しく、路面はお世辞にもキレイとは言い難い。

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登坂路に差し掛かると、道幅は当然のように狭くなる。
狭くなると言っても極狭路というわけではなく、すれ違いも十分に可能な道幅だ。
とはいえ、まったく他車と遭遇することはないのだが。。

思うように走行ラインを描きながら、どんどんと登っていく。
案内表示の類は、まったくと言っていいほど、ない。山はどんどんと深くなり、道路以外に何もなくなってくる。
この先、本当に道がつながっているのかを考えると、少しだけ背筋が寒くなる。

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登っても登っても、まだまだ続く。この時点ですでに、超ロングコースのお墨付きは間違いない。
九州山地の深淵部を、ひたすらに駆け上った結果、いつしか周囲は高所感たっぷり。
道路からの展望はさほど良くなく、走りに熱中していたため、しばらくは気付かなかった。

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稜線をしばらく走った後、谷筋に下りていく。
そういった意味では、スケールの大きな峠道とも言える。

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登った分、下りも長い。
ただ、前走車が現れることも、対向車に遭遇することもないため、非常にペースはいい。
エスを自由に泳がせながら、屈曲したコースレイアウトを楽しむ、至福の時間。

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谷間に下り切ると、発電所や道路が見えてきた。
大規模林道は、国道327号に突き当たる。久しぶりに見る他車。
この山中になぜ、と思うとともに、ほのかな安心感を得られた、谷間の集落。

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ここは諸塚村の中心部。
平坦な場所などほとんど皆無に等しく、谷筋の国道沿いの建物以外は、斜面に建造物がへばりつくように並んでいる。

R327を西に行けば、九州の秘境と呼ばれる椎葉村。
椎葉村のみならず諸塚村も、都市部から遠く離れた、紛れもない秘境だ。
2008年に国道265号を走破して到達した椎葉村もアドベンチャー・ツーリングだったが、今回の大規模林道を走破しての諸塚村も負けず劣らずアドベンチャーだ。

宇目須木大規模林道は、R265のように走りづらいということはない。
ただ、林道はまだ終わったわけではない。諸塚は中間点。まだこの先がある。

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 いったん県道50号に入り、村の中心部を抜けた辺りで、再び大規模林道に入る。

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谷間から一気に高度を上げていく区間、見事な2車線ワインディングが続く。
急勾配にもかかわらず、ストレート区間や美しい複合コーナーが連続する。これぞスカイライン。素晴らしいワインディング・ロード!

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と思ったら、本当にスカイラインらしい。
村内からの行き先表示にも、地図にも記載がない「諸塚山スカイライン」のネーミング。

そしてなんと、全長55km!
このレベルのコースが55kmも続くなら、国内最強レベルのワインディングではないだろうか。
看板に記載の地名がまったくピンとこないので詳細はわからないが、おそらく宇目須木大規模林道から九郎山林道を、諸塚山を目指して周回するルートだろう。

このような山奥に、恐ろしいほどの超ロングコースが潜んでいるとは。
これぞまさに「裏・オートポリス」!

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「諸塚山スカイライン」なるコースは、登坂路が落ち着いたその先も、2車線路が続く。
 相変わらず、他走車は皆無。恐ろしく贅沢なこの状況に、テンションが上がらないはずがない。

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ざらついたアスファルトにタイヤを押し付け、4輪の荷重移動を感じながらコーナリング。
パワーを溜め込んだ内燃機関から駆動力を放出させて加速、突き抜けるような排気音の共鳴に酔いつつ、次のコーナーへ向かって制動、次なる荷重移動を開始する。

一連の操作とそれに対する動きが自らの感覚とシンクロした時、ドライビングプレジャーは生まれる。
より集中できるコース環境で、それが続けば続くほど、快楽は深まっていく。

奥豊後の広域農道群と同等かそれ以上、九州随一のスーパーワインディング。
素晴らしいコースを知ってしまった。

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コースをトレースするには、いくつかの分岐を間違えることなくクリアする必要がある。
南郷〜諸塚区間とは異なり、諸塚〜日之影区間は比較的、案内はしっかりしている方だと思うが、地名がわかならないと判断に迷う。
諸塚〜日之影という区間名を覚えておけば、正しい道を選択できる。

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あまりにも素晴らしいワインディングで、走りに熱中した結果、ほとんど撮影もせず、かなりの長距離を走り切ることになった。
最後は日之影の青雲橋辺りで、国道218号に突き当たって、宇目須木大規模林道は終焉を迎える。

手元のツーリングマップルでは、このルートは示されておらず、判別しトレースするのはやや難しい。
「宇目」と「須木」という行政区域名も現在は残っておらず、始点終点のイメージもつきにくい。
さらには、これで全区間というわけでもなく、全区間を探訪しようというなら、それこそ壮大なプランになるだろう。

 

長大なアドベンチャー・ワインディングを一気にクリアして、身も心も昂ぶった状態のまま、R218を高千穂方面へと向かう。
高千穂から国道325号で高森。またまた阿蘇の内部へ。
南阿蘇からグリーンロード南阿蘇に入り、本日最後のワインディングを楽しむ。

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途中の展望台で、何時間ぶりか、エスから降車。
ゾーンに入ったら、とにかく走り続けてしまう癖が出てしまっていたようだ。

夕刻の阿蘇が、静かに眼前に佇んでいた。

2019 07 20 26

外輪山を越えて、西原村経由で大津町へ。
前回給油時からの距離計は、既に400kmを超えている。国道57号のGSに到着する直前で、フューエルメーターはブラックアウト。
空の燃料タンクに入った燃料は、ちょうど43リッター。残り7リッターでエンプティーというところだけは、実に正確。覚えておいて損はない。

R57沿いのビジネスホテルにチェックイン。
街中ではないため、居酒屋探訪は休止することにした。
旅もいつの間にか8日目。ちょっと疲れが出たのかもしれない。

 Posted by at 12:21 PM
7月 072019
 

2019 07 07 01

加計呂麻島から戻った大島で、翌朝を迎えた。

大島の初日は大雨で、走りも景色もほとんど楽しむことができなかったが、滞在最終日のこの日は、朝こそ雲が多かったものの、天候としては悪くなさそうだ。
陽が高くなりつつある時間、大島の北側、県道82号を北上するところからスタート。

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大島の北端に続く道は、穏やかな丘陵地帯を行く。
険しい山岳地帯がほとんどの大島では、この辺り一帯でしか見られない珍しい地形。優雅なドライブが似合うステージだ。

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あやまる岬

美しい海岸やビュースポットが集中する中でも、あやまる岬の知名度と眺望は随一かもしれない。
岬のパーキングは整備されており、芝の丘には洒落た建物のカフェ。
岬全体を取り巻くトロピカルな雰囲気は、南国の情緒たっぷりだ。

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県道601号〜602号で、大島最北端の半島を周遊。
あやまる岬から北側は交通量が激減し、離島の雰囲気が一層高まる。

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大島は人口も多く、意外と離島の空気感が薄いというのが、直感的な印象だった。
本土から遠く離れた離島というイメージもあってか、印象が増幅されていたというのもあったかもしれない。
そういった中で北端で出会った風景には、離島の最果て感が詰まっていて印象深かった。

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奄美大島にはその端々で、まったく異なった表情が潜んでいる。
それほどのボリューム感を感じるからこそ、愛車でのドライブは格別で、満足感が高い。
離島感が薄いというのは、目に見えやすい部分だけ。時間と労力をかけて訪れる価値は、十分にある。 

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赤木名で国道58号に入り、龍郷から県道81号に入る。
大島初日に西郷南洲翁謫居跡に向かった道だが、今井崎経由で半島を周遊して、名瀬に至ろうというプラン。
混雑するR58のバイパスと呼ぶには距離が長いが、その分、交通量は少なく、走りが楽しめる可能性は高い。

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2日前とは比べようもない好天。シーサイドラインの2車線路が、黒いオープンカーを島の奥へと誘う。

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岬を回り、シーサイドラインから内陸に入っていく。
景色は平凡になっていくが、反比例するようにコースはワインディング度合いを増していく。
交通量は思った以上に皆無に近く、エンジンを歌わせるには絶好のコンディションだ。

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名瀬の街を見下ろす丘の上に至るまで、爽快なワインディング・ロードが続く。
R58だけを走っていてもわからない、離島ワインディングの真髄が潜む極上ロード。
しかし、晴れ間の少ない奄美の空の下、走りたかったのはここだけではない。

R58を再び、古仁屋方面へ。この3日間で、何度このルートを往来していることか。
いま走りたいのは、R58ではない。 住用を過ぎて県道85号にスイッチ。

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宇検村の中心部、湯湾までは2日前に逆方向で走っているが、湯湾から先、北向きに行く県道79号は、この日のために取っておいたのだ。

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しばらくは入り組んだ焼内湾沿いの道。
複雑な海岸線をトレースするため、素早くステアリングを切り、無数のコーナーを抜けていく。

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延々と続くかと思われた標高0mの道は、いつしか山岳路へと変貌。
タイトなコーナーをクリアし、青空に向かってヒルクライム。
奄美の青空に、S2000宝玉の直列4気筒、F20Cの咆哮がこだまする・・・!

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素晴らしいワインディング。
奄美大島最高峰の湯湾岳と海に挟まれた山岳路は、予想以上に曲がりくねり、ドライバーを刺激する。 

加えて、どこまでも突き抜けるように青い海と空。陽光は澄み渡り、空気の淀みはまったくない。
透き通った景色に身を投げ出すようにして、目の前のコースに立ち向かっていく。

最高の景色に、最高のコース。
奄美群島の山岳島のワインディングには、凝縮された走りの楽しみと、ありのままの自然景観を堪能する楽しみの両方がある。
離島離れした走りのステージと、南国そのものの景色の存在は、奄美を極上の離島ツーリングステージとして君臨させていると言っても過言ではない。

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K79は大島随一のワインディングであり、ロングコース。
果ては名瀬の街。この日は朝が遅かったことから、既に時刻は夕方に差し掛かっている。

 

絶対的に走った時間は長くはなく、幾多の旧道、支線も走ってはいなかったが、続きは別の趣向で島を堪能してみよう。
エスを駐車場にデポし、名瀬中心街の散策を開始。 

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奄美における政治・経済の中心地である名瀬は、離島とは思えないほどの市街地を形成している。
アーケード商店街もしっかりとあり、本州の地方都市とほとんど絵的には変わるところがない。

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西日に照らされた町並みに、そこはかとない郷愁めいた空気を感じる。
ただここは、南の海に浮かぶ奄美群島の島。良くも悪くも、大島の中心部の南国らしさは薄味。

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街の中心部から北東のエリア、屋仁川通り周辺は、飲み屋が集まる歓楽街。
この日はまだ運転が残っているので一軒覗きに、というわけにはいかないのだが、興味を惹かれる店もちらほら。

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飲み屋に行く代わりに、レトロなカフェで一服。トロピカルなかき氷をいただく。

日中の刺すような日差しは鳴りを潜め、柔らかな西日が街を包んでいる。
奄美では貴重な晴天の一日が終わろうとしていると同時に、奄美を離れる時間も迫ってきた。

最後にもう一度、奄美の風景を目に焼き付けたい。
そう思って市営駐車場に停めていたエスに戻り、港を横切り県道81号へ。

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目指すは、名瀬を一望する展望スポット。急坂を登りきった先には。

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名瀬の港越しに街を見下ろす絶好の展望。
こうして見ると、歩くと広く感じた名瀬の街も、それほど大きなものには見えない。

展望台には人だかり。
それもそのはず、ちょうど夕日が沈む、その時だったのだ。

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見れば、まさに今、夕日が海に沈もうとしている。偶然にしては出来過ぎなこのタイミング。
偶然日没の瞬間に立ち会うのは、昨年11月の四国ツーリング、四国カルストでの瞬間が記憶に新しいが、またしても。

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四国カルストは山の稜線への日没だったが、今回は水平線に沈む夕日。
はっきりとした海の水平線に沈むのをこの目で見るのは、どれだけぶりだろうか。

夕日は動きを止めることなく、刻一刻と海原に身を沈めていく。
望遠レンズに交換する隙もなく、ただひたすらに、その一瞬一瞬を目に焼き付けた。

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グランド・フィナーレ。
奄美の旅は、その最後に相応しいか、それ以上の鮮烈な印象を残して、終わりを告げた。

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闇の帳に支配されつつある名瀬の港と町。

今夜、この港を出港する鹿児島行きのフェリーに乗り、島を後にする。
ほぼ丸3日間の間、島を堪能したにもかかわらず、やり残したことがたくさんあるようで名残惜しい。
いつかまた逢える時が来るのだろうか。

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丘を駆け下り、名瀬の港へ。
島の夜の闇は想像以上に視界を奪う。港周辺は真っ暗で、どこに乗り場があるか判別するのに時間がかかった。

ようやく見つけた切符売り場は、外の暗さからは想像もつかないほどの長蛇の列。しかも今夜出航の便は満席との表示が。
14年前、同じGWの旅で復路の便が大混雑で、寝るどころではなかった記憶が蘇る。
ただ、今回は帰りの便も予約済み。二等ながら指定席ということで、車輌乗船の手続きが済みさえすれば、問題はない。

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決して大きくはないマルエーフェリーの船体だが、低床車でも難なく乗用車用の甲鈑に居場所を確保できる点は素晴らしい。
車両自体はそれほど混まない航路だが、トラックが多く、船体が小さいので、やはり予約しないと不安が先立つ。

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マルエーフェリーの良いところは、二等でも指定席だというところもある。
しかも簡単な仕切りもついていて、内装も新しい。シャワールームもあり、意外と快適。
満席だという割には空いていて、出港後もすべての席が埋まることはなかった。

東シナ海に浮かぶ奄美群島から、一晩で九州、鹿児島に到着する。
時間で言えばそれくらいのものなのだが、やはり特別な地であることには変わりはない。

 

S2000で訪れた奄美の島々。
それは決して忘れることのない想い出として、これからずっと記憶の中に留まり続けることだろう。

 

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 Posted by at 3:24 PM
6月 242019
 

2019 06 22 01

安脚場戦跡公園から、もと来た狭い道を戻る。
諸鈍、生間と戻ってK614。
対岸に古仁屋の街を望む大島海峡は、朝のぼんやりした風景から、陽光鋭い夏海のような風景に様変わりしている。

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朝、渡船が着岸した瀬相の港を通過し、島の西側へと向かう。
県道を走っている分には、道路の状態はまったく問題ない。
ほとんど走っているクルマもおらず、ドライブを楽しるのかといった心配は、どうやら杞憂に終わりそうだ。

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地図上では海沿いを走るルートのように見えるが、実際には海の見える区間は限られている。
それほど島の地形は、起伏に富んでいる。大島もそうだが、加計呂麻島もその例に漏れず、海に突き出した「山」でというのが実態なのだろう。

薩川の集落に分岐があり、県道をひたすら進んでも変化に乏しいので、少し寄り道をしてみる。
先には芝という集落があるだけだが、行って帰ってくるだけの道にこそ、印象的な風景が待っているかもしれない。

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小さな集落には、島唄を大音量で流す移動販売車が停車しており、住民が品定めをしている。
静かな生活の場を邪魔するわけにはいかないので、少し離れたポイントで降車。ガードレールの向こうに広がる海の青さに声を失う。

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加計呂麻島の海は、まさに手付かず。
入り組んだ地形が無数の浜を形成しているが、住んでいる人の数が、島の大きさと浜の数に対して圧倒的に少ないからか、ほぼ自然のままの姿で残っている印象がある。
大島でもそうなのだろうが、加計呂麻島は更にその印象が強い。

よく自然のままの海とその周辺環境が残る島として、沖縄よりも奄美、と言われるが、奄美大島より加計呂麻島、とも言われる。
それほど加計呂麻島の手付かず感は、特筆に値する。ここは無人島ではなく、ある程度の大きさをもった有人島であるから尚更だ。

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県道まで戻って、更にその先に向かうと、2車線の峠道が現れる。
全体的にワインディングテイスト高めの加計呂麻ロードだが、こういった本格的ワインディング・ロードはそれほど多くはない。
久しぶりにエスのポテンシャルを発揮できるステージ。僅かな区間ではあるが、ドライビングを楽しむ。

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峠を越えると、コーナーの先にはこれまでとは桁違いに明るく、青い海が視界に飛び込んでくる。
先には、特徴的な石垣と樹林帯に囲まれた民家が点在していた。島の西の端に位置する、実久の集落だ。

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実久

これまで通過した集落とは異なり、段違いに南国風情が漂っている。
石垣に見えた塀は、石ではなく珊瑚の化石の積層体。見たこともない形態に、思わずレンズを向ける。

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島唄を流す移動販売車「とらや」は、諸鈍、芝に続きここ実久でも見られ、空き地にはヤギが寝そべっていたりと、違和感の塊のような集落だ。
違和感ならば、この地に降り立ったS2000のある風景もそうだろう。
練馬ナンバーのオープンスポーツが、加計呂麻という都会から遠く離れた島の最果てに佇む光景には、多少なりともインパクトがあるはずだ。

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実久の集落はその他の集落とは異なり、観光と思わしきクルマと人で賑わっていた。
クルマは奄美ナンバーのレンタカーばかり。加計呂麻島には少数のレンタカーしかないので、大抵の場合、大島で借りたレンタカーをそのまま渡船に載せてここまで来るようだ。
そのため、大島と加計呂麻島を結ぶ船の車両搬送枠は、早々と埋まってしまう。そんな気がしたので、昨日予約しておいたわけだ。

実久に人が集まっているわけは、おそらくその海。
実久海岸と呼ばれる浜は、その色彩から「実久ブルー」という憧れの念を抱いた言葉によって知られている。

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白浜に降り立つと、実久ブルーが異邦人を迎え入れてくれた。
海は明るく鮮やかなブルーだが、浜の白さと輝度差があり過ぎて、相対的に暗く見えてしまう。
実のところは表現し難いほど明るく澄んだブルーであり、それが沖合へ進むほど深淵なブルーに変色していく様は、想像を絶する美しさだ。

対岸には大島の山並みが控える構図もまたいい。絶妙の箱庭感が、プライベートビーチ感を一層引き立たせる。
そんな絶景のビーチでランチタイムとすることに。今朝、古仁屋の惣菜店で調達しておいた弁当を広げ、コーヒーを淹れる。

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3日目に南阿蘇のモンベルで購入したSOTOのテーブルが、早速活躍する。
以前登山をやっていた頃の初期物のジェットボイルで湯を沸かす。
カップは昨年の九州ツーリングの際、鹿児島の雑貨店で購入した中古の軍モノだ。

眼前に広がるビーチを眺めつつ、のんびりとコーヒーを楽しんだら、海へ。
目の前にこれほど美しい海が広がっているのに、泳がない選択肢はない。
ボードショーツに履き替え、シュノーケルを手に、ここ加計呂麻島でも有数の美しさと言われる実久の海へ。

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前日の雨のせいか、残念ながら海中の透明感は今ひとつ。
沖合の潮の流れが早そうだったので、あまり深入りしない程度に海中散歩。

思えば14年前も、キャンプした屋鈍海岸にてシュノーケリングを楽しんだものだ。
あの時は鮮やかなサンゴ礁と熱帯の魚たちを楽しむことができたが、実久では残念ながら岩礁のみ。
海中の地形にもよるので一概には言えないが、大島の海だって捨てたものではない。

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海中の景色は今ひとつだったが、ツーリング中の海中散歩を14年ぶりに再現できた経験は、何事にも代えがたい満足感として記憶に残る。
のんびりと南国の海を楽しみながら過ごした時間が、この旅を一生忘れられない経験として、心の奥底にずっと残り続けるのだろう。

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・・・・・・・

 

実久海岸でのんびりと南の海を堪能した後、K614を瀬相の港に向かって引き返す。
加計呂麻島にはまだ多くの集落があり、世にも美しい浜辺が多数隠れている気がするのだが、残念ながら船の出航時間が迫っている。
往路だけでなく復路も予約しておかないと帰れなくなってしまう可能性が高いので、14時台の船を往路と同時に抑えていたのだ。

加計呂麻島の道がどれほど走りやすくて、どの程度時間を要するかが正確には読めず、今回の構成になったわけだが、くまなく楽しみたいのであればもう少し時間が欲しいところではあった。

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瀬相の港で、乗船券を購入。予約はスペースを確保しているだけなので、乗船券は乗る前に購入しなければならない。
港の目の前には、物産館のような店があったので覗いてみる。島で見かけた店は、後にも先にもここだけ。
島民向けに生活用品を売るような商店は探せばあるのだろうが、部外者向けの店は見かけない。

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船の発着に合わせて港に集結する加計呂麻バス。
島内には他に公共の交通手段が無いため、船の着岸後、来島者を乗せて各路線に出発。次の船が来るまでに帰ってくる。

実久で訪問客を満載した加計呂麻バスが先に出ていったが、船の到着間際になってようやく到着した。慌てて切符を買いに走る人々。

2019 06 23 25

島内では人の他に物資も運び、乗りたい場所で乗れ、降車したい場所で降りられるとか。
島には欠かせないライフラインであり、島の魅力を島外の人々に伝える伝道者でもある。 

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フェリーかけろまが、今朝と同様の定位置に着岸した。
岸に着くなり、人やバイク、クルマが入り乱れての乗下船が始まる。

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車両甲鈑は当然のごとく満車。びっしりと停められたスクーターで、助手席のドアが開けられない。
長距離フェリーほどの繊細な積み込みは期待できないので、多少の覚悟は必要だ。

加計呂麻島の滞在時間は、おおよそ7時間。
島の背骨である県道を端から端まで走ったわけだが、集落は半数も訪れていないかもしれない。
そういった意味では、本当に堪能できたかは微妙なところではある。

ただ、飾り気のない南の島の風情を味わうことができたことは確か。
それに加え、クルマで渡ってここまで走れる島もそうそうないわけだから。

 

東京からの陸路と海路による距離、時間を考えれば、最果てと言ってもよいであろう奄美の最端部。
この地までS2000というオープンスポーツカーで到達したという経験は、14年前の奄美大島ツーリングに続いて、決して忘れられない記憶として残り続けるだろう。

 

2019 06 23 28

 Posted by at 12:11 AM