2月 152017
 

薩埵峠の眺望を堪能した後、峠を越えて清水側へ。
清水側の道は何てことない、普通のなだらかな道だった。大きなクルマで登る場合は、コッチ側から登る方がオススメである。すっごくわかりにくいけど。

静清バイパスで清水、静岡の市街地をパス。とても有用なバイパスだが、部分的には慢性的に渋滞する箇所が残っている。
丸子ICを過ぎると、にわかに峠道の様相が濃くなる。道の駅「宇津ノ谷峠」の駐車場に滑り込み、早めの昼食休憩。名物のとろろ定食を食す。

宇津ノ谷峠は、南アルプスから駿河湾に伸びた尾根を越える峠のうちのひとつで、現代の国道1号はトンネルであっさりと抜けていく。
普通に走っていたら、峠であることを意識しないまま越えてしまうような感じ。ここはひとつ、時代を遡って再び旧街道を歩いてみよう。

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道の駅の駐車場にGTを置いたまま、旧道を歩いていくと、民家が軒を連ねる石畳の道がある。
旧東海道と思われる街道で、各民家の軒先には屋号の看板が掛けられ、往時の雰囲気を醸し出している。

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坂を登っていくと、旧街道に沿って民家が立ち並ぶ様子を遠望できた。
かつての家屋はもう残っていないとは思うが、それでも何となく、人々が街道を往来した当時の雰囲気が滲み出しているのが感じられる。
いまはひっそりとした山間の集落でしかないが、かつて日本の大動脈として多くの人が行き交った情景に、思いを馳せてみる。

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さらに坂を登っていくと、旧東海道の峠道へと続く山道が姿を現した。
旧街道をトレースするなら、これを登って宇津ノ谷峠を極めるところだが、今回は別の目的がある。
峠へと続く道を横目にさらに歩を進めていくと・・・

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おおっ、これは・・・ 

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素晴らしく鄙びた、年代物のトンネル。いや、これはまさしく「隧道」だな。
入口のアーチ部分のみならず、内部の壁面も全てレンガによるアーチ構造。こんな手の込んだ隧道、見たことがない。

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消え入りそうな宇津ノ谷隧道の文字。
江戸時代まで街道は峠道を越えていたが、交通量が増加した明治時代初期に掘削されたのがこのトンネル(隧道)。日本で最初の「有料」トンネルだったそうな。

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特筆すべきは、何と言ってもこの歴史を経たレンガの質感である。
何せここは東海道、当時は最先端のトンネル技術だったと思うが、それがレンガ造によるものとは。。西洋文化と技術が急速に国内に広まっていった過程を垣間見ることができる。
歴史的な建造物は大抵そうであることが多いが、このトンネル(隧道)に関しても、周囲の時間を強制的にストップさせ、異質な空間を創り出している。

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さらにはこのトンネル(隧道)、普通に通行することが可能である。
いまは通行料を要することもない。通行ができるのは歩行者のみだが、これが明治初期の建造物であるということを考えると、それは驚きに値する。

トンネル内は風の通り道になっているようで、正面から肌を刺すような冷たい風が常に吹き続けている。
それに加え、古い空間でこんな照明なもんだから、立ち止まると背筋がゾクッとする。さすがにちーとコワい。

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反対側に到達。明治時代の街道がその先も続いている。
これ以上進むと、駐車場に戻るのがキツくなってしまうので、ここで引き返す。
ということはもう一回、肝試しをすることになる(笑

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全然、人が通らないんだよなぁ。
土木遺産としては、現在も利用されているという点もあって、なかなかのもんだと思うのだが。

宇津ノ谷峠には、この「明治のトンネル」の他、旧国道1号の県道にある「大正のトンネル」、現国道1号上り線の「昭和のトンネル」に、下り線の「平成のトンネル」と、各時代4本のトンネルがある。そして、これらがどれも通行可能な状態で並んでいるという、ちょっと変わったスポットなのだ。
それだけ東海道という道はどの時代でも重要な交通路であり、時代の要請に従ってルートを更新してきた歴史があるということを、肌で感じることができる。

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歌川広重「東海道五十三次/岡部宿」

宇津ノ谷峠は、東海道の宿場町のうち、丸子宿と岡部宿の間に位置する峠。
広重の「岡部宿」は、宇津ノ谷峠の西側の入口付近を描いているという。
今回はそっち側は歩かなかったわけであるが、当時の宇津ノ谷峠の雰囲気を重ね合わせてみるのも一興だ。

 Posted by at 12:29 AM

  4 Responses to “お忍び駿河路 〜宇津ノ谷峠”

  1. こんばんは。
    このトンネル、写真で見ると非常に味があります。
    照明がランプのようで、いいなぁと思って見ていましたが、実際は肝試し級?なのですね。

    この辺は私にとっては未開地なので、折を見て行ってみようと思います。

    • 実際にもなかなかの風情でした。照明は観光のために整備した感がありますが、センスがあって嫌らしさは感じないです。
      非常に魅力的な近代遺産ですが、昔のトンネルだけにちょっとしたスリルも併せ持っています(笑

      今回は自分も初めてのエリアでしたが、思った以上に楽しめました。
      この時期にはもってこいの旅路かもしれません。

  2. 旧街道を巡るってそそられるなぁ〜。
    街中や峠越えの狭路を通る度にコペンとかだったらもっと楽しめたかなと思います。
    いつかは小さなオープンカーが欲しい。(笑)

    • 旧街道、初めての趣向かもしれません。
      クルマで走り切るには向かないのでどうかな、と思いましたが、まぁこの季節ならこれもアリなのかなと。

      今となっては、S2000も比較的コンパクトな部類のオープンカーになりました。
      旧街道の峠越えには、最低地上高が一番肝要だと思いますので、やっぱり向きませんが(笑

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