12月 122017
 

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ずいぶんと昔にも紹介したような気もしますが・・・
先日、89erの若者たちと走った際に話題になったので、また引っ張り出してみました。

ドライビング教本というのをいくつも読んできましたが、これが一番タメになった。
「ガンさん」こと、黒沢元治氏によるドライビング理論の解説書。
国内レース黎明期に活躍した氏が、満を持してしたためた名著です。

初めてクルマを所有した頃、もっと上手くなりたい、速く走れるようになりたいと思って手本にしたのは、やはりプロのドライビングです。
当時はインターネットなどというものがなく(というか一般的でなく)、動画といえば市販のビデオ媒体が主流でした。
そんな時代にあった「ベストモータリング」という月刊ビデオメディアは、プロによる市販車ドライビングの一部始終が見ることができたので、VHSのテープが擦り切れるんじゃないかというほど繰り返し観ていました。

当時のメインキャスターは、土屋圭市、中谷明彦、服部尚貴といった豪華現役ドライバー(敬称略)の方々でしたが、中でも異彩を放っていたのが「ガンさん」。
他のドライバーよりずっとお年を召しているにもかかわらず、速い。巻末恒例の筑波バトルでは上位常連。(たまにムチャするんだけど(爆)
それなのに、車内映像に映る操作は異様にゆっくりとしていて、速さとのギャップがいつも不思議でした。

そんなガンさんドライビングの極意が、ギュッと詰め込まれたのが、この「ドライビング・メカニズム」。
2000年初版なので、自分がベスモで勉強していた頃より後の発刊です。
つまり、あの走りの秘密がこの書に詰まっていると言えるわけで、実際にその内容は、今でも自分の中ではバイブルと言って良いものとなっています。

動画でのガンさんの解説は、得てして感覚的なことが多いんですが、この本ではその正反対で、ひたすら理論的です。
ドライビングはすべて科学的に分解して説明することができるというスタンスで、それをロジカルに説いて見せているのが特徴。
実際には、ドライバー個々の感覚的な部分(慣れとか、恐怖感とか)に左右されると思うので、これを読んだからと言って一律に全員が上手くなるとは限らないのですが、クルマ(というかタイヤ)の性能をいかにして引き出して速く走るかという点においては、かなり整理されていると思います。

ステアリング・インフォメーションという概念、摩擦円の大小とベクトル、荷重移動と荷重変動の違い、スリップアングルを感じ取る重要性、などなど。
理解しているようで実は説明が難しい、実践できているかどうか怪しい部分があることが多いことに気付かされます。

ベスモがそうだったように、事あるごとに引っ張り出して、何度も読んでいるバイブル。
ドライビングが荒いな、いまひとつ洗練されていないな、と思ったらこれを読んで立ち返る、そんなことができる私的名著です。
ドライビング理論に興味ある方は、ぜひ一読を。

 Posted by at 12:01 AM

  8 Responses to “バイブル”

  1. バトルでは、ホンダ車に乗せるとかなり高確率でムチャしますネ。(笑)ジー様さまさまです。

    僕もガンさんの速さとゆったりした操作のギャップには未だに疑問です。(特にオンボードに映るヒール&トゥ)
    クルマと対話するってこういう事だ、みたいなのをガンさんの解説からは伝わってきますねえ。まさか、本を出されていたとは知りませんでした。

    ガンさんの極めつけは、鷹栖やニュルでの全開走行ですかね。
    黒沢元治のドライビング道場に当時免許を持っていたら出てみたかったですよ。(笑)

    • 生粋のレーサーで、根っからの運転好きだからこその理論だと思います。
      動画だとそれがわかりづらい部分がありますが、教本として読んでみると、自然と腑に落ちる部分が多々あります。

      ガンさんは元々日産のワークスドライバーで、F1からも声がかかった人ですが、現役引退後はホンダとのつながりが深かったドライバーです。
      どんなクルマに乗せても、同じようにスムーズに速くドライビングできるのが凄いなぁと。
      中嶋悟氏もそうでした。結局、タイヤから伝わるインフォメーションをしっかり捉えてコントロールできる人は、何乗っても速いんですよね。

      ガンさんのドライビングで自分がずっと心に残っているのは、NSX-Rでの鈴鹿全開アタックですね。終始無言でのアタックは、桁外れの凄味がありました。
      著書でも書かれていますが、鈴鹿はあらゆるドライビングテクニックが必要なコースです。鈴鹿でのNSX-Rのドライビングに、ガンさんのすべてが詰まっていたと思います。

  2. 俳優の唐沢寿明さんがNSXを乗り継いそうで、テレビでその話題になったとき黒沢元治さんの訛った口調を真似てました。
    ガンさんがNSXで走行してる映像をよく某動画サイトで見てます。
    便利な世の中になりました。

    仕事で運転しますが、急いでいて飛ばすとき(合法で)はライン取りとか考えないと乗り心地悪くなるので
    最近また気を遣うようになりました。
    読んでみたいと思います!

    • 唐沢さんは根っからのカーガイで、長い下積み時代を経てドラマでブレイクしたのがちょうど初代NSXが出て間もない頃だったと記憶してます。
      入ったギャラをつぎ込んでNSX買った時は、嬉しくて嬉しくて車内で寝泊まりしてた、みたいなハナシではなかったでしょうか(笑
      奥様との関係もそうですが、唐沢さんの話は理想的なカーライフスタイルのひとつですね。

      今は動画サイトで簡単にガンさんの走りを見られるようですが、当時はビデオ買ってこないと見られなかった反面、ガンさん以外のドライバーの運転と比較することができました。
      一流のレーサーでもそれぞれに個性があって、非常に参考になりました。
      当時FFのシビックだったので、神様は服部尚貴選手。彼のシビックのドライビング映像には、相当勉強させてもらいました。

      何もサーキットでのドライビングに限った話ではなく、一般の運転時にも通じる内容なので、活かしていきたいですね。

  3. 自分は「新・ドライビング・メカニズム」しか読んだことがないのですが、
    読む前後でドライビングの意識が変わりました。
    こちらの本も読んでみたいです(読んでも冬の今は実践するのは数ヶ月後ですがw)

    • 自分の場合、最初に読んだ時にはなかなか咀嚼できず、理解して実践するまで時間を要しました。
      何度も繰り返し読むことで、ジワジワと身につく内容なのかもしれません。

      実は「新」の方は持っていないも持っているのですが、、たぶん内容はほぼ同じだったかと思います。。

  4. 先日の“二次会”はガンさんのことで盛り上がりましたね(笑)
    書籍の紹介、ありがとうございます。
    動画のコメントの数々と相反するような、ひたすら理論的に書かれた内容がとても気になります。
    早速入手し、次回のツーリングまでに熟読しておきたいと思います。

    • ガンさんネタは盛り上がりますね(笑笑

      著書では意外なほど理論的です。
      特に、タイヤの性能をいかに発揮するか、という点に関しては、普段のドライビングに非常に役に立ちますので、ぜひ知っておくことをオススメします。
      4つのタイヤがどんな状態にあるのかを意識することで、より無駄のない走りができるようになると思います。

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