
今年2回目の九州Touringから帰ってきました。
1回目はGWで種子島がテーマでしたが、今回のテーマは壱岐。15年前の忘れ物を、今さら回収する旅。
たぶん、ただのフォトログになりますが、旅のお裾分けとして楽しんでいただけたら幸いです。

今年2回目の九州Touringから帰ってきました。
1回目はGWで種子島がテーマでしたが、今回のテーマは壱岐。15年前の忘れ物を、今さら回収する旅。
たぶん、ただのフォトログになりますが、旅のお裾分けとして楽しんでいただけたら幸いです。

レポート完結した北海道ツーリングですが、ルーティングに関していろいろコメントいただいたので、今回のGPSログを貼っておきます。
HPにツーレポを公開していた頃は地図を貼り付けていましたが、blog形式になってからはほとんどやっていません。
地図がない代わりに文章を豊かにして、想像力を張り巡らせていただくことで、旅をより濃密に疑似体験してもらう、というコンセプトを大切にしてきたからです。
今もその思いは変わりませんが、せっかく手軽に(しかもそこそこ正確な)ログを取ることができる世の中なので、データを仕舞い込んでおかずに共有しようかなと。
ログを見ながら、レポを再度楽しんでいただくも良し、次の北海道ツーリングに思いを馳せるも良し。
旅心を掻き立てることができれば、これ幸いです。

北海道6日目。
実質の最終日となるこの日は、旭川を朝一番に出て美瑛方面へと向かう。
R452からパッチワークの路に入れば、広大な丘陵地帯を真っ只中に見を投じることとなる。
久々に訪れる美瑛の丘には、人の生業が創り出す絶景が、今も変わらず点在していた。
北海道の中でも定番中の定番スポットと言うこともあり、どこかで見たような景色が連続するが、やはりその中に身を置いてこそ感じるものがある。

広大な農耕地の中ではたらく車両の巨大さに驚く。
北海道を走っていると、公道を走っていいいのか?と思ってしまうほど様々な農耕作業車に出くわすが、それも独特の景観を形成するひとつの要素なのだと思う。
朝の丘陵地帯を走り回って、走りと景色の両方を堪能した後、美瑛駅前の道の駅に立ち寄る。

駐車場は埋まっていたが、いずれも車内就寝中のクルマばかり。
睡眠を妨害しては悪いので、離れた駐車スペースにエスを停める。
富良野線周辺の佇まいも、旅情を掻き立てる。

美瑛の街からは、置杵牛広域農道で十勝岳山麓方面へ。
前半は果てなきストレート。山中に入ると路幅は狭くなり、アップダウンを繰り返すという二面性を持った道。
交通量はまったく無いと言ってよく、気持ち良く走りを楽しむことができる。
道道966号に出ると、美瑛のもうひとつの道の駅と「青い池」がある。

かつてあのAppleが、MacのRetina Displayの壁紙に日本人カメラマンのこの池の写真を採用したことで、一躍有名になった場所。
自分のMacにも一時期設定していたあの美しい風景を、実際に目にするのはこれが初めてである。
壁紙は初冬の雪の池だったが、真夏の景色も十分独創的だった。
立ち枯れた木々の足元を覆う目にも鮮やかなライトブルー。
一時期、台風の影響か何かで水質が変わってしまったこともあったはずだが、かつての壁紙のような美しい色彩は健在だった。
2023年夏の北海道ツーリングは、本州並みの暑い夏の旅となったが、色鮮やかな色彩の共演を至る所で堪能することができた。
青い池は、その極めつけの絶景と言ってもいいかもしれない。

白金温泉を過ぎると、D966はそのまま山岳ワインディングへ。
十勝岳スカイラインと銘打たれた道は、急勾配を伴いながら十勝岳を急登していく。

途中の望岳台で眺める十勝岳。
展望台の駐車場は広いが、十勝岳の登山口となっているらしく、1台の空きもないほど混雑している。

振り返れば、美瑛の丘。
短い北海道の夏。登山は今がハイシーズン。十勝岳温泉の駐車場も隙間がなく、車中から眺めて終わり。
道道291号で上富良野の街へ一気に下りていく。
十勝岳スカイラインから位置エネルギーを開放したまま上富良野駅の脇を通過し、その勢いでR237も横断して突き進むと再び登り道となり、千望峠へと行き着く。

今度は上富良野の丘陵と街を挟んで十勝岳方面を望む。
峠のイメージとは裏腹に、周囲はなだらかに畑地が続く。
その向こう側に、幾重にも丘の地形が重なり、独特の景観を生んでいる。

視覚的な楽しみもさることながら、その起伏をなぞるように走る楽しみも忘れ難い。
高い山と美しい水の風景も相まって、素晴らしい景観特性を持つ美瑛・富良野エリア。
道北・道東エリアに流れてしまいがちだが、改めてその魅力を再認識した。

7月なので、富良野はラベンダーの季節。というわけで、ファーム富田に訪れた。
旅の終盤で、遂にベタな観光地に足を踏み入れることとなったが、たまにならよしと自分に言い聞かせる。

残念ながらラベンダーの開花時期はほぼ終わっていたが、収穫後のラベンダーの精油作業等を間近に見られたので、来て良かったということになった。

大人気観光地には長居はせず、道道298号で富良野盆地を大回りして富良野市街へ。
混雑する市街地を通過し、R38で芦別、赤平方面へと向かう。

赤平より道道114号で歌志内へ。
全国で最も人口の少ない市である歌志内市。その人口は、なんと3,000人にも満たない。
炭鉱都市の行く末を体現する山間の集落的都市の沿道風景は、どこか悲哀に満ちている。
かつて黒いシビックに乗っていた頃に開業した道の駅さえも、場末的な雰囲気に変わり果てていた。
歌志内から上砂川、R12に出て奈井江へ。
道の駅ハンティングをしながら進み、最後の三笠の道の駅が、51駅目となるチェックインとなった。
その後は道央自動車道に乗り、一気に距離を稼ぐ。小樽港を17:00に出港する新日本海フェリーに乗船するためだ。

往路と同じ、あざれあ号に乗船。小樽を17:00に出て、新潟に翌日9:15に着く。旅の足として、理想に近いダイヤだ。
往路の出発時間(12:00)到着時間(翌日4:30)と合わせ、かなり使い勝手の良いダイヤで、いつもより北海道が近く感じられた。
過去に利用した際には、もっと航行時間が長かった気がするが、船体が新しくなったことも影響しているのだろう。
新潟港に到着し、新潟市街で給油と朝食を済ませて、北陸道・関越道で一気に帰還。
計9日間に及ぶ、夏の北海道ツーリングは終幕を迎えた。
・・・・・・・
2023年、記録的な暑さが続く夏。
涼を求めて渡ったはずの北海道は内地と変わらぬ暑さで、地球沸騰という言い得て妙な気候変動を、肌で感じざるを得ない環境だった。
気温に体力を奪われる人間を尻目に、S2000は終始好調。熱い北海道の路面にラバーを残し続けた。
唯一不安のあったミッションは、この北海道ツーリング中に限っては、気になるような操作感はほとんど発生しなかった。
今回の走行距離は3,568km、平均燃費は10.6km/lだった。
フェリーの距離が長かった分、絶対的な距離は伸びていないが、走り込んだことで得られる一体感は、しっかり身体に残っている。
ステアリングから得られるインフォメーションは常に確実、雨の中でも不安になる挙動は無く、全天候型ツーリングマシンとしての面目躍如だった。



北の大地で出会う独特の景観。
時間が止まったかのような、その地にある風景のひとつひとつが愛おしい。
目まぐるしく変わり続ける世の中で、ずっとそこにある原風景は、疲れた心と身体を癒やす存在になり得るのではないか。
ふと大切なものに気付き、原点に立ち返る、そんなきっかけを与えてくれるかもしれない。



北の地で嗜む食と酒。
年齢を重ね、ようやくそれを楽しむ入口に立てたような気がする。
思う存分、走った後に楽しむ食と語らいの時間は、旅の時間の魅力を増幅させる大切な要素となっている。


夏が夏らしいからこそ、得られた経験がある。
フロントガラス越しに見た鮮やかな原色の風景は、これまで見たことがないほど、色彩の魔力に満ちていた。
折り重なる立体的な雲は、大気の芸術。地球の息吹を感じるほどの迫力に満ちている。
そんな非日常的な境界なき空間に、吸い込まれるように走り続ける。
それは欲望であり、快楽であり、生きている証。



この旅で得られた経験を糧に、S2000という小舟に乗って、これからもどこまでも突き進んでいく。
2023 Summer Touring in Hokkaido
いつかまた、訪れる日を夢見て。

・・・ END ・・・

柔らかな朝日に包まれて目が覚める。
闇夜に包まれていた湖畔の景色は、漆黒の時間など無かったかのように煌めいていた。
津別町西部に位置するチミケップ湖。湖面はどこまでも穏やかで、爽やかな朝風によってわずかに揺らめいている。
湖畔には今回の宿の他にキャンプ場があるくらいで、全くと言っていいほど人工的な気配を感じない。
決して大きな湖ではないが、目に入る景色はどこまでも自然のままで、小さなこの島国で人工物に慣れた身には違和感しかない。
ただひたすら、無音の時が流れる。

澄んだ空気に身も心もすっかり快くなった。
柔らかな朝の光に包まれながら、朝食も美味しくいただいた。
北の大地をただひたすらに走り続けるツーリングの中における、一時の休息。
「何も無い」が「ある」周囲の環境と、過ぎることのない宿の風情、そしてどこまでも心の籠もったもてなし。
ある年の夏の長旅という記憶の一片の中において、確実に刻まれるであろう余韻を感じつつ、宿を後にした。


昨日の道道494号を戻る。
チミケップ湖へはいくつかのアプローチ路があるが、湖に至るまでにはいずれのルートでも未舗装路区間を走る必要がある。
今回走ったD494は、おそらくダート区間が一番短いであろうという予測で選択している。
天候が良く路面状態はほぼ問題がなかったが、雨天などではまた異なった状況が生まれることが予想できる。
少なくとも自分にとっては、様々な条件が揃わないと訪れることができない秘境の湖。
エスで訪れ、一晩を過ごすことができた経験は、かつて利尻・礼文島に訪れた時と同様に、永く記憶に刻まれることだろう。
国道に戻ったら、すぐに道道51号にスイッチして陸別方面へ。
津別と陸別という名も似て区別がつきにくい2つの町を結ぶD51は短絡路として有用と思われるが、考えることは皆同じようで、意外なほどトラックが多かった。
陸別と言えば、日本一寒い町、というイメージがある。
実際に昨冬もマイナス30℃程度まで記録したことが道の駅に掲示されていたが、本日の気温は既に30℃を裕に超えている。
年間を通して気温差が60℃以上にもなる場所は、日本全国探してもそうあるものでない。
チミケップにて朝の時間をゆったりと過ごしたので、この時点で昼前。
今日は淡々と移動する日になってしまいそうだ。
陸別からはR242で足寄方面へ。
高速で次々に追い越しをかけていくトレーラーに感心しながら、後ろをついていく。
足寄からR241にスイッチし、芽登で道道468号に入る。
起伏は無いが所々狭くなるD468は、舗装に横溝が入っていて走り心地が悪い。
ただし上士幌をショートカットするには有効で、スムーズにR273へと入線することができた。
R273は打って変わって、どこまでもアクセルを開けていけるようなスーパーハイウェイ。
糠平温泉を過ぎたら、ますますその傾向は強くなり、自制心が問われる。
前走車についたり追い越しをかけるより、前後車間を十分に取って、開放的なドライビングビューを楽しみたい。

広大な原生林を抜けると、三国峠に到達する。道内で最も高所にある峠だ。
1,000m超というだけあって、わずかながらに涼しい。
峠から見る大樹海の景観を堪能した後は、駐車場にある山小屋風の小さなカフェで一休み。
自家焙煎のハンドドリップを、道内最高所のこの環境で味わうことができる。

席数は僅かだが、平日ということもあり、難なく腰を下ろすことができた。
窓から差し込む柔らかな陽光と風が心地良い。

ゆったりと流れる時間を、味わい深いコーヒーとともに楽しむ。
峠の小さなカフェの一角には、地元作家による多種多様な雑貨が販売されている。
以前訪れた際に、ひと目見て気に入ったアイアンアートは、今でも大切なコレクションだ。
数年ぶりの今回も、同じ作家の作品がないか探してみると、、発見。しかも、なかなかの大物。
長旅のエスのトランクを圧迫する恐れががあったが、今回も気に入ってしまったのは仕方ない。
旅の荷物の隙間に、念入りに保護してしまい込んだ。

・・・・・・・
北海道の屋根である大雪山系を間近にしながら、大雪湖方面へ。
R39に合流し、層雲峡、上川と進んでいく。
西側へと移動するには、大雪山を大きく迂回する必要があり、ルートが限られている。
各都市を結ぶ幹線道路で交通量が多いとわかっていても、どうしてもこのR39は避けて通れない。
案の定、先に進むに連れて交通量が多くなり、ペースは大きく鈍る。絶妙に中途半端なスピードの直線路が続き、この日の眠気もピークに差し掛かる。
無料供用中の旭川紋別道と並行する区間となれば、交通量は減少して事態は打開されると思っていたが、さして状況は変わらず。
仕方なく道道140号に逸れることとする。結局、前走車には阻まれたが、眠気覚ましにはそれなりの効果を発揮した。

旭川市街に入る前に、給油を済ませておく。
市街地に入れば、格段にシフト操作の機会が増える。北海道の郊外と比較すれば尚更のこと。
ずっとマニュアル・トランスミッションばかり乗っているから、シフト操作は無意識の動作ではあるのだが、ここのところその操作に若干の違和感を感じている。
今回のツーリングで、というわけでなく、年単位で徐々に操作感が変わってきた、という程度で、調子が悪いというほどのものではない。
ただ、常に操作し触れる機会が多い部位だけに、そのフィーリングの良し悪しは、ドライビング・プレジャーに直結する。
官能的なフィーリング、とはよくエンジンに使用される形容だが、ミッションにもその表現は当てはまると思っている。
しかも手という触覚の敏感な身体の部位で操作するわけだから、変化には余計に敏感で、少しの違和感も増長される傾向にある。
各ギヤの入りがやや引っかかる、またはゲートに入れるのに力を要する感じで、特に高いギヤでその傾向が強い。
S2000では典型的なミッションの疲労症状のようだ。
一般的に言えば気にする程度の症状でもないのだが、先に書いたように、常に触っている部分であるから、軽視はできない。

27万km超を特段の不具合もなくNon O/Hで駆け抜けることができたのであれば、上出来だろう。
より症状が悪化する前に手を打つことも重要なこと。
北海道から帰還後に、予定通りミッションを下ろしている。
交換でなくO/Hであり、再使用が相応しくない部品のみ交換し、再使用できる部品は洗浄し、部分的に手を入れて組み直す。
Assy交換では得られない、極上のフィーリングが今から待ち遠しい。
・・・・・・・
さて、旭川だ。

旭川は、言わずと知れた北海道第二の都市だが、どういうわけか、これまでほとんど訪れたことがなかった。
ましてや停泊したことも当然無く、記念に旭橋を渡った後に、駅前のホテルの駐車場にエスを滑り込ませる。
買物公園を歩き始めたのは、まだ夕刻になりかけたばかりの時間帯だった。

初めての旭川では、どうしても行ってみたい店があった。
旭川ジンギスカンの名店「大黒屋」。
エキシージに乗るスポーツカー・ライフの大先輩であるハリソンさんのツーリング・レポートで教えていただき、いつか訪問したいと思っていた店だ。
人気店であるため、いつ回ってくるか想像できないほどの順番待ちが形成されている。
何時間レベルの待ち時間を覚悟したが、幸い夜はまだ。などと考えていたら、思いのほかすぐに順番が回ってきた。
入店してわかったが、ジンギスカン専門店だけに、メニューがあっさりしているので、回転が早いらしい。
食レポではないので、写真の掲載は控えるが、なるほど人気店だけのことはあり、肉質が段違い。これは並ぶ価値がある。
ぜひその目と舌で確かめてほしい。

ジンギスカンの後の、ラードが決め手の獣臭いラーメン(これがまた美味い)で、脂質の過剰摂取を敢行。
昨日朝の体調不良疑惑はどこへやら。
散歩がてら、夜の旭川の街をぶらついた後、ホテルへと帰還。
これが今回のツーリングでの、最後の北海道の夜。
あっという間だった旅の日々を早くも懐かしみ反芻しながら、道内最終日のルートを検討しつつ、深い眠りについた。


5日目の北海道。
網走の朝同様、釧路の朝も、道東とは思えない高温に見舞われる。
湿気の無い乾いた暑さであることが救いではあるが、半分避暑のつもりでやってきた北の大地だけに、思惑との乖離は甚だしい。
何年もドライブ主体の旅をしているので、長時間の運転に必要な体力は備えているつもりだったが、寄る年の波には勝てないらしい。
想定外の暑さも相まって、この日は朝から頭も身体も冴えが無い。身体の各部が離れているような感覚を覚える。
ドライビングに対するアンチエイジングを目的としたトレーニングは日常的にしているのだが、体力と集中力の増強が重要なテーマとなっている昨今である。
釧路の街を出発し、R391で釧路湿原道路へ。
一度走ってみたかった道路だが、防風林で釧路湿原を眺めながらのドライビングは叶わず。
ネイチャーアクティビティが充実している釧路湿原は、いつかじっくりと楽しんでみたいと思ってはいるのだが、今回も周囲をドライブすることが中心となった。
道道53号から道道243号で標茶へ。
標茶からは道道13号。多和平へと向かう。

牧草地帯がどこまでも続くなだらかな地形の中心部にある多和平。
訪問者が侵入できる草地はキャンプ場にもなっており、滞在中と思わしき旅人の寝蔵が立っていた。
これだけ広ければ、周囲をまったく気にせず野営できて快適だろう。

広域農道で弟子屈方面に向かい、900草原にも訪れてみる。
標茶・虹別・弟子屈を結ぶ三角地帯は、牧草地の景観が特に素晴らしい。
ルート上には何も観光的な設えは無いのだが、走っているだけでもその圧倒的なスケールの地形美を堪能できる。
頭が冴えていれば、もう少し枝道に入って、緩やかな起伏を伴いながらどこまでも続く地形に沿ったドライビングを楽しむアイデアも浮かんだのだろうが。
摩周の道の駅で水分補給休憩。
通常の気候なら必要ないからなのかもしれないが、建物内でも冷房があまり効いておらず、暑さから逃れることができないのが厳しい。
気合を入れ直して、道道52号へ。
摩周湖へと登る、ワインディング・ロードだ。

北海道では珍しい、峠道のような線形。
距離は短く、走っているクルマやバイクも多いが、真っ平らな道ばかりで飽きてきた頃には、ちょうどいい具合の道である。
摩周湖第一展望台は、レストハウスが併設されており、観光バスも含めて駐車台数と人の数がもっとも多い。駐車場も有料となっている。
目指したのは、第三展望台。道端の駐車帯には、数えるほどしかクルマは停まっていない。

静かな展望台から眺める摩周湖が、冒頭の写真。
足元には恐ろしく鮮やかな青と緑のコントラスト。
北海道を代表する自然景観の観光地のひとつだが、その名に違わない色彩の共演に言葉を失う。
摩周湖外輪山の縁にある展望台には爽やかな風が舞い、火照った身体を優しく包み込む。
それに加え、眼前に広がるこの景色。天上にいるかのような環境に、引き返すことを何度も躊躇うこととなった。
後ろ髪を引かれながら、D52を下ってR391へ。野上峠を越えて、札弦の道の駅を目指す。
摩周同様、冷房の効きが悪い札弦を早々に後にし、次は東藻琴。この辺りまで来ると、特に国道は交通量が多くなる。
その国道を避けて、道道995号へ。
屈斜路湖の外輪山の山腹を横断する線形に惹かれたが、いくらかも走らないうちに通行止を示すゲートに行く手を阻まれる。
枝道を迂回路として、近くを通る道道249号に逃れて、R243へと至る。
こういった想定外の細かいルーティングは、ツーリングマップルでは追い切れない場合も多い。
その際は長年の経験と、多少は優れていると自負する方向感覚を頼りにして進むしかないが、それこそが走り主体の冒険的ツーリングの醍醐味でもあるのだ。
R243で美幌峠を越える。
峠の道の駅は、いつの間にか近代的となり、お店も休憩所も充実している分、訪れる人の数も多く賑わっている。
屈斜路湖畔に向かっていくと、また弟子屈の街に戻ってしまう。R243は交通量も多いので、森の中の交差点を折れることとする。
道道588号で目指すは、津別峠だ。
様々な地図に「狭路注意」と記されている津別峠への道。
道路環境の良い北海道で、わざわざ注意喚起されるくらいだから、よほど路面状況が悪いのだろうとこれまで避けてきたのだが、実走してみると印象は真逆だった。
確かに北海道の道としては珍しく、センターラインのない峠道なのだが、本州の狭路に比べれば、道幅は広く、見通しも悪くない。
何と言っても舗装状況が良く、さらに路肩の状態も良いので、むしろライン取りの自由度があって走りが楽しい。
森の中を走るので景色は皆無に等しいが、それだけに走りに集中できる。
これまで避けてきたのが勿体なく感じるくらいの、優良ワインディングだった。

津別峠には展望台があるようだ。
訪れてみると、美幌峠とは正反対。誰もいなかった。
と思ったら、先客が一人だけいた。

展望台からは、屈斜路湖の大展望。美幌峠では省略してしまったので、ちょうど良かった。
スケールの大きなカルデラ湖である屈斜路湖。午後の時間に順光状態で堪能できるポイントは貴重かもしれない。

エゾシカならまだしも、高確率でヒグマに出くわしそうなニオイが特別濃い津別峠には、特にオープンカーでは長居をする勇気が出ない。
景色を堪能したら、そそくさとD588に戻り、津別側へと下りていく。
津別で道道494号にスイッチ。
最後の酪農民家前を過ぎると、アスファルトの舗装が潰える。
つまり、ここからは未舗装路。
S2000界隈ではラリー・カーと囁かれているR style S2000とはいえ、あくまでターマック・ステージでの話。
これまでダート路を走ることは極力避けてきたのだが、今回、満を持しての突入。未知のグラベル・ステージが始まる。

どんなダートが待ち受けているのだろうと、内心ヒヤヒヤしながら突入した道は、よく絞まった路面で比較的走りやすい。
もちろん車体へのダメージを最低限としたいがために、速度は十分に落とさざるを得ないが、危険なポイントはほとんどない。
にしても、なぜ未舗装路など選んだのか。
それは、この先に本日の宿があるからに他ならない。

未舗装路の先、チミケップと呼ばれる小さな湖の畔に、ぽつんと佇む山荘のような建物が本日の宿。
以前よりその存在は知ってはいたが、ダートを通らなければ行き着くことができないことがハードルとなり、これまで訪問が叶わなかった場所。
旅の準備期間中、運良く予約が取れたことで、封印を解く決心が着いた。
周囲にはただ森と湖しかない、静寂に支配された環境で一夜を過ごす。

宿は北欧風のヒュッテで、内装の意匠も家具も照明も統一感があり、宿のコンセプトが明確に伝わってくる。
宿泊室は山小屋風だが、行き過ぎた装飾もなく適度な生活感を残していることが、この環境にはふさわしいと思える。
そんな瀟洒な宿でのディナーは、地元素材を活用したフレンチのフルコース。
十分な時間を費やされた料理には、一品ごとにストーリーがある。

本格的なコースディナーには、特別なフランスワインを。
五感で味わうことができる、素晴らしいディナーだった。
窓の外はいつの間にか漆黒の闇に閉ざされ、何も窺い知ることはできない。
闇夜で仰ぎ見る星空は、きっと素晴らしかったと想像できるが、素晴らしい料理とワインに満足が過ぎてしまったために、そうすることができないまま夢の世界に落ちてしまったことだけが心残りだった。