8月 222023
 

2023 08 20 01

柔らかな朝日に包まれて目が覚める。
闇夜に包まれていた湖畔の景色は、漆黒の時間など無かったかのように煌めいていた。

津別町西部に位置するチミケップ湖。湖面はどこまでも穏やかで、爽やかな朝風によってわずかに揺らめいている。
湖畔には今回の宿の他にキャンプ場があるくらいで、全くと言っていいほど人工的な気配を感じない。
決して大きな湖ではないが、目に入る景色はどこまでも自然のままで、小さなこの島国で人工物に慣れた身には違和感しかない。

ただひたすら、無音の時が流れる。

2023 08 20 04

澄んだ空気に身も心もすっかり快くなった。
柔らかな朝の光に包まれながら、朝食も美味しくいただいた。

北の大地をただひたすらに走り続けるツーリングの中における、一時の休息。
「何も無い」が「ある」周囲の環境と、過ぎることのない宿の風情、そしてどこまでも心の籠もったもてなし。
ある年の夏の長旅という記憶の一片の中において、確実に刻まれるであろう余韻を感じつつ、宿を後にした。

2023 08 20 02

2023 08 20 03

昨日の道道494号を戻る。
チミケップ湖へはいくつかのアプローチ路があるが、湖に至るまでにはいずれのルートでも未舗装路区間を走る必要がある。
今回走ったD494は、おそらくダート区間が一番短いであろうという予測で選択している。

天候が良く路面状態はほぼ問題がなかったが、雨天などではまた異なった状況が生まれることが予想できる。
少なくとも自分にとっては、様々な条件が揃わないと訪れることができない秘境の湖。
エスで訪れ、一晩を過ごすことができた経験は、かつて利尻・礼文島に訪れた時と同様に、永く記憶に刻まれることだろう。

 

国道に戻ったら、すぐに道道51号にスイッチして陸別方面へ。
津別と陸別という名も似て区別がつきにくい2つの町を結ぶD51は短絡路として有用と思われるが、考えることは皆同じようで、意外なほどトラックが多かった。

陸別と言えば、日本一寒い町、というイメージがある。
実際に昨冬もマイナス30℃程度まで記録したことが道の駅に掲示されていたが、本日の気温は既に30℃を裕に超えている。
年間を通して気温差が60℃以上にもなる場所は、日本全国探してもそうあるものでない。

チミケップにて朝の時間をゆったりと過ごしたので、この時点で昼前。
今日は淡々と移動する日になってしまいそうだ。

 

陸別からはR242で足寄方面へ。
高速で次々に追い越しをかけていくトレーラーに感心しながら、後ろをついていく。

足寄からR241にスイッチし、芽登で道道468号に入る。
起伏は無いが所々狭くなるD468は、舗装に横溝が入っていて走り心地が悪い。
ただし上士幌をショートカットするには有効で、スムーズにR273へと入線することができた。

R273は打って変わって、どこまでもアクセルを開けていけるようなスーパーハイウェイ。
糠平温泉を過ぎたら、ますますその傾向は強くなり、自制心が問われる。
前走車についたり追い越しをかけるより、前後車間を十分に取って、開放的なドライビングビューを楽しみたい。

2023 08 20 05

広大な原生林を抜けると、三国峠に到達する。道内で最も高所にある峠だ。
1,000m超というだけあって、わずかながらに涼しい。

峠から見る大樹海の景観を堪能した後は、駐車場にある山小屋風の小さなカフェで一休み。
自家焙煎のハンドドリップを、道内最高所のこの環境で味わうことができる。

2023 08 20 07

席数は僅かだが、平日ということもあり、難なく腰を下ろすことができた。
窓から差し込む柔らかな陽光と風が心地良い。

2023 08 20 06

ゆったりと流れる時間を、味わい深いコーヒーとともに楽しむ。

峠の小さなカフェの一角には、地元作家による多種多様な雑貨が販売されている。
以前訪れた際に、ひと目見て気に入ったアイアンアートは、今でも大切なコレクションだ。

数年ぶりの今回も、同じ作家の作品がないか探してみると、、発見。しかも、なかなかの大物。
長旅のエスのトランクを圧迫する恐れががあったが、今回も気に入ってしまったのは仕方ない。
旅の荷物の隙間に、念入りに保護してしまい込んだ。

2023 08 20 13

・・・・・・・

北海道の屋根である大雪山系を間近にしながら、大雪湖方面へ。
R39に合流し、層雲峡、上川と進んでいく。

西側へと移動するには、大雪山を大きく迂回する必要があり、ルートが限られている。
各都市を結ぶ幹線道路で交通量が多いとわかっていても、どうしてもこのR39は避けて通れない。
案の定、先に進むに連れて交通量が多くなり、ペースは大きく鈍る。絶妙に中途半端なスピードの直線路が続き、この日の眠気もピークに差し掛かる。

無料供用中の旭川紋別道と並行する区間となれば、交通量は減少して事態は打開されると思っていたが、さして状況は変わらず。
仕方なく道道140号に逸れることとする。結局、前走車には阻まれたが、眠気覚ましにはそれなりの効果を発揮した。

2023 08 20 08

旭川市街に入る前に、給油を済ませておく。

市街地に入れば、格段にシフト操作の機会が増える。北海道の郊外と比較すれば尚更のこと。
ずっとマニュアル・トランスミッションばかり乗っているから、シフト操作は無意識の動作ではあるのだが、ここのところその操作に若干の違和感を感じている。
今回のツーリングで、というわけでなく、年単位で徐々に操作感が変わってきた、という程度で、調子が悪いというほどのものではない。

ただ、常に操作し触れる機会が多い部位だけに、そのフィーリングの良し悪しは、ドライビング・プレジャーに直結する。
官能的なフィーリング、とはよくエンジンに使用される形容だが、ミッションにもその表現は当てはまると思っている。
しかも手という触覚の敏感な身体の部位で操作するわけだから、変化には余計に敏感で、少しの違和感も増長される傾向にある。

各ギヤの入りがやや引っかかる、またはゲートに入れるのに力を要する感じで、特に高いギヤでその傾向が強い。
S2000では典型的なミッションの疲労症状のようだ。
一般的に言えば気にする程度の症状でもないのだが、先に書いたように、常に触っている部分であるから、軽視はできない。

2023 08 20 14

27万km超を特段の不具合もなくNon O/Hで駆け抜けることができたのであれば、上出来だろう。
より症状が悪化する前に手を打つことも重要なこと。
北海道から帰還後に、予定通りミッションを下ろしている。

交換でなくO/Hであり、再使用が相応しくない部品のみ交換し、再使用できる部品は洗浄し、部分的に手を入れて組み直す。
Assy交換では得られない、極上のフィーリングが今から待ち遠しい。

・・・・・・・

さて、旭川だ。

2023 08 20 09

旭川は、言わずと知れた北海道第二の都市だが、どういうわけか、これまでほとんど訪れたことがなかった。
ましてや停泊したことも当然無く、記念に旭橋を渡った後に、駅前のホテルの駐車場にエスを滑り込ませる。

買物公園を歩き始めたのは、まだ夕刻になりかけたばかりの時間帯だった。

2023 08 20 10

初めての旭川では、どうしても行ってみたい店があった。
旭川ジンギスカンの名店「大黒屋」。
エキシージに乗るスポーツカー・ライフの大先輩であるハリソンさんのツーリング・レポートで教えていただき、いつか訪問したいと思っていた店だ。

人気店であるため、いつ回ってくるか想像できないほどの順番待ちが形成されている。
何時間レベルの待ち時間を覚悟したが、幸い夜はまだ。などと考えていたら、思いのほかすぐに順番が回ってきた。
入店してわかったが、ジンギスカン専門店だけに、メニューがあっさりしているので、回転が早いらしい。

食レポではないので、写真の掲載は控えるが、なるほど人気店だけのことはあり、肉質が段違い。これは並ぶ価値がある。
ぜひその目と舌で確かめてほしい。

2023 08 20 11

ジンギスカンの後の、ラードが決め手の獣臭いラーメン(これがまた美味い)で、脂質の過剰摂取を敢行。
昨日朝の体調不良疑惑はどこへやら。

散歩がてら、夜の旭川の街をぶらついた後、ホテルへと帰還。
これが今回のツーリングでの、最後の北海道の夜。
あっという間だった旅の日々を早くも懐かしみ反芻しながら、道内最終日のルートを検討しつつ、深い眠りについた。

2023 08 20 12

 Posted by at 12:09 AM

  2 Responses to “北海道2023 〜不健康な夜”

  1. チミケップ湖畔の美食の隠れ宿、本当に素晴らしいロケーションです。
    (この宿は妻がめちゃくちゃ喜びそう。)
    仰る通り運良く予約が取れても天候によっては、きっと美しい記憶として残らないですよね。
    そして前日の写真に続き、青空が印象的です。
    その分暑かったと思いますが、道北方面で曇り空の下ばかり走ることになったので、羨ましい。

    旭川は当初、最終泊地の候補でした。
    北海道第二の都市、酒場・初心者でもいけそうでしょうか?(笑)

    • チミケップ湖という秘湖を間近に感じながら過ごす時間は、格別なものがありました。
      今回の旅で唯一、じっくり時間を過ごす宿でしたが、こういう特別なイベントを旅程に組み込むことで、ロングツーリングは一段と味わい深いものになりますね。

      今回は前半の道北ステージは雨に祟れましたが、それ以外は天候にはかなり恵まれた方だったと思います。
      一週間もいたら普通はどこかで天気は崩れるので、悪天候すら楽しめてしまうくらいになると、悩まなくて済むようになりますよ(笑

      旭川は都会で店も多いですので、誰でも楽しめるのではないでしょうか。
      ツーリングの目的地としては微妙ですが。。

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