8月 192023
 

2023 08 19 04

5日目の北海道。
網走の朝同様、釧路の朝も、道東とは思えない高温に見舞われる。
湿気の無い乾いた暑さであることが救いではあるが、半分避暑のつもりでやってきた北の大地だけに、思惑との乖離は甚だしい。

何年もドライブ主体の旅をしているので、長時間の運転に必要な体力は備えているつもりだったが、寄る年の波には勝てないらしい。
想定外の暑さも相まって、この日は朝から頭も身体も冴えが無い。身体の各部が離れているような感覚を覚える。
ドライビングに対するアンチエイジングを目的としたトレーニングは日常的にしているのだが、体力と集中力の増強が重要なテーマとなっている昨今である。

 

釧路の街を出発し、R391で釧路湿原道路へ。
一度走ってみたかった道路だが、防風林で釧路湿原を眺めながらのドライビングは叶わず。
ネイチャーアクティビティが充実している釧路湿原は、いつかじっくりと楽しんでみたいと思ってはいるのだが、今回も周囲をドライブすることが中心となった。

道道53号から道道243号で標茶へ。
標茶からは道道13号。多和平へと向かう。

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牧草地帯がどこまでも続くなだらかな地形の中心部にある多和平。
訪問者が侵入できる草地はキャンプ場にもなっており、滞在中と思わしき旅人の寝蔵が立っていた。
これだけ広ければ、周囲をまったく気にせず野営できて快適だろう。

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広域農道で弟子屈方面に向かい、900草原にも訪れてみる。

標茶・虹別・弟子屈を結ぶ三角地帯は、牧草地の景観が特に素晴らしい。
ルート上には何も観光的な設えは無いのだが、走っているだけでもその圧倒的なスケールの地形美を堪能できる。
頭が冴えていれば、もう少し枝道に入って、緩やかな起伏を伴いながらどこまでも続く地形に沿ったドライビングを楽しむアイデアも浮かんだのだろうが。

摩周の道の駅で水分補給休憩。
通常の気候なら必要ないからなのかもしれないが、建物内でも冷房があまり効いておらず、暑さから逃れることができないのが厳しい。

気合を入れ直して、道道52号へ。
摩周湖へと登る、ワインディング・ロードだ。

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北海道では珍しい、峠道のような線形。
距離は短く、走っているクルマやバイクも多いが、真っ平らな道ばかりで飽きてきた頃には、ちょうどいい具合の道である。

摩周湖第一展望台は、レストハウスが併設されており、観光バスも含めて駐車台数と人の数がもっとも多い。駐車場も有料となっている。
目指したのは、第三展望台。道端の駐車帯には、数えるほどしかクルマは停まっていない。

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静かな展望台から眺める摩周湖が、冒頭の写真。
足元には恐ろしく鮮やかな青と緑のコントラスト。
北海道を代表する自然景観の観光地のひとつだが、その名に違わない色彩の共演に言葉を失う。

摩周湖外輪山の縁にある展望台には爽やかな風が舞い、火照った身体を優しく包み込む。
それに加え、眼前に広がるこの景色。天上にいるかのような環境に、引き返すことを何度も躊躇うこととなった。

 

後ろ髪を引かれながら、D52を下ってR391へ。野上峠を越えて、札弦の道の駅を目指す。
摩周同様、冷房の効きが悪い札弦を早々に後にし、次は東藻琴。この辺りまで来ると、特に国道は交通量が多くなる。

その国道を避けて、道道995号へ。
屈斜路湖の外輪山の山腹を横断する線形に惹かれたが、いくらかも走らないうちに通行止を示すゲートに行く手を阻まれる。
枝道を迂回路として、近くを通る道道249号に逃れて、R243へと至る。

こういった想定外の細かいルーティングは、ツーリングマップルでは追い切れない場合も多い。
その際は長年の経験と、多少は優れていると自負する方向感覚を頼りにして進むしかないが、それこそが走り主体の冒険的ツーリングの醍醐味でもあるのだ。

 

R243で美幌峠を越える。
峠の道の駅は、いつの間にか近代的となり、お店も休憩所も充実している分、訪れる人の数も多く賑わっている。
屈斜路湖畔に向かっていくと、また弟子屈の街に戻ってしまう。R243は交通量も多いので、森の中の交差点を折れることとする。

道道588号で目指すは、津別峠だ。

様々な地図に「狭路注意」と記されている津別峠への道。
道路環境の良い北海道で、わざわざ注意喚起されるくらいだから、よほど路面状況が悪いのだろうとこれまで避けてきたのだが、実走してみると印象は真逆だった。

確かに北海道の道としては珍しく、センターラインのない峠道なのだが、本州の狭路に比べれば、道幅は広く、見通しも悪くない。
何と言っても舗装状況が良く、さらに路肩の状態も良いので、むしろライン取りの自由度があって走りが楽しい。
森の中を走るので景色は皆無に等しいが、それだけに走りに集中できる。

これまで避けてきたのが勿体なく感じるくらいの、優良ワインディングだった。

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津別峠には展望台があるようだ。
訪れてみると、美幌峠とは正反対。誰もいなかった。

と思ったら、先客が一人だけいた。

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展望台からは、屈斜路湖の大展望。美幌峠では省略してしまったので、ちょうど良かった。
スケールの大きなカルデラ湖である屈斜路湖。午後の時間に順光状態で堪能できるポイントは貴重かもしれない。

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エゾシカならまだしも、高確率でヒグマに出くわしそうなニオイが特別濃い津別峠には、特にオープンカーでは長居をする勇気が出ない。
景色を堪能したら、そそくさとD588に戻り、津別側へと下りていく。

津別で道道494号にスイッチ。
最後の酪農民家前を過ぎると、アスファルトの舗装が潰える。

つまり、ここからは未舗装路。
S2000界隈ではラリー・カーと囁かれているR style S2000とはいえ、あくまでターマック・ステージでの話。
これまでダート路を走ることは極力避けてきたのだが、今回、満を持しての突入。未知のグラベル・ステージが始まる。

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どんなダートが待ち受けているのだろうと、内心ヒヤヒヤしながら突入した道は、よく絞まった路面で比較的走りやすい。
もちろん車体へのダメージを最低限としたいがために、速度は十分に落とさざるを得ないが、危険なポイントはほとんどない。

にしても、なぜ未舗装路など選んだのか。

それは、この先に本日の宿があるからに他ならない。

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未舗装路の先、チミケップと呼ばれる小さな湖の畔に、ぽつんと佇む山荘のような建物が本日の宿。

以前よりその存在は知ってはいたが、ダートを通らなければ行き着くことができないことがハードルとなり、これまで訪問が叶わなかった場所。
旅の準備期間中、運良く予約が取れたことで、封印を解く決心が着いた。
周囲にはただ森と湖しかない、静寂に支配された環境で一夜を過ごす。

2023 08 19 10

宿は北欧風のヒュッテで、内装の意匠も家具も照明も統一感があり、宿のコンセプトが明確に伝わってくる。
宿泊室は山小屋風だが、行き過ぎた装飾もなく適度な生活感を残していることが、この環境にはふさわしいと思える。

そんな瀟洒な宿でのディナーは、地元素材を活用したフレンチのフルコース。
十分な時間を費やされた料理には、一品ごとにストーリーがある。

2023 08 19 11

本格的なコースディナーには、特別なフランスワインを。
五感で味わうことができる、素晴らしいディナーだった。

窓の外はいつの間にか漆黒の闇に閉ざされ、何も窺い知ることはできない。
闇夜で仰ぎ見る星空は、きっと素晴らしかったと想像できるが、素晴らしい料理とワインに満足が過ぎてしまったために、そうすることができないまま夢の世界に落ちてしまったことだけが心残りだった。

 Posted by at 5:45 PM

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