12月 092011
 

ここまでかなり抽象的な話をしてきましたが、一方で、具体的にどれくらいの大きさでどんな形状の家が建つのかという部分についても検討していきます。
設計って言われると、とかく間取りに走りがちですが、それよりも先にこういったことを考えておくことで、より合理的で洗練された設計を生むのではないか、と思っています。

日本では、敷地の面積に対して建てられる規模が決まっています。いわゆる建ぺい率、容積率と言われる概念です。建ぺい率、容積率の制限値は、都市計画によってその敷地に定められている用途地域に紐付けて定められています。
ざくっと言うと、商業系用途地域は制限値が高く(床面積の大きな建物が建てられる)、工業系及び中高層住居系が中間、低層住居系が最も制限値が低く(敷地に対して床面積の小さな建物しか建てられない)なっています。

R style Houseの敷地は、用途的にも規模的にも最も制限の厳しい「第一種低層住居専用地域」に指定される一帯の中にあり、建てられる家に大きな制限がかかる代わりに、家並みが低密度で環境良く感じられます。
本当ならば、もう一段階緩い制限の用途地域の土地が良かったんですが、練馬区は区域の大半が第一種低層~であり、そうでない(条件の緩い)用途地域の土地は値段も段違いになるので、敷地面積がある程度広いことを条件に、この厳しい制限の土地を選択しています。

面積の制限の他に、家の計画で非常に影響が大きいのが、高さ制限です。
高さ制限は複雑に絡み合っていてなかなか理解しづらい概念ですが、都内で建てる場合、一番悩ましいのが「高度地区」による高さ制限だと思います。

高度地区は自治体によって指定の有無、内容が違うので、都内での話に限定しますが、今回の敷地はこれまた最も厳しい「第一種高度地区」に指定されていて、敷地の形状によってはかなりの制限を受けます。
ケースバイケースですが、この地区で3階建を建築するのはかなり難しくなってきます。

以上のような法的制限によって建てられる規模が必然的に決まってくるので、その制限を理解して家の大きさや形態を考えていきます。これをボリュームチェックと勝手に呼んでいますが、慣れてくるとその敷地の制限(属性)を見ただけで、建築可能な家の規模がだいたいわかるようになってきます。
必要になりそうな空間の規模や機能に対し、それを内包するだけのボリュームが確保できるかどうかを、敷地毎に検討していきました。

最も厳しい制限がかかる敷地でも、敷地の形状や道路の接し方等の条件によっては、望む家が建てられることがあります。逆に、制限は緩いのに、ほとんど面積が取れない場合も多々あります。
慣れてくれば、そういう目線からの敷地の価値が読み取れるようになってきます。
それはそれで面白い作業なんですが、一生の買い物なので失敗はできない(笑
当初の予定に反して制限が厳しい敷地を選んだわけですが、ボリュームチェックによってこれならイケるという確信ができたからこそ決断できたわけです。

(まだつづきます)

 Posted by at 1:11 PM