4月 192014
 

翌日も長崎は大雨。朝の通勤ラッシュの混雑に揉まれながら、国道206号を北上する。
天気が良ければ、もっといい道が沢山あるはずだが、この天気では回り道する気にもならない。
R206のまま北上を続け、最短距離で佐世保方面へと向かう。

国道202号、35号と繋いで三川内。県道1号に入れば、程なくして波佐見の町。今日の舞台はココ。
波佐見は焼き物の町である。隣の有田町はおそらく日本一有名な陶磁器の町なので、波佐見はその影に隠れている。
前年の[前半] で訪れ、華やかな工芸品が見所だった有田に対して、生活用品としての実利を重んじた器の生産地というのが波佐見のイメージ。

というのは、何となく知っている情報に過ぎない。実際のところはどうなのか。
早速、陶房が集積する集落へと向かうことにする。

中尾山

波佐見の市街地から2km程離れているだろうか、陶房が集積している一帯と聞いてやってきたのが、中尾山という集落。
煙突が立っていたり、そこかしこにタイルが張られていたり、焼き物の里を感じさせる景観が展開していた。

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集落の道は狭い。雨は小康状態ながらも相変わらず降り続いていたが、集落の奥にあった交流館の駐車スペースにエスを停めて散策することにした。

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集落のあちこちに煙突や工房らしき作業場、そして磁器タイルを使用した欄干や舗装など、ここが陶磁器の町であることを雄弁に物語る要素にあふれている。

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ただ観光地には縁遠いのか、誰一人として歩いている人がいない(クルマも)。 
台風接近の平日では仕方ないだろうけど。

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陶磁器の里巡り、結論だけ言っちゃうと、3つの陶房と、最後に交流館にお邪魔し、波佐見焼の真髄を存分に味わうことができた。
半日以上をこの中尾山で過ごしたわけだが、よほど夢中になってたのか、ほとんど写真を撮っていない。
なので詳しいレポは省かせてもらうけれど、工房の方とお話しながら(時には工房を案内してもらいながら)気に入った作品を選び手に入れるのはこの上なく楽しい時間だった。

思えば、最近の京都旅も骨董巡りの要素が増えてきているし、危うい世界に徐々に引き込まれているような気が・・・
ま、波佐見焼は骨董などではなく、実用品そのものではあるけれど。

ただ、その実用品としての形態と色彩が、生活に違和感なく溶け込んで、毎日をより豊かなものにしてくれる予感があった。
実用費でありながら、作り手の心も存分に味わうことができ、作品としての個性と美しさを兼ね備えている。そういう焼き物を生み出している工房が、この波佐見に集積しているところが印象深い。

・・・・・・・

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昼を大きく過ぎてようやく、波佐見の町の中心近くにある、製陶所をリノベーションしたカフェ「mook」にて昼食。

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中尾山で訪れた「一真窯」の若奥様に教えていただいたカフェで、敷地内に点在する木造の古い製陶所の建物には、カフェの他にも雑貨店やアートスペースが入居していた。

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陶房の建物だけでなく敷地をまるごとリノベーションしているようなスポットで、焼き物の里の雰囲気を最大限残しながら、新たな交流スポットを成立させているところが目を引く。
波佐見焼には現代的センスに上手く追従した作風が多い感じがしたが、まちづくりにもそれが現れているということか。。

夕方が近付き、最後に白山陶器本社のショールームを覗いて、波佐見散策は終了。
一日中気分も沈むような暗い雨の日ではあったが、波佐見の陶房探索によって充実した一日となった。

波佐見からはもと来た道を引き返し、佐世保市街へ。
佐世保で宿を取り、この日が終了。ほとんど移動なし。
九州をかすめるように通過していた台風の影響は少なかったものの、ひたすら雨の中を距離を稼ぐように走り続けても楽しくはない。
けれど結果的には、そんな日にエスを走らせること以外で旅の醍醐味を味わえたことを考えると、何とも運がいい。
今回の旅は、天気はコロコロ変わったけど、要所要所で天気とシーンが案外ハマっているような気がする。
自然とそういうルート調整ができているとしたら、まぁまぁってとこですかな(^ ^;

 Posted by at 9:56 PM
4月 072014
 

今朝の阿蘇周辺では雨天に見舞われたものの、徒歩散策の山鹿はまったく傘の心配いらずといった感じの天候だった。
しかし、いつここも天候が様変わりするかわからない。実は台風が近付いているのだった。

台風の進路を避けて、阿蘇からできるだけ西側に寄ったことで、雨天から逃れたとも言える。
やたらと台風の多かった2013年の秋。10月も下旬となればさすがに台風の心配もなく、台風から逃げまわった2012年の[前半]のようなことにはならないだろうと想定していたのを嘲笑うかのように、この週も九州に台風27号が接近してきたのだ。
昨年の[前半]といい、先月の北東北といい、出掛ける先になぜ毎回台風が寄ってくるのか・・・(苦笑

旅の前半でシーサイドドライブを味わった宮崎の海岸は今、台風の影響をモロに受けて荒天のはず。
あの地で台風と鉢合わせにならなかっただけヨシとしようか。

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台風から逃れるべく、極力西の方へと進路を向ける。とは言いつつ、山鹿でゆっくり散策したこともあり、時間が限られている。
山鹿からは国道443号で柳川方面に向かう。みやまの辺りで雨が降り出し、柳川市街ではバケツひっくり返したような大雨。山鹿でこういうふうにならなくってホントに良かった。

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県道18号で筑後川を渡り、国道444号で佐賀市街をパス。
地図からしていいペースで距離稼げるかな、と思ったらトラックが多く、思ったように前に進んでいかない。雨は小康状態になったけど。

鹿島市街をバイパスで通過して、R444を保ったまま大村方面へショートカット。
鹿島〜大村間のR444は単独走行となってペースアップ。雨は激しさを増しつつあるものの、どっしりと安定したエスの足回りは、路面状況を常にドライバーに伝達するので、ハイスピードなワインディングでも落ち着いて操作ができる。

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ライトオンで峠を超えた先は長崎県。大村側に降りてきたところで、時間短縮のため高速へ。と同時に土砂降り。最初のPAで止まるも外に出られないくらいの雨で諦めて、再び走り出す。

長崎道からながさき出島道路を経て、一気に長崎市の中心部へ。
目の前が中華街なビジネスホテルに18時前にはチェックイン。

長崎に来たのは、ただ台風から距離的にできるだけ逃れるという理由で。特にどこかに寄りたいという理由があったわけではなかった。

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でもまぁせっかく夕飯時に来たのだからと、長崎名物を探して思案橋横丁へ。長崎サラリーマンの御用達?雰囲気のある店が軒を連ねている。

iPhone片手に向かった「天天有」は、残念ながら定休日。
調べ直すと、同じ思案橋横丁にちゃんぽんの美味しい店があるらしい。

「康楽」という中華料理店。ココはやっていた。
中華料理店ではあるが、中は割とフツーな食堂的な雰囲気。店員の気の利くところも中華料理店っぽくない(笑

お目当ての長崎ちゃんぽんと、付け合せに餃子をいただく。(なぜか写真は撮り忘れ(汗)

周りを見渡せば、ほとんど一人客。女性の一人客もいた。飾らない店ながら、ちゃんぽんは実に美味だった。

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ホテル前に戻ると、中華街は大雨に見舞われていた。
部屋に戻って、2日目に調達した都農ワイン(キャンベルアーリー ロゼ)のマグナムボトルを味わい、幸せ気分♪

明日は台風の影響を最も受ける日になるので、ほぼ停滞を決め込むつもり。
停滞と言っても、長崎に留まるわけではない。佐世保近くのとある場所に行こうと企んでいた。

 Posted by at 12:34 AM
4月 062014
 

人知れずひっそりと復活。。

2ヶ月近くもお休みを頂いてしまいましたが、徐々に再開していければと。
昨年の10月のツーレポを未だに続けているってのもアレですが・・・(大汗

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国道442号で黒川温泉を通過し、小国で国道387号との重複区間へ。
ただひたすら西へと向かうルートに入っていく。

上津江から再びR442の単独区間になり、竹原峠へと向かっていく。
峠を超え、ダムサイドを走り、集落の中を駆け抜けていく。
400番台国道のイメージからすると、かなり平和な道のり。ただ、ひたすら長い。相棒がエスでないと、さすがに退屈してしまいそうだ。

そのまま走り続ければ八女へと至るロングトレイル的ツーリングルートだったが、思い立って踵を返すかのように、県道13号に入り、その先の国道3号を南下する。
熊本へと戻る方向ではあるが、その途中に今回の旅で訪れてみたかった街並み2カ所目、山鹿の市街地があるのだ。
 

山鹿

名立たる九州のメジャー観光地からすると、マイナー路線であることは否めない。
でも敢えてここに立ち寄ったのは、何だかソソられる光景が集積してそうな予感があったからだ。

市街地近くの大きな観光駐車場(無料!)にエスを置いて街並み散策へ。
まず向かったのがココ。

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八千代座

明治後期に建てられた芝居小屋。
山鹿に雰囲気の良い街並みがあるとすれば(この時点ではまだ散策してないので)、おそらくこの建物が遺っているからこそ形成されたのではないか。そう思うほど、重厚で存在感のある佇まいだ。

いや、重厚っていうのは少し違うかな。建物の前に立ってそう感じた。

市街地の中心を菊池川が流れ、商工業が発達し、熊本県内でも有数の発展を遂げた町。その町の旦那衆が、娯楽施設の建設を計画し資金を出し合って建てたのがこの八千代座。
そういった経緯から、大衆のための大衆による建築というイメージで、庶民の粋な心意気を醸し出す存在である。

時代を経て、昭和の中頃に荒廃し、一度は取り壊し寸前まで話が進んでしまったこともあるそうだが、保存活動が功を奏し、今では国の重要文化財に指定されている。そして今でも現役の芝居小屋。海老蔵公演だってある。
何も公演がない日は見学可。で、早速内部を見学。

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木造の大空間というだけでも圧倒されるが、誰もいなくとも観衆の熱狂が伝わってくるような空間の力にゾクゾクする。

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見上げれば極彩色の格子天井。一枚一枚が当時の絵柄を復元したスポンサー広告なのだが、今現在も営業している老舗も混ざっているらしい。
その中心に悠然と垂れ下がるシャンデリア。 天井の図柄の意匠とも相まって、ハイカラな大正文化を先取りしたかのような雰囲気が独特だ。

観客席は舞台に向かって緩やかに傾斜している。階段も廊下の光沢からも、往時の賑わいが想像できる。
舞台裏の楽屋、舞台下「奈落」と呼ぶ)の装置も見学させてもらえる。
メイン舞台の廻し舞台、役者が舞台に登場する「セリ」、同じく役者が飛び出る「すっぽん」も全部現役。(当然、動力は全て人力)

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築100年を経たその機構は見応えがある。

そんな感じで印象深い建物だったが、一番記憶に残ったのは、見学者に説明をしてくれるオバサン。
めちゃめちゃ饒舌で知識も半端無く、歌舞伎役者さながらに飛んで跳ねて駆けまわるガイド魂に、見学者一同感動(笑
最後は建物ではなく、熱の入ったガイドに拍手喝采だった。

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さて、街並み散策。
かつて物流の大動脈だった菊池川の船着場周辺には、回船問屋や米問屋が軒を連ねていたという。
その名残りで川の近くの通りには、米を原料とした家内工業による老舗が今も残っている。

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墨を混ぜた漆喰の外壁と、まだらな色合いの瓦屋根が連なる街並みが、ゆったりと時間を湛えながら佇んでいる。

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千代の園酒造

明治29年創業の蔵元。焼酎天国の九州で、日本酒。よくよく考えるまで、不思議に思わなかったけど。
何か買っていこうかと店内で品定めして目に入ったのが、ワインボトルに入った日本酒「大吟醸千代の園エクセル」。
名前も見た目もエクセレントで、箱の中には専用のオープナーまで付いている!なんでも、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」でグランプリになったことがあるらしい。
一見冗談っぽいけど、実は大真面目な発想に撃たれて購入することに。

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木屋本店

千代の園酒造の隣にある麹の専門店。こちらも老舗中の老舗。
店の奥では180年の伝統を守りながら、味噌を始めとする麹食品が作られている。

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店の中を眺め回していると、奥から若旦那と思わしき方がやってきて、工場を案内してくれた。
麹についてはとんと知識がなかったが、全部手作業による製法を今でも守りながら伝統の味を守っている姿勢には頭が下がる。

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ところでこの木屋本店、一時期流行した「塩麹」ブームの火付け役として名高い。
先の若旦那、どっかで見かけた顔(童顔でいらっしゃる(笑) だなぁと思っていたら、以前TV番組「青空レストラン」で麹名人として出演していたその人だった。
その記念?に、味噌、酢、そして塩麹を購入。さっきの日本酒とまとめて、自宅へ発送した。今回は珍しく土産の類が多い旅になっている。

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せんべい工房

木屋本店で紹介されて、少し先のせんべい屋の老舗に立ち寄ることに。
ポン菓子のような素朴なせんべいを売る店。
奥から店主が出てきて、やおら機械の前に座ったと思ったら、せんべい焼きの実演を始めた。
それだけでなく、ココに座れと言い出し、せんべい焼き体験を強要(笑
米をごく少量、圧力と熱を加えて膨らますだけなので、店主の言う通りに操作すれば、熱々のせんべいがいとも簡単に出来上がる。

なんとも強引な店(笑)だが、話の振り方が上手い店主としばらく談笑。
平日、しかも台風が近付いている昼下がりでは客も来ず、他愛もない話が続いた。

人柄がにじみ出る店主が最後に言った言葉。
「みんないい所だって言うが、住んでる自分から言わせりゃ山鹿なんて何にも無い。ただ、温泉だけは本物。絶対に入っていってくれ」
率直過ぎる郷土論の中で、温泉だけは別だと。次に訪れるスポットは決まった。

2014 04 06 11

さくら湯

山鹿は温泉の街でもある。
その温泉が引かれる共同湯がさくら湯。
共同湯って言っても、別府みたいに知る人ぞ知るみたいな小規模なものではない。なんと街のど真ん中にズデンと建っているのだ。

温泉地山鹿の大衆浴場として建てられたのは明治時代。八千代座と同じく、旦那衆の心意気によって建設。
ただ、時代の流れとともにその役割を失って取り壊されるものの、つい最近、当時の千鳥破風&唐破風の威風堂々とした佇まいを忠実に復元した「さくら湯」が蘇る。
町おこしの一環かもしれないが、町のど真ん中にシンボリックな建物の共同湯を据えた都市計画は、他を知らない。強烈インパクトなのである。

2014 04 06 12

入浴は正面からではなく裏手から。営業時間6:00〜24:00、料金300円。これぞ真の共同湯。
浴室の素材に至るまで、安易に安っぽい素材に頼っていないのが好印象。できるだけ忠実な復元に拘ったのが手に取るようにわかる。
石の浴槽は、共同湯どころではない広さ。滑らかな泉質も絶品。せんべい屋の店主が推すのも頷ける。

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正直、八千代座だけだったらどうしよう!?と思っていた山鹿だが、老舗とさくら湯で超ガツンとくる味わい深い街歩きになった。
この日のポイントは、ハッキリ言って山鹿だけみたいな感じになるのだったが、それでもこの旅の想い出としては十分なインパクトを感じたのだった。

 Posted by at 6:17 PM