4月 062014
 

人知れずひっそりと復活。。

2ヶ月近くもお休みを頂いてしまいましたが、徐々に再開していければと。
昨年の10月のツーレポを未だに続けているってのもアレですが・・・(大汗

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国道442号で黒川温泉を通過し、小国で国道387号との重複区間へ。
ただひたすら西へと向かうルートに入っていく。

上津江から再びR442の単独区間になり、竹原峠へと向かっていく。
峠を超え、ダムサイドを走り、集落の中を駆け抜けていく。
400番台国道のイメージからすると、かなり平和な道のり。ただ、ひたすら長い。相棒がエスでないと、さすがに退屈してしまいそうだ。

そのまま走り続ければ八女へと至るロングトレイル的ツーリングルートだったが、思い立って踵を返すかのように、県道13号に入り、その先の国道3号を南下する。
熊本へと戻る方向ではあるが、その途中に今回の旅で訪れてみたかった街並み2カ所目、山鹿の市街地があるのだ。
 

山鹿

名立たる九州のメジャー観光地からすると、マイナー路線であることは否めない。
でも敢えてここに立ち寄ったのは、何だかソソられる光景が集積してそうな予感があったからだ。

市街地近くの大きな観光駐車場(無料!)にエスを置いて街並み散策へ。
まず向かったのがココ。

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八千代座

明治後期に建てられた芝居小屋。
山鹿に雰囲気の良い街並みがあるとすれば(この時点ではまだ散策してないので)、おそらくこの建物が遺っているからこそ形成されたのではないか。そう思うほど、重厚で存在感のある佇まいだ。

いや、重厚っていうのは少し違うかな。建物の前に立ってそう感じた。

市街地の中心を菊池川が流れ、商工業が発達し、熊本県内でも有数の発展を遂げた町。その町の旦那衆が、娯楽施設の建設を計画し資金を出し合って建てたのがこの八千代座。
そういった経緯から、大衆のための大衆による建築というイメージで、庶民の粋な心意気を醸し出す存在である。

時代を経て、昭和の中頃に荒廃し、一度は取り壊し寸前まで話が進んでしまったこともあるそうだが、保存活動が功を奏し、今では国の重要文化財に指定されている。そして今でも現役の芝居小屋。海老蔵公演だってある。
何も公演がない日は見学可。で、早速内部を見学。

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木造の大空間というだけでも圧倒されるが、誰もいなくとも観衆の熱狂が伝わってくるような空間の力にゾクゾクする。

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見上げれば極彩色の格子天井。一枚一枚が当時の絵柄を復元したスポンサー広告なのだが、今現在も営業している老舗も混ざっているらしい。
その中心に悠然と垂れ下がるシャンデリア。 天井の図柄の意匠とも相まって、ハイカラな大正文化を先取りしたかのような雰囲気が独特だ。

観客席は舞台に向かって緩やかに傾斜している。階段も廊下の光沢からも、往時の賑わいが想像できる。
舞台裏の楽屋、舞台下「奈落」と呼ぶ)の装置も見学させてもらえる。
メイン舞台の廻し舞台、役者が舞台に登場する「セリ」、同じく役者が飛び出る「すっぽん」も全部現役。(当然、動力は全て人力)

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築100年を経たその機構は見応えがある。

そんな感じで印象深い建物だったが、一番記憶に残ったのは、見学者に説明をしてくれるオバサン。
めちゃめちゃ饒舌で知識も半端無く、歌舞伎役者さながらに飛んで跳ねて駆けまわるガイド魂に、見学者一同感動(笑
最後は建物ではなく、熱の入ったガイドに拍手喝采だった。

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さて、街並み散策。
かつて物流の大動脈だった菊池川の船着場周辺には、回船問屋や米問屋が軒を連ねていたという。
その名残りで川の近くの通りには、米を原料とした家内工業による老舗が今も残っている。

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墨を混ぜた漆喰の外壁と、まだらな色合いの瓦屋根が連なる街並みが、ゆったりと時間を湛えながら佇んでいる。

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千代の園酒造

明治29年創業の蔵元。焼酎天国の九州で、日本酒。よくよく考えるまで、不思議に思わなかったけど。
何か買っていこうかと店内で品定めして目に入ったのが、ワインボトルに入った日本酒「大吟醸千代の園エクセル」。
名前も見た目もエクセレントで、箱の中には専用のオープナーまで付いている!なんでも、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」でグランプリになったことがあるらしい。
一見冗談っぽいけど、実は大真面目な発想に撃たれて購入することに。

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木屋本店

千代の園酒造の隣にある麹の専門店。こちらも老舗中の老舗。
店の奥では180年の伝統を守りながら、味噌を始めとする麹食品が作られている。

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店の中を眺め回していると、奥から若旦那と思わしき方がやってきて、工場を案内してくれた。
麹についてはとんと知識がなかったが、全部手作業による製法を今でも守りながら伝統の味を守っている姿勢には頭が下がる。

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ところでこの木屋本店、一時期流行した「塩麹」ブームの火付け役として名高い。
先の若旦那、どっかで見かけた顔(童顔でいらっしゃる(笑) だなぁと思っていたら、以前TV番組「青空レストラン」で麹名人として出演していたその人だった。
その記念?に、味噌、酢、そして塩麹を購入。さっきの日本酒とまとめて、自宅へ発送した。今回は珍しく土産の類が多い旅になっている。

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せんべい工房

木屋本店で紹介されて、少し先のせんべい屋の老舗に立ち寄ることに。
ポン菓子のような素朴なせんべいを売る店。
奥から店主が出てきて、やおら機械の前に座ったと思ったら、せんべい焼きの実演を始めた。
それだけでなく、ココに座れと言い出し、せんべい焼き体験を強要(笑
米をごく少量、圧力と熱を加えて膨らますだけなので、店主の言う通りに操作すれば、熱々のせんべいがいとも簡単に出来上がる。

なんとも強引な店(笑)だが、話の振り方が上手い店主としばらく談笑。
平日、しかも台風が近付いている昼下がりでは客も来ず、他愛もない話が続いた。

人柄がにじみ出る店主が最後に言った言葉。
「みんないい所だって言うが、住んでる自分から言わせりゃ山鹿なんて何にも無い。ただ、温泉だけは本物。絶対に入っていってくれ」
率直過ぎる郷土論の中で、温泉だけは別だと。次に訪れるスポットは決まった。

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さくら湯

山鹿は温泉の街でもある。
その温泉が引かれる共同湯がさくら湯。
共同湯って言っても、別府みたいに知る人ぞ知るみたいな小規模なものではない。なんと街のど真ん中にズデンと建っているのだ。

温泉地山鹿の大衆浴場として建てられたのは明治時代。八千代座と同じく、旦那衆の心意気によって建設。
ただ、時代の流れとともにその役割を失って取り壊されるものの、つい最近、当時の千鳥破風&唐破風の威風堂々とした佇まいを忠実に復元した「さくら湯」が蘇る。
町おこしの一環かもしれないが、町のど真ん中にシンボリックな建物の共同湯を据えた都市計画は、他を知らない。強烈インパクトなのである。

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入浴は正面からではなく裏手から。営業時間6:00〜24:00、料金300円。これぞ真の共同湯。
浴室の素材に至るまで、安易に安っぽい素材に頼っていないのが好印象。できるだけ忠実な復元に拘ったのが手に取るようにわかる。
石の浴槽は、共同湯どころではない広さ。滑らかな泉質も絶品。せんべい屋の店主が推すのも頷ける。

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正直、八千代座だけだったらどうしよう!?と思っていた山鹿だが、老舗とさくら湯で超ガツンとくる味わい深い街歩きになった。
この日のポイントは、ハッキリ言って山鹿だけみたいな感じになるのだったが、それでもこの旅の想い出としては十分なインパクトを感じたのだった。

 Posted by at 6:17 PM