
福岡県南部の中心都市、久留米。1日目はその久留米の街に、初めて停滞した。
焼鳥屋の密度が日本一という久留米。確かに、狭い範囲に焼鳥居酒屋が集中している。

GWの地方都市の夜は難しく、久留米も例外ではなかった。どの店も満杯。
消去法的に見つけた焼鳥メインの居酒屋はまぁまぁといったところで、初日1,200kmドライブの疲れを癒やすことができた。
生ビールが身体の隅々まで染み渡る。

締めは濃厚こってりな久留米ラーメン。
昨年も訪れた九州。だが、見知らぬ町はまだ多い。
魅力ある街に溶け込み味わうのも、いま楽しみにしている旅の要素のひとつだ。

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久留米から県道82号経由で、国道442号に入る。
福岡県の八女から、熊本県の小国方面に抜ける山中路。特段の特徴は無いのだが、何故かその雰囲気が好きだ。
以前も久住から山鹿に抜ける際に、九州ではあまり見られない緑深き谷間の快走路を楽しんだ記憶がある。
ダム湖畔のワインディングを楽しみ、竹原峠をトンネルで越える。
トンネルの先は、大分県日田市、旧中津江村。日韓ワールドカップの際に一躍全国区となった、山深い小さな村の道の駅で小休憩。

そこかしこに、当時の名残が見て取れる。
今は日田市に吸収されてしまったが、その後もしっかりと村おこしに活用中。

お隣の旧上津江村で国道387号、こちらの道の駅にも立ち寄る。
大分、熊本、福岡の県境が密集する山奥ながら、訪れる人の数は多い。
それでも、九州以外のナンバーを持つクルマは、エス以外には見られない。

R387を少し引き返し、県道12号へ。
走りやすい2車線路で標高を上げていく。
ところで、ここ日田市上津江、走りに興味ある人なら、こちらのイメージではないだろうか。

バブル絶頂期に建設され、バブル崩壊とともにたった2年で破産、行き場を失った悲運の国際格式大型サーキット、オートポリス。
レーシングコースというのは人里離れた山間奥地に立地している場合が多いが、その中でも群を抜いてアクセス不便なこの立地。
そんなこともあり、常に倒産、閉鎖といったイメージがつきまとっていたが、現在はスーパーフォーミュラやSUPER GTも開催されるという、奇跡の復活ぶり。
ちなみに現在は、川崎重工が所有(筆頭株主)している。
国際規格ながら九州の走行会といえばオートポリス、というイメージがあるのは、敷居を低くしてでも存続の道を選んだ結果だろうか。

K12は気持ちのいい道だ。
アップダウンを伴ったコーナーが連続するが、道幅が広いので走りやすく、景色も徐々に開放的になっていく。
広大な牧草地帯の住人たちに遠慮しつつ、草原をゆるやかに貫いていく。


土地勘のある方なら、どこに向かっているか、おわかりだろう。
聖地、阿蘇。
九州でもっともメジャーなツーリングエリアであり、ワインディングの宝庫。
そして、ここにしかないユニークな地形と、それらが織りなす圧倒的なランドスケープ。

旅の最初のメインディッシュは、阿蘇エリア。
走っても走っても、その魅力を味わい尽くせないほどのボリュームゾーンを、今回こそは堪能したい。

K12は阿蘇外輪山北側の尾根筋を行くルートに合流する。
通称「ミルクロード」。阿蘇を代表する絶景のコース。

右手には、雄々しく噴煙を上げる阿蘇山。
麓に広がる広大な平地を、ほぼ垂直に切り立った外輪山の斜面が取り囲んでいる。
いつ見ても、特異な景色だ。
これこそ、世界最大のカルデラ地形。火山が噴火を繰り返すことで生成された産物。
遠い昔、阿蘇は、数度の大噴火で大量の火砕流を吹き出した結果、地下が空洞になり陥没した。
あまりにスケールが大き過ぎて判別が難しいかもしれないが、その陥没した部分が目の前にある阿蘇山麓の平地。これが、カルデラと呼ばれる部分だ。
通常なら、長い年月の間にここに水がたまり、十和田湖や屈斜路湖のように、カルデラ湖になるはずだ。
阿蘇カルデラは、たまたま熊本側の立野という場所に割れ目ができて、そこから水が流出したと考えられる。
噴火で流出する溶岩流によるせき止めと割れ目の形成を繰り返した結果、湖は完全に消失、現在のような平地が形成されたそうだ。
カルデラ内を流れる白川と黒川が、外輪山の裂け目である立野で合流した後、熊本市街を通過、島原湾へと注いでいる。
このカルデラの裂け目が塞がると、カルデラ内でこんこんと湧き出る無数の湧水と雨水が溜まって、またいずれ湖になってしまうだろう。
そういった意味でも、いま目の前にあるこの地形は、まさに奇跡と言える。

奇跡が生み出したコースは、走りのステージとしても申し分がない。
だが、既に交通量は多く、各展望台も溢れんばかりの大盛況だから、今日のところは少し阿蘇から離れて、マイナーコースを楽しもう。
旅はまだ始まったばかり。
慌てず騒がず、気の赴くままにエスを泳がせるのだ。