奥豊後グリーンロード
県道11号で瀬の本まで。国道442号に入って、県道669号経由で広域農道、奥豊後グリーンロードへ。
激しくアップダウンを繰り返し、マシンの性能を熱く引き出そうとする挑戦的なコース。
ざらついた路面にタイヤを押し付け、オンザレールでコーナーを駆け抜ける。
コーナーの先にはロングストレート。すかさずアクセルを踏み込めば、粒の揃ったビートを奏でながら、黒い車体は軽々と加速していく。
地形をダイナミックにトレースするように、登っては下り、曲がっては直線的に貫きをひたすらに繰り返す。
超ロングコース。その間、出会う影はほぼ皆無で、自らの走りに没頭し続ける。
無数のコーナーを切り裂くように走り抜けるS2000。いや、まだまだ、こんなものではない。
大分中部広域農道
国道210号に出たら、すかさず今度は大分中部広域農道へ。
やや南寄りに向かって、複数の国道、県道をつなぐ道。奥豊後グリーンロードほどの刺激はないが、それでも。
R442を跨げば、このコースのハイライト。
実は昨年も走った区間ではあるが、大峠に向かうワインディングロードは景色もよく、走りの魂を揺さぶる。
アクセルオンからクラッチを踏みしめ、素早く、そして確実にシフトアップ。
すかさずクラッチを繋ぐが、この一瞬の領域には、幾多のパターンがある。エンジン回転数や選択するギヤによって、すべてが異なる。
それを考え、繊細に、かつ大胆にコントロールすることが、マニュアル・トランスミッションの最大の楽しみ。
実はこの箇所、この旅に先立ってメンテナンスを施したことにより、操作フィールが大きく改善されている。
余分な力を必要としない、軽快なシフトフィール。
クラッチフィールもそれまでとは別物で、駆動のつながりをより繊細にコントロールすることが可能に。
ドライブ中に無数の操作を行う部位だけに、小さな改善の積み重ねによるフィーリングの向上は、確実にドライビングファンに直結する。
その感触は、まるで生まれ変わったかの如く、絶品。
この旅、いつまでも、どこまでも走り続けたい。
一気に駆け上がってトンネルを抜ければ、しばらく狭い道が続いて県道41号に合流。
旧国道57号である、県道57号を走って、朝地の道の駅で小休憩。
もはや恒例、大分の道の駅での唐揚げタイム。ここ道の駅「あさじ」の眼の前にある、小さいながら存在感抜群の唐揚屋を見逃さなかった。
同じ豊後大野の道の駅「きよかわ」で出会った唐揚とはまったく異なった見た目と味。
この個性のバリエーションとファーストフード感こそが、からあげ大国、大分の底力。
しばらくR57を走り、竹田で三たびR442。先程の奥豊後グリーンロードのスタート地点に戻ってきたので、残りの区間を南下する。
ただ、この区間(R442〜R57)の奥豊後グリーンロードはどうということはない。ハイライトはやはり、R442から北側、R210に至るロングルートと言えよう。
道の駅「すごう」で、今度は丸福の唐揚。今日は唐揚だけで満腹だ。
広域基幹林道阿蘇東部線
R57を波野の道の駅まで西進し、笹倉の交差点から広域基幹林道阿蘇東部線に入る。
阿蘇外輪山の東側を南北に貫く、素晴らしい快走路。広い2車線のストレートが、ダイナミックなアップダウンとともにこれでもかと言うほど続いていく。
林道だが、その実態は西側を走る国道265号のバイパス路。よく知られているのか、走っているクルマは多めである。
阿蘇を離れたあたりから、空は雲で覆われつつあったが、このコースを走行中に、遂に雨粒が。
国道325号に到達しても粘ったが、コックピットも濡れる雨量に、さすがにギブアップ。
これより数日間、ルーフを開けることは叶わなくなるのだが、それは出発時からある程度わかっていたこと。永遠に続く雨天などない。
いずれ差すことになるであろう陽光を心待ちに、雨の日にしか味わえない旅を楽しんでみるのも一興だ。
R265で高森峠を越えて、阿蘇カルデラへ。
R265の高森〜一の宮区間にある箱石峠は、とても眺望がいい。
根子岳と火山地形を眺めるには、最高の峠道。ただし、交通量はかなり多い。
R57で阿蘇駅前。閉店間際の道の駅で物色。今日のドライブはこれにて終了。
道の駅で車中泊、ではなく、ここから国道212号で数km先。阿蘇カルデラ内最大の温泉地、内牧温泉へ。
温泉街を貫く黒川の畔に立つ宿が、今夜の根城。
最近のツーリングでは珍しく、温泉宿である。
とは言っても至れり尽くせりのサービス充実な宿ではなく、ひとまず寝床と温泉があるという程度。
建物は古く、昭和の匂いしかないような風情だが、広めの和室は寝るだけの目的には十分過ぎるほど快適だ。
軒下の駐車スペースが空いていたのは、雨天だけにありがたい。
隣にはこちらも遠方から、神戸ナンバーの156GTA。
一度腰を据えてみたかった、阿蘇内牧温泉。阿蘇のカルデラに泊まるという経験も、キャンプを除けば初めてだ。
フレンドリーなフロントの女将さんに傘を借りて、温泉街へと繰り出す。
街に人影はなく、街灯が寂しく濡れた路面を照らしている。
温泉宿とはいえ、いつも通りの素泊まりなので、夕食処(居酒屋)に向かう。
由緒ある阿蘇の温泉街ではあるが、特別規模が大きいわけではない。飲食店の数は限られていて、昨日のように彷徨う可能性が大きい。
よって今晩は事前予約。運良く一軒目で確保。
厨房内、給仕すべて女性が手がける店だった。メニュー豊富で迷ってしまう。
まずはビール。そして地豆腐。この大きさは一体。
早々と焼酎にスイッチ。ここは九州、自然と身体が焼酎を求めてくる。
阿蘇、熊本ということで馬刺しが有名だが、非常に高価だ。信州の馬刺しの方が庶民的。
しかし、馬刺しだけが熊本ではない。
こやつが酒量を増大させる。
唐揚で満腹だったはずが、あれもこれも美味で、箸も酒もどんどんと進んでしまう。
広いとは言えない店内を見渡すと、いつの間にか満席。入店できない客もちらほら。予約すべき店だったようだ。
店員の中で、いちばん下っ端と思わしきお姉さんがとても美人だったのも思い出深し。
すっかり楽しんで宿に戻り、歴史ある内牧温泉の湯に浸かれば、阿蘇の旅情は最高潮。
昼間は走りに走り、走り尽くして、夜は素朴で人情ある温泉街で過ごす。
それ以上の休日は、おそらくこの世には存在しないのだ。