県道5号は道の駅で折り返して、再び国道319号に復帰。新宮ダムに向かって走ると、長そうなトンネルが現れる。
どう考えても直進方向のそのトンネルがR319にしか見えないが、実はそのトンネルは県道5号で、R319はというと、トンネル入口の脇にある登山道まがいの枝道らしい。
一瞬ためらったが、直感でGOサイン。鋭角に車体を回し、枝道へと侵入。
ダム湖に沿って曲がりくねる狭路。落ち葉が堆積し、路肩が判別できない。
ライン取りにほとんど自由を与えてくれないが、県道にお株を奪われたこんな道だけに、交通量は皆無。ブラインドさえ気をつければ、そこそこのペースは保てる。
橋で対岸に渡ると、南側に斜面、北側に湖面となる。
日当たりの差だろう、今度は斜面と路面にコケ。特に斜面に張り付くコケの緑は鮮やかで、触れるものがないだけに異様に美しい。
路面にも張り付いているので、あんまり悠長なことは言ってられないが、比較的温暖でジメジメした場所で見られる独特の光景に目を奪われる。
陽は相当に傾き、谷間は急激に光量を失っていく。
それでなくとも生い茂った木々が覆い被さるタイトワインディング。早々とライトオンで、自らの存在を指し示す。
延々と続くダム湖沿いの狭路。
刻一刻と増していく暗闇に、追われるようにペースアップ。
果てることなく続くかと思われた、のたうつR319の線形は、突如として終焉を迎える。
R319は瀬戸内海に面する伊予三島へと下りていくルートとなり、直進は新居浜に向かう県道6号となる。
ここまで来たのなら、別子山は外せない。日没を過ぎた時刻だろうと関係ない。迷わず直進を選択。
激変だった。
それまでの狭路がまるで夢のなかの話だったかのよう。まるでその面影もない。霧が晴れたかのように開ける視界。
完全2車線のスーパーワインディング・・!
僅かな登り勾配を伴いながら、右へ左へ高速コーナーが連続する。
暗い低速コーナーに苦しめられたそれまでの鬱憤を晴らすかのように咆哮を放つF20C。
前時代的な荒々しさを十二分に残す、超高回転型DOHC VTECエンジン。気が狂ったかのようにエンジン内を叩きつけるピストン&クランク。
エキゾーストパイプを介して吐き出される高音域の轟音が、誰もいない山峡のワインディングロードに響き渡る。
長大なコース。ダム湖を過ぎても、高速コーナーの連続は鳴りを潜めない。むしろまだまだと、向こうから攻め立ててくるかのよう。
数十kmもアクセルを踏み込み、ブレーキを蹴飛ばし続けていると、なんにもない真っ白な空間に自ら吸い込まれていくような錯覚に陥る。
何の雑念もなく、ひたすらドライビングに集中できる瞬間。 それは長い人生の中で、一、二を争うほど充実した時間かもしれない。
・・・どれだけ走っただろうか。
徐々にコーナーはタイトになる。時折現れるトンネルのストレート区間でアクセルを踏みしめ、筒状の空間にこだまする強烈なエキゾーストノートに酔いしれていると、快適な2車線の道は徐々に山峡の狭路区間の表情を見せてくるようになった。
と同時に、徐々に前方を行く他車のテールランプが、いよいよ闇に支配されようとしている山道に、人魂が彷徨うかのように見え隠れし始めた。
ここがどういう場所なのか、おぼろげながらも知らなかったら、ちょっとコワい雰囲気すら漂っている。
別子山は、過去に銅を発掘した鉱山があった場所。その産業遺跡の保存の機運からか、道路の改良が驚くほど進んでいるようだ。(だからこんなスーパーワインディングがあるんだろうと予測する)
その工事関係車輌と思われるクルマ達が、いそいそと帰り始める時間帯。そういうことだろう。
でも過去に栄えた鉱山跡というのは、この時間帯にはなかなかに緊張感がある(笑
どうせならその別子銅山の産業遺跡をじっくり探訪してみたかったが、こんな時間では遭難するだけ。残念だがまたの機会にしたい。
もうどれだけ走ってきたかわからなくなってしまったくらい、長い坂を登り切った頃、前車をやり過ごすためにエスを停車。
熱く火照ったエンジン、ミッション、タイヤとブレーキを休ませる。
湧き上がる雲の大群に、周囲の山々が包まれていく。
散々走った後で、いったいどの方角を見ているのかまるで検討がつかないので、どこの山を見ているのかまったくわからない。
神々しく思えるほどの空のうごめきに、ただひたすら見入るしかなかった。
何台かの工事車両?をやり過ごして、静寂を取り戻した山中に、再び進軍を開始する。
既に2車線は失われていて、山肌に沿う細かい連続コーナーのコースに変化していたが、それは長くは続かず。
峠と思われる頂点で、長大なトンネルに吸い込まれていく。
それまでの区間があまりにも刺激的だったものだから、トンネルを抜けた後の下り区間をよく覚えていない。
タイトなコーナーが連続する急勾配のダウンヒルだったと思うが、決定的な印象がない。
わかるのはそれまでと比べて圧倒的に距離が短く、あっという間に麓に降りてきた、という印象だ。
道の駅「マイントピア別子」に立ち寄ったが、既に辺りは真っ暗闇。
駐車場では、車中泊組が今夜の寝床の準備に余念がない様子だった。
道の駅を過ぎれば、新居浜の街。県道47号(最初は6号だったが、途中で番号が変わっていた)スーパーワインディングは終焉を迎える。
三島側から新居浜に向かって走ったことで、今回の印象が生まれた。これが逆方向だったら、もしかしたら全く違う印象だったかもしれない。
間違いなく日没後という時間帯も良かったのだろう。まさしくドライビングハイ。ヤバイ時間帯だ(苦笑
・・・・・・・
新居浜でいったん国道11号に出て、新居浜ICから松山自動車道に乗る。
今日の宿は松山市郊外にキープしていたので、50kmの道のりだったけど時間も時間だし、混んでるR11を走るのも気分ではなかったので高速でワープ。
川内ICで下りて、伊予鉄の駅近のホテルへ。
このホテル、とても良かった。
都市部郊外にあってアクセス至便。ツーリング用途にはもってこいの立地。
部屋もキレイで、今時のデザインホテル風。風呂は隣接の日帰り入浴施設が使える。駅近なので、飲み屋も探せばいいとこが見つかった(笑
それでもって安いと来れば、ブックマークは確実だ。(伊予鉄鷹ノ子駅と久米駅の間にあります)
で、このホテルの駐車場で見つけたのが、、、
うん、S2000。岐阜ナンバー。同じBBS RG-Rを履いた御仁。
1台挟んで並んだエキシージはお連れかと推測。
実は私、このエスを一方的に知っている(笑
この時はこれっきりかと思いましたが、、ね。